軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第035話 苦手なものは苦手

夜に学校の調査をすることになった俺達は一ノ瀬君のバイトが終わるのを待つことにした。

正直、時間が空くのなら一度帰ればよかったなと思ったが、橘さんが延々としゃべってくれるので別に苦ではなかった。

俺達はそのままファミレスで夕食を食べ、8時にバイトが終わるらしい一ノ瀬君を待つ。

すると、制服姿の一ノ瀬君がやってきた。

「待ってもらって悪いな」

一ノ瀬君がそう言って、橘さんの隣に座る。

「お疲れー」

橘さんがねぎらいながら横にずれた。

「お疲れ様。今から行ってもいいけど、何か食べるかい?」

そう言ってメニューを渡すと、一ノ瀬君が受け取ってメニューを眺め始めた。

「いつもすみません。めっちゃ腹減ったわ」

まあ、高校生はねー。

「好きなものを頼んでいいよ」

「あざっす。ステーキにしよ」

即決の一ノ瀬君はやっぱり肉を頼むことにしたらしく、店員さんを呼ぶ。

そして、すぐに届いたのでステーキを食べだした。

「橘さんはバイトとかしないの?」

「あー……私はバイト禁止です。お小遣いですね」

「そうなんだ。家の方針?」

「いえ、成績が……」

あっ……

「キョウカ、バカだもんな。頭の良さそうな雰囲気は出すけど、戦い方も脳筋そのもの」

一ノ瀬君がステーキを食べながら笑う。

「ちょっと成績がいいからって……」

橘さんが拗ねるが、ちょっとわからないでもない。

この子って美人だし、かわいいんだけど、あの人斬り人格はちょっと獣じみたところがある。

「もう少し、考えた方が良いぞ」

「私は本能に従うの。それで上手くいく」

明日、後悔するくせに……

何となくメニューを取り、デザートのコーナーを開いた。

「おー……誘惑しおる……」

橘さんが恨めしそうに見てくる。

「好きなものを頼んでいいよ。俺、君達のおかげで褒賞金をもらっているし」

そう言って橘さんにメニューを渡した。

「悪魔めー……」

橘さんはそう言いながら呼び出しボタンを押す。

「あれ?」

橘さんが首を傾げていると、店員さんがやってきた。

「プリンアラモードください……あれれ?」

橘さんは終始、首を傾げながら頼んだプリンアラモードを食べていく。

「おかしいなー……美味しいなー……」

本当に本能に従ってるな。

俺はがっついて肉を食べる一ノ瀬君と首を傾げながら笑顔でプリンを食べる橘さんの2人を眺めながらコーヒーを飲んだ。

そして、2人が食べ終わると、ファミレスを出て、学校に向かう。

学校に着くと、辺りは暗く、学校も灯りがついていないため、不気味だ。

「昼だと普通なんだけどなー……」

橘さんが校舎を見上げながらポツリとつぶやく。

「なんか怖いね」

「ですよねー」

多分、俺と橘さんの心は一致している。

「俺は気にならない。小学生の時に小学校のトイレで悪魔退治をした時に慣れた。というか、あれ以上はない」

一ノ瀬君、苦労してるなー……

それ、泣くやつじゃん。

「まあ、とりあえず、入ってみようか」

俺達は校門を抜けると、歩いて、校舎まで向かった。

そして、校舎の前まで来ると、真っ黒な校舎を見上げる。

「夜は怖いなー」

「ですよねー……山田さんは慣れてないでしょうし、一層、怖いでしょうね。手を繋ぎます?」

怖いのは自分だろうに……

「いや、捕まるからいい」

「気にしますねー。捕まりませんよ。ユウセイ君、手を繋いであげようか?」

俺にフラれた橘さんは一ノ瀬君を見た。

「いや、なんでだよ。手を握ったら動けないだろ。悪魔がいるかもしれないってのに」

「悪魔より幽霊の方が怖くない?」

「お前、それでも退魔師かよ……」

かわいそうな橘さん。

「橘さん、悪魔がいるかもしれないし、人斬りキョウカちゃんにでもなりなよ」

「キャッチーですねー。魔法少女みたいです」

そうか?

「良いように言うな、お前……人斬りというワードにキャッチーさはないぞ。まあ、良くない意味で印象的だけど」

一ノ瀬君も同じことを思ったらしい。

「まあ、キャッチーさはともかく、あれなら恐怖心も薄れるでしょ」

「よ、よーし!」

橘さんは刀袋から刀を取り出すと、鞘から抜き、刃をじっと見始めた。

「一ノ瀬君、鍵は?」

橘さんが暗示に入ったので一ノ瀬君に確認する。

「正門を開けてもらっている。山田さん、魔力は感じるか?」

「全然」

「俺も感じない。やはり憑りつくタイプか?」

一ノ瀬君が考え込み始めた。

「……山田、魔力は感じないが、何かいるぞ」

ミリアムがこそっと教えてくれる。

「何かいるな……」

今度は人斬りキョウカちゃんとなった橘さんがポツリとつぶやいた。

「何かって? 悪魔か?」

一ノ瀬君が眼光鋭い橘さんに聞く。

「多分な。上手く隠しているようだが、私にはわかる」

すごいな、この子。

「……いや、こいつが感知しているのは私のことにゃ。この女、すごいのかすごくないのかわからないにゃ」

すごいんだよ、多分……

「まあ、入ってみよう」

「そうだな……」

俺が促すと、橘さんが校舎を見上げる。

「どうした、キョウカ?」

「どうかしたの?」

橘さんの様子が変だ。

「ふっ……怖いものは怖いな……山田さん、やっぱり手を繋ごう」

そんな人斬りみたいな目をして、怖いんかい……

あと、何故、かっこつける?