軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

条件変化

錬と樹が居らず、別の集団が居ますな。

全員が武装して俺達に向かって構えていますぞ。

「ほらな。やっぱ俺の思った通りだ。コイツ等はみんなバカなんだ」

タクトが異様に煽ってきますな。

しかし、俺は今まで何度もタクトを仕留めているので、スマートな感情しか湧いてきません。

具体的には、のこのこと出て来たからには殺してやりましょう、位ですかな。

「波が起これば召喚されるってのに、バカみたいに隠れていたんだからな」

おやおや、俺達が誤って波に現れたと思っている様ですな。

実に愚か。

波で困っている人がいるから参加したに過ぎないですぞ。

何より錬と樹が死ぬとループしてしまいますからな。

「本当、俺の敵はクズとバカばっかで困るぜ」

などとタクトは本気で思っているみたいですな。

まあ、敵というのは総じてバカに見える物ですぞ。

真の愛に気付く前の愚かな俺はお義父さんを心底バカだと思っていましたからな。

勇者の癖に奴隷を買うわ、Lvも上げずに行商なんてするわ、無駄な事ばかりしている様に見えました。

それは錬や樹を見る時も同じで、効率や合理性の欠片も無いと内心バカにしていた位ですぞ。

きっとタクトの中では己の考えた罠にハマったバカな連中に映っているのでしょう。

俺も中学高校の時、敵対した相手を知略で倒した時は、こんな簡単な事にハマるなんてバカも極まっていますな、などと思ったものですぞ。

ですが今考えれば、それは結果論に過ぎません。

あの時、もしも俺が負けていれば、俺がバカだと言う事になりますからな。

極論すれば、勝者は頭が良く、敗者はバカなのですぞ。

負けた者はどれだけ知略を尽くそうと、頭の良いフリをしたバカだと罵られるだけですからな。

しかし、実際は違いますぞ。

生きとし生ける全ての者が己の考え得る最善の手を模索し続けているのですぞ。

そこに失敗はあるかもしれません。

間違いはあるかもしれません。

ですが、不幸になる為に行動する者は居ないのですぞ。

俺もお義父さんもフィーロたんもお姉さんも、です。

それはこの場に居ない錬と樹もですぞ。

ですが、豚やタクト、転生者は別ですぞ。

こやつ等は不幸になる為に戦っているのですからな。

……ところで何故、錬と樹が居ないのですかな?

「おかしいですな? 錬や樹はどこですかな?」

調子に乗っているタクトなど今はどうでも良いですぞ。

周囲をいくら見渡しても錬と樹が居ませんな。

ほとんどのループでここに錬と樹は居たはずですが……これはどういう事なのですかな?

不穏な気配を察してお姉さん達は元より、村の者達も臨戦態勢を維持しております。

救助優先ではあったはずでしたが話は変わりましたな。

お義父さんが盾を前に構えながら俺の方に視線を向けますぞ。

「元康、錬や樹とここで会えるんじゃなかったのか?」

「そのはずですが……」

一体どうしたらこんな所でタクトに遭遇するのですかな?

まあ、女王が帰還して三勇教を潰し、お義父さんの無実の証明と、お姉さんの村の開拓に着手した頃に処分する予定でしたが、こんな所にいるなんて初めての事ですぞ。

タクトは何やら機嫌が良さそうですな。

こちらを気色の悪い目で見てきますぞ。

相変わらず反吐が出る顔付きですな。

「ああ、お前等、俺が誰かわからないって顔だな」

「それはありませんな。お前はお呼びじゃないですぞ」

俺の言葉にタクトはムッとした表情をしておりますが、知らない訳ではありませんぞ。

絶対に仕留めるリストのベスト三に入る下衆ですからな。

一位は赤豚、二位がタクト、三位がドラゴンですぞ。

タクトは何やらキザっぽく気色の悪い笑みを浮かべていますな。

即座に蒸発させてやりますかな?

