軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第426話 お礼と予想外

リースの願いで彼女の姉、ララとお腹に居る赤ん坊の助命嘆願&彼女達について PEACEMAKER(ピース・メーカー) が保証する旨の手紙を書いた。

問題が起きた場合、オレ達 PEACEMAKER(ピース・メーカー) が『全ての責任を取る』と回りくどい文章でだが、明言する。

これで何か起きた場合責任をとることになったが、最愛の妻の頼みだ。

後悔など微塵もない。

手紙は金に糸目を付けず、最速の便でハイエルフ王国エノールへと送り出す。

さらに PEACEMAKER(ピース・メーカー) の外交、諜報を一手に担うミューアに念には念を入れてハイエルフ王国エノールへ釘を刺しておくよう頼むのも忘れない。

またララ派閥が変な動きをしないよう監視強化も依頼しておいた。これで今回の『ララ派閥脱走未遂事件』に似た計画を立ててもすぐに察知できるだろう。

察知した後は義父であるリース父に密告するもよし、自分達で直接潰すのもよしだ。

問題を起こす可能性があるハイエルフ達を全員始末すれば面倒はないが、ハイエルフ族は人数が少ない。そのため滅多なことでは死刑にならない。

下手に死刑にしたら数が激減する可能性があるためだ。

ララの場合は色々やらかしすぎてただのハイエルフならとっくの昔に死刑になっている。だが、彼女は王族で、お腹に赤ん坊が居るため未だ処刑されていない。

竜人種族とはまた別の意味で面倒な種族である。

ハイエルフ族といえば、今回もう一人の関係者であるルナ・エノール・メメア第3王女はというと――本部グラウンド端にある大型兵器研究所に篭もって個人的な研究をひたすらおこなっていた。

故に実姉&自国の騒動に関してルナは全く知らない。

どうもルナは開発や研究に嵌っているようだ。

『外部で起きていることなんて興味無いから』といった態度で研究所に引きこもっている。

これはこれで問題があるような気がするのだが……。

ちなみに現在のルナの研究テーマは『アサルトライフルの改造』だ。

オレに意見を求めず独自で色々弄っているようである。

与えられた仕事はしっかりとこなしているので、自分の時間をどう使おうがかまわないのだが、二、三日研究所から出てこないこともある。

ちゃんと睡眠や食事を摂っているか心配になるのだが……。

時間を忘れるほど夢中になる気持ちも分かるので指摘し辛い。体調管理だけには気を付けて欲しいものだ。

またララ&赤ん坊の助命嘆願の一件で、とても珍しいことがあった。

手紙を出した夜、シアに呼び出しを受けたのだ。

護衛メイド……メイド仕事にプライドを持つ彼女が主と仰ぐリースの夫、オレと二人っきりで話がしたいと声をかけられた。

彼女とは長い付き合いだが、初めての経験である。

人目を気にしているようだったので、夜、執務室へと彼女を誘った。

執務室に入り、二人っきりになると――シアはオレの前で片膝を突き深々と頭を下げる。

「若様、ララ様の助命嘆願の件、誠にありがとうございます。自分からも感謝を」

「わざわざ呼びだしてまで、言わなくてもいいのに」

オレは微苦笑しながら目の前で跪くシアの肩を叩く。

彼女を立たせる。

シアとは表向き主従関係だが、修羅場を何度もくぐり抜けてきた仲間だ。彼女的には誠意を持って感謝を表したかったのだろうが、畏まってお礼を言われるのはやはり照れる。

「気にするな、リースの願いだしな。それに今のララに何かできる力は残っていないわけだし」

もっとも危険な精霊の加護『予知夢者』は、あの中心地で戦った際、彼女自身が『ある日を境に「予知夢者」で未来を視ることができなくなったわ。ランス様が異界の扉を開いた以降、未来が真っ暗で視えなくなっていることに気付いたの』と言っていた。

