軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第391話 PEACEMAKERvs天神ランス2

ノア・セカンド――ガンシップからブローニングM2の50口径(12.7mm)が降り注ぐ。

続いてMk19を参考にした 自動擲弾発射器(オートマチック・グレネードランチャー) が、遠慮無く撃ち込まれた。

鼓膜を破るほどうるさい爆発音が響き渡り、中に仕込まれた魔石が砕けて通常よりも威力が高い爆炎を作り出す。

その光景をオレは巨石の影から見守っていた。

中心地にはストーンサークルのような巨石が円を作り出している。

オレはM2が発砲された時点でその影に退避。

退避を確認してから、スノー達がノア・セカンドから本格的な攻撃を開始したのだ。

さすがに魔力無しであの爆発の側に居たら、死んでしまう。

スノー達は手を弛めず、 8.8cm対空砲(8.8 Flak) の準備が整ったのか照準を合わせる。

当然、狙いを付けるのはクリスだ。

爆炎が舞い上がった中心へと着弾。

新たな爆音と衝撃波を作り出す。

オレは耳を押さえ、巨石の影で衝撃に耐える。

地面が震動したのを感じた。

暫くして落ち着き、煙が晴れるのを感じて巨石の影からランスを覗き見る。

最初、彼との1対1での戦いでは個人で持ち込める程度の小火器しかなかった。

今回は飛行船ノアに載せないと移動すらままならない重火器の攻撃ばかり。

結果は――

「ぐうぅぅ……」

ランスは分厚い抵抗陣を張り巡らし、本来であれば形が残るのも難しい重攻撃を耐えきる。

だが、ダメージが0という訳にはどうやらいかない。

オレが攻撃を加えた時と違い明らかに苦しげな声を漏らしている。

スノー達は僅かだがダメージが通った事に気付き、追撃をしかけようとするが――

「調子に乗るなよ! 何度も何度も攻撃を喰らうほど間抜けじゃないんだよ!」

ランスが声を荒げ両手を左右に振る。

呪文を唱えず空中に柱大の氷柱が姿を現す。

彼は嗜虐的な笑みを作り、柱大の氷柱を空を飛ぶノア・セカンドへと発射する。

スノー達は一度攻撃を中止して、回避行動へと重点を置いた。

ランスが勝利の笑みを浮かべたのも当然である。

この異世界にある飛行船ならば、この攻撃で『詰み』だ。

一般的な飛行船は魔石で浮かび、帆で風を受けて進む。そのため基本的に移動は風任せで遅く、融通が利かない。

しかし、飛行船ノアは、一般的な飛行船とは一線を画する。さらに操縦者は運転技術に天才的才能を持つココノ・ガンスミスだ。

その天才性はクリスの射撃技術に匹敵するとオレは胸中で思っていた。

新型飛行船ノアとココノ。

まさに鬼に金棒の組み合わせである。

グン、とまるで引っ張られるようにノア・セカンドは速度を加速させた。

氷柱はノア・セカンドを狙いハリネズミのように発射されるが、氷の巨大な重量が仇となり速度があまり出ていない。

ランスは無尽蔵の魔力を注ぎ込み、狙って発射するが、初速は速度が上がっても途中の空気抵抗でどうしてもスピードを削られてしまう。

なにより狙い方がマズい。

地上から上空を飛行する物体を狙う際、今飛んでいる位置そのままを狙ってもあたらない。

飛行する物体が数秒後に到達するであろう位置を狙って攻撃をしなければ当たらないのだ。

もっと具体的に言うと――前世、地球、アメリカ軍では空を飛ぶ飛行物体(ヘリや戦闘機など)を地上から攻撃するため対空攻撃専用の公式の計算式が存在する。

未来位置は飛行物体の速度と、発砲する弾丸の速度によって導き出されるのだ。

21世紀の兵器ならば大抵コンピューターが計算してくれる。

もし地上からアサルトライフル、機関銃で攻撃をする場合は、計算式に当てはめて計算すれば射撃すべき位置が分かる。できればだが。

実際は現場で計算なんてできるはずがないので、勘で撃つしかない。

しかしこの勘での射撃が以外と馬鹿にできないのだ。

たとえばベトナム戦争時、地上からアサルトライフルや軽機関銃などでアメリカの航空機が何機も撃墜されている。

とはいえ対空攻撃は本当に難しい。

第二次世界大戦時、万能兵器である 8.8cm対空砲(8.8 Flak) でさえ、4つを準備。

正方形に配置され、敵機の未来位置を計算し、砲弾の破片が広がる位置まで考慮する必要があった。

これだけやっても高速で空を移動する飛行物体を落とすのは至難だ。

実際、計算や砲弾の時限ミスで、爆発せず飛行物体を通り過ぎたこともあったとか。

ココノはさらに飛行船ノアを上昇させる。

物理的に距離が開いたせいで、より一層ランスは氷柱を当てにくくなった。

ただ闇雲に狙っても撃ち落とすのは困難な状況である。

ランスは上空を見上げて、意識を完全に新型飛行船ノアへと向けていた。

その隙を逃すほどオレ自身、お人好しではない。

巨石の影から顔を出し、AK47を向ける。

AK47に付けられた『GB15』の40mmアッドオン・グレネードを発砲。

狙い違わず、ランスの側面に当たり爆発を起こす。

爆発をやり過ごし、弾倉に入っている7.62mm×ロシアンショートを全弾発射する。

「リュートくん! 君の攻撃が効かないって分かってるはずだろ! 邪魔をしないでもらおうか!」

煙が晴れた中、ランスが苛立ちを露わに声を飛ばしてきた。

