軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

218話 沢山ある領の仕事

サクラに移民してきた村の設置が終わった。

丸ごとの村の移植なんて初めての試みだが、上手くいったようだ。

こんなの元世界だって誰もやったことがないだろう。

仕事が終わったので、朝飯を食ったらアストランティアにいるカナンの所に行ってこようと思う。

彼女も会いたがっているようだしな。

皆で朝食を摂り終わった。

わらわらとメイドたちが集まってきて、後片付けをしていく。

手慣れた作業でまるで流れるよう。

「プリムラ、アストランティアに行くが、一緒に乗っていくか?」

「はい」

「旦那! あたいも!」

手を挙げたのは、プリムラの護衛をしているニャレサというシャム柄の女。

「いいぞ。まさか、お前だけ走らせるわけにもいかんし」

「そんなことないよ! 貴族に雇われている獣人なんて、馬車にも乗せてもらえず走ってついていくし」

「それでも平気だと思われているんだろ?」

「そりゃ、平気だけどさぁ」

「俺はそんなことは言わんから安心しろ」

「やったぁ! でも、あの犬コロはどうなのよ?」

彼女が言っているのは、ワルターのことだ。

「仲良くやってくれよ」

「奴ら次第だよ」

皆同じことを言うな。

彼は問題ないと思うが、森猫や猫人の愛人を囲っているので、猫好きだと思われているらしい。

そんなことはない。最初に会ったのがミャレーで、そのまま猫人族との付き合いのほうが多くなってしまっただけで。

そういえばアストランティアで、犬のお面を被り、犬人に風評被害をかぶせてしまったなぁ。

あれは反省しているが、非常事態だったし。

俺が出かけるので、アネモネとアマランサスがウロウロしている。

彼女たちには悪いが、今日は留守番だ。

おとなしく待っててもらう。

ベルたちは、森に行ったようだ。

「ケンイチ、またアストランティアから、絵師を呼ばんとのぅ!」

「例のあれか……」

領主が偉業をしたら、絵師を連れてきて絵巻物を描いて自慢するのだ。

別に自慢しなくてもいいと思うのだが、それがお城への報告書にもなっているという話なので、作らないわけにもいかない。

オダマキの鉱山から出た山のようなスケルトンを退治したという物語が、おもしろおかしく描かれるのに違いない。

「カナン殿によろしくの!」

リリスは服を作ってもらっているので、彼女には寛容だ。

さて、アストランティアに行く前にやることがある。

「プリムラ、急ぐかい?」

「いいえ、なにかお仕事でも?」

「仕事ってほどじゃないんだが、切った丸太を材木置場に置こうと思ってな」

村を移築するために森を開墾したので、アイテムBOXの中に丸太の在庫が増えてしまった。

テキトーに在庫を減らしていかないとドンドン増えてしまう。

そこにユリウスがやってきた。

「ケンイチ様。領主様がお戻りなら、サンタンカの水産加工場に原料を入れてほしいと、連絡が来ておりました」

「そうか解った」

そうそう、イカの燻製――イカクンの原料であるクラーケンも、アイテムBOXの中から減らさないと。

いくら加工場に持っていっても、まったく減らない。

なにせ、クラーケンがデカすぎるからな。

これがなくなるのは、いったいいつになることやら。

まぁ、イカクンは売れているから、いいけどな。

プリムラの話では、サンタンカは儲かっているので税金を納め始めるという。

「まぁ、かなり人も増えているようだしな――あ、そうだ! ダリアと途中の村で買った家を、アイテムBOXから出すか……」

なにせ30軒以上の家を買ったからな。

これで、サクラの住宅事情も多少はマシになるだろう。

「ケンイチ、全部やっても、午前中にはアストランティアには着けるでしょう。私はそれで構いませんよ」

「ありがとうな。それじゃ全部片付けてから、アストランティアに行くか」

「ユリウス、俺がアイテムBOXに入れてきた住宅を配置する」

「それでは、少々お待ちください」

「ああ」

彼は役所代わりにしている家に、書類を取りに戻ったようだ。

住宅を希望している住民の情報が記されているらしい。

数分でユリウスが戻ってきたので、アイテムBOXから車を出す。

プリムラと彼を乗せ、ニャレサは3列目シートだ。

「へへ、悪いね。お役人様」

「ケンイチ様がやられていることですから、構いません」

ユリウスも獣人たちには偏見がないようで助かる。

まぁ、こんな僻地希望で、そんなやつはいないと思うが。

「こんな辺境で、獣人が嫌――なんて言ってたら暮らしていけないからな」

「彼らがいないと開拓も進みませんし」

