軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

181 フィフススキル

「な、なんだ? いきなり棺桶が……?」

『ヌマ?』

一体どうしてこんな所に? って俺の方が知りたいと思ったけど、ここでふとある事を思い出した。

『そういえば蘇生魔法が存在したって言われる時代の話なんだけど、死んで蘇生猶予時間が近づいてくると死体が安全な所に転送されるなんて話もあるんだよね。そこに待機している蘇生魔法の使い手が即座に蘇生させる事で事なきを得るってさ』

迷宮から帰還する際にシュタインがしていた話だ。

まさかルナスやシュタインの様な仲間が戦闘などをせずに長時間棺桶状態でいると俺とクマールは蘇生魔法の使い手がいるはずの……教会へと転送されるって事なのか?

いやいや……そんな馬鹿な……。

だけどあの絶望的な状況下からこんな所に移動してしまったのだから納得するほかない。

とりあえず死んだフリを解除だ。

『ヌマ!』

っと俺とクマールは死んだフリを解除して驚いて近寄ってくる教会の人と客の方へと手を振る。

「隠蔽状態で我らが教会に侵入するのは如何なものかと……」

うわぁ……めちゃくちゃ怪しまれてる。

というか気付かれない様に侵入したって思われてるんだ。

「えっと……」

「ヌ、ヌマヌマ」

どう言い訳したら良いんだ?

なんて思っていると教会らしき場所にいる人の顔に見覚えがあった。

「あ、あなたは少し前に祈りに来た方ですよね」

「は、はい。えーっと今シュタインがどこにいるかわかりますか?」

「少々お待ちを……」

っと、教会の人は参拝客をその場に残して教会の奥へと相談に行ってしまった。

それから数分で戻ってくる。

「同行していたプリーストはあれから戻っておりませんが……近くに居ないか使いの者を出しましょう」

いたずらにこんな所に来るんじゃないとばかりに教会の人がシュタインを呼びに出かけてしまった。

ちょっと一安心か?

「ヌ……ヌマ……」

主人、安心したら気付いた事があるのですが……とクマールが申し訳なさそうに意思を伝えてくる。

「どうした?」

「ヌマ」

何かが……新しいスキルが開花した時のような開放感が今にして気付きました。新しい力が開花したと思います。

ふむ? ここで開花した理由は、バックス講師達を倒した際の魔素が原因と言った所だろうな。

俺はクマールの登録タグを取り出して確認する。

ファーストスキル・把握。

セカンドスキル・死んだフリ。

サードスキル・積載量軽減。

フォーススキル・スキルスタック。

フィフススキル・大妖獣ポンポコン

おお……フィフススキル!

ルナスやシュタインが存在するんじゃないかと考察していたのが実在した事がここに証明されたぞ。

「ヌマ」

『はい。それを今ここで口にすると大変なので意思での会話でしましょう』

ってクマールが提案してくる。

まあ、俺の言葉しか周囲の連中は聞けないけどな。

考えてみれば最近のクマールは凄かったもんな。

咄嗟に死んだフリで俺を庇ってくれたし、発想が凄い。

そういう意味でも経験が積まれてきていたのだろう。

しかし、なんだこのスキル。

大妖獣ポンポコン……なんか響きが擬音みたいでふざけているけど、カテゴリー的には種族名スキルだよな?

使役魔などに存在する種族名スキルは人で言う所の職業スキルやそれ以上に該当する上位スキルだ。

これ一つでルナスやシュタインの勇者の怒りや墓守に匹敵するスキルだろう。

しかも前人未踏の領域であるフィフススキル。

ここまで不遇のスキルばかりだったクマールにやっと強力なスキルが花開いたと言っても過言では無い。

良かったな。本当に良かった。

俺も誇らしいぞ。

念魔法に開花した所で申し訳ないと思っていたんだ。

「ヌマ……」

『主人を含め皆さんが自分を強く育てて下さったお陰です。あそこまで恵まれた環境なら誰だってこの領域に来れることを自分は理解して居ます。ここが始まりだと精進します』

俺の賞賛にクマールは照れた様に頭を掻いた後に謙遜した態度で答える。

そういえば妖の世界に行った時にクマールを見た人が揃ってそれらしい事を言っていたな。

開花寸前だったって事なんだろう。

それでクマール、その大妖獣ポンポコンってどんなスキルかわかるか?

「ヌマ」

『何か力が湧き上がってくるのが分かります。主人が魔法を使えるようになった時と同じ……同郷の仲間が魔法を使う際の力が使える様になったんだと思います』

そういえばクマールはタヌクマって魔物なんだよな。

幻覚魔法の使い手って使役魔屋が言ってたのを覚えている。

クマールはその幻覚魔法が使えないタヌクマで同族から蔑まれて人間に捕まったんだったな。

『はい。今にしてやっと魔法の力が開花しました』

クマールの同郷か……。

『……主人を見てきた影響か、見返してやろうという気持ちにはなりません。見返しをすると今回の様な事になるのでしょうね』

あー……そうだな。

馬鹿にしていた連中って自分が脅かされるとこっちに面倒な事をしでかして来る場合もあるんだ。

素直に凄いって言ってほしいよな。

魔力が開花したとなるとハイロイヤルビークイーンに貰った杖もクマールは使える様になったんだろう。

……思えばアレはクマール用に与えられた武器だったけど、ハイロイヤルビークイーンはクマールを見て既に気付いていたって事なんだろうな。

『あの女王の眼力は凄いのですね。毎日ハチミツを頂いているので感謝です』

後は……クマールがフィフススキルに開花した資料をまとめておいた方が良いな。

色々と研究資料として有意義に活用出来るだろう。

「ヌマー」

『なんとなく前よりも二足歩行で歩きやすくなった様に感じます。この前買って頂いた巻物でこの力の使い方が分かるようになったんだと思うので後で確認しようと思います』

そうかそうか。

前よりも二足歩行が出来る様になるか……より人らしい動きができるようになったって事なんだろうな。

今じゃ一匹でトイレに行ってるもんな。

糞便は健康チェックを把握するのに便利なんだけどな。

『主人の自分に責任を持って世話をしようとして下さっているのが分かります。いつもありがとうございます』

クマールは真面目な感じに成長したな。

嬉しい様な寂しい様ななんとも言えない気分だ。

「ヌマー」

『主人に似ました』

俺が真面目か……欲深く資格を得ようとしてこんな事態を引き起こしてしまったようなもんなんだけどな。

『真面目なのと上昇傾向は両立すると思います。欲が深いとは思いません』

はは……これは一本取られたな。

もうクマールの方が頭が良いかもしれない。

『主人の知識量にはまだまだ及びません。どちらにしても、このクマールを今後ともよろしくお願いします』

そういえばクマールって名前をルナスが付けたけど、本当の名前とかあるんじゃないのか?

『前は『生贄』と、同族のみんなに言われていました。群れに危機が訪れた際に率先して前に出て群れの生存を命を賭して守るのが役目だと』

酷い名前だ。

戦闘力の低い魔物の群れで観測されている生贄用の弱い個体の話を読んだ事があるけど、その生贄がクマールだったのか。

『自分は前の名前よりも、主人とあの方から授かった今の名前を誇りにして居ます』

そうか……じゃあここで改名とかはしなくて良いんだな?

大妖獣ポンポコンって奴。

「ヌ、ヌマ」

『スキルは凄いと思いますが、その名前で通す気は無いです。クマールでよろしくお願いします』

まあ、わかる。名前としては微妙だよな。

わかった。改めてよろしくな。

と、俺はクマールと念話で意思疎通をして、絆を確かめたのだった。