軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第427話 魔人大陸への結婚報告

駄兎ことアルさんの話をした後、ソプラとフォルンに会う。

また元『黒』メンバー達にも会って、結婚式出席について尋ねた。

彼女達に微妙な顔をされた。

彼女達的にはシャナルディアとオレが結婚し、祖国ケスラン王国再興を夢見ていた。にも関わらず、シャナルディア以外の嫁、しかも複数人と結婚する様子を見るのは心情的に複雑らしい。

とりあえず、参加か不参加かはエル先生達を迎えに来るまでに決めてもらうことになった。

孤児院で一泊してから、次の魔人大陸へと向かう。

出発する準備をしていると、エル先生が一人でオレ達の所へ来て訪ねてくる。

「タイガちゃんはリュート君達の所に居るのよね? ちゃんとご飯は食べているかしら?」

昨日はギギさんの手前黙っていたが、エル先生は夫に告白したタイガを本心で心配していた。

一通り現状を聞くと、胸をなで下ろす。

「リュート君達が側に居てくれるなら大丈夫そうですね。よかったです」

「エル先生は――」

「? どうかしましたか?」

「いえ、なんでもありません」

『エル先生はタイガとギギさんが結ばれ、一夫多妻になってもよかったのか?』と訊きそうになったが思いとどまる。

安易に尋ねていい内容ではない。

エル先生やタイガ、ギギさんに対しても失礼過ぎる。

オレは一呼吸入れてから笑って誤魔化した。

準備を終え、エル先生やギギさん、ソプラとフォルン、孤児院の子供達や元『黒』メンバーに見送られて妖人大陸を後にする。

次に向かった先は、旦那様達が居る魔人大陸だ。

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魔人大陸、ブラッド家に到着する。

旦那様達から歓迎を受けつつ結婚式の件を告げると、エル先生達同様二つ返事で参加を了承してくれた。

結婚式当日は、ブラッド家一同がココリ街に来て祝福してくれることになる。

その中に当然元女魔王アスーラも入っているかと思ったら、旦那様と奥様は難しい顔をする。

旦那様と奥様の反応に、ブラッド家リビングのソファーに隣同士で座ったクリスと同じように顔を見合わせた。

代表して旦那様が口を開く。

「実はアスーラ様についてリュートに相談したいことがあるのだが……」

「相談ですか?」

「どうも最近、アスーラ様の様子がおかしくてな」

旦那様と奥様が状況を説明してくれる。

アスーラはランスが天神化した際、大層慌てふためいていた。

無事に天神化したランスが倒され、世界に再び魔力が戻る。

当然、彼女も喜んでいたが、同時になぜか涙を流していたらしい。

アスーラ自身、なぜ涙を流しているか分からず、最初は生活態度も変わらず過ごしていた。

しかし、ここ最近、元気がなく部屋に篭もったり、中庭でぼんやりしていることが多いらしい。

気分転換に街へ買い物、近場旅行、お茶会などを開いているがあまり効果がないとか。

「我輩達ではどうすればいいか分からなくてな」

「リュート達ならアスーラ様を元気づけるいいアイデアが出るかもと、夫と話していたのよ」

旦那様、奥様とも心の底から心配していた。

元女魔王アスーラを元気づける方法か……。

さすがに今の時点でぱっとは思いつかない。

現在気分転換のため、アスーラをハム族のメルセさんが街中に買い物に連れ出している。

彼女が戻ってきたら話をする約束を旦那様達と取り付ける。

しかし、アスーラを元気付ける方法か……。

ふと、出会った時のことを思い出す。

彼女は長い間ずっと生き続けてきた。自らを封印しながらもだ。

記憶の混乱を抑えるため、過去の記憶は封印しているとアスーラは言っていた。

ランス天神化で封印している記憶が刺激され、天神との過去、懐かしい出来事や悲しい事、多くの記憶・情報が溢れ出そうになっているのかもしれない。

約10万年の記憶。

元女魔王だからといって、簡単に押さえつけられるモノでもないだろう。

元気づけるより、彼女から反応をするまでそっとしておいた方がいいのかもしれないな。

旦那様達が一段落付いたと、息を吐き出す。

「結婚式といえば、この前、リュート達が挨拶をしに行ったビショップ家の次男、アームス殿の結婚が決まったらしいぞ」

「えっ!? アームスが結婚ですか!」

青天の霹靂。

天神化したランスの力でパワーアップした『黒毒の魔王』レグロッタリエを一撃で屠った受付嬢さんを間近で見て、心が折られたアームスが結婚だと!?

オレだけではなく、クリス含めた嫁達全員が前のめりに問い質す。

「相手! 相手は誰ですか!? 大体、ずっと病気療養していたはずじゃ!」

「復活した魔王の毒は治癒したけど、未だ後遺症があるから傭兵団団長は引退。傭兵団は元副団長がトップに。結婚して奥さんと二人、長兄を影から支える裏方に回るらしいわよ」

「それでアームスさんの結婚相手はやはり強気で、彼を引っ張っていくような感じの女性なのでしょうか?」

「いいえ、お茶会で奥様達から聞いた話では、どちかというと大人しい、控えめな、護ってあげたくなるお嬢様らしいわよ。もしかしてリュートの言っているのがアームスさんの好みなのかしら? だとしたら真逆の相手よね。政略結婚かしら? でも、ビショップ家が今更政略結婚なんて……」

今度は奥様が考え込む。

旦那様はそんな奥様の態度に肩をすくめる。

一方、事情を知るオレ達はというと――アームスの変化に納得していた。

出会った時から、彼は『理想の女性を探している』と公言していた。

その理想とは『強い女性』である。

自分より圧倒的に強く、自身の背に乗り角馬のごとく扱い戦ってくれる女性が好みだと臆面もなく告げていた。

しかし、アームスが理想する女性はなかなかおらず、父や兄からの見合い話も蹴っていたはずなのに……。

恐らく……いや、確実に受付嬢さんのせいだろう。

彼は復活した『黒毒の魔王』の毒を受け、長い間療養していると言っていた。

しかし、見舞いに行くと実際は、まーちゃんを従える受付嬢さんと出会ったせいで心をへし折られてしまっていたのだ。

受付嬢さんの話題を向けると、涙目で頭を下げてきた。

あの『強い女性が理想です!』と断言していたアームスがだ!

