作品タイトル不明
変人の知り合いは変人!
守護魔法陣の刺繍をしたマントをメアリーにゲイツ様とサリンジャー様に届けて貰ったら、代わりに手紙を持って帰った。
「やはりリヴァイアサンの討伐に行かれるのね。それで、春までにハープシャーの館の改装をしておいた方が良いから、ヘンドリック・ラドリー様と顔合わせ……」
王都に戻ってから、ヒューバート・グリーンに領地の館をヘンドリック・ラドリーに改修して貰うことになるかもと手紙を出したら、即刻「見学させて頂きたい!」と返事が来たんだけど、工事中、何処に泊まって貰えば良いのか悩み中。
三月まで、ノースコート伯爵夫妻は領地に戻らないのは決定しているし、今はコルドバ王国との交渉で外務大臣のモラン伯爵も忙しい。
つまり、どちらにも泊まれないのだ。
工事が始まるのは、三月以降になりそうだけど、それまでに顔合わせをして、どのような感じにするか話し合っておきたい。
ゲイツ様も遠征で忙しいだろうに、週末に昼食会を開いて、そこで顔合わせになった。
「初めて会う方と昼食会って普通なのかしら?」
パーシバルは、そんな事もあるけど、今回はゲイツ様が単に美味しい物を食べたかっただけでは? と笑う。
パーシバルは、 馬の王(メアラス) の運動もあるから、朝早くから屋敷に来てくれている。
まだまだ昼食会には早いから、二人で応接室で話しているんだけど、話題はもちろん改修プランだよ。
「パーシー様は、ハープシャー館をどんな風に改修したら良いと思いますか?」
「ハープシャー館は、ペイシェンスの物だから、好きなようにしたら良いと思う。ワインが有名な領地だから、いずれは試飲に商人も来るだろう。その時に少し上等に感じさせる演出も必要かもしれませんね」
ふむ、ふむ、私はワインのイメージから、フランスの田舎風なカジュアルなマナー・ハウスを考えたけど、貴族なんだし、 城館(シャトー) の方が良いのかも。路線を少し変更しなきゃいけないかもね。
白を基調に、温かみのある木材との組み合わせから、少し高級感を持たせた感じかな?
「私は、建物の改修工事がどのくらいの期間が必要なのかわからないのですけど、半年以上は掛かりますよね?」
ゲイツ様の口ぶりだと「春には遺跡見学の客が増えるから、それまでに改修した方が良い」って感じだったけど、そんなに早くはできないよね? あの大きな館の改修だなんて、前世だったら年単位だと思う。
「えっ、細かな作業は残るでしょうが、配管などは魔法でするでしょうから、ひと月以内に出来るのでは?」
ああっ、そうだった。魔法がある世界なんだね。
「ましてヘンドリック・ラドリー様だから速いと思いますよ」
グレンジャーの屋敷の使用人用のお風呂場も私たちが領地に行っている間に完成していた。でも、それはお風呂場だけだから、ユニットバスとかの設置なら前世ですぐだったからかなと、そんなに不思議に思わなかったんだ。
「では、今日の顔合わせで引き受けて下さると決まったら、明確に改修プランを伝えなくてはいけないのですね」
自分のイメージを絵に描いておかなきゃいけないのかなと焦る。
「ペイシェンス、そんな事はしなくても大体のイメージを伝えれば、ラドリー様が汲み取って下さいますよ。そして、プランを提示して下さるでしょう」
あっ、そうなんだね。そりゃ、そうだよ。
前世で家を建てた経験が無かったから、舞い上がっちゃった。
それから少しの時間、二人で領地の開発について話し合った。
「今、ライトマン教授と助手の方々に浚渫工事をして頂いています。それが終わったら、砂防ダムと溜池と治水工事。街道の整備はその後になるかも」
ガタガタしているけど、農作業が始まる四月までに治水工事をしたい。
「ええ、その方が良いでしょう。グレンジャーのギルドは、マッドクラブを討伐できるのですか?」
「ええ、でも腕の良い冒険者は少ないみたいです。今は、北部の魔物討伐に行っているみたいですわ」
ハープシャーの方はあまり期待できない。
「定期的にマッドクラブの討伐依頼を出して、解体したらモンテスに急速冷凍させて、王都に運んで貰わないといけませんね」
そうだよね! それとグレンジャーで海産物の干物も作りたい。
「今は漁師が売れなかった魚とかを干物にしているけど、もっと本格的にしたいです。それと、養殖も!」
こちらの世界では養殖は無いのかな? パーシバルが首を傾げている。
「海老とか貝柱がとれる貝や美味しい魚を網で囲って飼って増やすのです」
えええ、驚かれている。
「それも、ロマノ大学の動物学の教授に訊かれたのですか?」
「いえ、思いついただけですけど……やはり、協力して頂いた方が良いみたいですね」
今度の教授会には、魔物の素材と水産に詳しい教授を呼んでもらいたいなぁ。
私も水産業は素人なので、先ずは干物を作るのと、雲丹の瓶詰めから始めよう。
「やはり海に面している領地は良いですよね」
パーシバルが少し羨ましそうだ。モラン伯爵領は内陸だからね。
「ハープシャーでは、味噌と醤油、そしてソースを作りたいのです。初めは小さな蔵と工房で良いですわ」
今は使用人も少ないから、大き過ぎる台所でも作れるけど、いずれは工房を建てたいな。なんて話していたけど、食いしん坊のゲイツ様の意見は違った。
「こちらがヘンドリック・ラドリーです」
ゲイツ様は私達とラドリーを紹介した後、話し合うのを聞いていたが、我慢できずに口を挟んだ。
「館の改修もですが、醤油と味噌とソースを作らないといけませんよ!」
ラドリー様は、見た目はアラサーの紳士に見えた。ヒューバート様みたいに派手な装いでもないし、普通の貴族っぽい上等な服をサラリと着こなしていたんだ。
「ゲイツ様、その味噌とか醤油とかは、カルディナ帝国の調味料ですよね? それが作れるのですか?」
何故か、ゲイツ様に尋ねて、二人で盛り上がっていく。
「ええ、貴方もペイシェンス様の料理を一度食べれば、その調味料の重要性が理解できますよ」
「ふむ、私もカルディナ街で何度かは食事をした事があります。あれは、あれで美味しいですが、毎日食べたいとは思いませんね」
チッチッチとゲイツ様が指を振って笑う。
「まぁ、そんな御託は食べてからにしたほうが良いですよ」
丁度、お昼になったので、食堂に案内する。
「弟達も一緒ですが、宜しいでしょうか?」
こちらでは十歳未満の子は別な事が多いからね。
「それは大丈夫です」
割と理解がある人で良かった。なんて考えていたんだよね。
変人の知り合いは、変人だったんだ。