現在も恐らく使用不能だろう。

残る『千里眼』は脅威的な能力ではあるが、地下牢からでなければどうということもない。

「それにオレ自身、彼女に思うところもあるしな」

「若様……」

オレは最初、ランスと共に死ぬことを覚悟していた。

結果的にはこうして自分だけが生き残った。

彼を殺したことに後悔はない――が、忘れることなどできるはずがない。

ランス死亡から大分たっているのに、未だ彼を思い出すと心の一番柔らかい部分が痛む。

恐らくこの痛みは一生、文字通り死ぬまで変わりはしないだろう。

オレはこの気持ちを背負って、これからも救いを求める人達を助け続ける。

リースに頼まれたのもあるが、ララはともかく、お腹の赤ん坊には罪はない。

「だから、シアがお礼を言う必要はないさ。気持ちだけ受け取っておくよ」

「ありがとうございます、若様」

オレの返答にシアは、もう一度感謝の念を込めて頭を下げたのだった。

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受付嬢さん問題で溜まっていた仕事も粗方片づけ終えると、各所に結婚式参加確認へと向かう。

最初に向かう場所はもちろんエル先生が居る孤児院だ。

勘違いして欲しくないのは、決して私利私欲からエル先生達の元へ最初に行く訳ではない。

エル先生達には結婚式参加確認だけではなく、アルジオ領ホードが PEACEMAKER(ピース・メーカー) の領地になったこと。

新・純潔乙女騎士団の支部に近い扱いにするため、人員や各種武装を持ち込む話をしなければならない。

そのため一番最初に行かなければならないのだ。

これも仕事だ。

仕事なら仕方が無い。

オレ達は新型飛行船ノアに乗り込むと、真っ直ぐ妖人大陸孤児院へと向かった。

孤児院に到着すると、エル先生とギギさんに笑顔が出迎えてくれる。

勇者騒動のせいで子供達が増えたため、孤児院は改築され格段に広くなった。

応接室も旧孤児院に比べて広がったお陰で、オレ達全員が入ることができた。

広いと言ってもオレ達7人に加えて、エル先生&ギギさんの計9人だとさすがに手狭に感じる。

シアがリースの『無限収納』から出した茶器一式で香茶を淹れて、お茶菓子を並べる。

オレはその様子を視界の端に捉えながら、用件を順番に話していく。

一通り聞いたエル先生が満面の笑みを浮かべる。

「リュート君達の結婚式にはもちろん参加させてもらいますね。ねぇ、ギギさん」

「ああ、何があろうと参加させてもらおう」

ギギさんもエル先生の言葉に力強く頷く。

しかし、町の防衛強化には難色を示した。

「問題は団員達の受け入れだな。アルジオ領ホードを PEACEMAKER(ピース・メーカー) の領地として取り込んだのは理解した。リュート達の実力なら難しいことではないだろう。だが、ただでさえ人が増えているのに、リュート達の団員を受け入れるとなると与えられる土地がないのだ。食料もそれほど余裕はないぞ」

ギギさんは困ったように言う。

忘れていた。

『黒毒の魔王』レグロッタリエを倒した後、勇者として祭り上げられた。その際、この町は『勇者の故郷』として大勢の人々が移住してきたのだ。

土地がなくなるのも当然である。

オレ達はすでにこの地を得ているため権力と武力で町人を追い出すことは可能だろうが、現実的にできる訳がない。

PEACEMAKER(ピース・メーカー) の理念に反するし、エル先生が絶対に許さないだろう。

送り込む団員が少なければ問題はないが、少人数では意味がない。

数人程度では 8.8cm対空砲(8.8 Flak) すらまともに運用できないぞ。

「自分達の手で開墾するならこちらとしても助かるが、リュート達の団員は女性だけだろう? 有名な 軍団(レギオン) に入団したのに、突然開墾しろと言われて納得するのか?」

ギギさんの指摘にぐうの音も出ない。

著名な 軍団(レギオン) に入団して華々しく活躍すると思ったら、田舎で開墾することになった。

この落差に納得する団員がどれだけいるのだろう?

最初はローテーションを組んで、ココリ街外で長期動く遠征の訓練、指揮する幹部候補生育成のための場所だと考えていたが……。

最初が開墾というのはハードルが高すぎるか?

