軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

軍オタ6巻発売記念連続更新SS もしもリュートがヒモだったら

一日の仕事が終わり、新・純潔乙女騎士団本部三階の客室。そのリビングで妻達&一番弟子と一緒に寝るまでの極短いお茶会を楽しむ。

オレはソファーに深く体を預け、溜息と一緒にぼやいた。

「確かに PEACEMAKER(ピース・メーカー) の理念は、『困っている人、救いを求める人を助ける』だけど、まさか『働かない彼氏の就職先斡旋相談』は予想外だよ……」

昼食後、仕事をしているとココリ街の商店に勤める女性が 冒険者斡旋組合(ギルド) を通さず仕事の依頼をしてきた。

その仕事内容が『現在一緒に同棲している彼氏の就職先斡旋』だった。

二人は将来的に結婚するつもりだが、同棲している彼氏は仕事が長続きせず、1年ほどは相談主である女性が働いて食べさせていたらしい。

さすがそろそろ働いて欲しいが、本人に話題を振ると不機嫌になるため話し合うこともできない。

なので藁にも縋る思いで、オレ達に彼氏が働くように説得&仕事の斡旋をお願いしに来た。

本人達にとっては深刻な悩みなのだろうが、仕事斡旋はともかく男女のいざこざに巻き込まれるとは想定していなかった。

結局、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) の外交部門担当のラミア族、ミューア・ヘッドに仕事紹介と彼氏の説得を丸投げした。

彼女は1時間ほどで彼氏を脅――説得。知り合いの商人に話を付け、仕事を紹介してもらった。

依頼人である彼女は、これほどスピーディーに解決するとは思っておらず、何度も頭を下げお礼を告げていた。

うちの理念としては間違っていないのだが、なんだか釈然としない依頼だった。

「しかし魔物が跋扈する厳しい世界で1年もヒモとして食べさせてもらえるなんて。よっぽど彼氏さんを愛していたのか、格好良かったのかね。まったく羨ましい話だよ」

「リュートくん、『ひも』ってなに? 彼氏さんがロープっていうこと?」

「何って、そのままの意味だけど……」

シアが淹れてくれた香茶を飲んでいると、隣に座るスノーが小首を傾げる。

皆にも視線を向けるが、誰も意味が分からず首を振る。

どうやらこの異世界に『ヒモ』という言葉は浸透していないらしい。

まぁ地球のスラングのようなものだしな。

オレは説明がてら適当に誤魔化す。

「昔、読んだ本に、働かずに女性に食べさせてもらうことを『ヒモ』って呼ぶって書いてあったんだよ」

『面白い表現ですね』

スノーとは反対側の隣に座るクリスがミニ黒板を掲げる。

日によってローテーションでオレの左右隣に座る嫁達が変わるのだ。

正面のソファーにはリース、ココノが座り、下座にメイヤが一人用の椅子に座っている。

「羨ましいということはリュートさんも『ヒモ』になってみたいということですか?」

「あくまでネタで言っているだけだよ。本気じゃないさ」

「ですよね。それにリュートさまには、あまり似合う姿ではありませんよね」

リースの問いに答えると、ココノがほんわかとした笑顔で安堵する。

実際、オレはこの世界でやりたいことがある。

そのためにも動かずにはいられないのだ。

「ですが、もしリュート様の気が変わり『ヒモ』になりたいと仰るなら、いつでも! いつまでも! わたくしが受け入れて差し上げますので! もうそりゃ、街を挙げたお祭りで、自宅までパレードをしながらリュート様を『ヒモ』として迎え入れますわ!」

『ヒモ』を祝い街を挙げて祭り&パレードって……嫌過ぎるだろう。

皆、絶対に『ヒモ』になるオレを白い目で見つめるはずだ。

でも、メイヤの期待に逆らえず白い目のまま拍手をしたり、歓迎の祭りを開くんだろうな。

その光景を想像しただけで居たたまれない気持ちになってしまう。

オレは寒くもないのに自分自身を抱きしめ震え上がる。

スノーの言葉で空気が変わった。

「でも、もしリュートくんがたとえばわたしの『ヒモ』になったらどんな風だったんだろう?」

「オレがスノーの『ヒモ』か……」

彼女の言葉に思わず頭の中で想像する。

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想像の中――スノーは魔術師学校を卒業し、冒険者として生活費を稼いでいた。

