軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第328話 事前準備

「メイヤ!」

「リュートの!」

「「武器製造バンザイ! 特別編!」」

新・純潔乙女騎士団本部で久しぶりにメイヤと2人で、あのかけ声をする。

本来なら兵器の研究・開発担当であるルナも参加するのだが、今回製造するのは 軍団(レギオン) 大々祭(だいだいさい) 用の代物だ。

もちろん将来的に使うかもしれないが、ルナが参加するほどではないレベルだ。だから『特別編』がついている。

実は一応ルナに声をかけたが『今、120mmで忙しいから、ルナはパスするよ』との返されてしまったということもある。

最近、ルナはリースにもそうだが、ベタベタと甘えてくることが少なくなっている気がする。

反抗期の娘を持ったらこんな感じなのかという気分が味わってしまう。

メイヤとしては久しぶりに二人っきりで武器製造ができるので、テンションが高い。

血色の良い頬が興奮からさらに赤くなり、鼻息も今すぐ押し倒されるのではないかと思うほど荒い。

オレは咳払いをしてから、今回作る品物をあげる。

「今回、作るのはFX弾とキティ・コーナーショットだ」

「FX弾に、キティ・コーナーショットですか。いったいどういったものでしょうか?」

オレはまず『 FX(シムニッション) 弾』について説明する。

FX弾とはよくアニメや映画、小説などフィクションでよく登場する『模擬弾』『ペイント弾』のことである。

フィクションでは昔から兵士達が訓練で使用する定番アイテムだったが、現実では実銃からペイント弾を発射することができなかった。

そのため、着色液体が入った弾を撃ち出すペイントガンを軍や警察が訓練に導入したが、ペイントガンは実際の銃器と形が違うため、どうしても実際の銃を撃っている感覚と違いすぎて練習にならなかったらしい。

そこでシムニッション社が要望に応えて、近接射撃訓練用の『 FX(シムニッション) 弾』を作り出した。

当たると割れて、赤か青のインク染みが残るのだ。

実際の実銃から発射することが出来るので、実戦さながらの訓練をおこなうことが出来る便利な弾だ。

オレはいつも通りメイヤに説明できる内容だけを告げる。

「 軍団(レギオン) 大々祭(だいだいさい) で実際の銃器を使用した 射撃場(シューティングレンジ) を作る予定なんだ。実弾を使うより、FX弾の方が安全だからな。それにFX弾を作っておけば、今後は PEACEMAKER(ピース・メーカー) 内部での訓練で色々できるし、作っておいて損はないだろう」

「さすがリュートさま! 軍団(レギオン) 大々祭(だいだいさい) だけではなく将来の戦力増強すら見据えた訓練弾をお作りなろうとするなんて! まさに慧眼! 一石二鳥! いいえ、リュート様の存在が既に無限大の得なのでこれはもう一石無限鳥レベルですわ!」

メイヤは瞳といわず、全身をキラキラと光らせる勢いで褒め称えてくる。

なんだか彼女の無茶苦茶な褒め方を聞くのも久しぶりのような気がする。

魔王との戦いや戦後問題等でドタバタしてたからな……。

オレは懐かしむ気持ちをいったん置いて、話を続ける。

「FX弾の他には『キティ・コーナーショット』も作ろうと考えている。実際、本当に必要になるかどうか分からない代物だが……まぁ用意するのは難しくないから準備だけはしておこうと思っているんだ」

では『キティ・コーナーショット』とはいったいどんな物なのか?

