軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

高級豚の証言

「さて……後は俺達が波の大元を鎮めるか」

お義父さんは気の抜けた様子で波の亀裂の方を見つめながら呟きますぞ。

「なんでしょう。とても大変な事が起こっているのはわかるのですが、どうしたらいいのか掴みきれません」

「あらー……そうね。どうしたら良いのかしら?」

「波を即座に鎮めれば良いだけですぞ」

「第一にやる事はな」

と言う所で怠け豚が手を上げて鳴きますぞ。

怠け豚、今まで何をやっていたんですぞ!

役に立たないなら俺の魔法で焼き豚に変えて……なんですかな?

その手には何やら映像水晶らしき物がありますぞ。

「ブー……」

「ん? どうした?」

「ブブブブ、ブブブブヒ」

「ふむ。確かにそうだな」

「ブヒヒヒブブブ、ブブブ……ブブブヒ」

おい、怠け豚。

お義父さんに何を言っているんですかな?

やがて、怠け豚の言葉にお義父さんが不快そうに眉を寄せながら頷きました。

「そうだな。早めに手を打つべきなのは間違いない。だが……そうなると元康から聞いた話から大幅にずれる事になるぞ」

「ブブブ」

「……そりゃそうか。じゃあ波が終わったら早めに行動しなきゃな」

うー……怠け豚の所為で会話に入れませんぞ。

俺はお姉さんの方に顔を向けます。

するとお優しいお姉さんは答えてくれる様ですぞ。

さすがお義父さんの相方にして、フィーロたんのお姉さん!

感謝の言葉しかありませんぞ!

「エレナさんは勇者殺しを行ったタクトを討伐したのは良いけど、このままでは後方で生き残った勢力が事態を把握して、私達にどんな復讐をするかわかった物ではないと言いました。それにナオフミ様は頷きました」

なるほど、怠け豚にしてはよく考えましたな。

確かに、タクトの残党と言うのは面倒事を起こしますぞ。

だから逃がさず処分したはずですが。

「既に取り巻きは俺が皆殺しにしましたが?」

「アレだけなら良いが、きっと他にもいるだろ」

おお、お義父さんが怠け豚と話をしながら俺の方を注意しますぞ。

そうですな……以前のループを鑑みるに確実にいるでしょうな。

「早めに手を打つべきだと映像水晶を私達に見せながら言ったんです。証拠は既に撮影済みだから、後はタクトの母国にして世界一の大国であるフォーブレイの王様にこの映像を編集した物を見せて、タクト派閥の者達を一掃すべきだと。そこでナオフミ様は同意しつつ槍の勇者の述べた未来の話と変わる事を懸念したんですよ」

ふむ……怠け豚はこう言った姑息な立ち周りは神がかってますな。

そもそもいつの間に映像水晶で撮影していたのですかな?

実に不思議ですぞ。

まあ、お義父さんの配下としてしっかりと活躍するのでしたら見逃してやっても良いでしょう。

「最後にエレナさんは、槍の勇者から聞いた未来の話を、今更でしょ? と溜息交じりに答えました」

なんですかな? 俺の言う事が間違っているとでも言うのですかな?

いつも横になっている怠け者の豚な分際でよくもまあそんな事が言えますな。

怠け豚を睨んでいるとお義父さんが遮りました。

「そう言う訳で波が終わったらフォーブレイって所に行くぞ。起こった出来事が多すぎるから上手く立ち回らないと俺達は世界中からお尋ね者になりかねない。ある事無い事でっち上げられる前に先手必勝でタクトの残した負の遺産を潰させてもらうとしよう」

「わかりました!」

「しかし……錬と樹が殺されているとなると、これから先の波がどうなる事やら……」

そこでお義父さんは辺りに漂う七星武器と剣と弓を見ておりますぞ。

「これ、どうしたらいいんだろうな?」

まあなる様になりますぞ。

きっと錬と樹も無念を晴らせて、天国で笑っていますぞ。

さて、では行きますかな?

「眷属器よ。この困難な状況に応じ、新たなる主に宿って力と成れ!」

なんて言った所で七星武器を初めとした武器達が空高く飛び上がり散って行きました。

「キャ!」

「な、なにー! やー!」

そこでお姉さんとフィーロたんにそれぞれ見覚えのある槌とツメが宿りました。

やはりフィーロたんにはそのツメが似合いますな。

残り二つ……鞭と投擲具らしき物は持ち手を見いだせないのかしばらく上空でゆらゆらと浮遊していましたが、飛んで行ってしまいました。

「ブー」

「ふむ……七星武器って話は元康から聞いていたからな。ラフタリア、フィーロ、これから先の戦いはより一層厳しくなるはずだ。お前等はどうやら選ばれたそうだから使いこなせるようになってくれ」

「は、はい……槌なんて使った事ないんですけど……」

「大丈夫、お姉さんが使い方を知ってるから教えてあげるわよ」

おお、さすがお姉さんのお姉さん。

戦闘技術に関してはプロですぞ。

「ごしゅじんさま、このツメを使いこなせたら槍の人から逃げられる?」

「……同じ系統の武器な訳だし、出来なくはないだろうな」

「じゃあフィーロがんばる!」

「応援しますぞ!」

「ぶー!」

フィーロたんが俺の応援に対して返事してくださいました!

