軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

決別

ボスっぽい大物の所に戻ってみると志願兵と村人達が気絶した勇者達を守っていた。

余計な事を……。

さて、お楽しみの波の素材を盾に吸わせる作業なのだが、今回はゴブリンアサルトシャドウとリザードマンシャドウは名前通り影なので素材が吸えなかった。いや、厳密には影の塊みたいな奴を吸って見たのだけど一つしかないと言うかそんな感じだ。

シャドウシールド

能力未解放……装備ボーナス、闇耐性(小)

他の奴等は全部ステータスアップ系の装備ボーナスしかないので省略する。

残ったのは他の勇者たちが倒したと思わしき大きな幽霊のような魚。

「あーん」

「食うな」

フィーロが掴んで頭から食べようとしたので命令した。

今回この鳥が暴走したのは何が原因かわかっているのか。

どう見てもこいつが不用意に腐竜の核を食ったのが原因だろ。

「えー……」

すごく渋々手放して受け取ろうとした所、俺の手をすり抜けて地面に落ちたときは驚いた。

「お前、どうやって持ったんだ?」

「手にね、風の魔法を纏って持ってたの」

「……はぁ」

素手では触ることさえ出来ないへんな魚だ。

他の勇者たちを志願兵が搬送している最中に尋ねてみた所、やはり専用の武器が必要らしい。

誰か持っている奴は居ないかと聞いたら一人だけ安物の属性の入った武器を所持していたので貸して貰い、捌く。

フィーロの話を参考に、魔力付与の要領で手に魔力を宿らせて持つ。

お頭の部分を吸ってみた。

ソウルイーターシールド

能力未解放……装備ボーナス、スキル「セカンドシールド」 魂耐性(中)精神攻撃耐性(中)SPアップ

専用効果 ソウルイート SP回復(微弱)

頭だけで魔物名しか入っていないという事はこれは解体しても意味が殆ど無い事を表している。別の部位を吸ってみるが変化が無い。

しかし、スキルのセカンドシールドとは何だ? 魂耐性は……この系統の攻撃の耐性だろう。

専用効果のソウルイートが若干気になるな。俺が魂を食えるとかだったら嫌だな。

徐に盾の形状を変えてみる。この魔物、ソウルイーターの頭をそのまま盾にしたみたいな意匠が施されている。

……防御力はキメラヴァイパーの方が上だ。

ソウルイートという専用効果で魂を食べる事が出来るのならこのソウルイーターを俺は持つことができる筈だ。

だから手を伸ばしてみる。

するとソウルイーターの肉に触れることが出来なかった。

どうやら違うようだ。

良かった。

さすがに魂を食うとかそんな趣味は無い。

大方、カウンター系の効果だろう。相手の魂に喰らいついてSPを奪い取るとかその辺り。

さて、スキル、セカンドシールドは何だろう?

試しに使ってみる。

「セカンドシールド」

エアストシールド→セカンドシールド

と、視界にアイコンが浮かんだ。

「エアストシールド!」

そしてエアストシールドが出現したのを確認してもう一度叫ぶ。

「セカンドシールド!」

……もう一枚盾が出現した。

あれだ。一枚しか出せなかったエアストシールドの効果時間内にもう一枚出すことができるようになったようだ。

使い道は多そうだが、良いのか悪いのか微妙な性能だ。

そして残りのソウルイーターに目を向ける。

「全部吸ってあいつ等を困らせたいが……」

それをするとうるさそうだからな。

何より他の勇者が弱くて困るのは、何もこの世界の連中だけじゃない。

俺だけ強くなってもあの三人が弱いと楽ができない。

はぁ……一応残しておくか。

「ごしゅじんさまー、残ってるならフィーロにちょうだい!」

涎を垂らしながら鳥が騒いでいる。

「しょうがねえなぁ……」

背骨から尻尾の辺りまでを捌いてフィーロに投げる。

するとパクッと食った。

「骨なのにスライムみたいな食感ー」

「待て鳥。いつ俺達がスライムに会った」

「あのねー」

ここから先はどうでも良いので省略する。

結果は俺が怒ったという事にしておこう。

盾に吸わせられなかったという意味で。

「よし、次は村の復興の手伝いをするぞ」

やることを終えた俺達は志願兵と一緒に魔物の死骸の処理と被害の復興の手伝いを始めた。

さすがに全てを賄うことはできない。だからあくまで、炊き出しや怪我人の治療を最優先にする。

「はい!」

志願兵の奴等、別に大した裏も無く、俺の言う事に素直に従っていた。

だから怪しむ必要はもう無いだろう。

長い戦いから一夜明け、やっと騎士団が到着した。

騎士団の団長の奴、俺が志願兵を召喚したのを物凄く怒っている。

「貴様! 勝手に我が騎士団の兵をもって行きおって!」

「勇者様の所為ではありません! 僕達が勇者様の力になりたいと進言し、勇者様のお力を借りただけです」

「なに? それでも貴様等は栄誉あるメルロマルクの兵士か! 盾なんぞに惑わされおって!」

「お前さー……この惨状を見て、問題行動だって、部下を処分するわけ?」

志願兵は俺を庇って素直に自分達の意見を述べた。

聞いた話に拠ると、騎士団の上層部と勇者は打ち合わせをしていたと言うので、一部の選ばれた者が転送され、後で追いつく形で城から出発するのだろうと志願兵も思っていたらしい。

