軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第036話 怖い

俺達は校舎に入ると、電気をつけ、1階から捜索を開始した。

電気がつくと、怖さもなくなるかなと思ったが、なまじ明るいから部分的に暗いところが目立ち、余計に怖いような気がする。

さらに……

「山田さん、絶対に脅かすなよ。私はそういうのが大嫌いなんだ」

震えながらしがみついている女子高生が怖い。

皆さんは役得と思うかもしれませんが、この子は人斬りキョウカちゃんで片手には抜き身の刀を握っています。

刺されそうです。

首を刈られそうです。

実際、何かの恐怖を感じ取ったミリアムは俺の肩から降りて、自分で歩いています。

「魔力を感じないな……」

さらに一ノ瀬君はこの状況をガン無視です。

「橘さん、怖いなら外で待ってても良いよ?」

「何を言うか。この状況で1人になるなんてことをしたら第一の被害者になってしまうじゃないか」

あー……そうかも。

そのパターンだ。

「でも、物語だと女の子は助かるよ」

1人しかいないから自動的にヒロインだ。

「現実の話をするべきだろう」

いや、君が言い出したんだよ?

「キョウカ、本当に気配があるのか?」

一ノ瀬君が俺達のやり取りをガン無視して、橘さんに聞く。

「あるぞ。間違いなく何かいる。早く出てきてほしい」

「うーん……ここかな」

一ノ瀬君が教室に入ったので俺達も続くが、何もいない。

俺達はその後も1階、2階と捜索を続けるが、何かが現れることはなかった。

ミリアムに確認したいんだが、しがみついている橘さんが邪魔で内緒話ができない。

でも、へっぴり腰で震えながら涙を浮かべているので離れろとも言いづらい。

「俺達の教室か……」

一ノ瀬君がとある教室の前で立ち止まり、つぶやく。

「一ノ瀬君、ちょっと休憩しようか」

「あー……それもそうだな」

一ノ瀬君は橘さんを見て頷くと、教室に入った。

俺と橘さんも教室に入ると、一ノ瀬君は自分の席であろう窓際の机につく。

「橘さんの席はどこなの?」

橘さんが指差した机は真ん中にある机だったのでそこまで連れていき、座らせた。

「大丈夫?」

しゃがみこみ、橘さんの顔を覗き込む。

「だ、だ、大丈夫!」

暗示、解けてない?

「ほら、橘さん、刀を見て、暗示をかけて」

そう言って刀を取り、刃を見せる。

「怖くない、怖くない、怖くない」

「そう、怖くないよー」

「怖くない、怖くない、怖くない。私には山田さんが付いている。山田さんがいる、山田さんがいる、山田さんがいる……山田さん、山田さん、山田さん……」

俺が怖いんだけど……

ヤンデレか俺を恨んでいる人にしか見えない。

しかも、武器を所持。

俺は立ち上がると、教壇まで行き、2人を見る。

「なんか懐かしいなー。学生の頃を思い出す」

20年近く前のことだ。

「先生にしか見えないぞ」

「そうだな。生徒には見えん」

あれ?

なんか橘さんがいつの間にか復活しているんだけど?

「青春を思い出しても良いじゃないか。こういうことでもないと学校に来ることなんてないし」

「まあ、そうだわなー」

「また連れてきてやろうか? ふっ……」

あのー……橘さんの様子が明らかにおかしいんですけど?

「……やっと話せるにゃ。山田、巧妙に魔力を隠しているが、奥の部屋に悪魔がいるにゃ」

肩に登ってきたミリアムがこっそりと教えてくれる。

まあ、ミリアムから話を聞くために教壇に立ったのだ。

「この階の奥にある部屋は何?」

ミリアムから悪魔の居場所を聞いた俺は2人に確認することにした。

「奥? 多目的ホールかな?」

「そうだな。あの何に使うのかわからない部屋だろう。行きたいのか?」

多目的ホール、か。

「そこに何かがいる気がする」

そう言うと、だらけていた一ノ瀬君が姿勢を正し、橘さんが立ち上がって、多目的ホールがあるであろう方向をじーっと見る。

「本当か? 何も感じないんだが」

一ノ瀬君が聞いてきた。

「俺も魔力を感じているわけではないよ。勘みたいなもの」

「へー……キョウカみたいなものか? キョウカ、どうだ?」

一ノ瀬君が今度は橘さんに確認する。

「ふーん……」

橘さんはゆっくりと振り向き、俺をじーっと見てきた。

「どうしたの? というかさ、もう怖くないの?」

「かなり強い暗示を使ったから怖くなくなった。ただし、山田さんが見てくれないと解けるのでどこかには行かないで」

俺の名前を連呼してたからか……

「それでどう? いる?」

「確かに何かいる気がするな。言われて気付いた」

「まあ、橘さんはいっぱいいっぱいだったからね」

それどころじゃなかっただろう。

「それだけかな? ふふっ、山田さん、前職は何?」

キョウカが不敵に笑いながら聞いてくる。

「サラリーマンだけど?」

「家族に退魔師はいる?」

なんかすごい聞いてくるな。

「爺さんが元協会の退魔師だよ。この前、亡くなったんだけどね。実はその際に桐ヶ谷さんがウチに来て、スカウトされたんだよ」

「桐ヶ谷……山田……なるほど」

橘さんがにやーっと笑う。

ちょっと怖い。

「本当にどうしたの?」

「いや、気にしなくていい。山田さんは何も気にしなくていい。あなたはただ選べばいい」

選ぶ?

「何を?」

「それはもちろんわた――」

「キョウカ」

一ノ瀬君が橘さんの言葉を遮った。

「何かな? 一ノ瀬のユウセイ君?」

「仕事中だ。奥の多目的ホールに何かいるわけだろ?」

「それもそうだな。では、さっさと片付けてしまうか? まあ、問題はここまで魔力を隠せる悪魔は雑魚じゃないことだね」

「そうだな。少なく見積もってもDかCか……」

DとCがどれくらいかわからんな。

「山田さん、どうするかはあなたが決めてくれ。この情報を持って帰るか、このまま行くか。私はあなたに従う」

「まあ、リーダーは山田さんだしな。それでいいんじゃないか?」

橘さんは笑みを浮かべながら俺をじーっと見ている。

一ノ瀬君は興味なさそうに耳をほじっている。

さて、どうするか?