などと思っているとお義父さんが制止するので少しだけ我慢ですぞ。

「で? 元康。この出待ち野郎は何なんだ?」

お義父さんが俺に聞いてきましたな。

しかしその言葉に反応したのか、タクトが喋り出しました。

「お初にお目にかかる。このまま名も知らない奴に殺されるのは可哀想だし、周りの女達にも誰が真の勇者であるか、その名を知るべきだろう」

「いや、お前には聞いてないんだが……」

お義父さんのお言葉通り、聞く価値は全く無いですな。

問答無用で蒸発させても良いと俺の愛が囁いていますぞ。

「俺の名前はタクト=アルサホルン=フォブレイ。お前等調子に乗って好き勝手している異世界人共に引導を渡す、七星勇者にして救世の英雄だ!」

タクトはそう言いながらツメ――ではなく、剣を振り下ろしました。

「シュタルクファアファル!」

バキっと俺目掛けて、足元が割れて何やら噴出してきますな。

「元康!」

「はぁ!」

裂け目から何かが飛び出して来そうだったので、槍を叩きつけてからエアストジャベリンでぶち壊してやりますぞ。

随分と脆い攻撃ですな。

タクトの攻撃は簡単に崩れ落ちました。

「何!? ……ふん。思ったよりもよえースキルみたいだな」

「いきなり何しやがる!」

お義父さんが殺気を放ちながらタクトを睨み付けますぞ。

不意打ちとは……相変わらず無駄な戦略ですな。

俺を狙ったのはお義父さんが攻撃できない盾の勇者と侮ったからでしょうな。

「挨拶代わりに決まってるだろ?」

どこまで厚顔無恥なのですかな?

いい加減、即殺しても良い頃合いだと思いますが、お義父さんが止めるので我慢しております。

これでフィーロたんに怪我でもさせようものならお義父さんの制止を振り切って惨たらしく殺してやる所ですぞ。

「おい、いい加減にしないと俺の狂犬が死んだ方がマシの事を仕出かすぞ?」

お義父さんが更に殺意の籠ったゾクゾクする目でタクトを睨み付けますぞ。

最近、お義父さんが狂犬という言葉をよく使いますが、キールに期待し過ぎなのではないですかな?

キールが出るまでもなく、俺が瞬殺してやりますぞ?

「は……まあ良い。そうでなくちゃ面白くねえしな」

「お前の面白さなんかどうでも良い。だが……その剣とスキルは……」

お義父さんがタクトの持つ剣を凝視していると、タクトは新しい玩具が手に入った子供の様な表情で俺達を上から目線で言いますぞ。

「ああ、わからねえのか?」

察しろとばかりにタクトは誇らしげに剣を見せつけて来ました。

すかさず、そこで三勇教の教皇がコピー武器を持ちながら誇らしげにしており、タクトに言いました。

「素晴らしい事です。私達の信仰を冒涜する偽者の勇者から聖なる武器を取り返し、扱う事の出来る……まさに神の子がこの様な場所にいらっしゃるのですから」

「いろんな武器を持ってるけど、やっぱ武器って言ったら剣だよな。まさに俺の為にある様な武器だぜ。良いか、お前等にはしっかりとその事を教えてやるよ」

なんですかな?

俺もなんとなくですが嫌な予感がヒシヒシと感じますぞ。

そうですな……今まで当たり前だった事が変わった感覚と言う奴ですな。

「世界を救える俺は七星武器も聖武器も奪う……いや、違うな。俺の手に収まる為に仮の持ち主を選定しているに過ぎない。だから正しい持ち主と遭遇すると武器はその人物……俺に手に収まるんだ」

……こやつは何を言っているのですかな?

タクト風情が正しい持ち主?

お前の能力など精々盗賊の上位互換程度ですぞ。

面倒くさい転生者軍団を掃除する位しか価値がない癖に、無駄に偉そうですな。

「その言い回しから察するに……錬から奪ったと?」

「アレは剣の勇者ではありません。偽者が本物の聖武器を持っていただけです」

「あ? まさか剣の勇者だけだと思ってんのか?」

誇る様にタクトは剣を収めて弓を出現させますぞ。

まさか樹まで武器を奪われているのですかな?

「いやぁ、滑稽だったぜ。正しい持ち主の手に収まっただけだってのにアイツ等返せと喚きやがってさ。誰が正しい持ち主か身を持って教えてやったぜ」

「つまり殺したのか……錬と樹を」

タクトは否定せず誇らしげな顔付きでいますぞ。

……錬と樹が死んだ?

では何故ループしないのですかな?

「元康、奴の言葉が事実なら、条件が変化しているみたいだな」

お義父さんが小声で言いました。

条件の変化。

今回のループに入ったばかりの頃、お義父さんが懸念していた事ですぞ。

「死にたくなければさっさと武器を正しい持ち主の俺に寄こすんだな」

「ふざけた事を」

お義父さんが不愉快な口調で答えますぞ。

俺はいつでも戦えますぞ!

さっさとこの前口上を切りあげて即殺すべきですぞ。

ですが、まだお義父さんは許可しないとばかりに手で遮っております。

おそらくですが、タクトの口から情報を引き出す為でしょうな。

「さて、質問には答えてやった。少しでも長く生きたいなら素直に白状しろ」

「白状、ね。生憎と俺は錬や樹と違ってこの世界の情報には疎いんだがな」

「隠したって無駄だ! この国の王女、マルティをどこにやった!」

タクトはそう言って俺とお義父さんを指差しました。

……マルティ? どこかで聞いた覚えがありますが、誰でしたかな?

