軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

「お前を愛することはない」と言われたけれど、ラブラブを演じきってみせます

「あれー? 帰っちゃうの?」

揶揄(やゆ) するわけでもない、かるーい言葉。

けれど、妙に響く声に視線を向ける。

すると、きらきら金髪のお兄さんが筋肉のある男性を四人引き連れて立っていた。

「よっ! 久しぶり……でもないか。何かあったってわけね」

私のドレスを見て、お兄さんは眉をしかめる。

「悪いが、今日は帰らせてもらいます」

「あー、そうしてあげたいんだけど、ちょっと話を聞かせてほしいかな。原因はそっちのお嬢さんであってる?」

へらりと笑い、お兄さんは義妹に視線を向けた。

「アザリー・ラビソンと申しますわ! 是非、 私(わたくし) のことはアザリーとお呼びくださいませ」

「んー、勝手に話すおバカちゃんの名前を覚える気はないんだ。ごめんね? で、原因はあなたかな?」

笑っているのに、妙に迫力のある雰囲気に、ハンカチを握りしめたまま旦那様の前に出る。

「カリウス、あちらの方は?」

「ワイバール第二王子殿下だ」

「…………え? 王子殿下……ですか?」

「そうだ。俺の直属の上司でもある」

何と! 超お偉いさんじゃないか。

「だから、俺の前に出なくていい。あと、危険を感じる時ほど、頼むから下がっていてくれ」

「それは、無理ですね。今回は安全だと理解したので下がります」

大人しく旦那様の横に戻れば、不満そうな顔を向けられる。

「頼むから、守られる側だと理解してくれ」

「カリウスの方こそ、ナビレート家の当主として一番守られなければならない立場なのだと覚えておいてください」

「お前なぁ……」

「お前じゃありません」

旦那様は大きなため息をつくと、私の手を握る。

「なら、横に並ぶか。手を繋げば、どっちが前にもなりにくいだろ」

「たしかに……。それはありかもしれませんね」

「だろ?」

でも、何でだろ。何かが違う気がしなくもない。

「…………君は本当にカリウスか?」

「何を言ってるんですか? しょっちゅう仕事を押し付けられているカリウス・ナビレートですよ」

第二王子の言葉に、旦那様は淡々と返す。

「カリウスは、第二王子殿下と仲がよろしいのですね」

「仲がいいと言うか、腐れ縁というか、微妙なところだ」

へぇ……。心を開いてるんだな。

「相変わらず失礼だね。ま、いいや。そっちの令嬢と母親を別室に案内して。カリウスと奥方も話を聞かせてくれるよね?」

第二王子はそう言うと、旦那様の返事も待たずに歩き始めた。

「悪い。すぐに帰れなそうだけど、大丈夫か? コレッティーナだけでも先に──」

「大丈夫ですよ。カリウスと一緒に参ります」

「分かった。……目、赤くなってるな。痛いか?」

「いえ、少し熱いくらいです。カリウスは心配性ですね」

笑って見せれば、旦那様も安心したように小さく笑う。

「心配くらいさせてくれ」

相変わらずのお人好しっぷりだ。

よし、さっき仕事を押し付けられてるって言ってたし、チャンスがあれば第二王子に抗議しとこうっと!

***

連れてこられたお部屋は、何かもうめちゃくちゃ高級そうだった。

ナビレート伯爵家にもお高いものがあるけど、旦那様の趣味なのか、必要最低限だ。

でも、このお部屋は主張してこないのに、高いぞと素人目でも分かるものが、当たり前のようにたくさん並んでいる。

「さて、災難だったね。必要なら着替えを用意するけど、そのドレスと似たものは難しいんだ。どうする?」

第二王子が私に聞いてくる。

目上の人には話しかけられるまで声をかけてはいけないって言われてたけど、これは話してもいいん……だよね?

チラリと旦那様を見れば、頷いてくれる。

「お心遣い、感謝申し上げます。大変ありがたいお言葉ではございますが、締め付けが苦手なので……」

ん? このあとは何て言えばいいんだ?

「えっと、お断り申し上げつかりまつる?」

「ぶふっ……」

隣から吹き出す音がして見れば、旦那様が震えている。

「カリウス?」

「いや……悪い…………」

そう言いながらも笑い続けている。

……これはしばらく治まらないやつだな。

「第二王子殿下、大変申し訳ございません。どうやらカリウスは笑いの国へと旅立った模様です。五分前後で帰国しますので、少々お待ちいただけませんでしょうか?」

「あ、うん。それはいいんだけど、二人は本当に仲がいいんだね」

呆気に取られたように言われ、当然! と口角が上がる。

「ラブラブですので!」

「コレッティーナ!?」

「笑いは治まったようですね。おかえりなさいませ」

「ただいま。って、そうじゃなくて!」

「そうじゃなくて?」

旦那様は顔を真っ赤にして、口ごもる。

「それは人前で言うことじゃないだろ」

「…………? あっ! そうですよね。ごめんなさい」

笑いの国へと旅立ったっていう例えが嫌だったのか。

そうだよね。直属の上司の前だもんね。

「配慮が足らず、申し訳ありません」

「絶対に分かってないだろ」

「分かっていますよ?」

旦那様のお心は繊細ってことだよね。

もう人前で笑いの国の話はしないから、安心して。

「さて、仲が良いのは十分にわかったけど、さっきのあれは何だったのかな? 遠目では一方的に被害を受けていたように見えたけど」

「一方的に被害を受けていたんだ。駄目だと言われても、潰すぞ」

「別にいいけど、奥方の実家でしょ? そんなことして大丈夫なの?」

大して興味なさそうに第二王子は言う。

「あの、発言をしてもよろしいでしょうか」

「うん、もちろんいいよ。というか、カリウスの奥方だし、許可なくドンドン話しかけてくれていいよ」

「ありがとう存じます。生家であるラビソン家でございますが、ご許可をいただきましたので、さっそく潰しにかからせていただきたい所存で──」

「待て。俺がやる」

うん? 俺がやる!?

「生家は私の獲物です。あげません。何より、私の方がガッツリ潰せます! 証拠だって、たくさんあるんですから!!」