軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第327話 正式名称

「やぁ、こんにちは! 僕は PEACEMAKER(ピース・メーカー) の『ピース君』よろしくね(甲高い声)!」

オレは PEACEMAKER(ピース・メーカー) の『P』に平和の象徴である鳩の羽根と嘴、目をつけた着ぐるみ姿で挨拶をする。

これが『遊園地とネズミ』を参考にしたアイデアのひとつだ。

PEACEMAKER(ピース・メーカー) を表現する着ぐるみを作ることでアピールする予定である。

この異世界にぬいぐるみはあっても、着ぐるみという文化はない。目新しいため絶対に人目を引くだろう。

スノー達は最初、オレの案に半信半疑だったが、完成した着ぐるみを初お披露目すると興味深そうに周囲に集まってくる。

彼女達は体や腕部分の羽根などを触り出す。

「『きぐるみ?』っていうのを最初、聞いたとき意味が分からなかったけど、ぬいぐるみが実際に動いてるみたいで面白いね。可愛くないけど」

「話を聞いてイメージはつきましたが、実際に目の前でみるとスノーさんの仰る通り面白いですね。可愛くはないですけど」

スノー、リースが感想を告げる。

実際に最初、話をした時は皆一様に『?』という顔をしていた。

目の前で来て動いて見せると反応は上々だ。

しかし感想の最後に『可愛くない』というのが地味にショックではある。

「た、確かにぱっと見は気持ち悪いかもしれないけど、よく見ると可愛くないか? ほら『キモ可愛い』って奴だよ(甲高い声)」

「気持ち悪いのに可愛いって意味分からないよ?」

スノーは不思議そうに小首を傾げる。

確かにそうなんだが……前世、日本ではあったのだ。

口で説明しろと言われると困ってしまうが。

返答に窮しているとリースが話を進める。

「ですがこの着ぐるみというアイディアはいいですね。リュートさんが着ているのは微妙なのでもっと可愛いのに変えましょう」

「あと着ぐるみだけじゃなくて、ぬいぐるみも作ろうよ」

「それはいいですね」

スノーとリースが2人で盛り上がる。

この着ぐるみデザインも悪くないと思うんだが……。

そこまで拘る理由もないため納得する。

またぬいぐるみを作るなら、オレも手を加えて PEACEMAKER(ピース・メーカー) らしい物でも作ろう。

その方が周囲に対してアピールしやすいだろうしな。

「ところでリュートくん、最後に聞きたいことがあるんだけど……」

「やぁ、何でも聞いてくれていいよ(甲高い声)!」

「どうして着ぐるみの中に入ってからずっと、声を甲高くしているの?」

どうしてって、そういう決まりだからだろう。

あと、中の人などいない!