「そのとおりだ」

車でサクラの大工の所に向かう。

集落の中を走り製材所に到着すると、親方のドラクラがいた。

周りから木を加工する音や、のこぎりで木を切る音が聞こえてくる。

他の場所と違うのは、においだ。

色々な木の香りが一面に漂っている。

「ドラクラ、ちょうどよかった。ちょっと仕事に付き合ってくれ。すぐに終わる」

「ケンイチ様、なんの御用で?」

「家を持ってきたから配置する。それを見て直す順番とか決めてくれ」

「解りやした」

「それから、丸太を持ってきた」

「よっしゃ!」

彼と一緒に材木置き場に行くと、丸太が積まれている。

俺が運んだものばかりなので、ほとんど同じ長さだが、アイテムBOXに入れるために、この長さに揃えるからだ。

そこに丸太を出し積み重ねると――低い木琴のような大きな音が、あたりに響く。

「いつ見てもすげぇ! こんなの森から運んだら何日かかることやら」

森の腐葉土は柔らかいため、普通の馬車では車輪が埋まってしまい使えない。

車輪が太い特殊な馬車やソリを使うらしい。

「ソリか……なるほどなぁ」

ここなら、一旦湖に出てからイカダを組んで、サクラまで運んできたほうが早いかもな。

丸太の周りに獣人たちが10人ほど集まってきて、掛け声と共に抱え上げた。

水車で回す巨大な丸のこに、セットするためである。

こいつで丸太を縦切りにして、板を作っているわけだ。

俺がやれば早いが、なんでも俺がやってしまっては雇用が生まれない。

仕事を作り人を雇い、領の経済を回していかなければ――それが領主の務めってやつだ。

おっと、見とれている場合ではない。

仕事をしないと。

ドラクラを連れてきて、車に乗せた。

「ドラクラ、第2製材所のコアモーターの調子はどうだ?」

「順調でさ! あんな場所で丸のこを使えるなんて、普通じゃ考えられねぇ」

「木を切るのに力不足とかそういう感じは?」

「まったくありませんぜ」

コアモーターのトルクは凄いからな。

回り始めると、人の手では止められないぐらいのパワーがある。

現場に到着すると、住宅を出す場所をユリウスに指示してもらう。

俺がここにやって来たときには、一面森だったのに、広範囲に渡って木が伐採されて集落ができている。

崖から湖に向けて、ゆるい斜面になっているので、水はけもいい。

「あ~、そうだなぁ。そろそろ下水の工事もしないとなぁ」

「げ、下水ですか? 恐れ多くもケンイチ様、そんな大規模な工事は、今のサクラでは……」

俺の話を聞いたユリウスが、予算の心配をしている。

普通の都市の下水というのは、石で組んだ地下迷宮みたいなもので、膨大な予算と時間を食う。

数十年から百年単位でやる大事業だ。

「ああ、そういう立派なものじゃないから」

俺が考えているのは、シャングリ・ラで売っている塩ビパイプを地中に埋める下水だ。

実際に、メイドの宿舎などではもう使われているし、集落が小さいうちはこれでなんとかなる。

パイプを埋めるのも重機を使えば簡単だしな。

各家庭から出る生活排水は、現在は地下浸透であるが、汚水の垂れ流しではない。

汚水槽に溜めた排水を、水石という石で浄化してから地面に流している。

この世界の街が綺麗なのは、この石のせいなのだが、食べ残しなどは分解できないので、汚泥などは定期的に掃除する必要がある。

お城のようにゴミをそのままにしていると、ネズミなどの繁殖に繋がる。

トイレはいわゆるボットンであるが、専門の業者がいて、汲み取り肥料などに加工。

これも魔法を使っているので、元世界に比べても迅速な加工が可能なのだ。

引けは取らない。

「まずはここです」

ユリウスの指定の場所にやってきた。

小さなテントが張ってあり、一家3人が暮らしているようだ。

俺が与えた服を着た若い夫婦と、3歳ぐらいの男の子が1人。

この領の住民になったときに、シャングリ・ラで一番安い服とズボンなどを与えている。

シャングリ・ラでは安物でも、この世界では上等な部類にはいる。

なにより普通は古着ばかりで、新品などを買える余裕がある家庭は少ない。

こんな環境でも子供を生んで育てるなんて、元世界では考えられなかった。

そう考えると、俺の住んでいた国は恵まれていたのだ。

「こ、これは領主様!」

テントの主が頭を下げた。その後ろで彼の妻も礼をしている。

「お前達は、住宅のお願いを出していたな」

「は、はい!」

「どんな住宅が与えられるかは、解らんぞ?」

「それでも、この天幕よりは……」

「そうか、解った」

テントを片付けさせてから家を出そうとしたが、地面を整地しなくてはならない。

斜めや凸凹の地面に家を乗せては、家屋が壊れてしまう。

