軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

182 不祥事

やがてシュタインとルナスが教会の人から話を聞いてやってきた。

「リエル一体どうしたの?」

「うむ。一体どうしたのだ? 私たちは君が帰って来ることを祈りながら酒場でゆっくりと食事をしていた所だったのだが……」

「いや、あのな? ちょっと色々とあってさ、ここじゃ少し話しづらいんだ」

「なるほど、いやぁ悪かったねリエル。僕がいたずらに教会に入って驚かせて欲しいとお願いしたらこんな事になっちゃって!」

いたずら完了! っとばかりの体裁でシュタインが剽軽に教会の人へと説明をする。

すると教会の人はシュタインを凝視した後、深くため息を吐いた。

冒険者の悪ふざけかよ……しかも同教会の者同士とか勘弁してくれって態度に軟化した。

「我らが教会で悪ふざけはしないように!」

っとかなり強めの口調で注意されつつ、俺達は足早に教会から出る事が出来た。

「それで一体どうしたの?」

そこからすぐに建物の影の方へと移動して二人に中級レンジャー試験でバックス講師に試験とは関係なく殺されそうになり、戦闘に勝利して捕縛しようとした際に自爆されて生き埋めになった事を説明した。

「なんと……とんでもない事が起こっているのだな」

「ああ、そこで死んだフリをしていたら俺とクマールの棺桶が光り出してな……気付いたら教会にいたんだ」

「なるほど、蘇生猶予時間が近づいたらって過去の伝承にある奴だね。リエルとクマールは戦闘以外の状態で長時間死んだフリをすると教会……たぶん最後に立ち寄った教会へと戻る効果があるんだね」

これは大発見だね、とシュタインは続ける。

「僕やルナスさん以外でパーティー組んで迷宮とか困難な依頼に挑んだ際に君とクマール以外が死んでも生きて帰れる手段の発見だね」

問題はそこじゃないだろ。

いや、生き残れた事自体は良いんだけどさ。

「さすがリエルだな。よくぞそのような危機的状況から生き延びてきた。私は君達が生きて戻った事だけでも素晴らしいと思うぞ。やはり君の死んだフリは希少で有用なスキルなのだ!」

ルナスもルナスで俺を絶賛してくれるのは良いんだけどな?

「とにかく、急いでレンジャーギルドに通報しないと大変な事になってるはず。俺だけだとなんか口封じされそうだから念のため二人とも一緒に来てくれ」

「もちろんだよ。フフ……面白い事になってきたね」

「もしもに備えて付いてきて正解だったな」

ここでわくわくしないで欲しいんだけどな。

「ヌマー……」

クマールも呆れてるぞ。

ただ、この二人が念のためにいる事が大事なんだよな。

俺達は急いで中級レンジャー試験を受ける為に入る酒場へと行くと、そこには前回入った時とは打って変わって何人もの人だかりが出来ていた。

「失礼する!」

ここで人垣を掻き分けて酒場のマスターへと声を掛ける。

「あ、お前は受験生だな!」

「試験会場は今、どうなってる?」

「どうなってるもクソも無い! 地下水路が崩落をして大変になってんだ! 情報が錯綜してるんだよ。お前何か知らないか!?」

「試験内容までは知らないって事?」

「今回俺はここで受付してるだけなんだよ」

まあ仕事ってこんな感じだよな。

試験内容の全般を知っていたら情報を流すとかあくどい事が出来てしまう。

「レンジャーギルドには?」

「とっくに通報済みだよ! で、お前はどうして戻ってきたんだ?」

「あー……」

ここでズイッとシュタインが俺と酒場のマスターの間に入り込んで挙手する。

「ちょっと失礼。今回の騒動はどうやらレンジャーギルド内での派閥闘争が関わっているみたいでね。僕達の仲間であるリエルを何やら試験と託けておびき出して暗殺をしようとした奴がいたんだけど、返り討ちにして通報しようとした所で自爆されたそうだよ?」

俺は命からがらその場から離脱したけど試験会場の地下水路は崩落してしまった。

っとほぼ事実をシュタインは酒場のマスターへと説明する。

「それが事実かどうかは判断出来ないが、試験は中断して地下水路に生き埋めになった連中の調査をしなきゃいけねえ……こりゃあ大騒動になるぞ」

そんな多大な混乱の中でレンジャーギルドから派遣された職員……果ては国からの要請などで魔法使いギルドや教会なんかもやってきて事態は混乱を極めていった。

魔法使いギルドから土魔法の使い手が招集されて地下水路の崩落した土砂は撤去されて行った。

幸いにして試験会場の一部は崩落を免れ、一部の受験生と試験官を救助する事が出来たとの報告を俺は耳にした。

ただ……まあ、運悪く崩落に巻き込まれた受験生や試験官は帰らぬ人となり……俺の証言通りの場所でバックス講師とその配下、レンジャーギルドの暗部に属する者たちの死体が発見された。

