作品タイトル不明
“ジュデッカ”②
天使が俺たちを見下ろしながら、空中を浮遊する。
と思いきや、いきなり翼を羽ばたかせて急降下してきた。
白いメイスが振るわれる。
「くっ!」
俺は剣で受けるが、決して少なくない量のHPが減少する。
さすがに最後の四天王ともなると、攻撃力もかなり高いようだ。
「今度は取り巻きいないんだねっ!」
テトが投剣を放った。
天使の翼や胴体に命中する。特に意に介した様子はないものの、HPは確実に減っていることだろう。
ただ、俺はわずかに眉をひそめた。
上空に戻っていく天使を見やりながら、テトへ声をかける。
「テト……もしかして、弱点部位の見当が付かないのか?」
「うん、さすがにわかんない」
天使から目を離さずに、テトが答える。
「どこかにはあると思うけど……狙いやすいところを狙うしかないよ」
「……それもそうだな」
無理もなかった。
なにせ、これまで聞いたことすらもない天使型のモンスターなのだ。
セラフィムが急降下してくる。今度の狙いはテト。
「っと!」
振り下ろされるメイスを、テトは短剣術の防御スキルで防いだ。
天使の真下に入るように、テトが大きく踏み込む。
そして、もっとも低い位置に来ていた足に向け、ナイフを振るった。
「っ! あーもう!」
だが天使が空宙に戻りかけていたために、刃先がかすっただけだった。
正しく当てられないと、どんな武器でも与えられるダメージは大幅に減ってしまう。
宙を飛んでいる相手の場合、ナイフのようなリーチの短い武器は不利なのだ。
俺は声をかける。
「難しそうか? テト」
「んー、タイミング合えばいけそうだから大丈夫!」
テトが、若干もどかしそうな声で答える。
「ダメでも投剣でダメージ稼ぐよ!」
「オーケー」
俺はわずかに笑って剣を構える。
それからの戦闘は、対飛行モンスターのセオリー通りに進んだ。
メイスによる急降下攻撃を俺とテトで受け、そのタイミングで反撃を行う。
テトもだんだん攻撃パターンに慣れてきたのか、投剣だけでなくメイン武器のナイフも当てられるようになってきた。
そろそろ攻撃パターンも変わりそうに思われてきた、その時。
「……ん?」
天使が空中で静止した。
その翼がぐっと広げられる。
俺はピンときて叫ぶ。
「ブレスが来るぞ!」
その言葉の直後――――翼から放たれた無数の羽根が、俺たちに襲いかかってきた。
とっさに“パリィ”を使う余裕がなく、剣を立てて受ける。
羽根だけあってか、それほどの衝撃はなかった。HPも予想より減っていない。
仲間のHPも確認する。テトはうまく防御できたのか微減。メリナが二割弱、ココルが一割ほど減っている。どうやら全員、攻撃範囲に入ってしまっていたようだ。しかしそこまでのダメージではない。
「天使らしいブレスですね」
ココルの 範囲治癒(エリアヒール) によって、全員のHPが上限まで回復する。
「でも、大したことなさそうでよかったです」
「だな」
天使が再び、急降下攻撃のモーションをとる。
俺はそれを見据えながら呟く。
「そろそろ、こちらも反撃していい頃合いか」
天使が接近とともにメイスを振るってくる。
俺はそれを、大きく跳んで避けた。そのまま距離を空ける。
本来ならば、反撃のために距離を詰めなければならないところだったが……、
「私の番ね」
次の瞬間、メリナの闇属性魔法が飛んだ。
黒い影の塊のような球体が、天使の胴体にもろにぶち当たる。
『~~――……!』
呪文にも似た不思議な言葉とともに、セラフィムが激しく 仰け反り(ノックバック) する。
「あら……かなり効いたみたいね」
メリナが意外そうに言う。
「ダメージが蓄積していたのかもしれないけど……もしかしたら属性耐性が低いのかしら」
「属性かー。どうしようかな」
テトが迷うように言う。
「一応属性付きの投げナイフもあるんだけど、威力がかなり低いんだよね」
「じゃあ、やっぱりメリナの魔法に頼る方がいいな」
「あっ、攻撃パターンが変わりそうですよ」
