軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

年末暇だなー。初詣に男女で一緒に行くには年末に出会わないと。そうだ市を開いて買付隊の商品解放して隣でお好み焼き縁談をすればいいんだwww

年末の支度が進む中、博之は畳の上でごろごろしながら、ふと思いついたように言った。

「年末は、あれやな」

ヨイチが嫌な予感を覚えて、筆を止めた。

「旦那様。今度は何ですか」

「初詣や」

「初詣?」

「若い子らがな、正月に二人で初詣に行くためには、年末のうちに出会いを作っておかなあかんやろ」

お花が、すぐに眉をひそめた。

「旦那様、また変なことを考えてますね」

「今回は仕掛けを打とうと思ってる」

「仕掛けという言葉がもう嫌です」

「聞け聞け。買い付け隊が買ってきてるものを、縁日みたいな形で寺社に並べるねん」

ヨイチが少し目を細める。

「物販ですか」

「そう。お好み焼きの縁談の場、あれを半分にする。二部制やな。一方ではお好み焼きとお茶と

はちみつ饅頭。もう一方では、買い付け隊が持ってきたものを並べる」

「信楽焼、伊勢の小物、奈良の香、墨、筆、紙あたりですか」

「そうそう。それに、ちょっとした木綿、包み紙、かわいい小皿、女衆が好きそうな小物も置く。

年末に一回、正月の縁ができるようにやるんや」

お花は呆れつつも、少し考え込んだ。

「つまり、縁談会と市を合わせるんですね」

「そうや。別に縁談だけにせんでもええ。家族で来てもええし、若い衆同士で来てもええ。

お好み焼きを食べて、物を見て、話す場を作る」

「また全拠点ですか」

「全拠点や」

ヨイチがため息をついた。

「旦那様、年末にまた仕事を増やしましたね」

「楽しいやろ」

「楽しいのは旦那様だけです」

「いやいや、これ絶対おもろいで」

博之は、急に起き上がった。

「まず来た人にはお茶とはちみつ饅頭を出す。そこで少ししゃべる。次にお好み焼きを選んで焼く。

女衆が“ご縁に伊勢の潮風を”って青のりを振る。ここまではいつもの流れや」

「はい」

「その後、後ろの市に回る。そこで伊勢の小物を見ながら、“これ可愛いですね”とか、

“信楽焼、ええですね”とか話ができる」

お花が静かに言った。

「旦那様はそこに行かないでください」

「俺は縁談の方に行く」

「やめてください。縁が逃げます」

「聞けって」

「聞いても逃げます」

博之は構わず続けた。

「奈良の墨や筆を見て、“今度一緒に写経に行きましょうよ”とかあるやろ」

ヨイチが顔をしかめた。

「旦那様、気持ち悪いです」

「なんでや。ええやんけ。写経デートやぞ」

「言い方が悪いです」

「あと、小物を見てる時に、手がさっと触れ合う。“すいません”って言う。

そこから縁が始まることもあるやろ」

お花が真顔で言った。

「旦那様。本当にやめてください」

「でも見たいやん」

「その発想が最悪です」

「最悪ちゃう。縁を見守るんや」

「覗き見です」

ヨイチが淡々と言った。

「旦那様は、当日は裏方です。表には出ません。絶対に」

「なんでや」

「縁が逃げるからです」

「もう決まり文句みたいに言うな」

お花は、少し呆れながらも、企画そのものは否定しなかった。

「ただ、企画としては悪くありません。お好み焼きだけより、物を見る時間がある方が

会話は生まれます。信楽焼や伊勢小物、奈良の香や筆は話題になりますし、買い付け隊の品を

町の人に開放する意味もあります」

「やろ」

「ただし、いやらしくしないことです」

「そこが難しい」

「“縁談会です、さあ話しなさい”ではなく、“年末の市です。お好み焼きもあります。

よければ交流してください”くらいが良いです」

ヨイチが帳面を開いた。

「二部制にしましょう。午前と午後。各回、お茶とはちみつ饅頭、お好み焼き、市の自由見物。

縁談希望者には目印を用意。家族参加も可。物販は買い付け隊の商品を中心に、各拠点の特色を出す」

「ええな」

「売上の一部は寺社へ寄進。残りは仕入れと炊き出し費用へ。これなら、年末の炊き出し方針とも

つながります」

「さすがヨイチ。すぐ帳簿にする」

「しないと壊れます」

お花も続けた。

「女衆には、あくまで品よく案内させましょう。ご縁を煽りすぎると下品になります」

「俺の台詞は?」

「ありません」

「一つくらい」

「ありません」

博之は不満そうに寝転がった。

「俺は暇なんや。なんか楽しいことが起こらへんかなって思ってるだけや」

「本音が出ましたね」

「だって、店は増えたし、金も増えたし、でも俺自身はごろごろしてるだけやん。若い子らが、

なんかええ感じになって、正月に二人で初詣行ったりしたら、楽しいやんけ」

お花は少し笑った。

「その気持ちは、まあ分からなくもないです」

「やろ」

「でも旦那様が前に出ると、全部台無しになります」

「そこまで言う?」

「言います」

ヨイチは手紙の文案を読み上げた。

「年の瀬にあたり、各拠点にて小さき市を開くこと。買い付け隊の品を町の人々にも見せ、

寺社に人を呼び、お好み焼き、茶、甘味を添え、自然な交流の場とすること。縁談を望む者も、

家族連れも、旅人も拒まず、にぎわいを作ること。ただし、下品に縁を煽らず、寺社と町の

和を乱さぬこと」

「ええやん」

「最後に、“旦那様は表に出さぬこと”と書き足しましょうか」

「書くな」

お花が笑った。

「でも各拠点には口頭で伝えます」

「伝えるな」

「伝えます」

博之は畳の上で大きくため息をついた。

「まあええわ。年末やし、みんながちょっと楽しくなって、飯食って、物見て、誰かとしゃべって、

正月にもう一回会えたら、それでええ」

「それは良い考えです」

「やろ」

「発想の根っこは良いです。ただ、旦那様の妄想が最悪です」

「また最悪って言われた」

広間に笑いが起きた。

こうして、伊勢松坂屋の年末には、炊き出しに加えて、各地で小さな市とお好み焼きの

交流会が開かれることになった。

信楽焼を見る者。

伊勢の小物を手に取る者。

奈良の筆や墨に驚く者。

お好み焼きを囲んで笑う者。

そして、正月にもう一度会う約束をする者。

博之はそれを想像して、にやにやした。

お花は、その顔を見て即座に言った。

「旦那様、当日は絶対に裏です」