結果、悪夢を見るほど呵まれ、理想の女性像――性癖、げふん、ごほん! 趣味嗜好が変化するほどのトラウマを与えられたようだ。

本当に不憫でならない。

思考の海に埋没していた奥様が顔をあげる。

「そうそう、アームスさんといえば、ビショップ家からリュート達がお見舞いに来た際、賊の侵入を防げず迷惑をかけたお詫びの品を贈りたいと相談を受けているのだけど。何か要求するモノとかあるかしら?」

「無いです。まったく無いです。お気遣い無用だとお伝え下さい」

隣に座るクリスが『コクコク』と首が取れる勢いで縦に振る。

だいたい、メイヤが余計なことをしたから受付嬢さんがビショップ家にウエディングドレス姿で乗り込むことになったのだ。

非はむしろこちら側にある。

謝罪を頂くだけで恐縮なのに、物なんてもらえる訳がない。

むしろこちらが菓子折を持って謝罪に行くべき案件である。

また受付嬢さん侵入を目撃しているアームスが、何も言わないのはこれ以上彼女と関わりたくないからだろう。

オレ達も彼の考えに賛同する。

ドラゴン王国国王、ロン・ドラゴンが受付嬢さんを引き取ってくれたとはいえ、まだ彼らは結婚していないのだ。

下手に藪を突いて再び世界滅亡危機を引き起こしたくなどない!

奥様、旦那様に対してやや失礼に当たるが、強引に話題を変えさせてもらう。

これ以上、あの人達に関わりたくはないのだ!

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後日談として――結婚式を報告を終えて獣人大陸ココリ街に戻った後、新・純潔乙女騎士団団員達のまとめ役をしているカレンに、兄であるアームス・ビショップの結婚報告を教えた。

彼女はアームスの結婚話を聞いて、文句を言い出す。

「兄ィが結婚するなど! 私は認めないぞ!」

クリスから以前聞いたことがある。

カレンは3人兄妹で、彼女は末っ子の妹。長兄とは歳が離れ、彼女の物心が付く前には父の仕事を手伝っていたとか。

故に歳の近い次兄アームスが彼女を構っていたためカレンは懐いて、彼のやること全てマネしていた。

カレンが武器を手に戦場へ出たがるのはアームスの影響らしい。

彼女自身にアームスのような特殊な趣味はないが。

そんな妹が兄の結婚話を聞いて怒り出す。

ココリ街本部、食堂でお茶を飲みながらカレンの正面に座るオレ、クリスが宥めた。

『落ち着いてください、カレンちゃん。アームスさんも納得しているのですし、ここは素直にお祝いするべきだと思いますよ?』

「クリスの言う通りだ。それに聞いた話じゃ、性格は大人しいがいい娘らしいぞ」

オレとクリスの援護にカレンは不満そうな顔をする。

「ちゃんと私がしっかりと納得する人じゃなきゃ駄目だ! エル先生を嫁に出したリュートならこの気持ちは分かってくれるだろ?」

「あー……まぁ、気持ちは分からなくないけど……」

『リュートお兄ちゃん!』

今度は隣に座るクリスが頬を膨らませ抗議してきた。

しかし、エル先生の件を出されると反論し辛い。

今はギギさんとの結婚を認めているが、当時は受け入れるまで時間がかかったものだ。

まだ尊敬していたギギさんが相手だったから、ギリギリ許せたが……。

カレン自身、兄の結婚相手と顔も会わせたことがない。

それで納得しろというのが無理な相談である。

とはいえ、アームスにもアームスの生き方があるのだ。

実妹とはいえ結婚相手に口を出すのはどうかとも思う。

オレは彼女の気持ちを理解しつつ、受け入れやすいようにフォローした。

「カレンの気持ちは分かるよ。でも、アームスさんの人生はアームスさんのものだから。オレだってギギさんは尊敬していたけど、当時、エル先生と結婚するって最初は受け入れ辛かった。でもエル先生自身が願ったことだったから……。オレの気持ちを押しつけ続けるなんてできないよ。エル先生が幸せになるなら、それが一番だからな」

カレンはこの意見に『ぐぬぬぬぬ』と悔しげな表情を作るが、反論できず黙り込む。

一方クリスは、『リュートお兄ちゃんもちゃんと大人になったのですね……』と妙な感動をされた。

まるで今まで駄目な大人のような言い方じゃないか。

これは後でクリスと話し合う必要があるな。

「…………」

反論を考えていたが結局は見つからず、カレンは肩を落とし項垂れる。

「すまないが、私は失礼する。自室に戻って色々考えてみたいから……」

オレとクリスは黙って、食堂を出て行くカレンの背中を見送った。

これで少しは兄離れをできればいいのだが。

最悪、カレンが小姑化して、兄嫁をいびったりするのだろうか?

そんなカレンは見たくないな……。

さてどうなることやら。