ますますやる気が出ますな。

「さて、じゃあ波を鎮めるとしよう。ラフタリア、フィーロ、勇者としての初戦だな」

「えっと、今までに輪を掛けて事態に追いつけていません」

「それは俺もだから気にするな」

こんな感じで二度目の波は素早く終わらせる事が出来ました。

元々俺一人でも鎮められるような規模でしたからな。

まあ悠長に波に挑んで居たりしなかったので、ソウルイーターの後に出て来る奴の姿は見えませんでしたな。

「じゃあ早めに移動するか」

「その前に……確か近隣の村で物凄い武術の使い手でお義父さん達の師匠になった老婆が居たはずですぞ。病で苦しんでいるはずなので、これを使うと良いですぞ」

俺は槍からイグドラシル薬剤をお義父さんに手渡して過去のループ知識と照らし合わせて老婆の家の方を案内しますぞ。

村は波の被害を受ける直前、キール達やフィロリアル様達に未然に防がれて無事だった様ですな。

お義父さんは波での被害者は居ないか? と心配する様子で村に訪問し、寝込んでいる老婆を発見して薬を処方しました。

時期が僅かにずれてはおりましたが存命は出来た様子ですな。

老婆の息子は感謝の言葉をお義父さんにしておりました。

そんなお義父さんは若干不愉快そうに俺の方を見ております。

話を終えて俺の方に来たお義父さんが老婆の家を指差しますぞ。

「薬を飲ますだけなら元康でも良かったんじゃないか?」

「それは神鳥の聖人の正体がお義父さんであると暗に村人達に伝える意味もありますからな」

「くそ……なんか元康に担ぎ上げられるのが不快だ」

「気持ちはわかりますが、何だかんだ言って一ヵ月半の間、色々としてくださったのですから許して上げましょうよ」

「別にもう恨んじゃいないが……どうにも不愉快でな」

ちなみにフィーロたんはツメを如何に使いこなすのかに夢中のご様子ですぞ。

殲滅後も爪で空を切っていましたからな。

これからの生活に彩りが生まれますぞ。

「……ブー」

「わかっている。じゃあ先手必勝。被害も少ないし、波も即座に終える事が出来た。一度みんなで帰ってからすぐに代表は出発するぞ」

「了解ですぞー!」

こうして俺達は二度目の波を終えてゼルトブルに皆を一度送り届けた後にフォーブレイへと向かったのですぞ。

フォーブレイに到着した俺達はその足で城の方に向かいました。

まあ、フォーブレイの方でもかなり現在の状況に困惑していた様ですな。

何せ、勇者が召喚されて活動している事を証明する教会の明かりが、突然複数消えてしまった訳ですからな。

しかも四聖勇者二人、七星勇者が四人も一度に消えたらそれこそ大騒ぎですぞ。

まあ、七星勇者の方は二つほど再点火したので混乱の規模も少しばかり少なめだったようですがな。

そんな中で突然の凱旋を果たしたのが俺達ですぞ。

城の前にポータルで出現し、俺は槍を、お義父さんは盾をかざしつつ門番にコンタクトを取り、その足で受付を済まして豚王への謁見を成功させました。

「フォーブレイ王のおなーりー。槍と盾の勇者、突然の来訪ではありますが、王も二人を歓迎いたすそうです」

「それで、此度は如何様で? 王は勇者たちの要件に非常に興味を持っているとの話である」

お義父さんには事前に豚王がどんな人物かを話をしておいたので落ち着いておられますな。

逆にお姉さんとフィーロたんは揃って豚王を見て眉を寄せました。

「ああ、その件を説明するにはコイツが便利だから話を聞いてくれ」

「ブブブブ、ブヒ」

「ブフフフ、ふむ……」

「お前にとって悪い話ではないはずだぞ? 聞くだけならタダだしな」

怠け豚がお義父さんの補佐をしているとばかりに自己紹介をした後、編集したらしき映像水晶を作動させ、タクトが調子の良い事を言いながら剣を掲げてスキルを放った瞬間や、その後の身勝手な言動等をかました姿を見せました。

しかも三勇教の教皇の姿と暴言も一緒に提出していますぞ。

本当……怠け豚は一体いつの間にこんな物を撮影していたのか不思議でなりませんな。

元より鞭の勇者であるタクトの反応が消え、同時刻に錬や樹の反応が消えた事に関して警戒していたフォーブレイの者達は、怠け豚の提示した物を半信半疑と言った様子で閲覧しておりました。

