軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

空間の幻覚

さて、フィロリアル様とライバルが引くそれぞれの馬車は進んで行きました。

しばらく進んだ所でお姉さんの友人は何やら一点を見つめて手を上げます。

「ストップ」

ピタリとフィロリアル様とライバルは進むのを止めました。

お姉さんの友人はイタチ姿で馬車から降りて少し進んだ先を指差しますぞ。

「ここに境界があります」

小さく魔法を唱えて何やら手を伸ばすとボヨンと波紋が見えましたぞ。

「うわ……何これ?」

「領域系の魔法なの。こんな巧妙に張られているなんてフィロリアルの聖域よりも密度が高いと思うなの」

「行った事あるの?」

「竜帝の記憶にあるなの。それよりも密度が高いなの。これに気付くには相当の幻術の資質が無いと難しい、複合領域みたいなの」

「かと言って気付けても進めないんじゃ問題があるんじゃ……」

「任せるなの。場所さえわかれば綻びを広げる事も出来るなの」

今度はライバルがお姉さんの友人の指差す先に両手を向けて意識を集中させましたぞ。

そして魔法の詠唱に入りました。

これは聞き覚えのあるフレーズですぞ。

「ドラゴンサンクチュアリなの!」

バァっとライバルが縄張りを主張する魔法を唱えますぞ。

するとバチッとお姉さんの友人が指差した先がスパークいたしました。

「ぐぬぬぬ……」

力を込めるライバルに抗うかのように、俺達の先にある波紋が揺れ動きます。

「かなりの高密度の魔法構築なの、破るのは的確に急所を突く必要があるなの」

「えっと……」

そこでお姉さんが手を上げて、指で何か追って行きますぞ。

ライバルはそれを見て、合わせる様に手を動かします。

するとスパークする場所が移動して行きますぞ。

「……凄いなの、変動して逃げようとする空間の隙間を的確に突いて広げられるなの」

「ラフタリアちゃんすごーい!」

お姉さんの友人が言いますぞ。

おお、今度はお姉さんですな。

陽炎などの幻覚は友人の方が上ですが、お姉さんは空間を歪めている幻覚を探知できると。

これは期待できますな。

「リファナちゃんが指摘してから見え始めたんだ。アレが隙間かな? って思って」

やがてスパークが一ヶ所に留まりました。

「捕まえたなの! ふふふ、もう逃げられないなの! すぐにこじ開けてやるなの! それそれっなの!」

ペロッと口元を舌で舐めるライバル……まるでお義父さんに言っている様に聞こえるのは俺だけですかな?

そっとお義父さん達の方に視線を向けますが、誰も気付いておりませんぞ。

こじ開けて何をねじ込む気ですかな?

「元康様?」

「どうしたのユキちゃん?」

「元康様がナオフミ様方を見ながら皆さまとは別の事を考えている様な眼をしているのですわ」

「そうなの?」

「違いますぞ。ライバルが卑猥な事を言ってお義父さんを責める台詞を喋っていると思っただけですぞ」

「なの!? それは名案なの! なおふみに言って押し倒す台詞案に入れておくなの」

なんですと!?

俺の推理が外れたのですかな!?

「こんな時に何を考えてるの元康くん!」

「元康の所為でそうとしか聞こえなくなったぞ……」

「どうしてくれるんですか!」

錬と樹に怒られてしまいましたぞ。

俺の所為ですかな? 違いますぞ!

絶対にライバルの所為ですぞ!