ココルが、上空の天使を指さして言った。
『――~―~……~――』
天使が翼を羽ばたかせ、その周囲に光の粒子が舞い散る。
言葉はまったくわからないが、どうやら怒っている様子だった。
「ん……? なんだ?」
直後、俺は眉をひそめた。
セラフィムの背後に――――光の輪のようなものが現れたのだ。
天使のような白ではなく、その光は黒みがかっている。
光輪は数度瞬いたかと思うと……突然強い光を放ってきた。
「うわっ!」
「な、なんですかっ?」
全員でうろたえる。
光はすぐに止んだ。衝撃などはなく、ダメージを受けた感覚もない。本当に、ただの光だったようだ。
それでも念のためにHPを確認し……俺は再び眉をひそめる。
「なんだ? バフ……か?」
「ま、また変なバフ付いてますよ!」
ココルが焦ったように声を上げた。
黒いマークの右下に、“+”の意匠が描かれたアイコン。それが、全員に付いている。
選択し、名称を確認する。
――――《闇属性付与》。
「さっきのブレス、また来るわよ!」
メリナの声に、俺ははっとして天使を見上げる。
セラフィムは再び、六枚の翼を広げていた。
羽根の嵐が襲いかかってくる。ココルとメリナが範囲外に退避する中、俺は今度こそ“パリィ”による防御を試みる。
成功した……はずだった。だが。
――――HPは、先ほどよりも大きく削れていた。
「なっ……!」
驚いている暇もなく、セラフィムが急降下してくる。
新たな攻撃パターンである、メイスの三連撃。初見だったが、かろうじてすべて受けられた。しかし。
HPを見れば、ぞっとするほどの量が減っている。
「アルヴィン! やばいよ!」
セラフィムの急襲を大きく避けながら、テトが叫ぶ。
「これ弱点属性突かれてる!」
その言葉に、俺はようやく気づいた。
先ほどかけられたバフ、《闇属性付与》の意味を。
「そうか……」
セラフィムは全身が白い。これは明らかに、光属性を示している。
闇と光は、互いが互いの弱点属性だ。そして弱点属性を突いた場合、そのダメージは二倍になるというルールがある。
つまり……、
「俺たちは今、闇属性という扱いになっていて……」
「あいつの攻撃力は、実質さっきまでの倍ってこと!!」
セラフィムが地を這うように飛び、メイスによる広範囲の薙ぎ払い攻撃を行う。
俺もテトも防御スキルで防いだが、少なくない量の貫通ダメージを喰らってしまう。
一応このくらいなら、なんとか持ちこたえられなくもない。
だが被ダメージが大幅に増えたせいで、ココルが 治癒(ヒール) を使う回数も確実に増えてしまうだろう。
ヘイト管理が崩壊しないか、微妙なところだ。 回復職(ヒーラー) にターゲットが移ってしまうような事態は避けなければならないが、しかしこのままでは……、
「大丈夫です!」
その時。
俺たちのステータス画面に、新たなアイコンが点灯した。
――――《光耐性》。
「ダメージ半分とまではいきませんけど、それで少しはマシになります!」
「っ! 属性耐性バフか! 助かった、ココル!」
属性耐性バフは、各属性のダメージを三割ほど減じるバフだ。
これならかなり戦いやすくなる。
メイスの振り下ろしを“パリィ”で受ける。
貫通ダメージは、やはり先ほどよりもずっと小さい。
セラフィムが滞空したまま、羽根ブレスのモーションをとった。
だが次の瞬間。
「そうやって止まってくれると、魔法が当てやすいのよねっ」
闇属性魔法の黒弾が飛び、セラフィムに直撃した。
前回と同じように、激しく 仰け反り(ノックバック) する。
メリナが息を吐いて言う。
「ブレスは魔法で抑えられそうね。これならじきに最後の攻撃パターンに…………えっ」
メリナが、急に言葉を止めた。
天使に異変が起こっていたのだ。
その白い体が、黒く染まっていく。
服もメイスも、肌も髪も、翼に至るまで。
俺は呆然と呟く。
「属性が、変わった……?」
直後、背後に再びあの光輪が出現する。
その色は……本体とは対照的な、輝くような純白だった。
それを見て、俺は攻撃パターンの意図を悟る。