ああ、赤豚の事ですか。

「……」

などと考えているとお義父さんが無言で俺を見ました。

しょうがないですな。

「赤豚ですかな? そんな奴、既にこの世にいませんぞ。フハハハハハ!」

「な……てめぇ! ふざけた事言ってんじゃねえぞ!」

タクトが顔を真っ赤にして怒鳴り散らしました。

ふざけた事も何も、俺は事実を言っただけですが?

「冗談ではありませんぞ。アヤツは俺がこの世から消し去ってやりましたからな」

「ふざけるな! そんな事が許されると思ってんのか!」

「許される許されない、などという問題ではないですぞ。奴は害悪。奴の行動に比べれば錬や樹が行った悪さなど瑣末な事ですぞ」

俺の返答にタクトは大層腹を立てたのか、目付きを鋭くさせ、奥歯を噛み締めてから叫びました。

「みんな! 本当の情報を吐かせる為に弱らせるぞ!」

お? やる気ですかな?

こっちは早く仕留めたくてしょうがなかった所ですぞ。

「この世界は既に俺が攻略済みだ! お前等異世界人はお呼びじゃねえんだよ! 素直に武器を渡して情報を吐いて消えろってんだ!」

HAHAHA。

攻略済みとは……タクトは冗談が上手いですな。

そもそも異世界人も何も、お前も異世界人ではありませんか。

「撃てー!」

そう言って毎度おなじみ、馬鹿の一つ覚えであるライフルの一斉射撃を俺達目掛けてぶちかまそうとしてきましたな。

「流星盾Ⅹ! エアストシールドⅩ! セカンドシールドⅩ! お前等! 俺の後ろに隠れてろ!」

「はい!」

「何なんだよこれ!?」

「ブー」

フィーロたんを初め、お姉さん達がタクト達の攻撃に合わせてお義父さんの後ろに並びますぞ。

直後にタクトの一斉射撃が放たれましたな。

放たれた弾丸が渦を描いて飛んで行きますが軽い火花を出すだけでお義父さんの出した盾や結界に弾かれて行きますぞ。

「元康、お前も俺の後ろに――」

俺はその弾丸を見切って最小限の動きをして避けますぞ。

欠伸が出るほど遅すぎる攻撃ですな。

そして最後に、華麗な逆ブリッジで避けてやりました。

「……」

お義父さんが無表情で俺を眺めていますな。

「気持ち悪い!」

フィーロたんがタクトを見て吐き捨てました!

そうですな。確かにタクトは気色悪い存在ですぞ!

フィーロたんの精神の安定の為にも、いち早く処分すべきですな。

バッと元の体勢に戻った俺はお義父さんの許可をもらえるように顔を向けますぞ。

「な……Lv250はある俺の仲間達の一斉射撃を受けて、平然としているだと!?」

「馬鹿な……盾の悪魔とそれに与する偽者の槍の勇者がこのような力を所持していると?」

タクトを始めとして三勇教の教皇と豚共が驚きの声を上げてますな。

こんな豆鉄砲、当たったって痛くないですぞ。

「挨拶代わりのスキルを軽く弾いた元康を見ればわかりそうな物だがな」

そうですな。

タクトはどうやら新しいスキルを試し打ちして弱いと捨て置いたのが一目でわかりますぞ。

だから所詮タクトなのですな。

「さて、これで実力差は理解したか? じゃあ話の続きをしようじゃないか。なんでお前がこんな所にいるんだ? 場合によってはあのビッチな王女の本当の居場所を教えてやる。言わなかったら……わかってるよな?」

小声でお義父さんがどうしてタクトにこんな事を聞いたのかを教えてくれました。

もしもまたループする様な事があった場合、気を付けないといけないフラグかもしれないからだと仰ってました。

確かに、何故タクトがメルロマルクの波で現れるのか、知っていて損は無いですぞ。

「この卑怯者!」

「ハッ……なんとでも言うがいい。で? どうなんだ?」

「く……そんなの決まってんだろ! 冒険者ギルドにメルロマルクからの発行でマインに連絡を求むと出ていたからだ! だから俺達はマルティが何らかの事件に巻き込まれてると判断して、来てやったんじゃねえか!」

なんと! あの探し人情報がこんな所でタクトを招き寄せてしまうのですかな?

赤豚め……生きていたら生きていたで害悪を招き、死んだら死んだでこの様な災いを招くとは!

どこまで俺達の足を引っ張れば気が済むのですかな!

「ま、その過程で調子に乗ってる勇者共を制裁出来たのは大きな収穫だけどな」

調子に乗っているのはお前の方だと思いますぞ?

さて……そろそろ俺の我慢も限界ですぞ。

お義父さんもそれを察しているのか、制止する手を下げました。