軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第73話 仲間

1日目、見張り番。

見張り番は、事前に決めていたとおり3交替で行う。

順番は――

1番目、オレとクリス。

2番目、スノーとリース。

3番目、シア。

という順番だ。

今回シアが1人だけなのは、彼女がオレ達の中で一番気配察知に長けているからだ。そのため一番危険があり、闇が濃い夜明け前を担当して貰う。残りは消去法でオレ、クリスより気配察知に長けているスノーが、見張り番初心者のリースとペアを組まされる。

スノー達は幌馬車内で眠る。

オレはクリスと焚き火を囲み、見張り番を務める。

「クリス、寒くないか?」

『大丈夫ですよ、お兄ちゃんこそ寒くありませんか?』

「そういえば気になってたんだけど、どうしてクリスはウォッシュトイレが駄目なんだ。ヴァンパイア族的に水が苦手とか?」

でも、メイヤ邸で良く風呂にも入っていたし、ブラッド家時代ヴァンパイア族は水が苦手なんて話を聞いたことがない。

クリスが恥ずかしそうに答える。

『だってあのウォッシュトイレ、水が出る勢いが強すぎます。痛いですよ。それに変なところに当たるし。お兄ちゃん達が喜んでいる意味が分かりません』

変な所ってどこに当たったんだ?

ちょっとその可愛らしい口から言ってみようか――というセクハラ&羞恥プレイはさすがにしない。

しかしなるほど、最初のやり方を間違えて、トラウマを受け付けてしまったのか。

確かにウォッシュトイレの操作はやや難しい。

ノズルは手動でハンドルを回し位置や出る温水の勢い、温度も自身で調整しなければならない。

もちろんある一定以上の出力にしようとしても、出ない仕組みにはなっている。

もっと簡単に操作出来るようにするか、前世の世界のように自動で修正するか――兎に角、まだまだ改善点は多そうだ。

こんな感じで周囲を警戒しつつ、クリスと会話を楽しんだ。

そして交替の時間になるが……。

「むにゃむにゃ……国中のトイレをウォッシュトイレに変えちゃいましょう」

「駄目だ。まったく起きない」

リースは慣れない馬車旅などの疲れから、見回り番交替時間になっても起きなかった。肩を揺すったり、声をかけても起きない徹底ぶりだ。

さすが真面目系ポンコツ姫。ある意味でお約束を裏切らない人だな。

「本当にすみません。姫様の代わりにボクが務めますから」

むしろシアが起きてしまい、申し訳なさそうに恐縮している。オレは彼女を宥めた。

「シアは予定通り3番目の見張り番に備えて寝ておけ。オレが代わりにスノーと見張り番をするから。リース様は疲れてるみたいだから寝かせておいてやろう」

「だったらわたし1人でも大丈夫だから、リュートくんはもう休んで」

スノーがオレを気遣う。

「ありがとう、スノー。でも、オレも久しぶりにスノーと一緒に2人っきりで話とかしたいからさ。それともスノーはオレと一緒じゃ嫌か?」

「もうリュートくん、そんな言い方されたら断れないよ」

スノーは嬉しそうに尻尾が千切れんばかりに左右に揺れる。

話が纏まった所で、オレとスノーは見張り番に立つ。

クリスはシアと一緒に馬車で眠った。

オレは食事前に集めた枯れ枝を追加して、焚き火を維持する。

スノーはオレの隣に座ると、嬉しそうに腕を絡め匂いを『ふごふご』嗅いでくる。

「おいおいいくらなんでも汗臭いだろ。止めておけって」

「大丈夫だよ。むしろ汗臭いから最高なんだよ。リュートくんは何も分かってないんだから!」

やれやれ、と小馬鹿にしてくるスノーの彼女の頭を抑えて押しやる。

『あーんッ』とスノーは嫌がりじたばたした。

「まったく、ちゃんと見張り番しないと駄目だろ」

「大丈夫だよ、ちゃんとしてるよ。だから、匂いかがせてってば、これであと3日は戦えるから!」

嫌がるスノーが可愛くてもっとイジメたくなったが自重する。

あまり盛り上がり過ぎると、今度はオレが見張り番を疎かにしそうになるからだ。

オレはスノーの好きにさせながら、彼女とゆっくり話をして交替の時間まで過ごした。

時間になり、シアを起こすとオレ達は入れ替わりに馬車へと入る。

一番端にリースが寝て、次にクリス、スノー、反対側にオレが体を横たえる。

目を瞑ると一日の疲労が押し寄せ、あっという間に眠りに落ちた。

▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

「本当にごめんなさい!」

朝一で起きたリースが謝罪の言葉と一緒に頭を下げる。

見張り番の時に起きられなかったことを謝っているのだ。

「大丈夫ですよ、気にしてませんから。だから、顔をあげてください」

オレは彼女の気を落ち着かせるために声をかける。

だが、彼女にかかった暗雲は晴れない。

「私は姉や妹と比べて、いつも何をやっても駄目で、ドジばかりで……今回も勇者様や皆様に迷惑ばかりかけて。自分の無能さ、世間知らずさが恥ずかしいです」

リースの瞳に涙が滲む。

気付けばオレは王女である彼女の頭をぽんぽんと撫でていた。

「いいんですよ、迷惑をかけても、ドジを踏んでも。オレ達は今、一緒に旅をする仲間じゃないですか。仲間の失敗を助けるのは当然じゃないですか」

「仲間……ですか?」

「はい、僕や嫁達は少なくともそう思ってます。一国の王女様に対して失礼かもしれませんが」

オレの言葉にスノー&クリスが力強く頷く。

「い、いえ、失礼なんて! むしろ凄く嬉しいです!」

リースはそれを目にして、慌てて否定する。

オレはそんな彼女の態度が微笑ましくて、ついつい口元が弛んでしまう。

「だからいくらでも迷惑をかけてください。その代わり、もし僕やスノー、クリス、シアが失敗をしたら今度はリース様が助けてください。一緒に旅をする仲間として」

「――ッ! はい! 助けます! 私なりに頑張って絶対に皆様を助けます!」

彼女は涙を拭うと力強く断言する。

どうやらこれでリースの暗雲も晴れたらしい。

さらに彼女は高揚した表情であることを要求してくる。

「一緒に旅をする仲間として『様』付けは止めてください。気軽に『リース』とお呼びください」

おいおい良いのか? 一国の王女様を呼び捨てにするなんて……。

しかし『仲間』を楯にそう言われたら拒否するのは難しい。

「だったらリース様も僕のことは『勇者様』ではなく、名前で呼んでください」

「分かりました。これからはリュートさんと呼ばせて頂きますね」

「……じゃあ、これからも宜しく、リース」

「はい、リュートさん」

オレたちはちょっとだけ恥ずかしそうにしながら、見つめ合う。

そこにスノーが、

「だったらわたしは、リースちゃんって呼ぶよ! これから宜しくねリースちゃん!」

『では、私はリースお姉ちゃんとお呼びしますね』

「はい! スノーさん、クリスさん! 宜しくお願いします」

シアは主が見た目は歳の近いスノー達と友好を深めている姿が眩しいのか、瞳から涙を流しハンカチで拭っている。

こうしてオレ達は本当の意味で旅を共にする仲間となることが出来た。