軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

180 崩落

「ヌッマ!」

っと、いざって時にと用意していた煙玉をクマールは口から出して俺へと合図を送る。

ここで俺はパイロをクマールが出した煙玉に向かって放ち、発火させる。

内側から火が入ったので煙玉が即座に炸裂し、バックス講師の周囲まで煙が立ちこめる。

俺はここでクマールに向かって石弓をサイフロートで浮かせて投げ飛ばし掴ませる。

「ヌマヌママ!」

ダダン! ダン! っとクマールが受け取ると同時に周囲に居るバックス講師の配下に向けて麻痺毒の針を放って命中させ、俺へと石弓を投げ返してくる。

そこを俺がバックス講師に向かって突撃する。

「勝手に死んだ扱いされては困る。この程度の攻撃じゃ大したダメージにはならないんだが?」

「そんな馬鹿な! 当たらなかっただと!? こんな偶然あってたまるか! はああああ!」

ルナスに貰った剣でバックス講師のクロスボウを両断し……ここでバックス講師は地面を更に大きく蹴って次の動作へと入る。

凄いな。

一応宮仕えになったって経歴のあるレンジャーだったのは間違い無い様だ。

動きに無駄が無い。

「アガ――」

咄嗟に俺はエレキを放ち、短剣を出して斬りかかってくるバックス講師を感電させる。

その足を引っかけてそのまま背中を踏みつける。

そして絶対に回避出来ない様にした所でクマールが投げ返してくれた石弓でバックス講師の背中、足、太股に向けて引き金を引いた。

「グア!? あ……ぐううう……」

「戦闘において知能がある敵の集団である場合、頭から先に仕留める。冒険者としての鉄則ですよね? バックス講師」

っと言いながら連携が崩れたバックス講師の配下に向けて俺とクマールは立て続けに攻撃を仕掛け、戦闘不能へと追い込んだ。

「さてと……こんな所か」

「ヌマ!」

俺の足下には麻痺で動けないバックス講師と、周囲には十人以上はいるバックス講師の配下が転がっていた。

思ったより俺達強くなってるな。

「バックス講師、スキルは確かに大事ですけどそれ以上にLvも大事だと思いますよ。何より日々の研鑽が大事かと」

なんだかんだ俺には最強の勇者様と死霊術師様が付いていて十分過ぎる程のLvを上げてくれているんだがな。

あの二人の強さの前に俺やクマールなんて可愛い方だよな。

ちょっとは知能的に戦えてるけどシュタインのゾンビ戦法で操られた俺達の体の方が縦横無尽に動き回れるし。

「ヌマー」

事実ですけど、ちょっと悲しくなります。

まあ、その考えには同意だな。クマール。

「どちらにしても連行させてもらうぞ。試験中だけどアンタのした事を明るみにしなくちゃな」

「くうううう……お、おの……れ……」

まともに動けないバックス講師の袖からボタンが出てきてカチッと押す。

直後にドーン! と立て続けに爆発音が鳴り響き、周囲に地響きが起こり始めた。

把握出来る範囲がどんどん土に埋まっていく!?

「貴様を殺した後にするはず……だったが、もうそんな事をやっていられん。まだ私は負けてなどおらん!」

「ま、まさか……」

「ぬ、ヌマア!?」

「貴様は私達レンジャーギルドの汚点。貴様が生きていては私は終わりだ。だから道連れだぁあああああ!」

爆薬でこの地下水道を爆破して崩落させるつもりなのか!?

俺を殺した後、罠の爆発で崩落して死んだ事にするつもりだったのか? それにしたって範囲が広すぎる。

他の受験生や試験官も巻き添えになるぞ!?

ゴゴゴゴゴ! っと天井が崩落する!?

「はははは! これで無能な貴様が成り上がるなどという事は無くなる! レンジャーギルドに栄光あれー!」

っとバックス講師の声と共に地下水道は崩落をし、俺達に大量の土砂が降り注いで来た。

「ヌマ!」

「クマール!」

俺とクマールは咄嗟に近寄り、周囲を把握……ご丁寧に逃げ道が全部塞がれている。

何処かに偶然、生き残れそうな隙間とか出来れば良いと思ったけれど入念に爆薬が仕掛けられてるじゃ無いか。

もしかしてレンジャーギルドの秘密か何かでここって使えない様にする予定だったのか?