俺はアイテムBOXからユ○ボを出して整地を始めた。

何事かと、集落の住民たちが集まってくる。

「こりゃいかん! 意外と手間を食うぞ! これじゃ、アストランティアに向かえない」

そうは言っても、やり始めてしまったものは仕方ない。

車のほうをチラ見すると、プリムラが座って待っている。

急がないと。

地面の整地を完了すると、アイテムBOXから家を出した。

大きな音を立てて、木造の家が落ちてくる。

程度はまぁまぁだが、屋根が破損しており、壁の修理も必要だろう。

不公平になるといかんので、あまり立派な家は買っていない。

殆どがボロ屋で、空き家ばかりを探してもらった。

「「「おおお~っ!」」」

集まってきた野次馬から歓声が上がった。

「ほ、本当に家が……」

突然、出現した家に、男が驚嘆している。

「にゃにゃにゃ! なんだいこりゃ!」

一緒についてきたニャレサが叫ぶ。

「なんだって? アイテムBOXから家を出したんだよ」

「ありえねぇー」

ニャレサは放置して家を見る。

「屋根は直さないと駄目だな。大工たちが忙しいので、すぐには修理できないと思うが……」

「構いません! 家をいただけるなら、それぐらいは……」

別に家をプレゼントしたわけではない。

これは借家で、領の持ち物――いわば公営住宅。

その点を念を押す。

勝手に売ったり買ったりもできない。

騒ぎに住民たちが集まってきた。

「領主様……」

皆で集まってきて、言葉には出さないが何をいいたいのかは解る。

ここにいるのは、家のない者たちだ。

「順次、家は用意してやるから、おとなしく待っていろ」

優先順位は、子供のいる家庭と年寄が優先だ。

若い男なんかは、どうにでもなるだろうし。

女などは、数人で固まり共同生活をしているらしい。

――出した家を見つめる。

「う~ん」

屋根の穴が気になるな――そうだ。

俺はシャングリ・ラから2000円のブルーシートを買った。

住民たちの前で、そいつを広げる。

「これは、水を通さない布だ。屋根の修理が終わるまで、こいつで屋根に開いてる穴の部分を覆えばいい」

「ありがとうございます! これで夜露もしのげます」

夜露ってのは結構濡れるからな。

それに、ブルーシートがあれば、雨が降っても大丈夫だろう。

「ドラクラ、ここは屋根の修理だぞ」

「へい」

彼が、俺からもらったメモ帳と鉛筆を使ってメモを取っている。

大工は、読み書きと計算ができないと仕事にならない。

数値で管理しないと、合うものも合わなくなる。

たとえば、壁に等間隔で補強を入れたい――そんなときは割り算が必要になるしな。

割り算をするためには、掛け算――つまり九九が必須である。

こんな調子で3軒ほど家を出したが、さすがに他の仕事もしないといけないので、今日はこれで打ち切った。

製材所に戻るとドラクラを降ろし、俺たちの家の前でユリウスを降ろす。

「つき合わせて悪いな」

「いいえ、仕事ですから。まだまだ家は残ってますし」

「そうなんだよ。地道にやっていかないと」

「待っております住民が多数おりますから、なるべくならお早めにお願いいたします」

「解っている。アストランティアから戻ったら、集中的にやろう」

「ありがとうございます」

「ほほほ」

笑い声が聞こえてきたので、振り向くとアマランサスだ。

「さすが聖騎士様じゃのう」

「なにがさすがなんだ?」

「貴族に向かって急かしたりすれば、ヘソを曲げる者も多いというのに」

「俺はそんなことないよ」

「ゆえに、さすがなのじゃ」

苦笑いするユリウスに手を振る。

アマランサスは留守番だ。

俺が車を発進させようとすると、ドアが開いた。

「なんだ?!」

「私も行くぅ!」

飛び込んできたのは、エルフのセテラだ。

「おい、危ないだろ。それに街に行くんだぞ? エルフが行っていいのか?」

「知ってるよぉ。街に行ったことだってあるしぃ」

「プリムラ、いいか?」

「構いません」

エルフは降りそうにないので、そのまま連れていくことにした。

次は、サンタンカの水産加工場である。

途中にある川にかかっている橋を渡ると、水で締まり硬くなっている湖畔を走る。

「すごーい! これでエルフの集落まで行ってよぉ」

「行けないこともないけどなぁ」

湖の測量をしたときは、湖の外周を回る条件つきだったが、最初からエルフの集落に行くなら森の中に入ってしまえばいい。

ただ、湖から川沿いで行ったほうがわかりやすいだろうな。

森の中に入ってしまったら、集落の位置が解らないはずだ。

「そんなの私が乗っていれば大丈夫だよぉ」

なにやら精霊を使って道案内をしてくれるらしい。

さしずめ異世界のカーナビか?