『リュートくん、今日も頑張って魔物を狩りまくってくるね!』

『その前にスノー、悪いんだけど、ちょっとお小遣いもらえないかな?』

『昨日、お昼代も込みで銀貨1枚、渡したよね?』

銀貨1枚で約1万円。

オレはそのお小遣いを――

『実は昨日、滅茶苦茶堅いレースがあってさ……。本当なら3倍になって返ってくるはずだったんだけどスッちゃって』

『またお馬さんレース? この前も似たようなこと言ってたじゃない。借金とかしてないよね?』

『もちろんだよ! 熱くなっても借金してまでやらないって、スノーと約束したじゃないか! 大好きなスノーとの約束を破るわけないだろ』

『大好きなんて、えへへへ、もうリュートくんったら』

スノーはオレの言葉にテレテレと恥ずかしそうに頬を赤くし、体を揺する。

『もうしょうがないなリュートくんは、わたしがいないと本当に駄目なんだから。はい、銀貨1枚。無駄遣いしちゃ駄目だよ?』

『ありがとう、スノー! 愛してる!』

『わたしも、リュートくんを愛しているよ!』

オレ達が互いにギュッと抱き合う。

スノーは一緒に『ふがふが』と匂いを胸一杯嗅いでいた。

『それじゃ今度こそ行ってくるね!』

『おう、気を付けてな!』

スノーが冒険者として魔物狩りに出た後、オレも馬レースのリベンジを果たすため着替えて外へ出ると――

そこにはオレが震え上がる人物が立っていた。

『え、エル先生……ッ!?』

請われて診療に来たのか、オレとスノーが住む街に彼女が居た。

『リュートくんとスノーちゃんの現在の関係は、街の人から聞きました。まさかスノーちゃんに危険な魔物退治をやらせて、リュートくんは働かずにいるなんて……』

エル先生は怖い顔で、絞り出すように声を出すが、一転――大きな瞳から涙が流れる。

『私の……教育が間違ったせいで……リュートくんがこんな駄目な子に育ってしまうなんて……。私は孤児院の教育者として失格です』

『すみません! 今すぐ! 心を入れ替えて全力で働きます!』

オレは躊躇無くその場に土下座した。

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「――って、なりそうだな……」

オレは自身の想像を皆に聞かせる。

スノー達は一様に納得した。

「うわぁ、その流れ本当に現実にありそうだよ……」とスノー。

「エルさんなら直接顔を合わせなくても、手紙を送るだけリュートさんを更生させそうですね」とリース。

「リュートさまだけではなく、エル先生のような聖人君子の涙を前にしたら、どんな人でも改心しそうですね」とココノ。

リースやココノの意見に本気で賛同する。

エル先生から生活習慣を指摘する手紙や涙を見ただけで自身の行いを後悔し発作的に切腹するレベルである。

正直、エル先生の涙を想像しただけで胃が痛くなる。

『でも面白いですね! 想像の中とはいえ、リュートお兄ちゃんが、だらだらしている姿は!』

「だらだらというより、完全に駄目人間状態だけどな」

クリスの感想に苦笑いで答える。

『もしお兄ちゃんが、私の『ヒモ』だったらどのような感じになるのでしょうか?』

「オレがクリスのヒモか……そりゃきっとこんな感じになるだろうな」

オレは嫁の希望で、クリスのヒモになった姿を想像し話し聞かせた。

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『おはようクリス。可愛い寝顔だったよ』

『おはようございます、リュートお兄ちゃん。あんまり恥ずかしいので、寝顔は見ないでください……』

同じベッドで眠っていたクリスが、恥ずかしそうにミニ黒板で顔を隠しながら文章を突きつける。

『お兄ちゃん、お腹空きませんか? すぐに朝食の準備をさせますね』