なんて思うのは数秒の時間しか無かった。

く……こうなったら一か八かしか残された手は無い。

俺とクマールは咄嗟に死んだフリを行い。棺桶状態になるのだった。

ほぼ同時に俺達にも土砂が覆い被さり、周囲は完全に埋まってしまった……。

『バックス講師の奴……捕まる位なら自害を選ぶとか……』

何処までも身勝手な……他の受験生とかどうなってるのか不安に思うが……今は心配して居る暇は無い。

俺達自身の問題だ。

『クマール。大丈夫か?』

『ヌマー』

大丈夫です。っとクマールは不安そうな感情を押し殺して俺の念話に答える。

どうした物か……完全に生き埋めになってしまっているぞ。

把握出来る範囲は全て土砂で埋まっている。

こんな騒動が起こったらレンジャーギルドの人たちが救助活動に出るとは思うけど、その救助が何時来るか……。

とにかく俺とクマールが避難できる空間を確保しないと行けない……。

と、サイフロートで土を掻き出そうと使ってみるのだけど……く、なんか魔力の消費が多い。

死んだフリ中の魔法は魔力の消費量が増すのか。しかもサイフロートで搔き出そうとするのだけど、搔いたその場で土が崩れて空間の確保が出来ない。

仮に確保しても息が持たない位の小さな空間しか出来ない……それでも諦める訳にはいかない。

ルナス達に念話で居場所を伝えられれば良いんだけど生憎距離が足りない。

死んだフリを使った事で近くにいるルナスが感知してくれたら良いけどそれも希望的観測だよな。

……俺は冒険者だ。

冒険者は死ぬまで諦める訳にはいかない。

何か、何か無いのか……持ってきた荷物に入っている火薬をパイロで爆発させてスペースと居場所の確保を……。

『ヌマ……』

残された魔力で出来る限りの抵抗をするのだけど、やはり……上手く行くことは無かった。

このまま俺達は生き埋めになったまま死ぬのか?

死んだフリだっていつまで持つのか分からないぞ……。

いや、気をしっかりと持つんだ。クマールが不安がる。

『絶対に生き残るぞ。諦めるなよクマール!』

『ヌマ!』

不安そうにするクマールへ元気を出すように念話を出す。

幽体離脱状態だけどクマールの不安を拭うように俺は撫でる。

ああ、クマールを撫でるとホッとするな。

俺もクマールに不安を拭ってもらっているんだ。

諦めるな。きっと誰かが救助してくれている。

……。

…………。

………………。

と……生き埋めになって俺達は30分が経過しようとしていた。

俺の魔力もほぼ尽き、クマールとの念話をするので精一杯になってしまった。

もう、ダメか? そもそも俺達の死んだフリはいつまで持ってくれるのか。

今は少しでも死んだフリの効果が長引いてくれる事を祈っていたその時……変化が起こった。

『俺達の棺桶が……淡く光り始めた?』

『ヌマ……?』

何やら俺達が入って居る棺桶が淡い光を放ち始める。

もしやコレは死んだフリの時間切れか!? だが、ルナス達と一緒に死んだフリ戦法で30分戦って居た時はこんな事は無かったぞ。

どっちにしても解除したら死ぬ……これが俺達の最後の時か……。

『ヌマ』

俺の考えを悟ったのかクマールが念話に答える。

『クマール……ごめんな。俺が欲深く試験なんて受けた所為で』

『ヌマ……』

元より主人に拾われた命、ここで主人と共に果てるのなら本望です。

ってクマール、お前って奴は物わかりが良すぎるだろ。もっと俺を恨んで良いんだぞ。

そんなやりとりをしている所で俺達の棺桶は光を強め……。

フッと突然周囲の景色が変わり、気付いたら教会らしき場所に棺桶が移動していた。