軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新しいリソース

それにしてもこの短期間でよくこれだけ稼げたものですな。

村の者達の回収やフィロリアル様の追加など、出費もかなり多かったはず。

もちろん俺も狩りやコロシアムで貢献しましたが、それも微々たる物ですぞ。

考えてみればゼルトブルでこの様に稼ぐのは初めての事ですな。

ここはお義父さんに色々と助言をもらうのも良いかもしれません。

「さすがお義父さん。どうすればお義父さんの様に商売で成功出来るのですかな?」

最初の世界における俺の資金源の多くは狩りでした。

それも稼げる量は個人レベルなので、他にも行っていましたな。

フィロリアルレースなどは趣味と実益を兼ねたものですぞ。

「説明するのが面倒臭い。自分で考えろ」

「そこをなんとか! またループした際にお義父さん達に助言出来るかもしれませんぞ」

「チッ……」

お義父さんは不機嫌そうに舌打ちをすると助言を始めました。

「そうだな……理想的なのは敵を作らない事だ」

「敵? そんな奴、俺の槍でぶち殺せば良いのではないですかな?」

「……ラフタリア、もう切り上げて良いか?」

「一応、ループした際の私達の助けになるみたいですし……」

お義父さん達は酷く億劫な様子ですな。

その原因が俺なのはわかりますが、敵を作らない事、という意味がよくわからないですぞ。

「簡単に言うなら、場を荒らすな」

場を荒らすな、ですかな?

基本的に俺はお義父さん達のLvを上げる為に狩りで山や森などを荒らしまわって稼いでいますぞ。

ですが、この場合は商売的な物でしょうな。

商売で場というと市場などでしょうか。

俺が疑問符を浮かべているとお義父さんが続けました。

「相場より遥かに安く物を売ったりする行為だな。確かに速く売れるし、即金を得たい時は悪く無い手なんだが、常習するとそれが当然の金額になる。そうなると今までその商品を売っていた奴が困る」

なるほど。

ここまで言われれば俺でもわかりますぞ。

例えば俺が狩りで大量に物資を手に入れてきたとして、それを安値で売却し続ければ同じ商品を扱っていた者の稼ぎが減る事になるでしょう。

結果、商人達から恨まれる事になるという事ですな。

「ですが、俺の能力では狩りで手に入れた物を売る位しか商人との繋がりはありませんぞ?」

「なら、あまり売買されない物を重点的に売れば良い。お前なら出来るだろ」

おお、希少価値という奴ですな。

確かに俺なら強い魔物から希少な素材をゲットする事は容易ですぞ。

そういう素材を売却すれば敵を作らないで済みますな。

最初の世界や以前のループなどでお義父さんがやっていた行商はこういう仕組みがあったのですな!

お義父さんが行商していた頃、薬などが足りない場所に売りに行った事がありますが、あれはリソースを奪った訳ではなく、足りない分を補って稼いだ、という事でしょう。

これなら恨まれずに商売が出来ますぞ。

「……ハッ! そういえば最初の世界のお義父さんはフィーロたんやキールをアイドルとして売り出して稼いでいましたな!」

多種多様のグッズを大量に生産して大金を得ていました。

もちろん俺はフィーロたんグッズを収集していましたがな!

既存のグッズはもちろん、季節毎の限定商品を網羅していたのですぞ!

いつかフィーロたん記念館を建てようと思っていましたからな!

それはともかく、あれはこの世界でも珍しい事業だったはず。

最初から無い市場を荒らす事は出来ませんぞ。

つまりこれまで存在しなかったり、小さい市場を拡張していったという事ですな。

「アイドル事業か。競合相手が居ないなら悪い手じゃないが……ゼルトブルに隠れている俺達がそんな事をしたら、メルロマルクや三勇教に見つけてくださいって言っている様なものだろ」