彼女は手櫛で髪を整えながら、ベッド脇にあるベルを鳴らす。

すると、部屋に一礼してメイドが入り、クリスの着替えの準備を始める。

まず彼女は朝風呂に入るため、自室に備え付けられている風呂場へメイドと一緒に入っていった。

クリスの両親は魔人大陸でも有数の資産家だ。

そのため自宅である屋敷は城のように大きく、腕利きの魔術師が警備のために多数おり、多数の有能なメイドや執事に傅かれている。

朝食も専属シェフが作った食事を、魔人種族のメイドがオレ達が生活する部屋まで運んでくる。

メイド達は使用人らしく、無言で手早く朝食をテーブルに並べ準備した。

しばらくすると、朝風呂に入り着替えたクリスが戻ってくる。

『まだ食べていなかったのですか?』

『当然だよ。朝食も可愛いクリスと一緒に食べたいしね』

『お兄ちゃん……』

彼女は朝風呂で上がった体温とは別の理由で、頬を赤く染める。

そして感情が高ぶったオレ達は、周囲に居るメイド達の目も気にせず、互いに手を取り合う。

潤んだ瞳で見つめ合い、どちからともなく磁石のように唇が近付き――。

『ははははあはっはははは! リュート! クリス! 二人とももう起きているか!?』

だが、闖入者の登場により砂糖より甘い二人の世界は霧散する。

『おお! 起きていたか丁度良い。折角だから朝食前に 一筋肉(ひときんにく) 鍛えようと思ってな! リュートも参加するがいい!』

『い、いえ、ちょっとまだ朝食前ですし……』

クリスの父親であるダン・ゲート・ブラッド伯爵はすでに上半身裸で、鍛え抜かれた鋼のような筋肉でオレへと迫り腕を掴む。

てか『 一筋肉(ひときんにく) 鍛えよう』ってなんだよ! 一汗流そうの筋肉版か!?

『朝食前? ならちょうどいい! 朝食を食べる前に少し体を動かすのは、健康にもいいぞ!』

『旦那様の運動量は一般人の少しを超えてるんです! 勘弁してください!』

『はははははは! 落ち着けリュート! 我輩だってそれぐらい理解しているぞ! だから今回はリュートに合わせて軽く体をほぐす程度の運動量を考えているのだ! まずは眠った体を起こすためにも、100kmランニングから始めるとするか!』

『全然! 理解してないじゃないですか!』

『ははっはははは! 大丈夫! リュートが想像するより軽い軽い! 意外とこれぐらい軽く走れるものだぞ!』

『それは絶対、旦那様基準です!』

しかしいくら抗議した所で、捕まった旦那様から逃れる術はなく軽々と手荷物のように外へと運び出される。

そしてオレは強制的に朝から100kmマラソンを走らせられたり、常人には耐えきれない筋肉トレーニングをする嵌めになった。

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「――って、なりそうだよね」

『なりそうですね……確実に……』

オレとクリスだけではなく、旦那様を知る皆が、納得した表情を浮かべていた。

旦那様は嫌がらせとはでなく、本気で一緒に暮らすオレの健康を気にして、筋肉トレーニングに誘って来そうだ。

気持ちは嬉しいが絶対に耐えられない。

まだ屋敷を出て普通に働いた方がダメージが小さいだろうな。

「次はリュートさんが、私のヒモになったらどうなるか想像する番ですね」

「リースも興味があるのか?」

「もちろんですよ。こういう『ありえない話』というのは面白いじゃないですか」

「確かに面白いけどね。でも、オレがリースのヒモか……。その場合、王女のヒモとして生活するってことだよな? なかなか想像し辛いよ」

オレ自身、王族が普段どのような仕事をしているのか知らない。

夫婦が互いに黙認で愛人を囲むイメージなどはあるが、王族や貴族の未婚女性が男性を『ヒモ』として養う場合があるのだろうか?