サンタンカにはすぐに到着したので、そのまま加工場に向かう。

木でできたちょっと大きめな建物が俺を出迎えてくれる。

この中で女たちがテーブルに座って、スモークサーモンなどの燻製を作っているのだ。

獣人とエルフを車内に残して、プリムラと一緒に加工場に行くと、木製のドアを開ける。

中は暗いが、陽の光が入ると材料が傷むからだ。

「う~す、元気でやってるか?」

俺の声に、長テーブルについていたたくさんの女たちの視線が一斉にこちらを向いた。

「「「きゃぁぁぁ! ケンイチ様ぁ!」」」

女たちが一斉に席を立つと、俺に襲いかかろうとしたのだが、その動きが止まる。

後ろで、プリムラが怖い視線を送っていたのだ。

この加工場はマロウ商会が仕切っているので、女たちはプリムラに逆らえない。

機嫌を損ねてクビになるのは、惜しい職場なのだ。

それでも気の強い女が、プリムラに一言申す。

誰かと思ったら、ダリアからやってきたアザレアだ。

俺が一番初めに泊まった宿屋の給仕をやっていた女だな。

「いくらマロウ商会のお嬢さんだからといって、ケンイチを独り占めはずるいんじゃない?」

「ふふふ、私はケンイチの側室ですよ?」

ニッコリと笑うプリムラが怖い。

その迫力にアザレアも、すごすごと引き下がった。

「俺のことはいいから仕事をしろ」

俺は、アイテムBOXからクラーケンの肉を取り出すと、テーブルの上に置く。

そこに場長がやってきた。

この男もマロウ商会から派遣されている。

「これは領主様! イカクンの注文もたくさん入っていたのですが、原料がなくて作れなかったのですよ」

「すまんな、しばらく留守にして」

「いいえ、領主様のお仕事ですから」

場長と話していると、懲りないアザレアがやって来た。

「ねぇ、ケンイチ。南の街で魔物退治したって聞いたんだけど……」

アザレアが勤めているこの加工場でも、そういう話が流れてきているようだ。

多分、情報の出どころは獣人たちだろう。

魔法陣の話を漏らされると困るが、魔物退治は別にいい。

「ああ、鉱山からスケルトンが大量に出てな」

「それを、ほとんどケンイチがやっつけたの?」

「まぁ、そんな感じだなぁ。でも、他の連中も頑張ってくれたぞ?」

「う~ん、さすが私のケンイチ」

だが、アザレアの行動に他の女たちから物言いがつく。

「ちょっとあんた! なんなのさ、領主様とそんなに親しそうに!」

「親しそうって、実際に親しいしぃ」

「まぁ、知り合いなのは確かだな」

彼女は、俺がこの世界にやってきて、初めて知り合った女性だし。

「それに、あんたらとは決定的に違うところがあるんだよ」

「なにさ!」

「私は、ケンイチとやったんだもんねぇ」

「「「ええええっ!?」」」

女たちの悲鳴にも似た叫び声に混じり、後ろからも声が聞こえてきた。

「ケンイチ、本当ですか?!」

俺の隣で、プリムラが怖い顔をしている。

「ダリアに初めて訪れたときに、彼女には色々と世話になったんだよ」

「そう! 愛人にしてくれるって言ったのよね?」

「それは言ってない」

「もう!」

「色々と教えてもらったり、世話になった対価はちゃんと渡したはずだぞ」

「ううう……私のことは遊びだったのねぇ……」

「ウソ泣きは止めなさい」

「ちぇ!」

こいつは相変わらずだなぁ。前からだったが、したたかすぎる。