オレは暫く考えてから保留にする。

「すみません。こちらから話を持ち込んでおいて申し訳ないのですが、一度、本部に持ち帰って検討し直します。防衛強化は絶対にするので話が覆ることはありませんが」

「それがいいと思いますよ。ですが防衛強化と言ってあまり好き勝手やっては駄目ですからね?」

「……肝に免じておきます」

オレは適当な笑みを作り、返答する。

エル先生達が居る町の防衛を妥協するなどありえないがな!

表情に出てしまったのか、エル先生は頬に手を当て溜息を漏らす。

話が一区切りついたところで、次の話題に移ろうとするが……エル先生の視線がギギさんへと流れる。

オレだってエル先生とは長い付き合いだ。

彼女の表情を見ればある程度、予想はつけることができる。

エル先生はタイガの件を聞きたいのだろう。

体調を悪くしていないか、ご飯は食べているのか、お風呂はちゃんと入っているのか、着替えて清潔にしているのか、現実逃避のため酒精ばかり飲んでいないかなど、聞きたいことは多々あるだろう。

しかし、隣にはギギさんが座っている。

男女問題は当事者の前で軽々に触れていいものではない。

今、この場でギギさんに退席してもらう訳にもいかず、口を噤んだのだ。

エル先生は逡巡してから、別の話題を振ってくる。

「そういえば、うちの妹のアルがリュート君達に会いに行ったそうだけど。迷惑はかけていないかしら?」

『!?』

エル先生の話題に PEACEMAKER(ピース・メーカー) 側が驚きで目を見開く。

なぜエル先生が、アルの存在を知っているんだ!?

どこからか情報が漏れた?

いや、ありえない。

情報の封鎖はミューアの手でおこなっている。彼女が本気を出したら、情報が外部に持ち出されることはない。

残る可能性は――。

そして気付く。

考えれば簡単なことだ。

なぜすぐに気付かなかったんだ!

答え合わせをするようにエル先生が話を続ける。

「この前、アルから手紙が届いて『暫くココリ街に滞在する』と書かれていたのですが……もしかしてまだリュート君達のところへ行っていないのですか?」

あの駄兎アルは、メイヤパパこと竜人種族、魔術師Bマイナス級ハイライ・ドラグーンと本部へ乗り込む前に、エル先生宛に手紙を出していたのだ。

いくらミューアの手腕が優れていても、とっくの昔に出された手紙を押さえるのは不可能である。

アルが自信満々で本部に乗り込んできた理由がコレか……。

オレは崩れそうになる笑顔をなんとか保ち返事をする。

「い、いえアルさんとは無事にお会いすることができました。今はココリ街の宿ではなく本部の特別に改装した 地下牢(部屋) で元気に本を読んで過ごしていますよ。ずっと 詐欺(仕事) が忙しかったのでしばらくはのんびり過ごすそうです」

「もうあの子ったらリュート君達に迷惑をかけて……」

「いえいえ、ちゃんと団員達の 監視&歩哨業務(訓練) を手伝ってもらってますから。滞在ぐらいどうってことないですよ」

嘘は言っていない。嘘は。

エル先生はオレの返事に微苦笑を漏らす。

「ならいいのですが……。でも、ココリ街に居るなら結婚式の時に久しぶりにアルと会うことができそうですね。それはちょっと楽しみです。妹にも叔母としてソプラ、フォルンの顔を見せてあげたいですから」

「…………」

隣に座るギギさんの眉間に皺が刻まれる。

父としてはあの駄兎アルに可愛い子供達を会わせたくないのだろう。教育上害悪でしかないからな。

気持ちは凄く分かる。ほんとによく分かる!

しかし、エル先生が望んでいるのだ。

会わせない訳にはいかない。

オレ達はエル先生の言葉に乾いた笑いをするしかなかった。

ココリ街に戻ったら、地下牢へ行ってアルと交渉をしなければ……。

彼女がエル先生の実妹でなければ話は早いのに。

オレは話をしながら脳裏で、駄兎との交渉方法を模索し続けたのだった。