「では今回の想像は自分が担当してもよろしいでしょうか?」

オレが腕を組み悩んでいると、給仕として香茶や茶菓子をそつなく出したり、淹れたりしていたシアが静かに立候補する。

「シアがやるのか?」

「はい、ご許可を頂ければ」

「確かにオレじゃ王族の生活が分からないしな。それじゃシアに頼むよ」

「ありがとうございます。では僭越ながら『若様がリース姫様のヒモになった場合』を語らせて頂きます」

シアは皆の注目を集めると、ゆっくりと語り出す。

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『そ、そんな……リュートさんが、私と別れて別の国へ行ってしまうなんて……』

とある日。

リースは自室で内密に交際しているリュートに宛てた手紙の返信を受け取る。

内容を確認すると、『身分の違いからこれ以上は交際できない』、『二度とこの国には立ち寄らず、顔を出さない』、『自分のことは忘れて欲しい』と別れの言葉が書かれてあった。

『姫様……』

『ごめんなさい、シア。今夜は一人にしてもらえないかしら……』

『かしこまりました』

主の要望に護衛メイドであるシアは部屋を出る。

扉を閉める直前、リースの涙声が聞こえてしまう。

シアはそっと扉を閉め、自身を納得させる。

(リース姫様には申し訳ありませんが、護衛メイドとして対処させて頂きました)

実際、リュートはリースを本心から振ったわけではない。

ハイエルフ王国、エノールの関係者に脅され手紙を書かされたのだ。

そして別れるにあたり多額の手切れ金を掴まされた。

もしエノールに姿を現したり、リースと連絡を取ろうとしたら『殺す』とたっぷりと脅されてだ。

失恋の傷は、長い時を生きるハイエルフならいつか癒える。

しかし人種族男性をヒモとして養うという醜聞は、長い時を生きるハイエルフ達の記憶へ残り続ける。

どちらが賢明かは一目瞭然だ。

そのためシアはリースの護衛メイドとして、心を鬼にして対処した。

彼女は一度、目を閉じ、感情を整理してから再び歩き出した。

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「――と。他にも『リース姫様に手紙を残さず失踪』『不幸な事故で死亡』『若い身空で謎の病死』『気付くと奴隷として他国へ売り払われる』『身に覚えのない刑罰により身柄を拘束。死刑』など複数の案があります。その中で最も穏便で刺激が少ないものを選ばせて頂きました」

「シア……一言、言わせてくれ」

「はい、なんでしょうか?」

「怖いよ! シアの案がどれも怖いよ!」

淡々と表情を変えず事務的に告げるため、なお怖い。

絶対に手加減などせず、確実にその案を実行すると彼女は言葉ではなく態度で示していた。

だが、シアの言い分も理解できる。

リースは現在嫁だが、元王女なのだ。

王女が『ヒモ』を飼うなど醜聞以外のなにものでもない。

さらに相手は孤児で、魔術師でもない一般市民。

リースに連絡を取らせず、闇に消すことなど造作もないだろう。

リース自身、シアの話を聞いて青ざめている。

「シアの想像が否定できないのが恐ろしいです。リュートさんが、ヒモではなく、軍団を作れるほどの実力者で本当によかったです。もしそうでなければ私に結婚の芽は絶対にありませんでした」

「本当によかったよ。ヒモだったら、確実に消されていただろうな……」

オレは思わず、心の底からしみじみで呟いた。

「では次はわたしの番ですね」

「ココノのヒモか……正直、想像がつかないな」

ココノにわくわくとした表情をさせて申し訳ないが、彼女は体が弱い。

そんな彼女のヒモになる姿を想像するのはさすがに難しい。

むしろ、オレが積極的に働いて、彼女の体を気遣う姿しか浮かばない。

ココノも否定できず、苦い顔をする。

「うぅうぅ、確かにわたしではリュートさまを養えません。できるとしたら……天神教で一緒に働くぐらいですね」

「それはもうヒモじゃないんじゃ……」

養うどころか、『一緒に働く』って言っちゃってるし。

「ではやはり最後は、このわたくしですわね!」

ココノの話が終わると、今度はメイヤが勢いよく声をあげる。

「リュート様がわたくしのヒモになる! あぁ! 想像しただけで、素晴らしい光景が目の前に広がりますわ! さきほども告げたようにパレードと街をあげたお祭りは必須ですわね。それとリュート様が過ごしやすいよう屋敷にも手を入れなければいけませんわね!」

