軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

火の幻覚

「それならガエリオンが空を飛んで確認しても良いなの」

「じゃあお願い出来る?」

「任せてなの!」

そう言ってライバルはドラゴンの姿になって飛んで行きますぞ。

ですが割とすぐに戻ってきましたな。

「空の気流が安定しないなの。ガエリオンクラスなら問題ないけどしばらく飛んで行った先に砂嵐があったから無理をせずに帰って来たなの」

「うわ……砂嵐か……砂漠なんて初めての経験だけどやっぱ大変だね」

確かにそうですな。

ゲームでなら砂漠は何度も行った事がありますが、実際に行くと中々に厳しいですぞ。

「中断しますか?」

「んー……いきなり発生したならしょうがないかなー? こっちに来る前に帰るべきか」

「今度は高高度からチャレンジしてみるなの。なおふみは来るなの?」

「行かせませんぞ! お義父さんだけを乗せてそのままお持ち帰りする気ですな!」

俺が注意するとライバルが舌打ちしました。

やはりその気でしたな。

「ロマンチックな砂漠でのなおふみとの一夜には邪魔者が多すぎるなの!」

「あのねー……」

「夜の移動って何かロマンチックよねー。ほら、ナオフミちゃん。星がきれいよー」

「尚文さん」

そこで樹がお義父さんに声を掛けます。

「貴方のハーレムメンバーが発情しててうるさいです。いい加減、発散させてあげてはどうですか?」

「どういう指摘!?」

「とりあえずどれくらいの大きさになれるか知らないが、ガエリオン、フィロリアル共に勝ちたいならスキー板を噛ませた馬車を飛びながら引き摺って行けば良いんじゃないか?」

錬の指摘にライバルは少し考えてから頷きました。

本気でやるのですかな?

「しょうがないなの。砂嵐を避けながら引いてってやるなのー」

「むー!」

「馬車は私達が引くのですわ」

「そうー!」

「まあまあ、順番で良いんじゃない?」

「ダメですぞ!」

馬車をライバルに引かせる等、言語道断ですぞ!

これは俺達フィロリアル様の仕事なのですぞ。

「とは言ってもなぁ……」

ボリボリと困った様にお義父さんは髪を掻きますぞ。

「喧嘩はやめなさい。勇者を困らせたって何にもならないくらい、わかってるでしょ」

そこに今まで黙っていた主治医が、お姉さんのお姉さんの買って来た服を着こんでやってきました。

お前も着るのですかな?

「娼婦っぽい奴だぞ!」

「誰が娼婦よ!」

元々アラビア系の色合いをしていた主治医にはピッタリ過ぎる格好ですぞ。

「うわ、ラトさん似合うなー」

「肌の所為かもしれませんが、適した格好に見えますね」

「むしろ今までの白衣の方が違和感がありそうだな」

「勇者達? いい加減にしなさい。今はドラゴンとフィロリアルにどうやって馬車を引かせるかでしょ」

「こうなったらしょうがないですね。一旦ガエリオンさんが飛んで戻ってガエリオンさん用の馬車を買って持ってくるんですよ。それで競争させるのはどうですか?」

錬が手を叩いて樹を指差しますぞ。

「なるほど。その日、どっちが先に進んだかで尚文を乗せる方を決めるんだな」

「ま、負けないなの!」

「むー!」

サクラちゃんがやる気を見せる様に指をボキボキと鳴らして屈伸を始めました。

ふむ、悪くないですぞ。

なんせ、ドラゴン風情にフィロリアル様が負けるはずないのですからな。

「発想は良いけど俺が賞品扱いにされてない?」

「何を今更」

「じゃあどれくらいの行程になるかわからないけど、三日連続で勝利した方には盾の勇者のキスをご褒美にしたらどうかしら?」

「いや、そんな褒美を勝手に作られても――」

「急いで馬車を持ってくるなの!」

「ガエリオンちゃん!?」

「なーのー……」

バサァっとライバルはドラゴンに変身して夜の空に飛んで行きました。

忙しい奴ですな。

ハッ……!