なんてやっていると結界の綻びが見えてきました。

「よし! 行けるなの! 行くなの!」

「また卑猥な台詞を言いますね……」

「え? そういう意味なの!?」

「違うなの!」

やがてバキンと目の前の空間にヒビが入りましたぞ。

「領域破壊<バリアブレイカー>!」

クロちゃんの掛け声と共に目の前の領域魔法が砕け散った音が響き渡り、今までとは違う……先ほどとは違う砂漠の景色が見えてきました。

何やら少しとげとげしいオブジェが見える様になりましたぞ。

あり地獄みたいな穴が無数に見えますぞ。

「おお……」

「これで道は開かれたのかな?」

「だと思うなの!」

「よし! 一歩前進だ! 進むぞ!」

「ガエリオンさんが一歩リードですね」

「むー! 今度はサクラ達がやるー!」

「ふふん。出来るなの?」

ライバルの挑発にサクラちゃん達がムッとなって揃ってブーと鳴きます。

そうですぞ。ちょっと成功したからって調子に乗るなですぞ。

「やってみせるー!」

「しかし……何か趣が色々と変わって来てる様な気がするけど……」

なんて感じに少し進んで行くと、日が出てきました。

あんまり温度が上昇する前に帰ると言うのがお義父さんの決めた方針なので、ポータルで帰ろうとしたのですが……。

「あれ? ポータルが使用不可だ」

「活性化地域に入ったんじゃないですか?」

「ああ、なるほど。じゃあ一旦、範囲外に戻ろうか」

「その事なんだけど、報告があるなの」

「な、なに?」

俺を含めてお義父さん達がライバルに視線を向けますぞ。

「なんか……破壊した領域魔法が再生してるなの」

非常に困った様にライバルは頬を掻きながら言いますぞ。

領域魔法が再生?

「どういう事ですかな?」

「言った通りの意味なの。ぶっちゃけると閉じ込められた状態なの」

「え……」

「しかもラフタリアとリファナに探してもらったけど帰る為の歪みが見つけられないなの」

「うん。もしかしたら入る方は簡単で出るのは難しい奴かも……」

「さっきから繋ぎ目を探してるんだけど、それっぽいのはあっても開けられそうにない」

お姉さんと友人は申し訳なさそうに言いますぞ。

なんと……少々厳しい状況になってきましたな。

「え? つまりこの砂漠に閉じ込められたって事?」

「ガエリオンさんが飛んで脱出すれば良いんじゃないですか?」

「領域の恐ろしさを知らないなの。しょうがないなの。弓の勇者がガエリオンと一緒に高高度に行ってみるなの。それでわかるはずなの」

「え? まあ……わかりました」

樹がライバルの背にまたがって空へと向かって飛んで行きましたぞ。

やがて……ゆっくりとライバルは舞い降りてきました。

「なんですかアレ、上に向かってずっと飛んでいるのに高度が上がらないって」

「だから閉じ込められたなの。とりあえず進むにしても戻るにしてもこの砂漠を移動しないと行けないなの」

「つまり、暑過ぎる日中にここにいなきゃいけないって事か……念のために持ってきた食糧とか水は馬車に積んでるから大丈夫だとは思うけど……今の内に日を避けられる様にキャンプの準備をしておこうか」

「わかりましたぞ」

そういう訳で日中の直射日光を避けるためにテントを設置する事になりましたぞ。

まあ、馬車もあるのである程度どうにかなりますがな。

そんなこんなで日が完全に昇りきると唸るような暑さが俺達に襲いかかってきました。

日陰にいるというのに汗が止まりませんぞ。

「暑い……暑すぎる……なんだここは……」

錬がブツブツ文句を言いながら氷の魔法を唱えて辺りの温度を下げてますぞ。

氷塊を作って涼んでおります。

しかしその氷も目に見える速度で溶けていきますぞ。

正直、凄い温度ですな。

「ここまで錬さんが羨ましいとは思いませんでした……」

「氷属性のスキルを使えば良いだろ」

「それもそうですね。こういう時に異世界の便利さと不便さを理解します」

なんて言いながら各々涼もうとしている様ですぞ。

お姉さん達は、お姉さんのお姉さんが魔法で出した水を使って涼み始めているようですな。

ただ、魔法で作った水も氷も維持し続けるのは難しいので一時的な物になりそうですぞ。

何分砂漠ですからな。

湿度が無いので、辺りの水気を集めるのは難しいですから、水を出現させるのには相当な魔力を使うのだとか。

「風魔法ー……涼しいー」

フィロリアル様達は涼むために風魔法を使って風を起こして俺達を納涼させてますぞ。

さすがフィロリアル様ですな。

「クロもうダメー……灼熱遊戯<ファイアデストロイ>に殺されちゃうー……」

クロちゃんに至っては限界を迎えたのかテントの中でぐったりとしております。

やはり色の影響でダメージが大きいのですかな?

「黒は熱を吸収するからねー……クロちゃんと錬は色合い的に一番、暑くなりやすいかもね」

「く……こんな所で誤算が生じるとは……」

「ユキが羨ましいー……クロなんで黒いのー? 夜の眷属<吸血鬼>だからー?」

「それは生まれつきの色合いなんだろうけど……同情するよ。吸血鬼ではないけどね」