「まずい……っ!」
光輪から、強烈な光が放たれる。
それが止むやいなや、俺はすぐにステータスを確認した。
先ほど付与された黒いアイコンは、消えていた。代わりに、黒が白になっただけの同じ意匠のアイコンが、新たに追加されている。
名称を見るまでもない。
これは、《光属性付与》のバフだ。
天使が黒い翼を広げる。
「っ! ブレスが来るぞ!」
言い切る前に、メリナの魔法が飛んでいた。先ほどと同じ、闇属性の黒弾。
それは黒い天使の正面にぶち当たるが……今度はモーションが止まることはない。
「あっ……」
メリナが、失敗を悟ったかのように声を上げた。
闇は、闇に対する耐性属性だ。ダメージは半分になる。いくらメリナのレベルと【闇属性強化】スキルがあったとしても、 仰け反り(ノックバック) を引けるほどじゃない。
そして――――、
「っ、ダメだ! ココル!」
「は、はい!」
直後、黒い羽根の嵐が襲いかかってきた。
“パリィ”を使ったものの、やはり大幅にHPが削れてしまう。
闇と光は、互いが互いの弱点属性だ。
光属性を加えられた俺たちに、闇属性となったセラフィムの攻撃は二倍となる。
属性が変わった今、《光耐性》バフももはや意味がない。
魔法を撃ったせいで退避が間に合わなかったメリナに至っては、今の一撃で残り六割となってしまっていた。
だが次の瞬間、それが九割近くにまで回復する。
「と、とりあえずこれで大丈夫だと思います!」
ココルの 治癒(ヒール) だった。
大ダメージのブレスを喰らってしまう前提で、退避しながら呪文を唱えていたのだ。
「ごめんなさい、属性が変わった可能性は考えていたのだけど……」
メリナが悔しそうに言う。
「とっさに呪文を切り替えられなかった。私のミスね……」
「っていうかこいつ、属性変わるとかっ」
セラフィムの急降下攻撃を避けながら、テトが言う。
「天使のくせに、闇属性になるなよなー!」
俺はようやく、この攻撃パターンの本質に思い至った。
光輪からの光によって、敵を自分の弱点属性に変える。
そして自分自身は、おそらく敵から受けた攻撃の、耐性属性へと変わる。
それを繰り返すのだ。
まだ仮説の域を出ない。単に相手の攻撃と同じ属性になるか、あるいは光と闇が時間経過で切り替わるだけなのかもしれないが……一番面倒なパターンを想定しておいた方がいいだろう。
「ア、アルヴィンさん……」
「どうするっ、アルヴィン!」
俺はわずかに思案した後、ココルに問いかける。
「ココル、二つの属性耐性バフは維持できるか?」
「っ、大丈夫です! それくらいの余裕はあります!」
「よし」
俺は決断する。
「メリナ、これまでどおり弱点属性を突き続けてくれ」
「わ、わかったわ」
「ココルは、《闇耐性》と《光耐性》バフの維持を頼む」
「は、はい!」
二人がうなずく。
これでセラフィムは今後、光と闇が交互に切り替わり続けることになるだろう。
メリナとココルにいくらか負担がかかることになるが、二人なら十分対応できるはずだ。
その後、戦闘はおおむね想定通りに進んだ。
セラフィムは、やはり属性攻撃を受けるたびに自身の属性を変えるようで、魔法を喰らうごとに光から闇、闇から光に変化する。
その変化にメリナはきっちり対応し、弱点属性となる魔法を当てていった。
ココルもさすがの上手さで、既存のバフや 治癒(ヒール) をこなしながら、《光耐性》《闇耐性》両方のバフを維持し続ける。
そして、何度目かの 仰け反り(ノックバック) を引けた時。
『――~―……――~!』
空中でセラフィムが、またいらだたしげに何事かを喋った。
光の粒子を撒き散らしながら翼を羽ばたかせるその姿を見て、俺は呟く。
「……攻撃パターンが変わるな」
これまでの四天王と同じだとすれば、この三つ目が最後の攻撃パターンだ。
その時、天使に異変が起こる。
属性変更による、色の変化。
だがその色は、白でも黒でもなく――――赤だった。
俺は目を見開く。
「なっ……」
光輪が出現する。
