軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

伊勢松坂屋本店で山菜取りの催しの様子を聞いたが、暇すぎて子供にも聞こうとなるwww蜂蜜饅頭と麦茶とお駄賃渡して感想聞く。参加前の楽しそう感が足らないから絵と概要がいるなと気づく

一方伊勢松坂屋本店。

山菜取りの催しが終わって数日後、博之はその報告を聞いていた。

「で、この前の山菜取りやけど、あれどうやった?」

そう聞くと、運営に回っていた古参の一人が、少し笑いながら答えた。

「結構、ほのぼのした感じでしたよ。最初は城下の子どもら、だいぶ嫌そうでしたけどね」

「まあ、そらそうやろな。郊外まで歩け言われたら、俺でも嫌や」

「でも、山菜を取って、昼に天ぷらにして食べる頃には、だいぶ顔つきが変わってました。

ご飯がどこから来るか、少しは分かったみたいです」

「ふんふん。運営自体が良かったなら、それはええな」

博之は麦茶を飲みながら頷いた。

山菜取り。

城下の子どもと郊外の子どもを混ぜ、山へ入り、食べられる草を教わり、

それを伊勢松坂屋の料理人が天ぷらにする。

思いつきで出した催しだったが、どうやら悪くはなかったらしい。

ただ、博之は少し考え込んだ。

「でも、実際に子どもらがどう思ったか、聞いてみたいな」

「子どもにですか」

「そうや。大人は大人の目で『よかった』言うやろ。けど、子どもは子どもで、面倒やったとか、

歩くのしんどかったとか、もっとこうしたらええとか、あるかもしれん」

ヨイチが筆を持った。

「感想を聞く会を開く、ということですか」

「うん。子どもと親を十組ぐらい呼ぼうか。五組ずつ二回に分けてもええ。小一時間ぐらいでええやろ」

「何を出しますか」

「はちみつ饅頭とお茶やな。あと、お駄賃で一人五十文」

その場にいた者たちが、少し驚いた。

「感想を言うだけで五十文ですか」

「そうや。子どもの声は大事やぞ」

お花が少し呆れた顔をした。

「旦那様、また変なことを」

「変ちゃうやろ。催しを続けるなら、客の声を聞かなあかん。子ども向けの催しなら、

子どもの声も聞かなあかん」

「まあ、それはそうですけど」

そうして、寺の前と伊勢松坂屋の店先に、簡単な貼り紙が出された。

――山菜取りの会に参加した子どもと親御さんへ。

――感想を聞かせてください。

――はちみつ饅頭とお茶を出します。

――お駄賃五十文。

翌日とその次の日、五組ずつ親子が集まった。

最初に来た母親は、恐縮しきりだった。

「ほんまにええんですか。感想言うだけで五十文もいただいて」

「ええんです。むしろこっちが聞きたいんです」

博之は笑って言った。

「わし、今めっちゃ暇なんで」

「暇ではありません。安静です」

横からお花が訂正する。

「まあ、安静で暇なんです」

子どもたちは、はちみつ饅頭とお茶を前にして、すでに機嫌がよかった。

「これ食べてええん?」

「ええで。ただ、その代わりちゃんと話聞かせてな」

「うん」

博之は、できるだけ柔らかく聞いた。

「山菜取り、どうやった?」

城下の男の子が、饅頭を食べながら答える。

「勉強するよりは楽しかった」

「それは褒めてるんか?」

「褒めてる」

周りが笑った。

「最初はどうやった?」

「最初はめっちゃ嫌やった。郊外まで歩くん、だるいし」

「やっぱりな」

「でも、向こうの子と喋ったら面白かった。これ食える、これ食えへんって教えてくれて。

なんかすごかった」

別の子が続けた。

「草なんか全部一緒やと思ってたけど、食えるやつと食えへんやつあるんやなって分かった」

「それは大事やな。全部食ったらあかんぞ」

「分かってるわ」

母親が慌てて言った。

「分かってへんから怖いんです」

また笑いが起きた。

女の子は、少し恥ずかしそうに言った。

「山菜の天ぷら、揚げたてでめっちゃおいしかった」

「山菜、嫌いやなかった?」