くっ……どこまでも邪魔をする連中ですぞ。

フィーロたんの煌びやかな姿を見たかったのですが、その前にあやつ等を仕留める必要がある様ですな。

そもそもフィーロたんアイドル計画は世界が平和になった後の話ですぞ。

いつかまた見る日も来ると思って、今は我慢しておきましょう。

「で? これで満足か?」

俺は頭の中でお義父さんの助言をまとめますぞ。

既存のリソースを奪わず、新しいリソースを作れ、という事でしょう。

新しいリソースであれば、これまで稼いでいた者から奪う事は出来ません。

むしろ村の者達の様に、あぶれていた者達に仕事を宛がう事も出来るでしょうな。

「まあこの手は出世したいならの話だがな。ゼルトブルを見た所、敵を作って稼ぐ方法もある。だが、あっちは面倒だから俺達がする意味はないだろう」

「敵が居ても俺が倒しますぞ。だからもっと金を稼いでフィロリアル様を降臨させるのはどうですかな?」

「あのな……俺達は敵が多いんだぞ。国や宗教が敵なのに、その上商人連中まで敵に回してどうするんだ!」

う~ん、良い案だと思ったのですが、ダメみたいですぞ。

しかし、金銭に関してはお義父さんが一番だとよくわかりました。

「ところで元康、メルロマルクの波が大分近づいて来ているが、お前の記憶だと錬と樹で被害を最小限にして乗り越えられるか?」

お姉さんを見ながらお義父さんは俺に尋ねますぞ。

「強化方法の共有が出来ずに居ますからな、無理だと思いますぞ。現に最初の世界では俺を含めて錬も樹も揃って波から出てきた奴に負けました」

お義父さんがあの場に駆けつけなかったらどうなっていたのかと考えると、想像するのは難しくないでしょう。

間違いなく死んでいたでしょうな。

ゲーム感覚でいたツケですぞ。

「そうなると元康のループ条件ってのがそのまま継続していた場合、ループが発生しかねないか」

お義父さんが舌打ちをしました。

確かに錬と樹を助けに行くのは面倒ですぞ。

何よりメルロマルクの連中を助けるのは、今のお義父さんにとって苦痛でしょうな。

「元々参加する予定ではあったがな。そうなると、どうするべきか……」

既に登録だけはゼルトブルになっているので、現状のままではメルロマルクの波に参加出来ません。

まあ発生場所がわかっているので登録しておけば転移できますぞ。

ですが正確な時間にその場に行けないのをお義父さんは懸念しているのでしょう。

「俺が隠蔽状態でメルロマルクに行って登録してきますぞ!」

「……まあ、それが妥当な所か。じゃあ時期が近付いたら元康、しっかりと登録してくるんだぞ」

「お任せあれですぞ!」

「後は……どう転ぶかわからんがメルロマルクの女王が帰って来て、事が解決するのを待つだけか」

「今回ばかりは槍の勇者の言う通りになる事を祈るばかりですね」

「ああ……そうだな。さて、正直眠い。ひと眠りしてから活動を始めるとしよう」

こうして欠伸をしたお義父さんの言葉を聞いて、俺達はしっかりと休む事にしたのですぞ。

それから俺達は波に備えた強化をしっかりとして行きました。

お義父さんに俺の知る限りの武器の強化方法の伝授、気等の技術習得、更に魔法、果ては俺とお姉さんのお姉さんが主導で稽古を行い、村の者達の技術向上をしていきました。

もちろん、お義父さんが短い期間で稼いだ多大な金銭で村の者たちを継続して追跡調査の後に購入して行きましたな。

そして、余裕のある者はフィロリアル様と行商をしてルートの拡大を行ったのですぞ。

こうして……波への時間はあっという間に過ぎて行きました。

ああ、もちろんゼルトブルで発生した波に関しては既に解決してますぞ。

メルロマルクの波まで残り15分となっております。

お義父さん達は準備を整えて指示系統の確認を行っております。

手慣れた様子で分隊編制をしておりますな。

代表は俺ですぞ。

じゃないと波で上手く飛べませんからな。

そして指揮系統はお義父さんが関わっておられます。

ゼルトブルの傭兵などを雇ったりはしないのですな。

「これから起こる波はお前等からすると雪辱戦になる。だけど重要なのは波を鎮める事か? 波で出て来る魔物に復讐する事か?」

お義父さんは演説の様に村の者達に教えて行きますぞ。

「違う。一番大事な事はお前等の様に不幸な者を出さない様に戦う立ち回りだ。何もしてくれなかったメルロマルクの連中なんて守る必要があるのか? と思うかもしれないが、勘違いするな」

村の者達はお義父さんの言葉をしっかりと聞き届けておりますぞ。

さすがはお義父さんですな。大きなギルドの首脳陣であっただけの事はありますぞ。

ループはしておりますが世界を救った盾の勇者ですな!

