作品タイトル不明
二月は真面目にお勉強
月曜の朝、私たちは早めにノースコートを発った。
「お世話になりました」
ノースコート伯爵夫妻に挨拶して、 馬の王(メアラス) で発ったけど、その前にグラント元提督は発ったみたい。ブロッサム公爵は、ゆっくりとロマノに戻るみたいだけどね。
王都に戻り、パーシバルは私を屋敷に送ってから自分の屋敷に戻った。
「お姉様! カミュ先生! お帰りなさい」
可愛いヘンリーを抱きしめて、キスしておく。
「お嬢様、お風呂に入ってから寮に行かれますか?」
ふぅ、このままヘンリーとブロックで城を作っていたいけど、月曜だから寮に行かなくてはね。
それに身体を温めてから、行きたい。
「半地下のお風呂ができたみたいです」
髪を整えながら、メアリーが報告してくれる。
「そう! それは良かったわ」
使用人も身綺麗にして欲しいからね。
寮に戻ったけど、マーガレット王女やリュミエラ王女は、月曜はグリークラブだよね。
少し、自分の勉強をしておこう。
「今学期の経営学の課題は、新しい事業の設立。経済学は……これ難しいなぁ。貿易赤字の解消方法だなんて、赤字にする砂糖やカカオをかなり買っている気がするわ」
外交学は、今回はパーシバルともフィリップスとも分かれた。しくしく! まぁ、ラッセルとアルーシュ王子とは同じ赤組なんだけどさ。
今回は、これまでと違ってローレンス王国側なんだ! でも、内容が微妙。農産物の輸出と輸入の関税!
ローレンス王国は、小麦や豆を南の大陸に輸出しているけど、コルドバ王国の方が地理的に有利なんだよね。
ふぅ、なのに香辛料や砂糖やカカオなど高級食品を輸入しているから、農産物だけで言うと赤字!!
それを魔導具やガラスなどで何とか黒字にしている感じなんだよね。
農産物だけにされると、ローレンス王国側はかなり苦しい。
図書館で借りた資料を整理しながら、砂糖だけでも減らす方法を考える。とは言え、麦芽糖とかを作っても、貴族階級の砂糖の使用量は変わらないかも。
「そうだ! カエサル様とベンジャミン様にトレントから甘い樹液が取れたか聞きに行こう」
あの二人なら錬金術クラブにいそう。
「おお、ペイシェンス! 領地に行っていたと聞いたぞ」
ベンジャミンは、情報通だね。
「ええ、やる事が山積みなのです」
カエサル部長とベンジャミンに心配された。
「それで、何か質問があるのか?」
クラブ活動するには中途半端な時間だからね。
「いえ、領地の事ではなく、外交学の課題の件で……農作物の輸入を減らすには、砂糖が……」
カエサルに、その影響を一番与えているのにと笑われる。
「ああ、リンネル教授のお陰で、大体どのトレントの樹液が甘いか判明してきた」
それは良かった!
「では、それを煮詰めれば甘味ができますね!」
ただ、トレントの中で樹液が甘いのは数が少ないみたい。
「やはりてん菜を見つけたいですわ」
これもリンネル教授に相談したいな。
「私からも教授に探して貰おう!」
カエサルも協力を約束してくれた。
「ねぇ、ベンジャミン様はまだ薬学と薬草学を取っていらっしゃるのですか?」
真面目に水やりしないと合格は無理だと思うけどさ。
「ああ、文官コースも取っているが、魔法使いコースの単位は殆ど取っているからな」
カエサルは、何とか薬学は合格したみたいだけど、薬草学は無理だと諦めモードだ。
「中等科1年の明明をご存知でしょうか?」
ベンジャミンは、ああと手をポンと叩いた。
「カルディナ帝国からの留学生だな。なかなか可愛い子だけど、かなり苦労している」
えっ、そうなの?
「明明の事は、美麗様に頼まれているのです。なのに放置していたわ。どこら辺が苦労しているのでしょう」
ベンジャミンも単位を取れていないから、腕を組んでいる。
「マキアス先生と相性が最悪なのかもしれないな。明明は、前の師匠が忘れられないのかも? それと、マキアス先生の捻くれた性格が理解できないのだろう」
あああ、それはね! 意地悪婆さんだから。
「いつ、明明は薬草学の授業を取っているのかしら?」
「ガハハハ、私と一緒の月曜の二時間目だ」
ついでにカエサル部長も一緒だと笑う。3年生なのに薬草1! 無理だよ。まぁ、卒業の単位は足りているみたいだけどさ。
そうか、なら今度の月曜に温室で待ち伏せしよう。学年が違うからか、明明とは会わないんだ。 上級食堂(サロン) で昼も食べていないんじゃないかな?