第一次世界大戦、マシンガンの登場により兵士達は塹壕を掘り、隠れて銃を撃ち合うようになる。その流れで『隠れながら安全に撃てる銃』というコンセプトで開発されたのが『曲射銃』だ。

銃身が曲がっているため物陰に隠れて、敵に向かって撃つことができる。

第二次世界大戦になり、いくつかの『曲射銃』が開発されたが結局一般化はしなかった。

銃身が曲がっていると普通に構えて撃てないし、製造コストもかかる。持ち運びも面倒で、整備も大変。

そのせいで普及はしなかった。

しかし、なぜか廃れず『曲射銃』の後継が現代に登場している。

名称は『コーナーショット』。

どんな代物かというと……アサルトライフルを大きくしたような器具の先端にハンドガンを固定。ハンドガンのすぐ後方、つまり全体の中程に関節があり、そこが折れ曲がることによって角度を変えられるようになっており、これでハンドガンを角度を変えて物陰から出て撃つことができる。射手は液晶画面とカメラで敵の位置を探り、発砲するのだ。

最近はグレネードランチャーが取り付けられるタイプも開発されているとか。

話を戻す。

『キティ・コーナーショット』は、コーナーショットの銃口に人形を被せることで、偽装しようという代物である。

キティは日本語で猫。一般的には猫の人形が銃口に被せられる。

だが問題があり、銃口を覆う形で人形を被せるため、発砲するたびに 中身(ワタ) が飛び出てしまう。

つまり発砲するたびに 中身(ワタ) が飛び出るため、『キティ・コーナーショット』を使用する兵士は、予備の猫人形を持っていて……と想像すると変な笑いが出る。

あまりにもシュールな光景だろう。

後、そんな猫人形に騙されて撃たれたら死んでも死にきれない。

ちなみに『キティ・コーナーショット』は、コーナーショット開発者自身が作り出したモノらしい。

コーナーショットを製作するつもりはないがお祭り時、銃は意外と威圧感があるため、『ピース君人形』を改造し装着させる予定である。

『ピース君人形』の可愛らしさで、威圧感を少しでも薄められたらと思ったのだ。

『キティ・コーナーショット』の話を聞いてメイヤも微妙そうな反応する。

一応、前世、地球で本当に存在する技術で、ある意味最先端の代物だ。

しかし最新技術だからといってなんでも『OK』という訳にはいかない。

「まぁ今回の『キティ・コーナーショット』――と言っても『コーナーショット』は開発するつもりはないから『キティ・ショット』と言うのが正しいのかもしれないが――は、あくまで銃器の威圧感軽減が目的だから。そこまで本気で作るつもりもないしな」

「では今回のメインは『FX弾』でしょうか? 『FX弾』なら将来的に役に立ちそうですし」

『キティ・コーナーショット』もある意味で将来的にも役に立ちそうだが。

ココリ街警備の際、周囲に威圧感を与えないため銃口を人形で覆いパトロールする 軍団(レギオン) メンバー達。

シュールな光景だが、個人的にはなかなか面白いと思うのだが……

「後、将来的に役には立ちそうにないが、着ぐるみの『ピース君』もお祭りに合わせて改造したいんだよな」

「改造ですか?」

「お祭り当日、暑かったりしたら中に居る人が大変だろう? だから冷暖房完備にしてあげたいんだよ」

まぁ中の人はいない訳だが。

「なるほど……確かに当日暑かった場合、中の人は大変ですわよね。なら汗もかくでしょうから、脱臭機能もつけてはどうでしょうか?」

「それは良いアイディアだな。なら他には――」

オレとメイヤは着ぐるみの『ピース君』の中で快適に過ごすためのアイディアを出し合う。だがいつしか、『ピース君』の戦闘力を強化していく流れになったのは、軍事系研究・開発者である性だとしかいいようがない。

こうして『ピース君』は戦闘能力を着々と強化されていってしまった。

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とある某所――

そこに暴力を生業にする者特有の雰囲気を醸し出す男達が集まっていた。

リーダー格らしき人物が男達に告げる。

「もうすぐとある場所で 軍団(レギオン) 大々祭(だいだいさい) が催され、メイヤ・ドラグーン様もご出席されるとか」

リーダーが男達を見回す。

「その祭の最中に、なんとしてもメイヤ様も我らがボスの花嫁としてお連れするのだ! たとえどんな手段を使おうとも、な。くっくっくっ……」

彼の言葉に男達もにやりと悪い笑みを浮かべる。

こうしてメイヤを狙う別の思惑が、 軍団(レギオン) 大々祭(だいだいさい) へと動き出していた。