「今回はお前等が被害を出さない様に守れるかの実戦を交えた練習だと思え。本当に守れる様になっているかを自身で確かめろ!」

「「「おー!」」」

「がんばるぜー! ワンワン!」

「キールくんががんばるならルナもがんばる」

士気高揚はバッチリですな。

お義父さんの作戦では、まずは村の者達の経験と言う意味で俺達が先行して波を鎮める作戦は取らないそうですぞ。

とは言っても悠長に構える訳でもなく、開始十五分位で俺達が波を鎮め、残った魔物の処理を村の者達に行わせ、人々を守るとの話ですな。

魔物や敵を倒して即時離脱では無く、俺達がしっかりと活躍した事を周りの者達に印象付けてメルロマルクの三勇教やクズを揺さぶる作戦なんだとか。

「ブー……」

「エレナさん、留守番したいとか言わないでください。貴方の母国なんですよ」

「ふ……怠け豚ですからな」

所詮豚は豚と言う事でしょう。

俺の挑発を怠け豚は僅かにこちらをチラッと見ただけで溜息を漏らしますぞ。

そんなやり取りをお義父さんが眉を寄せて見ております。

「そう言えばお義父さん、怠け豚の行商の成績はどうなのですかな?」

「ん? ああ、正直腹立たしいが確かに成績は良いな。腐っても商人の家の出って事だろう。稀に高額で転売出来る物を買い取ってきたりするし」

お義父さんは怠け豚を睨みますぞ。

やはり無駄に取り入るのが上手いですな。

役に立たなかったら殺処分出来るというのに……ですぞ。

「難点は交渉事が得意な奴がいると怠けて何もしないから成績が分かり辛い所だ。組ませる相手次第なのが面倒だな」

おお、お義父さんはどうやらしっかりと人員の成績を見ている様ですぞ。

「目立ちたくないとか、怠け者が成功する物語とか読んだ覚えがあるが、他人から見るとああ言う感じになるんだろうな。運用は出来なくはないが信用はあんまり出来ん」

出世するのは実益主義の所か、創作物語の中だけだとお義父さんは吐き捨てました。

怠け豚も本気で事に取り込んでいる訳では無いのが理由でしょうな。

それを本人が望んでいるというのがまた憎たらしいですぞ。

そんな怠け豚の事よりフィーロたんですな。

キョロキョロと辺りを見渡すとフィーロたんがフィロリアル様姿でローブを深々と被ってお姉さんとお姉さんのお姉さんの後ろで屈んでおられます。

波と戦うために精神集中しているのでしょう。

ストイックなフィーロたんの姿も愛おしいですぞ!

ビクっとフィーロたんが更に屈んで丸まっておられます。

「……発毛剤の調合をしないとなぁ」

お義父さんが突然、そんな事を呟き始めました。

一体どうしたのでしょうな?

「もしくはサッサと女王が帰還してくれないと限界も近いな」

これはお義父さんが世話をしている者達の事を仰っているのでしょう。

「大丈夫ですぞ! 時間が掛りそうだったらどこか山奥を開拓して村に致しましょう。俺達なら出来ますぞ」

「いや、そんな面倒な事はしたくない」

おや? お義父さんに断られてしまいました。

そんなこんなで波の発生時間が近づいてきましたな。

「3……2……1……ですぞ!」

俺の言葉を受けてお義父さん達は各々武器を握り締めて波に挑みますぞ。

パキンと言う音と共に、俺達は波の発生する現場に飛びました。

懐かしいですな。

思えば二度目の波にこうして飛ぶのは随分と久しぶりな気がしますぞ。

「ここは……元康の言う通りだったな」

お義父さんが辺りを見渡してからポツリとつぶやきました。

空は見覚えのある愚かな俺がワクワクしながら挑んだ二度目の波ですな。

さーて、錬と樹とは久しぶりの再会ですぞ。

そう思って錬や樹がいるはずの方角を見た瞬間。

「おやおや! 行方知れずだった盾の勇者と槍の勇者がやっとお出ましか!」

「「「ブブー!」」」

「ええ……そうですね。偽者の槍の勇者もいらっしゃるようですよ」

「なんですと!?」

本来、こんな所で出会った事の無い奴等が俺達の前に立ちはだかっておりますぞ。

そこに居たのは……錬や樹ではなく、何故かタクト一行と三勇教共、そして教皇が待ちかまえておりました。