「いつもの野菜は嫌やけど、あれはおいしかった」

「取ったやつやから?」

「うん。自分で取ったから、食べなあかんかなって思った」

博之は頷いた。

「それはええな」

別の親が言った。

「うちの子、普段は野菜を残すんです。でも、あの日は山菜を食べました。あれは驚きました」

「自分で取ると、少し違うんでしょうな」

「そうみたいです」

博之はさらに聞いた。

「またやりたいか?」

子どもたちは、顔を見合わせた。

「まあ、やってもええ」

「行くまでが面倒やけど、行ったら楽しい」

「天ぷら食えるなら行く」

「郊外の子とまた喋りたい」

「山菜だけやなくて、魚の揚げたやつも食べたい」

ヨイチがさらさらと書き留める。

博之は腕を組んだ。

「なるほどな。内容自体は悪くない。ただ、最初に行く気にならんのが問題やな」

「そうですね」

「要は、山菜取りに行くぞ、だけやと、だるいんやな」

子どもが素直に頷いた。

「うん。何するかよう分からんし」

「山に行って草取るって言われても、楽しそうじゃない」

「歩くのしんどそう」

「寺子屋よりましやけど、最初は嫌」

運営側の者たちが少し焦った。

「こらこら、旦那様の前でそんな」

博之は手を振った。

「ええんや、ええんや。そういうのが聞きたいんや」

そして、少し考えた。

「つまり、楽しそう感が足らんのやな」

「楽しそう感?」

「そうや。何をするか分からん。行ったら何が食えるか分からん。誰に会えるか分からん。

だから面倒に見える」

女の子が言った。

「絵があったらええかも」

「絵?」

「山で取ってる絵とか、天ぷら食べてる絵とか」

男の子も続ける。

「揚げたて山菜食べられます、って書いたらええ」

「郊外の子が教えてくれるって書いたら、ちょっと面白そう」

「あと、帰りに饅頭くれるとか」

「それは毎回は無理や」

博之は笑った。

「でも、なるほどな。楽しそうな絵と、何が食えるかと、誰と何をするか。そこを書かなあかんのやな」

ヨイチが帳面に大きく書いた。

――催しは、内容より先に「楽しそう」が必要。

――絵をつける。

――食べられるものを書く。

――誰と何をするかを書く。

――歩く面倒を上回る楽しみを見せる。

博之は感心したように頷いた。

「子どもに聞くもんやな」

母親の一人が、少し笑った。

「子どもは正直ですから」

「ほんまやな。大人やと、気を使って『良かったです』で終わるからな」

子どもが饅頭を食べ終え、茶を飲みながら言った。

「次は、最初から天ぷら食えるって言ってくれたら行く」

「それは大事やな」

「あと、何が食えるか先に知りたい」

「それも大事や」

「あと、歩くの短くして」

「それは山の場所による」

お花が小さく笑った。

「旦那様、次の貼り紙は絵付きですね」

「そうやな。山菜の絵、天ぷらの絵、子どもが笑ってる絵。あとは『揚げたてを食べよう』やな」

「だいぶ催しらしくなりますね」

「飯もそうやけど、誘い方も料理みたいなもんやな。出し方を間違えたら、食う前に逃げられる」

ヨイチがまた筆を走らせる。

博之は、子どもたちを見ながら言った。

「今日はありがとうな。おかげで次、もっと面白くできそうや」

「また饅頭くれる?」

「感想をちゃんと言うならな」

「じゃあ来る」

その単純さに、座敷が笑いに包まれた。

こうして、山菜取りの感想会は終わった。

得られたものは、予想以上に多かった。

山菜取り自体は成功。

揚げたての天ぷらは強い。

郊外の子どもと城下の子どもが混ざる意味もある。

ただし、最初の誘い方が弱い。

楽しそうな絵、食べられるもの、誰と何をするかを見せる必要がある。

博之は、満足げに言った。

「催しは、始まる前から始まっとるんやな」

お花が頷いた。

「珍しくまともな結論です」

「珍しくは余計や」

だが、その顔は楽しそうだった。

伊勢松坂屋の催しは、また一つ、子どもたちの本音によって磨かれていくことになった。