軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第289話 対ランス銃器

都市ザーゴベルでスノーと師匠が出会ったという場所――裏社会を取り仕切る事務所を後にしたオレ達は、そのまま宿へと向かった。

スノーの意外な交友関係に驚かされたのもそうだが、レグロッタリエ&エイケントの問題などもあったため非常に疲れてしまったのだ。

オレは食事を取るとさっさと寝てしまった。

さらに翌日から3日ほど都市ザーゴベルに残り、スノーの師匠やレグロッタリエの情報収集をおこなった。

しかし、予想はしていたが、どちらもまったく情報は入ってはこなった。

唯一スノーの師匠に辿り着く有力な手がかりは、裏社会事務所で仕入れた『島に行くかも』というもののみだ。

手がかり0よりはマシだが、これではどうしようもない。

さてこれからどうしようかと悩んでいると、ラヤラがオレ達を追いかけて来たのだ。

街でオレ達のことを聞き込んだらしく、夕方頃に宿屋へと顔を出した。

彼女自身は詳しい情報を聞いてはいないが、ミューアからの手紙を預かってきたらしい。

早速、開封して内容を確認する。

手紙にはルナに頼んでいた武器の開発にほぼ成功したことと、ランスに動き有りという2つの情報が書かれてあった。

「どうやらスノーの師匠を味方に付ける時間はなさそうだな」

レグロッタリエも気にはなるが、今はランスを止めることが先決だ。

彼を放置すれば数万人の犠牲者が出てしまう。

オレ達はすぐさま宿を引き払い、新型飛行船ノアで獣人大陸にある PEACEMAKER(ピース・メーカー) 本部へと舞い戻る。

スノー達は旅の疲れもあるだろうから、休憩を指示。

オレは自身の執務室でミューアを相手に現在の状況を聞く。

彼女は有能な秘書のように、現状分かっているだけの情報を懇切丁寧に説明してくれた。

ミューアの情報網のお陰でランスが目指している目的地、彼らの不和の具体的内容をしることができた。

ランスの目的地は妖人大陸最北端。

妖人大陸を支配した魔王が封印されているという場所だ。

「――なるほどランスとララの間に亀裂があるかもしれないのか」

「亀裂というか、よくある恋愛問題だと思われますが」

「…………」

「どうかなさいましたか?」

「いや、さっきの話は本当なのかと思ってさ」

ミューアが仕入れた情報の一つ――ザグソニーア帝国第一王女、ユミリア・ザグソニーアとリースの姉ララ・エノール・メメアが、ランスを巡って対立している。

そのせいでララはランスに偏った愛情を向けている可能性があるというものだ。

つまり、強固な関係を築いていると思っていた二人の間はこちらが想像していたより危ういのかもしれない、という報告だ。しかし、オレは一通り話を聞いてなんだが腑に落ちない、微かな違和感に襲われてしまった。

オレの言葉に、ミューアは不機嫌な態度も取らず上がってきた情報精度の高さを強調した。

「はい、ほぼ間違いない信頼度の高い情報です。なぜならララさんの案内などを担当したメイドからの情報ですから」

「……考えてみたら、大国メルティアのメイドとはいえ内部の人間をよく抱え込めたよな」

「色々、ツテがありまして」

ミューアは微笑みを浮かべたまま答える。

大国のメイドを抱き込むなどツテでどうにかなるレベルを超えている気がするのだが……。

ミューアに関しては下手なことを言わないのが得策だろう。

オレは咳払いをして、先程感じた疑問点を口にする。

「ランスの目的地も分かった。ララとの仲もつけいる隙があるかもしれない。全部、オレ達にとって有利な情報だ。けど、それってあからさま過ぎないか?」

「……作為的なものを感じるということですね」

「少々、神経質過ぎるとは思うけどな」

まるで材料や器具、場所まで全て用意されて『はい、遠慮なく料理してください』と促されている気がするのだ。

「いえ、そういう感触は意外と馬鹿にできませんわ。確かにリュートさんの仰る通り、情報をわざと掴まされた可能性はありますね」

「仮にそうだとして……何故そんなことをするか、だが」

「いくつか推測は立てられます。我々を罠にはめるため。もしくは我々の注意を自分達に引きつけている間に、他で本命を動かす。またアルトリウスのように、注意を引きつけている間にリュートさんの大切な人達を押さえるなどですね」

ランスには転移魔術がある。

オレの親しい人を人質として押さえるには打って付けの能力だ。

今までそうした動きがないことから、その可能性は低いと思うが……

「妖人大陸がブラフで、オレ達を引きつけて転移で本命へ移動――っていう可能性はあるかもしれないな」

「確かに一番ありえそうですね」

だがその可能性を疑い二人の後を追わない――なんてマネはできない。

実は『他の場所が本命と思わせること自体が罠』だってありえる。

第一、ミューアの情報を疑う理由が勘の域を出ていない。もしかしたらオレ自身、考えすぎているだけかもしれないのだから。

「……でも念のため準備だけはしておこう。元々、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) 全員で行くつもりはなかったし」