調査報告により、バックス講師が大量の爆薬を購入していた裏まで取ることが出来たらしい。

「いやぁ。本当、面白い事になったねー」

結局俺達は救助活動の手伝いを少しした後、試験は中断という事で王宮の方へと戻る羽目になってしまった。

「あんまり面白がるなよ。無関係な奴らだって巻き込まれてるんだからな」

「ヌマヌマ」

クマールはお腹がすきましたとばかりにハチミツを舐め始めている。

今回は本当、大変だったな。

「そうなんだけど、ここまでの不祥事って滅多に無いからさ」

シュタイン……お前って本当、腹黒だよな。

「はあ……まったく、どうしてこんな事になっちゃったんだろうな」

色々と頑張って実績を積んだのに、逆恨みされた挙げ句こんな結果になるなんてシュタインみたいに笑えない。

これってやっぱり俺の所為だよな……どうしてこうも災難が付きまとうんだろうか。

スキル構成がハズレの奴が努力して見返すってそんなに駄目な事なのか?

「君が原因でこんな事態が起こったのではない」

ここでルナスが真面目な顔で俺を見つめて声を掛ける。

「仮に君が有能さを世界に見せつけて周囲の認識を改めさせた事が原因だったとしても、今回の騒動を引き起こし、あまつさえ自爆で周囲に多大な迷惑を掛けたのは君ではなく、レンジャーギルドの汚点だった者だ。最後の引き金を引いたのは結局そいつなのだ」

バックス講師が生け捕りにされるのを拒んで道連れに爆弾を起爆させた。

その原因が俺にあるとしても、結局起爆させたのはバックス講師なんだから俺は気にする必要は無い……か。

ルナスの言いたい気持ちは分かるけど、それでも気にするなってのは無理だ。

「これで君の所為だと言うなら世の犯罪者は全て君が原因となる論法を認めることになるぞ? 何せ君がいる所為で奴らは犯罪を犯すのだからな? おや? なぜか君が生まれる前から犯罪者はいるぞ? 妙だな? 理屈が成り立たんぞ?」

何で口元を手で隠して考え込む態度をしてるんだよ、ルナスは。

「そこまで自惚れた嘆きをするつもりはないけど……」

せっかく中級レンジャーになれると思ったのにレンジャーギルドから脱退する羽目になるんだろうなー……と深いため息が出てしまう。

「何より……君を殺した後に水路を爆破して全てを闇に葬るつもりだったようだし、結果は変わらなかったのではないか? 全ての責任を君に被せようとしたのは安易に想像が付く」

「ルナスさん、中々良い読みしてるねー。どうやらそうみたいだよ? 調べるとリエルが大量の爆薬を購入していたって事に偽装してたよ。大方『無能なスキル構成のレンジャーは道具に頼りすぎた所為でこんな騒ぎが起こったんだ!』って前例を作ろうとしたんじゃない?」

「ありえるな。リエルの話を聞く限りスキル絶対主義で人格に問題を抱えている人物だったようだし、リエルの様な者を絶対に這い上がれない様にしようとしていただろう」

無能なスキル構成の者は価値がないって考えは俺自身がハズレスキル構成だった故に不快なのは事実だ。

「ヌマヌマ、ヌマー! ヌマヌマ」

スキル構成がハズレだとしても素晴らしい方々の教えと力を授かればどんな困難も突破出来ます! 有能なスキル持ちしか育てられないというのはそれだけ教える側の能力が無いのだと自分は主人達に拾われて理解しました。

……クマール、お前は本当、健気で義理人情に厚い奴だな。

本当、人間の中にはお前を模範として欲しい奴が多くて困るよ。

「君を馬鹿にしていた代表へ君は見返してやったのだろう? せめてそこだけでも自信を持ってくれたまえ」

「うーん……」

「私は君が無事生きて戻ってきてくれただけで良いと思っているよ。死ななければ機会は幾らでも訪れるのだ。レンジャーだけが全てでは無いさ」

優しく諭してくれるルナスの言葉がとても深く染みたような気がしたのだった。