スノー、リースが着ぐるみのデザインを担当し、ぬいぐるみも発注するらしい。

2人の話を聞く限り、白ハトの胸に PEACEMAKER(ピース・メーカー) の 軍団(レギオン) 旗を入れたデザインになるようだ。

同じようなぬいぐるみも大量に発注をかけるらしい。

さて次にオレは新・純潔乙女騎士団本部の台所へと向かう。

そこでクリス、ココノが当日屋台で出すメニューの開発に勤しんでいる。

オレが前世、日本の遊園地メニューを参考にして考案した食べ物を、実際に作れるか試しているのだ。

「リュート様、ちょうどよかったです。教えてくださった試作品が出来たので味見して頂けませんか?」

『お兄ちゃんも一緒に味見をしましょう』

「もちろん、参加させてもらうよ」

ココノがオレに気付くと笑顔を浮かべて頼んでくる。

クリスも味見係をするため、席に着いていた。

オレは2人の間に挟まれるように座り、テーブルに並べられた屋台の品物前にする。

屋台で販売する品物は『ポップコーン』と『わたあめ』だ。

この異世界にもトウモロコシがあるため、『ポップコーン』を作ることにした。

前世日本に居た時、テレビか小説かは忘れたが、単純にいつも食べているトウモロコシを加熱してもポップコーンにはならないらしいと言っていた記憶がある。

どうやらいつも食べているのと、ポップコーン用のは品種が違うようだ。

そこでココリ街の商人達に声をかけてあるだけのトウモロコシを集めて加熱。ポップコーンのようになる品種を探し当てる。

無事、似た品種を発見しポップコーン擬きを作る。

やはり前世のに比べると少しだけ味が落ち、はじけも足りないが、十分及第点レベルである。

また味は塩味ひとつしかない。

本当はキャラメルを作り、溶かしてポップコーンに絡めた『キャラメルポップコーン』を作りたかったが、キャラメルの作り方が分からず諦めた。

『わたあめ』は作るのは簡単だが、製造器を用意するのが面倒だった。だからブラッド家時代、クリスのオヤツとして『わたあめ』を作ることはなかった。

では、どうやって作るのかというと――空き缶サイズの金属筒の底周囲に穴を開ける。この空き缶が回転するよう魔石モーターをセット。空き缶底部が熱せられるようにする。

これで器具の準備は完了である。

後は空き缶にこの異世界にあるあめ玉を投入。

あめ玉が熱せられると溶け出すので、魔石モーターで空き缶を回転させる。

溶けたあめ玉が遠心力によって、側面に開けられた穴から飛び出るので棒を動かし絡め取っていく。

ある程度のサイズになったら『わたあめ』の完成だ。

『ポップコーン』、『わたあめ』ともに前世の代物とほぼ遜色はない。

まずは『ポップコーン』を3人で食べる。

「うん、美味い」

「……はい、とても美味しいです」

オレは口に含んだまま感想を告げたが、ココノはしっかりと咀嚼してから微笑んで述べた。そのため感想を告げるのにワンテンポ遅れる。

クリスはというと、

「…………」

まるで研究者のように『もきゅもきゅ』と食べて、ようやく一口目を飲み込む。

彼女はミニ黒板に手を伸ばし、味の感想を書く。

『塩とポップコーンの食感が新しく食べ始めたら止まらないシンプルながらレベルの高いオヤツだと思います。ただしポップコーンが水分を吸い取るのと、塩味のため喉が渇くので一緒にジュースを販売した方がいいと思います。味は10点満点中、7.8792です』

クリスが決め顔で査定をくださす。

前より味数値が細かくなっているのは気のせいだろうか?

甘い物好きの魔人種族的にポップコーンは美味しいが、甘いジュースと合わせて食べたいのだろう。

次はクリスの大本命である『わたあめ』だ。

オレ達はテーブルのさらに置かれた雲のような『わたあめ』を素手で千切り、食べる。

「うん、甘くて美味しいな」

「はい! これは凄いです。口に入れたら一瞬でとけるなんて! わたし、子供の頃、お空に浮かぶ雲を食べてみたいかったのです。雲って食べたらきっとこんな風に甘くて、溶けてしまうんでしょうね」

『わたあめ』はココノ的に大ヒットだったらしく、食べてからうっとりと瞳を潤ませ感動に浸っていた。

一方、クリスはというと――

『これもまた新しい食感です。口に入れた瞬間、溶けて消え砂糖の甘みだけが残る不思議な感覚。ですが味が甘さだけの単調で、手に持った時もべたつきます。それを回避するために棒がついていますが、口を持って行き食べる時にべたべたになってしまうので、その回避策を考えた方がいいかもしれません。ですがあくまで味単体で評価するなら10点満点中、8.1335です』