全員で行ってもランスの転移やララの千里眼に翻弄されるだけだ。

いつものメンバーで望むのがベストだろう。

「ミューア、申し訳ないがこの後すぐ飛行船の手配をしておいてくれ。もしオレ達を引きつける罠だった場合、すぐに動けるように。その際、倒すのが目的ではなくランス達の居場所特定、妨害がメインだ」

「了解しましたわ。ではこの後、すぐに」

ミューアは一礼して、部屋を出るとそのまま飛行船の手配へと向かう。

今から押さえるのはなかなか難しいだろうが、ミューアなら上手くやってくれるだろう。

「……さて、この選択が吉と出るか凶と出るか……」

オレは執務室の椅子に体重を預けて軽く息を吐き出した。

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ミューアとの話し合いを終えたオレが次に向かったのは、急遽作った『地下兵器研究・開発部門』だ。

そこでルナに任せていた銃器が完成したという一報を受けて確認しに向かう。

『地下兵器研究・開発部門』なんて名前は大層だが、地下倉庫を片づけてスペースを作っただけだ。

なぜ地下かというと、少しでもララの『予知夢』や『千里眼』から隠蔽するための苦肉の策である。

どこまで彼女に有効かは分からないが……。

階段を下りて扉を開くと、そこにルナが待っていた。

「お帰りリューとん。結局、スノーちゃんの師匠は見つからなかったんだって?」

「もう知っていたのか? 情報が早いな」

「さっきクリスちゃん達と会って話してたから、残念だけどこればっかりはしょうがないよね。とりあえず、リューとんに依頼されていた銃器の試作品が出来たから確認してもらえる?」

そして彼女は目の前のシーツを取り外す。

シーツの下からは――バレットM82。俗に言う 対物狙撃銃(アンチ・マテリアル・ライフル) が姿を現す。

第一次、第二次世界大戦にかけて、対戦車ライフル――アンチマテリアルライフルが製造されたが、戦車の発達により貫通&破壊する。

しかし第二次大戦後、対戦車ではなく対車両や敵が所有するレーダー等の精密機器・地雷等を破壊する目的等でアメリカ軍が使用するようになる。

また狙撃銃だけあり、1km以上先にある人や物を狙撃するのにも使用される。

ちなみに、『50口径(12.7mm)の対人使用は国際条約で禁じられている(故に対物と名付けられている)』という有名な話がある。しかし50口径(12.7mm)が人体に与えるダメージが大きすぎて、人に使うのは残酷であるから――と言われているが、『国際条約で禁じられている』というのは間違いである。

『国際条約』であるハーグ陸戦条約の23条5項で『不必要な苦痛を与える兵器、投射物、その他の物質を使用禁止』とあるが、50口径(12.7mm)が『不必要な苦痛を与える兵器』として禁止された過去はない。

また50口径(12.7mm)を『人に使ってはならない』と法律等で禁じている国はないのだ。

つまり、バレットM82は『対物』と称されてはいるが、人に向けても問題ないと言える。

実際、アメリカの警察の特殊部隊SWAT(Special Weapon And Tactics、つまり特殊火器戦術隊)では対テロなどを理由に 対物狙撃銃(アンチ・マテリアル・ライフル) が購入され、配備が進められているのだ。

第一、戦争では50口径(12.7mm)より大きな口径の大砲で敵兵を撃っている。50口径(12.7mm)だけを禁止する理由はない。

話をバレットM82に戻す。

バレットM82のスペックは以下の通りになる。

口径 :12.7mm(12.7×99mm NATO弾)

全長 :144.8cm

バレル長:737mm

重量 :12.9kg

装弾数 :10発

50口径(12.7mm)という7.62の約4~5倍も重く、薬莢の長さは10cmもある怪物 弾薬(カートリッジ) である。

故に反動を軽減するために、工夫がされている。

一番分かりやすいのは、特徴的な 銃口制退機(マズル・ブレーキ) だろう。

銃口制退器(マズル・ブレーキ) を上から見ると扇状になっているのが特徴だ。

左右に穴が開いており、50口径(12.7mm)発砲の際に生じる強烈な発射ガスを拡散させることにより、反動を軽減しているのだ。

元々、 対物狙撃銃(アンチ・マテリアル・ライフル) の開発は前からおこなっていた。

しかしアルトリウス問題などがあったため、一時中断していたが、今回のランスとの対決のために開発を再開したのだ。

その開発を任せたルナが不安そうに告げてくる。

「でも、そのランスって人にはSVDの弾丸を回避されちゃったんでしょ。なのに威力が上がったからって同じスナイパーライフルで戦いを挑んでも大丈夫なの? 前回の件をクリスちゃんも引きずっているようだし……」

確かに威力が上がったとはいえ、同じように狙撃をしてもランス&ララコンビに通用する可能性は低い。

クリスがランス狙撃をあっさりと回避され、SVDを奪われたことを引きずっていることも知っている。だからこそ彼女を立ち直らせるためにも、ランス達の裏をかくためにもバレットM82が必要なのである。

「大丈夫、その辺はちゃんと考えてあるよ。むしろ前回の借りを倍にして返してやるつもりさ。だから期待しててくれ」

「……リューとんがそこまで言うなら信じるよ」

ルナはオレの言葉を信じて表情の明るさを取り戻す。

そしてオレはルナが製作したバレットM82の具合を確かめるために手を伸ばした。