その色は案の定、氷属性を示す水色。
「まずい……っ!」
光が放たれる。
新たに付与されたのは、水色のアイコン。おそらく、《氷属性付与》のバフだ。
直後、火属性の赤い羽根の嵐が襲いかかってきた。
メリナとココルは退避できたものの、防御スキルを使ったはずの俺とテトは、弱点属性を突かれたせいで少なくない貫通ダメージを受けてしまう。
「こ、今度は火属性ですかっ!?」
「っ……仕方ないわね」
メリナが険しい表情で言う。
「光属性魔法で、一度属性を戻すわ。そうすれば……」
言いかけたその時、再び天使の姿に変化が起こった。
全身が、今度は鮮やかな黄色へと変わり始める。
メリナが目を見開いた。
「こ、今度は雷属性!? しかもまだ攻撃してないのに……っ」
案の定、現れた光輪は水属性を示す青色だった。
新たに《水属性付与》がぶち込まれた俺たちに、雷属性の黄色い羽根の嵐が襲いかかる。
「っ、なんだよこれーっ! ずるいでしょ!」
HPを大きく減らしながら、ブレスを凌いだテトが叫ぶ。
「全属性ランダムで変化するのっ? 属性耐性バフ使えないじゃん!」
その通りだった。
いくらココルでも、すべての属性耐性バフは維持できない。
幸い、セラフィムの属性変化はそこで止まった。
黄色く染まったメイスを掲げ、再び急降下攻撃を仕掛けてくる。
「と、とりあえず《雷耐性》を……」
「待って、ココル!」
俺へメイスを振り下ろした天使に、光弾がぶち当たる。
ただし、ずいぶんと小さい。
久しぶりに目にしたが、それは光属性の中でも最下級の魔法だった。
おそらく、大したダメージは与えられなかっただろう。
だが、セラフィムはその攻撃にもきっちり対応してきた。
全身が白に変化していく。
「おおっ」
続く横薙ぎを“パリィ”で受ける。
貫通ダメージが少ない。本体が光属性に変化したために、《光耐性》バフが効いているのだ。
「助かった、メリナ!」
「どういたしまして! でも、あんまり期待しないでね!」
「わかってる!」
メリナにそう叫び返す。
詠唱が早い下級魔法で、セラフィムを常に狙った属性に変える。
一見有効そうだが、実はそうでもない。
まず、MP消費が格段に増える。ヘイトも稼ぎやすい。属性変更の方を優先して高威力魔法を控えるようになってしまえば、長期戦になってこちらが苦しくなる。
魔法は、そういう小手先の工夫には使いにくいのだ。
だが、攻略の方針としては合っている気がする。
何か、魔法の代わりになるものは……、
「――――っ!」
その時、俺は思い出した。
「テト!!」
「えっ、な、何!?」
天使を注視していたテトが、驚いたように返事をする。
「属性付きの投げナイフで一番残数があるのはなんだっ?」
「な、なんでもそこそこあるけど……あ、そういうこと?」
俺の意図に気づいたらしいテトが、にやりと笑って言う。
「光がおすすめかな。今ちょうど耐性バフ付いてるし、そこから弱点突いても闇に変わるだけだからね」
「光があるなら助かるな。メリナ!」
「……わかったわ。私は闇属性だけ唱えてればいいわね」
同じく理解したらしいメリナがうなずく。
ココルだけが混乱したように目を白黒させる。
「え、何? なんですかっ?」
「ココルは最低限、《光耐性》バフだけは維持してくれ。来るぞっ!」
宙に浮かぶセラフィムの色が、また変わり始める。
今度は青色、水属性だ。
当然、光輪の色は弱点属性となる火属性の赤。
それを眺めながら、テトが迷うように呟く。
「ええと、バフをもらってからの方がいいのかな……」
光が放たれ、《火属性付与》のアイコンが点灯した。
火属性となった俺たちに向け、青い翼が広げられる。
「今っ!」
その時、テトが一本の白い投剣を放った。
それは青い天使の膝のあたりに命中する。
一瞬の後――――天使の色が白に変わった。
それとほぼ同時に、白い羽根の嵐が放たれる。
「っと!」
光属性となった羽根を、“パリィ”で防ぐ。
《光耐性》バフのおかげで、貫通ダメージはごくわずかだ。今の俺たちは火属性なので、そもそも弱点属性すら突かれていない。
