軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第037話 上級悪魔

「一つ聞いてもいいかな?」

「何かな?」

「何だ?」

2人はまったく姿勢も態度も変わらない。

「俺が行かないと言ったら帰るの?」

「もちろんだよ。あなたがリーダーだ。そして、私達はそれを認めている。だから当然、その決定に従う」

「まあ、そうだな」

2人は当然のように頷く。

そこに嘘は見えない。

「でも、君ら、一度、帰ってもまた来るでしょ?」

多分、そうだ。

「へー……」

一ノ瀬君が感心する。

「よくわかるね?」

橘さんは笑みを浮かべたままだ。

「まあ、そんな気がするだけ。リーダーの決定に従うんじゃないの?」

「従うとも。だからチームとしては動かない。後は個人の話だね。騙すような形になるのは承知しているし、悪いとも思う。でも、私の家もユウセイ君の家もメンツというものがあることを理解してほしい。危ないから引き返して他の人に任せますというのはちょっとね……桐ヶ谷さんに何を聞いているかは知らないけど、協会と私達の家はあまり良い関係ではないんだよ」

やっぱり不仲か。

それにメンツ……

歴史ある家と新興の協会では当然、考え方も違うだろう。

「じゃあ、選択肢はないじゃないか」

「いや、私はあなたがそれでも行くなと言うならそれにも従うよ。ユウセイ君は行くだろうけどね」

「なんで橘さんは行かないの?」

「あなたがそう言うからだよ」

橘さんはまたしてもにやーっと笑う。

「意味がちょっと……」

「まあ、わからなくてもいい。でも、そうなるってことだよ。それで? どうするの? 私はどっちでも構わない。ユウセイ君もだろう」

「まあなー」

答えは決まっている。

「一ノ瀬君一人に任せるわけにはいかないでしょ」

「かーっこいい。さすがはリーダー」

「あー、言ってみたい……やっぱり俺がリーダーをやるべきだった」

なんか恥ずかしい。

「やるなら3人が揃ってる時でしょ」

「そうだね。うん、そうだ」

「じゃあ、行くか」

2人が自席から立ち上がった。

そして、教室を出ると、奥の多目的ホールに向かう。

「橘さん、大丈夫?」

前を普通に歩いている橘さんに声をかけた。

「ああ、もう大丈夫だよ。かなり強い暗示をかけたからね。多分、解けたら気絶すると思うけど」

「大丈夫なの、それ?」

「怖いよりマシ。実際、私は中学校の修学旅行で行った遊園地のおばけ屋敷で気絶したことがあるからね」

えー……

「あれは笑った」

一ノ瀬君がははっと笑う。

「まあ、怖いからね。そういうのも青春だよ」

精一杯、フォローする。

「青春か? 青春はもうちょっと甘い方がいいな。本当にそう思うよ……」

橘さんが立ち止まって多目的ホールの扉を見る。

「キョウカ、どうした?」

「どうしたの?」

橘さんはじーっと扉を見ていた。

「さて、運が良かったか、悪かったか……」

「運って?」

「運が良かったのはユウセイ君が死ななかったこと。悪かったのは私達全員が死ぬ可能性があること」

橘さんがそう言った瞬間、扉の向こうからとてつもない魔力を感じた。

「危険度Bか、Aか……私やユウセイ君では歯が立たないね。でも、まあ、向こうも私達に気付いている。逃がしてはくれないね。どうしよっか?」

橘さんはニヤニヤと笑ったままだ。

「なんで笑ってるの?」

「どうしようもないからだな。そういう時は笑う。やるか、やられるか。ただそれだけ」

かっこいいんだけど、さっきまでへっぴり腰で泣いていたのは君だよね?

「じゃあ、行くよ」

「まあ、そうなるね」

「逃げられないっぽいしな」

俺は前に出て、扉を開けた。

すると、真っ暗で何も見えなかったので灯りをつける。

多目的ホールはかなり広く、さっきの教室3部屋分の広さがある気がする。

そんな部屋の真ん中には真っ黒な服を着た男が座っていた。

「こんばんは」

男が俺達を見ながら挨拶をする。

「こんばんは。悪魔さんですか?」

「ええ。そうです。フィルマンと申します」

紳士的だな。

「ネームド、か」

「なんでまた……」

ネームド?

「名前があるとマズいの?」

「上級悪魔だよ」

「滅多にというか、普通は現れない」

そうなんだ……

つまりウチのミリアムさんもネームドなわけだ。

「なんで学校にいるんですか?」

再び、フィルマンとかいう悪魔に聞く。

「なんで? 私にもよくわかりません。誰かから呼ばれたと思ったんですけど、誰もいないんですよ」

呼ばれた?

「どういうことです?」

「さあ? まあ、わからないのでここで待機することにしました。上等なエサがいっぱいありましたので」

「エサ?」

「人間の子供です。私は人を食べる悪魔なんですよ」

悪い悪魔だ。

とんでもないな。

「それはやめてほしいです」

「私に死ねと? 食べないと死んじゃいますよ」

あー……まあ、そうなるな。

「いや、ちょっとマズいんですよね」

「もちろん承知しています。ですが、恨むならそんな私を呼んだ者を恨みなさい。では、食事をします」

フィルマンはそう言うと、立ち上がった。

すると、次の瞬間、橘さんと一ノ瀬君が左右から襲い掛かる。

「ほう……魔法使いですか。なるほど、なるほど」

フィルマンは感心してるだけで動こうとしない。

そして、そんなフィルマンに2人が攻撃をした。