「こいつらが居なかったら被害はもっと出ていたと思うぞ?」

俺の返答に応じるように出迎えた村人も頷く。

「あと、お前達が頼りにしてる勇者達とその仲間達は全員、波で現れた強敵にやられてそこの建物に収容されているぞ」

頼んでもいないのに村人が家に運んで、勇者とその仲間達は治療中だ。軽く薬を処方されたらしいが、完治には数日掛かるだろう。回復は早そうだから今日中には意識を戻すとは思うけどな。

「急いで勇者様とその仲間を運び出せ! 早急に治療院へ送るのだ!」

「おい……アイツ等は比較的軽症だぞ。他の重症を負ってる村人も居るんだからそっちを優先して……」

「勇者とその一行を最優先するのは、我が国、そして世界の為だ!」

何とも傲慢な返答な事で……。

まあ、そうなるだろうからと、治療の優先順位は村人の方に重きを置いて居たから問題は無いけど。

「はいはい。サッサと連れてけ、俺は忙しいんだ」

「待て、盾」

追い散らそうと手を振ると騎士団長の奴、志願兵から事情を聞いて俺を呼び止める。

「今度は何だよ……」

「城へ報告に付いてきて貰おう」

「やだよ面倒くさい」

「良いから来るんだ!」

やってられるか。優先すべき事があるのに、どうして無意味な事をしなくてはならない。

俺は無視して踵を返そうとすると志願兵達が懇願する目で頭を下げる。

「お願いします盾の勇者様、どうかご同行を……」

……まあ、コイツ等は俺の指示にちゃんと従って行動していたからなぁ。

無下にする訳にもいかないし、どうせ武器屋の親父に発注している金属製の馬車を受け取りに行かねばならない。

「はぁ……」

ボリボリと頭を掻きながら振り返る。

「分かったよ。行けば良いんだろ、行けば。コイツ等の善意に一度だけ応えてやる」

「ありがとうございます!」

感謝を言葉と姿で表した志願兵に渋々頷いてやった。

こうして俺達は一路城へと向うのだった。

翌日。

城下町に到着し、城へと入る。

「盾の仲間は別の部屋で待っていてもらおう」

「ここまで来て俺だけかよ!」

なんでコイツ等こんなに偉そうなんだ?

「なあ、もう帰って良いか?」

どうせ碌な事言わないだろうし、時間の無駄だろう。

「そうはいかん。貴様には色々と聞かねばならないことが山ほどあるんだ」

「ここに来るまでに話しておいただろうが」

他の勇者がやられて、その敵を俺達が倒した経緯は既に説明してある。志願兵も遠くからその様子を確認していたので裏は取れているので嘘とは思われない。

クズ王の場合、捏造するかも知れないが、その場合早々と逃げ出せば良い。

今の俺なら可能だし、ラフタリアとフィーロが居れば簡単には捕まらない。

「静かに! 王の御前である!」

ギィイイっと玉座の間に案内され、クズ王が険しい顔で俺を出迎えた。

既に話は行っているのだろう。苦虫を噛み潰したような苛立ちを持っているのが伝わってくる。

「非常に遺憾だが、よくぞ波を鎮めてくれた、盾。ワシは信じておらんが」

「それが人に礼を言う態度か」

「無礼な! ……まあ、良いだろう。そこで一つ尋ねたいことがある。虚言だと思っておるが」

「……なんだよ」

一々語尾に信じていないとか、虚言だとかうざいな。

「盾、お前はどのように他の勇者を出し抜き、強さを手に入れた? 信じてはおらんが、それを話す義務が貴様にはある。さあ、話せ。嘘だと思うがな」

……これはアレだよな。他の勇者が俺より弱い事をクズ王は懸念して直接問い詰めているという事か。

はぁ。呆れて物も言えない程のクズッぷりだ。

正直、なんで他の勇者を倒したグラスと俺達は普通に戦えたのかは分からない。

むしろ多勢に無勢で挑んだ勇者達が勝てるはずなのにだ。

単純に俺と相性が良かったのか、相手が消耗していたのか、それとも情報通の勇者が弱かったのか、憶測は尽きない。

その辺りはいずれ、確かめなくてはいけない、けれど俺も暇ではない。

だが、ここはアレだよな。

うん。

俺はクズに晴れやかな笑みで、親指を下に向ける。

「知りたければ土下座しろ」

「は?」

クズ王の奴、呆気に取られた表情で固まる。

なんとも面白い顔だ。写真とかに残しておきたい。

「聞こえなかったのか? 耳が遠いようだなクズ。知りたかったら地面に頭を擦りつけて懇願しろと言っているんだ!」

「き、き、き」

「どうした? 猿の様な奇声を上げて。あーなるほど、この国の王は猿以下のクズだもんなー? ワシはクズ猿を信じておらんが」

語尾にマネをしながらバカにするとクズ王の奴、見る見る顔を真っ赤に染めて親の仇みたいな目で俺を睨みつける。

あ、かなり気分が良いな。これ。

「貴様ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

クズ王の叫びは城中に響き渡る程だった。

敵は前方に厄災の波、後方にはクズ。

だが、俺はどちらにも負けるつもりはない。

こうして俺は、真なる意味でクズ王と決別した。