天使の色が再び変化し始める。次は風属性を示す緑。
だが直後、テトが放った白い投剣によって、再びセラフィムは光属性に変えられてしまう。
そして。
「今度はさせないわよ」
メリナの闇属性魔法が、白い天使に直撃した。
弱点属性を突かれた天使に激しい 仰け反り(ノックバック) が発生し、羽根ブレスが中断される。
魔法に反応し闇属性へと変わっていく天使を見上げ、俺は笑みを浮かべた。
「よし、いいぞ。これでいい」
俺の考えた攻略法は、魔法の代わりに属性付きの投げナイフによって、天使の属性をコントロールするというものだった。
セラフィムは、属性攻撃を受けることで自身の属性を変化させる。
魔法は連発しにくい。だが、テトの投剣ならば別だ。残数がある限りMPを消費せずに使え、ヘイトを稼いでしまっても前衛のテトならば対応しやすい。
タイミングを見て光属性の投げナイフを放ち、天使の属性を常に光に固定する。
そうするだけで、二番目の攻撃パターンよりもずっと簡単になる。
もう弱点属性を突かれることはない。属性耐性バフの恩恵にもあずかれるうえに、セラフィムへは闇属性魔法で弱点属性を突き放題だ。
「思ったんだけどさぁ」
滞空し、全身を土属性の茶色へと変化させ始めた天使を見上げながら、テトが言う。
「こうするとどうなるんだろっ!」
セラフィムに向け投剣を放つ。
だが、その色は黒だった。
疑問に思う間もなく、闇属性の投剣を受けたセラフィムが、耐性である闇属性に変化し始める。
直後、光輪が出現した。その色は無論、闇属性が弱点を突ける、光属性を示す白。
俺は気づく。
「……あ」
「あー、そういうこと……」
「テトさん、えげつないこと考えますね……」
皆が呆れ気味に言っている間に、光輪が光を放った。
付与されたバフは――――無論、《光属性付与》だ。
「そんで、こうっ!」
テトが今度は、白の投剣を投擲する。
喰らったセラフィムは、当然光属性の白に変わる。
直後に、白の羽根ブレスが放たれるが……もうわざわざ“パリィ”を使うまでもなかった。
剣を立てて受ける。それだけで、ダメージはほぼゼロになる。
光に対し、同じ光は耐性属性だ。ダメージは半分になる。
しかも、《光耐性》バフまで付いているとなればもう……。
「やったー! 計算どおり!」
喜ぶテトを見て、俺は思わず苦笑した。
「まったく、よくやるよ……。相手にわざわざ耐性になる属性のバフをかけさせるなんて」
そこからの戦闘は、一方的なものとなってしまった。
《光属性付与》と《光耐性》バフのおかげで、セラフィムから受けるダメージはほぼ三分の一だ。もはや防御を気にする必要もない。
最低限のヘイト管理だけしつつ、滅茶苦茶に攻撃を叩き込んでいく。
そして。
「あっ、ごめんなさい! ちょっとずれたわ」
メリナの闇属性魔法が、本体の中心から外れ、片側に並ぶ三枚の翼に命中する。
『――~!!』
それだけで翼へのダメージが閾値に達したのか、天使がバランスを崩して地に落ちた。
石床の上でもがく白い巨体を、俺は見据える。
翼へのダメージでは属性変更が発動しないのか、天使は光属性のままだ。
「いや……お手柄だ」
地を蹴った。
AGI(敏捷) の限界まで加速し、剣を引き絞る。
そして――――起き上がりかけた天使の首元に、渾身の“強撃”を叩き込んだ。
『―~……~~―……』
セラフィムが何事かを呻く。
六枚の翼が、ゆっくりと散り始めた。
俺はおもむろに剣を引き抜き、一つ息を吐いた。
おそらく、もう終わりだろう。
『――――どこまで足掻くか、人間よ……よもや、この我を倒すとは……』
部屋に、再びあの声が響き渡る。
『魔王は、この先で待つ。行け、人間よ……そして、地獄の底で知るがいい』
終わりの演出が続く。
最後の四天王の台詞は、これまでとは少しだけ様子が違っていた。
『もはや希望など、どこにも残されていないことを』
そうして――――白い天使は、壮大なエフェクトとともに砕け散った。