軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第74話 パンツァーファウスト60型と鉄条網

馬車旅を始めて6日目の昼頃。

「トロールが5匹、こちらに気付いて接近してきます!」

シアが馬車を止め、向かってくる魔物の名称と数を叫ぶ。

リースが落ち着いた手つきでオレのAK47にバナナマガジンをセット。安全装置を解除してコッキングハンドルを引き、 薬室(チェンバー) に弾丸を装填する。

リースは念のため予備で作っていた ALICE(アリス) クリップにマガジンポーチをぶら下げる。頬についた汚れも気にせず、AK47を手に馬車を降りる姿はまるで歴戦の女ゲリラ兵士だ。

「それじゃ2人とも頼んだぞ」

「任せてリュートくん!」

「リュートさんの期待に応えられるよう頑張ります!」

トロールを迎え撃つのはスノーとリースだ。

2人はAK47を手に馬車の前へと回り込む。

クリスはそんな2人を援護するため御者台に立ち、M700Pを手にしている。

2人は角馬を怖がらせないため馬車からある程度離れる。

立射姿で前方を向けAK47を構えた。

AK47の威力を知らないトロールが真っ正面から距離を縮めてくる。

50メートルを切ると、2人はセミ・オートマチックで発砲。

肉体強化術で補助した身体能力で反動を抑え、2発ずつ撃つ。弾丸は狙い違わずトロールの頭部を吹き飛ばす。あっという間にスノー&リースは2匹ずつ倒してしまう。

残った1匹は背を向け慌てて逃げ出すが、もう遅い。

そこはすでに『ヴァンパイア』のキルゾーンだ。

ダンッ!

『7.62mm×51 NATO弾』の発砲音とほぼ同時に、逃げ出したトロールの頭部に穴が開く。

クリスは当然の如く、ボルトを前後して空薬莢を吐き出した。

戦闘時間は合計しても3分経っていないだろう。

スノーが素材取りの後、トロールを焼く。

リースがAK47に安全装置をかけ戻ってくる。

発砲を終えた彼女の頬は幸せそうに紅潮していた。

「AKを貸してくださってありがとうございます。やっぱりこの反動がいいですね」

「すっかり、リースもAKの取り扱いに慣れたよな」

「これもリュートさんが教えてくださってお陰ですよ」

この6日間でリースも流石に旅慣れた。

馬車には酔わなくなったし、薪集めや夜の見張り番も問題無くこなしている。

そんな彼女に、念のため護身としてAKの取り扱い&操作を教えた。最初、発砲音や衝撃に怯えるかと心配していたが、意外にもリースはAKを気に入る。

特にフル・オートがお気に入りで、練習で撃ち終わった後、なぜか頬を赤く染め腕や体に残る痺れに酔っていた。

彼女曰く――『はふぅ、この反動が快感です』とのことだ。

なんだこのトリガーハッピー状態は……。

本人も知らなかった嗜好に気付かせてしまったらしい。

最初は『もしかして不味かったか?』とも思ったが、今回のトロール討伐のように撃つ機会があったらやりたがるぐらいで特に問題は無さそうだ。

夜、食事を取り終えると席に着き 香茶(かおりちゃ) を飲みながら、皆に話をする。

話の内容は、明日辿り着くグリーン・ホーデン森林にいる、討伐目標である 大蠍(ジャイアント・スコーピオン) 対策についてだ。

オレはリースに頼んで2つの品物を取り出してもらう。

対戦車榴弾発射器――パンツァーファウスト60型と、鉄条網だ。

パンツァーファウスト60型はテーブルの上に、鉄条網はすでに金属製の杭に繋がれているため地面に置いてもらう。

まず彼女達が興味を示したのは、最後に地面へ置いた鉄条網だ。

『まるで鉄で出来た茨みたいです』

「鉄じゃなく魔術液体金属で作ってるけどな」

「これはいったい何に使う物なの?」

スノーが首を傾げ尋ねてくる。

「これは鉄条網と言って、敵の侵攻を遮る物なんだ」

鉄条網とは――有刺鉄線と丸太などを組み合わせて作られたバリケードである。

有刺鉄線とは茨のような棘がついた金属製の紐のような物だ。その形状から 茨線(いばらせん) ――略してバラセンとも呼ばれる。

今回オレは『レイザーワイヤー』と呼ばれるタイプの有刺鉄線を製作した。

通常の有刺鉄線は鉄線に棘金属を巻き付けているのに対して、『レイザーワイヤー』は鉄線に直接、金属製の棘が生えている。『レイザーワイヤー』の場合、金属板を直接カットして作るためだ。

なぜ『レイザーワイヤー』にしたかというと――通常の有刺鉄線を製作するより、魔術液体金属で金属の棘が一緒に付いた鉄線を作る方が手っ取り早かったためだ。

この『レイザーワイヤー』と魔術液体金属で作った金属棒で、柵型の鉄条網を製作した。

見た目は細いが耐久性が減り出すギリギリまでメイヤが魔力を注いで作ったため、ちょっとやそっとでは切断出来ないレベルになっている。

この特製鉄条網で 大蠍(ジャイアント・スコーピオン) を足止めし、AK47の掃射で注意を引く。そして、気を引いている間に横合いからパンツァーファウストを撃ち込み止めを刺す。

かなりシンプルな作戦だが、これがもっとも成功率の高い作戦だと思う。

「若様、作戦概要は分かったけど、この『パンツァーファウスト』で本当に 大蠍(ジャイアント・スコーピオン) に止めを刺せるの? 大蠍(ジャイアント・スコーピオン) の外皮は剣が刺さらないほど硬いんだよ」

ウッドキャッスルの客間で打ち合わせした際、 大蠍(ジャイアント・スコーピオン) の詳細を聞いた。

体長は最大10メートル。

外皮は剣、槍、弓が刺さらないほど硬く、鉄の硬度を持つ。

魔術もあまり効果無し。

3本の尾から毒針を発射する。飛距離は約50~70メートル。

まるで毒針を飛ばす戦車か装甲車といった魔物だ。

確かに並の冒険者では手も足も出ない。

レベルⅤのクエスト扱いされるのも納得だ。

だが、それらを踏まえてオレは断言する。

「一応、試作品を試射してみたが、この前戦ったツインドラゴンクラスなら楽に吹っ飛ばすぐらいの威力はあったよ。だから十分、 大蠍(ジャイアント・スコーピオン) に止めをさせる威力はあるよ」

「――ッぅ!?」

テーブルに載せていたパンツァーファウスト60型の弾頭部分をノックするように叩いていたシアが、慌てて手を引っ込める。スノー、クリス、リースもテーブルから距離を取った。

オレは微苦笑して、皆を安心させる。

「大丈夫、その程度じゃどうにもならないよ。ちゃんと手順を踏んで発砲しないと爆発しないから」

逆に言えばちゃんと手順に従って使わないと十全の効果を発揮しない。

「パンツァーファウストはもちろん僕が使うけど、念のため皆にも使い方を覚えて欲しい。明日、もしかしたら僕以外が使う場合があるかもしれないから」

オレの言葉に皆は一斉に同意してくれる。

オレはテーブルに載っているパンツァーファウスト60型を手に、使い方の説明を開始した。

見張り番の時間になるまでには皆、使い方をマスターしてくれた。