「しっかりしているのも、したたかなのもいいが、それじゃ男が寄ってこないだろ?」

「うぐ……」

図星をつかれたのか、アザレアが沈黙した。

それなりに可愛くてスタイルもいいのに、相手がいないらしい。

あの宿で春を売っていて、付き合っていた男もいたはずなのにだ。

まぁ、ここで遊んでいる暇はない。

「それじゃ、作業を頑張ってくれよな」

「「「は~い!」」」

アザレアも金を稼ぎに来たと言っていたから、そのうちダリアに帰るのだろう。

親もいるらしいしな。

車の所に戻ってくると、プリムラと一緒に乗り込む。

これでやっと、アストランティアに向かえる。

「ふう、やっとアストランティアに向かえるねぇ」

後ろに乗っていたニャレサが、俺が考えていたことと同じことを言う。

助手席に乗ったプリムラは黙ったままだ。

「旦那、中からキャーキャー聞こえてきたけど?」

耳のいいニャレサが聞き耳を立てていたようだ。

「ごめんよ、プリムラ。君に会う前の話だ」

「解っているけど……」

「なんだい旦那。また女かい? どんだけ増やせば気が済むんだい? ははは」

後ろからニャレサの笑い声が聞こえてくる。

まぁ、プリムラはしばらく機嫌が悪いかもな。

「只人ってのは、そんなことで揉めるのねぇ」

セテラが不思議そうにしているが、エルフは性に自由で、誰とでもするって話だからなぁ。

俺たちが揉めている意味が解らないのかもしれない。

「貴族様だから、仕方ないねぇ」

ニャレサが言うのは、一般的な貴族のイメージの話だろう。

「その貴族になる前の話だからな」

「それじゃ、宿屋や飲み屋の女とやって、小遣い渡して――ぐらいの話だろ?」

「そのとおりだな」

「そんなんで不機嫌になってちゃ、貴族様の側室なんて務まらねぇぜ、お嬢」

「そ、そんなこと……解っているけど……」

「プリムラ、なにか埋め合わせをするよ」

「……」

まぁ、あまり弁解をするようなことでもないし。

ニャレサが言ったことが、すべてなのだ。

プリムラは黙ったまま、車はサンタンカから街道に繋がる曲がりくねった道を走る。

久々にこっちの道を走ったな。

街道からサクラに直通の道路が完成したので、そちらばかり使っているし。

向こうの道のほうが凸凹してないし、まっすぐだ。

俺たちが走る道の左側には川が流れているが、キラキラと水面が光って眩しい。

「この川がどこから流れてくるか、知ってるぅ?」

後ろからセテラの声が聞こえる。

「森の奥に泉があるとか聞いたが……」

「そうそう、そのあたりにもエルフがいるんだよぉ」

「へぇ? 別の部族か?」

「うん」

人が入らないような森の中には、いるんだなぁ。

でも、エルフがいるんじゃ、森の中を突っ切ろうとしたら捕まるだろうな。

セテラと話をしているうちに、アストランティアに到着した。

「すごーい! もう着いたの?」

エルフが窓にへばりつくように、街並を見ている。

「いきなりエルフが現れて、皆が驚かないだろうか?」

「別に、只人が驚いたからって、私には関係ないしぃ」

エルフってのはこういう感じらしい。

「こいつは楽チンでいいや。あいつら、いつもこんなのに乗っていやがるのか」

ニャレサが言うあいつらってのは、ミャレーとニャメナのことだ。

さて、まずはマロウ商会の支店だな。