「王よ! このような戯言に耳を傾けてはいけません。それこそ彼らの方が本当に勇者なのか……」

そこにしゃしゃり出た来たのがタクト派閥らしき大臣等の連中ですな。

必死に俺達を指差して勇者を殺したのはコイツらだ! とか色々と難癖を付けておりましたが、豚王はその辺りの感性に敏感ですからな。

「ブフフフ……では嫌疑をかけられたタクト本人から話ができればいいのではないか? 四聖勇者達が虚言を申しているとな。まあ、本当にタクトが生きていればだが」

以前のループでフォーブレイにみんなで行った時と同じ様に、タクトの残党を内密に処理できると判断した豚王は俺達を擁護してくれました。

それから割とすぐに追跡調査という名目でタクトへの監査が開始されたのですぞ。

調べた結果、タクトの内情は完全に真黒だと明らかになりました。

ここでゼルトブルの闇ギルドや商人ギルドの証言も後押しになりましたな。

何でもお義父さんが幹部に昇進した際に起こった商人の陰惨な殺人事件の犯人がタクトである事が露見したそうですぞ。

ゼルトブルのコロシアムで名を伏して成り上がる事で、殺した商人と契約し、奴隷を譲渡される、なんて約束をしていたそうですな。

ですがその企みは俺に阻まれ、思い通りに成らなかった為、身勝手にも商人の所に乗り込んで商人殺しをして奴隷を奪ったのだとか。

お義父さんやゼルトブルの商人曰く、そんなに欲しかったのならば金で買えば良いだろうに……との事ですぞ。

まったくもってその通りですな。

タクトの資産的にも奴隷一人を買う位なら簡単だったはずですぞ。

実はタクトはかなりのケチらしいですぞ。

しかも勇者の権限で強引に奪うのは目立つから避けたとか……商人殺しは目立たないと思ったのですかな?

汚らしい豚を奪うと言うのも俺には理解できませんぞ。

お義父さんだったら稼ぎはそのまま別の投資に使いますぞ。

これもタクト如きとお義父さんの商才の差ですな。

ついでを言えば裏付けを取るかの様に、メルロマルクに停泊していた飛行船の船内から捕縛対象となっていた借金貴族の娘……豚が見つかったそうですぞ。

しかも樹の仲間であるストーカー豚が生け捕りにされて拷問されていたとか。

この借金貴族豚の借金をタクトは踏み倒したって事ですな。

コイツの証言によると、後に両親と一緒にタクトの領地で整形して名を変える算段だったとか。

その夢も儚く潰えてゼルトブルに逆戻りですな。

完全に自業自得ですぞ。

話が逸れましたな。

タクトによって生け捕りにされていたのがストーカー豚だったようですな。

まあ、ストーカー豚は豚の中でも高級な豚ですからなぁ。

過去の俺が注目する位には良かったので、タクトの目に止まっていたのでしょう。

どうやら樹を殺した際に捕縛し、誰が正しい勇者であるのかを教え込んで懐柔しようとしたそうですが、全く振り向く気配も無く、処分するか検討されていたんだとか?

どちらにしてもどうしようもない連中って事ですな。

ですが、こうして助け出されたストーカー豚は生き証人として、樹がタクトに殺された事を証言したのですぞ。

結果、タクトを擁護する派閥は片っ端から壊滅したのですぞ。

しかもいつの間にか話に色々と尾ヒレが付き、俺がメルロマルクで赤豚を殺したのもタクトの所為になっていました。

他にも樹が関わった隣国の革命のその後や錬が関わっていたドラゴンゾンビ騒動も、二人が事件再解決の為に駆けつけようとした所をタクトが妨害して殺した事になったそうですぞ。

自作自演を確信されるとは散々ですな。

人の心と噂とは恐ろしい、とお義父さんが呟いていたのが印象的ですぞ。

そうそう、ドラゴンゾンビはタクト一行が退治してしまった様ですぞ。

なのでライバルの回収は不可能でしたな。

ま、居ない者を期待してもしょうがないですぞ。

ドラゴンなど居なくても世界は救えますからな!

HAHAHA

この騒ぎに便乗してメルロマルクの女王は婚約者と共に帰還を果たし、クズを抑える事に成功しました。

噂の尾ヒレが付いた所為でクズは赤豚がタクトに殺されていたと聞いて意気消沈したそうですな。

ただ、それでもお義父さんの所為にする元気はあった様ですぞ。

話によると、連絡が取れない赤豚を探してギルドに干渉し、掲示板などで呼びかけていた所をタクトが駆け付けたそうで、国内での活動を許可させ、勇者同士での活動を推進、来るべき日にお義父さん抹殺を企んでいたのだとか。

そんな意気消沈のクズに、赤豚をよく知る女王がこう言ったそうですぞ。

『槍の勇者様に飽きて逃亡したマルティが学生時代の恋人だったタクトの所へ行き、利用されたのですよ』

と、学生時代の赤豚の卑猥な証拠をクズに見せたそうですな。

なんにしても三勇教の教皇がタクトと結託したお陰ですぞ。

まあ既に信仰はお義父さんのお陰でガタガタだったのも理由ですがな。

トドメを刺したのはタクトの様な気もしますがな。

せめてもの言い逃れとして教皇がすべてやった事と配下の者は言い訳したらしいですが。

一応、槍の勇者である俺に関しての信仰が語られているとかなんとか?

まあ、そこはどうでもいいですな。