メイヤはまるで本当に今すぐオレが、彼女のヒモとして生活をするように計画を立て始める。

「まずは毎日が飽きないように劇場や演奏会が開けるステージを建設。他にもカジノや遊技場を作る必要がありますわね。さらにリュート様の健康を考え、体が動かせるグラウンドや専属の運動指導してくれる人材を準備しなければ。健康といえばもちろん食事ですわ! 一流のシェフは当然として各大陸の料理をマスターした料理人は揃えます。毎日、同じ料理では飽きますから。もちろん専属の菓子職人にも必要ですわね! リュート様には美味しいデザートを食べて欲しいですもの。またいざという時の警備や治癒する人材として魔術師Bプラス級の人材を揃えさせて頂きますわ。そして当然としてリュート様とわたくしの愛の! あぁぁぁぁ! 愛の巣となるお部屋の準備もしなければ! 家具は一流所の物を用意するとして、ベッドは超一流! 超絶一流のを用意しなければ! 別に深い意味はありませんが、やはり睡眠というのはとても大切なものだと思うのです。体調に直結するものなので、やはり品質のいい物を用意しなければいけませんよね。ほら、健康のためですから! そのベッドは大きくて、一人だけではなく、ふふふ、ふふ、二人でも寝れるぐらい広いものなんです! 」

メイヤが興奮し過ぎて、話が長くなる。

しかも内容が本当に酷い。

いったいヒモ一人を囲うだけでいくら注ぎ込むつもりだ。

何が凄いかといえば、メイヤの資産なら軽く実現できる点だ。ある意味、非常にタチが悪い。

とりあえず、興奮しているメイヤを落ち着かせるため話しかけた。

「メイヤ、落ち着け。興奮する気持ちは分からなく無いが……あくまで『ヒモ』云々は話題の一つ。たとえ話だぞ。だから、そんなに興奮して話をしなくてもいいんだよ」

「そ、そうでしたわ!? わ、わたくしとしたことが、リュート様を養って差し上げられると考えただけで興奮しすぎましたわ。ち、ちなみに……リュート様にヒモ願望はありませんか?」

「まったくない。オレにはやりたいことがある。だから、銃器を作り、 軍団(レギオン) まで作り上げたんだじゃないか。第一、もしオレにだらだら生活したい願望があったら、リバーシの謝礼金を元手に、他玩具を開発して販売すれば左団扇の生活ができるんだ。女性に養ってもらう必要もないんだよ」

それに『ヒモ』になるにも才能が必要だ。維持する根気も必要になる。

女性に食べさせてもらう罪悪感に耐えるなどの、精神的タフさも求められるのだ。

オレ程度では到底できることじゃない。

昔、クリスの母親であるセラス奥様救出の際、メイヤに出資してもらったが、かかった経費はすでに色を付けて返済している。

他にも現在までかかっている費用や軍団に雇い入れている給料もしっかりと支払っていた。そのあたりの線引きはしっかりとしている。

「それにリュートくんにはヒモなんて似合わないしね」とスノー。

『今のお兄ちゃんが一番ですよ』とクリス。

「ですね。もしヒモになるような方だったら、こうして結婚できませんでしたし」とリース。

「それにリュートさまが立派なお陰でこうしてクリスさま達とも出会えましたし、他にも救われた方が大勢居ます。本当にリュートさまが、今のリュートさまでよかったです」とココノ。

嫁達が現在までのオレの生き方を認めていてくれて嬉しかった。

なんだかんだ言って、彼女達には色々無茶をさせ、面倒をかけている。

だから言葉にしてくれるとやはり嬉しい。

メイヤが慌てた様子で立ち上がる。

「り、リュート様! もちろんわたくしも、今のリュート様の生き方を全肯定してますわ! 決して否定などしませんから!」

「もちろん分かってるって」

オレは彼女の必死な様子に微苦笑し、フォローの言葉をかける。

こうして今日も夜が更けていった。