「今ですぞ! 出発しておいて行くのですぞ!」

「それもどうなのかなー……」

「何を言っているのですかな? このままではお義父さんのキスをライバルに取られてしまいますぞ」

「むしろこのままだとサクラちゃんにキスする事になっちゃいそうだけど?」

「んー?」

「サクラちゃんは意味を理解してないっぽいね」

「キスー?」

サクラちゃんがお義父さんに向かって唇を突き出していますぞ。

おお、ちゃんと理解していますな。

「今の内です。尚文さん、貴方のファーストキスをサクラさんに渡しておけばガエリオンさんにダメージが入りますよ」

「いやー……それもどうなのかな。勝手に人のキスを賞品にするのもどうかと思うし!」

さすがにお義父さんもイラっとした様な態度を見せております。

おお……ですがお義父さん、貴方の純情をドラゴンの魔の手から守らねばならないのもまた事実なのですぞ。

「どっちにしても競う環境にした方が進みが良くなるんじゃないかしら?」

「サクラちゃん、勝たねばなりませんぞ!」

「がんばるー!」

「それもどうなんだろうか……」

「少しは経験してみたいとか言ってたじゃないですか。良い機会ですからキスくらいは恵んだらどうなんです?」

「何だろう……人にそういう淫らな関係を催促されるってゲームとかだと稀にあるけど、実際に言われると複雑な心境……」

若干呆れ気味のお義父さんを放置して俺達の旅は進んで行ったのですぞ。

プラド砂漠は迷いの砂漠と言うだけあって進めど進めど何時まで経ってもゴールへ到着する気配がありません。

ちなみにライバルとサクラちゃんの勝負ですが、錬や樹曰く、砂漠を進む爽快感で言えば飛べるライバルの引くソリの方が乗った感想は爽快だとか。

ですがサクラちゃん達も負けませんぞ!

「砂漠で犬ぞりしてるみたいな気分になってきたなぁ……」

と言ったお義父さんの言葉が印象的ですぞ。

そんな感じで二日ほど夜の間は進んだのですな。

おかしいですなー……まっすぐ進んできているのでそろそろ砂漠を抜けだせそうなのですが、いつまで経っても赤く見える都に辿り着けません。

「あのー……」

「その、一旦止まってください」

お姉さんと友人が三日目の深夜に手を上げました。

なのでお義父さんの指示の下、ライバルとフィロリアル様の夜間レースは中断となりましたぞ。

「どうしたのリファナちゃん、ラフタリアちゃん」

「何度か感じたのですけど……ラフタリアちゃんもやっぱりわかった?」

「うん。途中で別の場所に移動してる」

「やっぱりそうなの? 高密度の汚染地帯があって勘が鈍るなの」

「サクラもわからなかったー」

「迷いの砂漠って言う位だし、女王様や詳しい人達も同じ事を言ってたね」

「勇者の力でどうにかー……とかは無かったみたいですね」

そうですな。

勇者の力でどうにかなる訳では無かったようですぞ。

どういう原理かはわかりませんが、移動を阻害されていますな。

「凄く巧妙なんだと思います。私も最初はわかりませんでした。仕組みも……」

「うん。少しわかって来た」

「サディナさんは?」

お姉さんのお姉さんはこれでも勘は良い方で、隠れている物を炙り出すのは得意な様ですからな。

「私はわからなかったわねー」

「まず砂の進んだ跡がすぐに消えてしまうのもそうなんですけど……幻術に対して耐性が高くないとある事はわかっても気づけないみたいです」

「後は……わかっても多分、私やラフタリアちゃんじゃどうにか出来るかわからないです」

「あれ? リファナちゃんは何かわかるの? なんとなくしかわからなかったけど」

「うん。もう少し進んでください」

「わかったー」

「わかったなの」

ふむ、もしかするとお姉さんの友人が得意とする火などのタイプで幻覚を見させられているのかもしれません。

陽炎など、砂漠という事もあって相性も良いですぞ。

お姉さんは光や闇の幻覚ですからな。

こういう所で差が出るのでしょう。