「カエサル部長は、本当なら去年卒業できたのでは?」
これ、聞きたかったんだ。
「私は、王立学園とロマノ大学に在籍している間しか自由にはできないからね。早く卒業する意味はないのさ」
そうか、そういう考え方もあるよね。
「でも、ペイシェンスは今年で卒業しても良いのではないか? ロマノ大学は、王立学園より自由が効くぞ」
ベンジャミンが慌てて引き止める。
「えっ、ペイシェンスが卒業したら寂しいじゃないか! カエサル様、そんな事を言わないで下さいよ」
ふうん、私も悩み中。前はマーガレット王女の側仕えだし、卒業できないと思っていたけど、今は少し違うんだ。
リュミエラ王女、エリザベス、アビゲイル、まぁそれとリリーナも寮にいるから、私が抜けても大丈夫そうなんだよね。
パリス王子の件とか、どうなるのか心配だけど、二人っきりにしないだけなら、学友でも良いし……。
やはり、領地の管理にもっと時間を使いたい。
ロマノ大学に進学するのも悩んじゃうけど、まだまだ勉強しなくてはいけない事も多いのはわかる。
「兎に角、春学期は勉強を頑張りますわ!」
卒業するかどうかより、先ずは勉強しよう!
「いや、いつも頑張っているじゃないか!」
ベンジャミンに笑われた。でも、確かにペイシェンスは真面目に勉強しているよね。
秋学期は社交界デビューもある。王妃様がマーガレット王女を学園をサボるほどパーティに参加させるとは考えられないけど、週末は埋まるかもしれない。
だから、この学期で合格できるものはしておきたい。
火曜と木曜は音楽クラブに久しぶりに行った。やはりゲイツ様はリヴァイアサンの討伐に行くのか、木曜の魔法訓練は二月中はお休みになったんだ。
アルバート部長は、青葉祭の新曲発表と少女歌劇の事で忙しそう。中等科のメンバーで初等科の新曲を作るのを手伝う。
私は、今回は少し軽い曲にしたいと思っている。春からは週末は領地に行きたいからね。
ちょっと粋なガーシュウィンのラプソディ・イン・ブルーだけど、ちょっと砕けすぎかな? マーガレット王女は絶賛だったけど。
金曜はナシウスと錬金術クラブで、次回の体験コーナーの変わったインテリア魔導灯を一緒に考えた。
「お姉様、これは百合の花のイメージですか?」
「ええ、女学生には花の魔導灯が可愛いと思うけど、男子学生は如何かしら?」
エドとクラリッサも参加して一緒に考える。
「星は?」
エドは体験コーナーでも七芒星を作っていたよね。私は、エステナ聖皇国やモンタギュー司教は嫌いだけど、教え自体を否定はしないけどさ。
「小さな飾りなら七芒星でも良いけど、魔導灯はどうかしら?」
クラリッサがエドに意見する。
「そうか、駄目かな?」
「七芒星じゃなくて、普通の星なら良いのでは?」
ここは初等科二年生達に任せよう。仲良くわいわい決めて欲しい。
中等科の学生は、ご褒美を何にするか悩み中なんだよね。
「三月にアイスクリームは寒いぞ」
ベンジャミンは、アイスクリームが食べたかったみたいだけど、カエサル部長に却下された。
「この前みたいな人数が来たら、もっと簡単な物じゃないと駄目だと思う」
アーサーもアイスクリームの容器を洗ったりするのが大変だと反対する。去年の青葉祭は上級メイドに手伝ってもらったけど、体験コーナーだからね。
「カエサル部長、自転車は売り出されているのですよね? それの試乗会は?」
やっと春から売り出すと聞いたんだけど?
「それは良いかもな! 後ろに椅子を乗せたのを何台か作ろう!」
帰る時間まで、皆でわちゃわちゃ作る。一度作っているから、割と簡単にできた。
乗ったことがない初等科の学生達が試乗して遊んでいるのを見ながら、もう二年いるのも良いなと思う。卒業するかは、もう少し考えよう。
ナシウスと一緒に馬車でグレンジャー家に帰る。メアリーとマシューも一緒だけど、男子寮なので滅多に会えないから嬉しい。
ただ、屋敷に着いたら、私たちが馬車から降りた途端に、父親を迎えに行かなくちゃいけないんだよね。
「やはり、もう一台必要だわ」
週末は、弟達とゆっくり過ごそう! とはいえ、二人のマントに刺繍はするけどね。
「お姉様! お兄様!」
玄関の階段を飛び降りて抱きつくヘンリーを抱きしめながら、頬にキスする。
領地は気になるけど、ノースコート伯爵夫妻は二月はもう帰らないみたいだから、こちらでできる事をするしかない。