軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ブレンナールへ

作業台の上に、帽子と靴と傘が並べられていた。

「こ、これは僕が作った靴?」

ミシェルが一つを手に取った。パージが帽子を持ち上げ、すぐに眉を寄せた。

「いや、違うじゃねーか。よく見たら仕上げ方がワシとは別もんだ」

「でも、デザインはそっくりよ。しかも物によっては、うちよりいい作品も……」

ナタリー、パージ、ミシェルが黙った。

「人気商品が真似られるのは当たり前よね。王都のお店はいつもそんなものよ。パクったり、パクられたり」

エレナが肩をすくめた。

「それはわかってるわ。ただ問題は、これらの商品がブレンナールで作られているということ!」

エレナ以外の三人が声を上げた。

「な、なんだって!?」

「なになに? どういうこと?」

「ああ、エレナは知らなかったよね。実は——」

「えええええ!? あなたの元旦那さん!?」

エレナの声が、部屋の天井まで届いた。

「ええ、私が作った店舗跡地で、同じ商売を始めたみたい」

「まさか、あんな男に商売ができるわけがない!?」

「そうよね。おそらく、あのロザリーという人と、その仲間のはずよ」

パージが腕を組んだ。

「全く、あいつらは本当に何もんなんだ。仕上げは甘いとはいえ、それなりの仕事してるぜ?」

「ええ。だから今日からブレンナールに行こうと思って」

外から、エンジン音が聞こえた。

鞄を持って立ち上がる。

「あ、ニッキーが来たみたいだわ」

「エレナ、パージ、二、三日、店と工場をお願いね」

「お、おう」

「わ、わかった」

階段を降り、建物を出る。自動車が止まっていた。

窓の上からパージが見ていた。

「あいつら仲良いなあ……」

◇ ◇ ◇

汽車が夜の野原を走っていた。

「わざわざ社長自らついて来ていただかなくても」

「いえ。我が社としても、看過できない問題ですから」

「ありがとうございます。心強いです」

──本当にそれだけ?

窓の外を流れる景色を見ながら、私は自分の内心をこっそり叱った。

──この人は本当に、仕事のためだけについてくるのかしら。もしかしたら……。

「ガブリエルさん!」

「は、はいっ!」

「着いたら、まずはカトリーヌ夫人のところに行きましょう」

「そもそも、彼らがブレンナールでどうやって商売をしているのか。カトリーヌ夫人ならわかるはず」

「は、はい。私もそのつもりでした。忙しくて、もう半年も帰れていなかったので」

──バカ! 私、何考えているのよ!

私たちはただのビジネスパートナーだ。ニッキーだってそう思っている。汽車の振動が続き、夜が深くなっていった。

朝、ブレンナールの駅に着いた。

懐かしい匂いがした。石畳、海風、街路樹の葉の匂い。半年で、街は変わっていなかった。

カトリーヌ邸の門をくぐると、侍女が駆け寄ってきた。

「奥様がご病気!?」

「は、はい。今も部屋に臥しておられて」

──そんな。だって、手紙にはそんなこと一言も。

扉が開いた。

寝台の上に、カトリーヌ夫人がいた。顔色が悪い。いつもの張りが、その頬から消えていた。

「いらっしゃい、ガブリエル、ニッキー」

「奥様!」

「ご、ご無沙汰しています。カトリーヌさん、ご体調は大丈夫ですか!?」

「今年の夏は暑かったからね。ちょっと体調をくずしただけよ」

──本当かしら。随分顔色が悪いわ。

「お久しぶりです、夫人」

「相変わらず良い男ね」

夫人がかすかに微笑んだ。それから私を見た。

「で、今日は二人で何の報告かしら? もしかして一緒になるって報告でも!?」

「なななな、何言っているんですか? そんなはずないじゃないですか」

私は全力で手を振った。ニッキーが黙って、こちらを見ていた。

「あらそうなの、残念ね。ニッキー?」

「そ、そんなことより、お聞きしたいことがあるんです」

少し話してから、本題に入った。

「ブレンナールの店が!?」

カトリーヌ夫人が眉を上げた。

「そうなんです。王都に品が回るほど繁盛しているんでしょうか?」

「いや、そんなはずはないわ」

夫人が首を振った。

「この辺りの貴族社会は閉鎖的よ。最近、私は夜会を開けていないけど、だからといってこの辺りの貴族夫人がバルサンの店から商品を買うとは思えない。あの店はお品の力もあるけれど——あなたの人柄で繁盛していたのよ」

「……ありがとうございます」

「男性はどうでしょう?」

ニッキーが口を開いた。

カトリーヌ夫人と私が同時に振り返った。

「この辺りの貴族夫人はカトリーヌ夫人のお友達ばかりですが、男性に関しては別なのでは?」

夫人が少し考えた。

「そうね。男たちには男たちの社会があるから……例えば、女性へのプレゼントとして男性が買っているのは、あるかもしれないわね」

「わかりました」

私は立ち上がった。

「では、直接尋ねようと思います」

夫人が顔を上げた。

「ブレンナールのロザリーのお店を」