長い感想の後、味数値が告げられる。

感想を告げている間ずっと、クリスは狙撃で暗殺でもするかのように真剣で鋭い視線をし続けていた。

彼女的に『ポップコーン』より『わたあめ』の方が味的に好みだったのが、点数が高い。

まぁ気に入ってくれたならよかったよ。

とりあえずクリスの合格も頂いたことで、『ポップコーン』と『わたあめ』は当日の屋台での販売が決定した。

他にも屋台で飲食を発売する予定である。

「楽しそうな声に釣られたら、美味しそうな物を食べているのね。屋台の試作品かしら?」

振り返ると台所入り口にミューアが立っていた。

クリスとココノが笑顔で出迎える。

『お兄ちゃんが作り方を教えてくれたお菓子ですよ』

「よかったらミューア様もお味見いかがですか?」

「では遠慮なく」

ミューアは笑顔で答えると『ポップコーン』『わたあめ』の味見をする。

二つとも彼女に好評だった。

ミューアがオレに疑問をぶつけてくる。

「美味しいのですが、これが『ゆうえんち』と『ネズミ』ということかしら?」

前に勢いで腹案云々と告げ『遊園地』『ネズミ』というフレーズを彼女に教えた。

考えてみると異世界人であるミューアに『遊園地』『ネズミ』と言って意味が通じるはずがないじゃないか。

彼女は『遊園地』はともかく食材に『ネズミを使うのか?』と危惧しているようだ。また自分が食べさせられたのが『ネズミなの?』と気にしているようである。

一応、この異世界でも『ネズミ』は食材として食べられる。

一般的に食べるのが貧民や下層住民など、所謂、貧乏人の食べ物だ。

魔人大陸でも有数のお嬢様であるミューアにとっては、苦手な食べ物らしい。

別に彼女が『貧乏人の食べ物』と差別しているのではなく、単純に好き嫌いの問題である。

元々、食材としてのネズミは、この世界でも人を選ぶ食べ物なのだ。

だが、好き嫌いをするミューアは、子供っぽくてなんだか微笑ましい。

「安心してくれ、ふわふわしたの材料は飴で、そっちはトウモロコシだから。食材としてネズミは絶対に扱わないから安心してくれ」

「そう、よかったわ。なら結局、あの単語はどういう意味だったのかしら?」

「……まぁ、そのうち分かるよ」

オレは内心、焦りで汗を流しながら意味深な言葉で煙に巻こうとする。

ミューアには見透かされている気がするが、ここは押し通すしかない。

彼女は肩をすくめて、話を切り替えてくれる。

「そうそう、実はリュートさんを探していたんですの。ようやく 軍団(レギオン) 祭(仮)の正式名称が決まったのでそのご報告に来たのです」

「遂に決まったのか。どんな名前になったんだ?」

クリス、ココノも興味深そうに 軍団(レギオン) 祭(仮)の正式名称をの待つ。

ミューアはじらすように薄い微笑みを浮かべ、たっぷりと溜めてこちらをじらしてから名称を告げる。

「 軍団(レギオン) 祭(仮)の正式名称は 軍団(レギオン) 大々祭(だいだいさい) よ」

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軍団(レギオン) 大々祭(だいだいさい) という正式名称を聞いた後、オレはクリス、ココノ、ミューアを残してそそくさと台所を出る。

向かった先は来客用男子トイレ。

オレは扉を閉め個室で頭を抱える。

「勢いで『遊園地』『ネズミ』とか言ったけど……オレ、小学校時代に家族旅行で一回行った切りで詳しい内容しらなかったよ!」

しかも小学校低学年時代だ。

記憶はすっかり消えている。

一応東京住まいだったため、クラスの友達や恋人がデートや遊び、卒業旅行で行ったとは耳にしたが――オレ自身、友達、恋人もおらず、中学校の卒業旅行にも誘われなかったため成長してから一度も行ったことがない!

知っていることといえば『ポップコーン』が売っていて、お城があるぐらいだ。

他はよく覚えていない。

頑張って絞り出してなんとか『着ぐるみ』という単語を引っ張り出した程度だ。

本当はオレだって行きたかったさ!

『海』バージョンも出来たが、これには一歩たりとも入ったことがない。そっちにも行きたかったが一人で行く勇気はない。

親に『連れ行って!』と頼む勇気はさらにない!

親に友達がいないのがバレるのは辛すぎる!

オレが前世、もっと社交的な人間だったら毎年一回は行って、乗り物で1時間待ちして乗り、お土産を買って帰ったりしていたんだろう。

ジェットコースターにのって水をしぶきを浴びたり、夜のパレードを眺めて手と手が触れ合い顔を赤くしたり――そんな青春を送りたかったよ! もし送れていたらもっと有利に 軍団(レギオン) 大々祭(だいだいさい) を迎えることができたのに……ッ。

オレはしばらく一人でトイレにこもり涙を流した。