ダメージを与えられないのは分かっている。

初めから横やりを入れて意識を分散させるのが狙いだ。

ランスは予想通り、飛行船ノアから視線を外しこちらを見る。

一方、飛行船ノアは回避行動を一旦停止し、安定飛行に入った。

高度は先程のままで、再びランスが攻撃を開始しても当てるのは困難だろう。

逆に言えば、ランスからの攻撃を回避しやすいということは、飛行船ノア側からも手を出し辛くなったことになる。

もし攻撃をしかけようとした場合、普通なら榴弾を撃ち直撃ではなく範囲攻撃をおこなうしかない。

その場合、巨石に陰に隠れているとはいえオレごと吹き飛ばすことになるだろう。

だが、飛行船ノアにはクリス・ガンスミスが乗っている。

遠く離れているが、彼女がランスを狙っているのを肌で感じる。

発砲。

120mm 滑腔砲(かっこうほう) から装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)が初速1650m/s――落下速度をプラスしてそれ以上の速度でランスへと襲いかかる。

「!?」

オレに気を取られていたため、ランスの反応が遅れた。

彼は咄嗟に抵抗陣を形成するが、 8.8cm対空砲(8.8 Flak) の2倍以上の貫徹力を誇る一撃に耐えきれるはずもない。

それでもさすが天神の力と言うべきか、ピンポイントで胴体を狙った装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)だったが、天神の強大な魔力で作り出した抵抗陣によって狙いがそれてしまう。

装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)はランスの右腕をもぎ取ると、落下角度が悪かったのか地面には刺さらずバウンドしストーンサークルのような巨石外へと消える。

ランスは右腕をもがれたにもかかわらず、痛みも感じず、血も流れていない。

神核(しんかく) を取り込んだせいだろうか?

また気になる点がもう一つ。

ずっと彼はストーンサークルのような巨石の中心から動こうとしない。

オレ個人との戦闘時も、スノー達が参戦してからもだ。

先程の飛行船ノアに対する攻撃も、地上から氷柱を放つより、自ら空を飛んで直接叩くなりした方が効率がいいはずだ。

神核(しんかく) を取り込んでいるのだから、空ぐらい飛べるだろう。

動いていれば装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)も当たらなかったはずである。

ではどうして、巨石の中心から動こうとしないのだ?

考えられる答えは一つ――ランス自身、動きたくても動けないのだろう。

今だって、彼を中心に複雑な魔法陣が回転し、図案を変質させ、さまざまな色に点滅を繰り返している。

地球への扉を開く魔法陣は尋常ではなく複雑で膨大な魔力を使う。

神核(しんかく) を手にしたからといって、一朝一夕で力の制御が完璧になるとは考え辛い。

漫画やアニメ、ラノベによくある状況だ。

ランスが力を手に入れて、目的を知った時点でこうなると予想はしていた。お陰でオレの考えている作戦が、上手くいきそうである。

「天神の力で作った抵抗陣を貫通するなんてどれだけの威力なんだ! 第一、ファンタジー世界に大砲なんて持ち込むなよ!」

痛みはないようだが、片腕を失ったランスはバランスを取り辛そうにしていた。

装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)の攻撃を生身で受けたら近くを通り過ぎただけで、普通はソニックブームで挽肉になるというのに……。

彼は元気よく声を張り上げる。

これも天神化したお陰なのだろう。

そんな彼の丈夫さに呆れながら、上空を飛ぶスノー達にハンドサインを送る。

クリスの目なら問題なく拾えるだろう。

スノー達はこちらの指示に気が付き、すぐに実行へと移す。

危険を承知で飛行船ノアが高度を下げ再び、 自動擲弾発射器(オートマチック・グレネードランチャー) を発砲。

片腕を失ったランスを中心に爆発と爆炎が乱舞する。

だがこの攻撃は彼を倒すものではない。

通常のグレネードに混ぜて撃たれた煙幕弾がランスを中心に濃い煙を作り出す。

普通ならこんな濃い煙の中、敵の居場所は特定するのは難しいが、ランスは魔法陣の中心から動こうとしない。

位置を簡単に把握することができる。

クリスが再び120mm 滑腔砲(かっこうほう) を発射し、地上に舞っている白煙を切り裂く。

今度は狙い違わずランスの胴体を装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)が貫いた。

装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)は地面に突き刺さり、項垂れたランスの支えとなる。

同時に地面で蠢いていた魔法陣が空気に溶けるように消失していく。

後に残ったのは装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)に貫かれたランスだけだった。

オレ達はランスを倒したのだろうか……?