軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第285話 スノーの母校、魔術師学校

タイガとの約束を取り付けた後、彼女を連れて飛行船ノアへと戻る。

タイガがスノー達と挨拶を交わしたいと言い出したからだ。

前回の騒動でいつのまにか仲良くなっていたらしい。

スノー達には彼女の許可を取り付けた話をした。

その後は飛行船のリビングでお茶会が始まる。

シアが給仕を務め、お土産用として余分に買っておいたお菓子を出し、女子会を始める。まぁ、オレも居るから正確には女子会ではないのだが。

その席でタイガに、スノーの師匠である『氷結の魔女』についての居場所や何か情報がないか尋ねた。

同じ魔術師S級同士なら何かしら繋がりがあるかと思ったのだ。

「えっ、スノーちゃんってあの『氷結の魔女』の弟子だったの?」

「うん、そうだよー。あれ、話してなかったっけ? 師匠からは『氷雪の魔女』っていう二つ名ももらったんだ」

「凄いね。あの人、気に入った弟子にしか二つ名を与えないって有名なのに。しかも自身の『氷結の魔女』に近い二つ名をもらえるなんて、よっぽど気に入られたんだね」

そうなのか。

つまり、スノーの才能がそれだけ彼女に認められたと言うことか。

「でも居場所となると、僕自身、獣人大陸の奥地に引っ込んで他との関係は絶っていたからちょっと分からないな。魔術師S級同士でも交流って無いから」

やっぱりそう都合良くはいかないか。

申し訳なそうに謝ってくるタイガを適当に落ち着かせる。

またオレ達は一度 PEACEMAKER(ピース・メーカー) 本部に戻る予定だ。

ミューアがランスに関して何か情報を掴んでいないか確認するためだ。

タイガには引き続き連絡が取れるよう孤児院から移動しないよう頼んだ。

彼女も当分はこの町を離れるつもりはなく、了承してくれた。

流石に『ギギさんが居るから町を離れないのか?』とは聞けなかった。誰しも踏み込んで欲しくない領域というものがある。

こうしてタイガとの約束も取り付け、翌日慌ただしくオレ達は本部がある獣人大陸へと戻った。

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戻った翌日、午後――すぐにミューアと顔を合わせ情報を聞く。

オレの執務室で、彼女が書類を手渡しながら説明してくれた。

「今のところランスに妖しい動きはありません。ただルナちゃんのお姉さんであるララさんの動きがどうしても掴めなくて。一応、人員を増やし調査を進めますがあまり期待はできないかと」

「確かにランスはともかく、ララは『千里眼』と『予知夢者』の能力持ちだからな……。こちらの情報網がばれている可能性も考慮して慎重に動いてくれ」

「了解しましたわ。それで次はスノーさんの師匠さんについて情報を集めてみたのですが……こちらもあまりよくありません」

ミューアから新たな書類を手渡される。

スノーから特徴を教えてもらい、『氷結の魔女』の人相描きを作成。この異世界中にそれをばらまき、現在情報を集めている最中だ。

だが、現在届いている目撃情報はどれも微妙で有力な手がかりはない。

「まだ時間が経っていないから仕方ないが……このやり方じゃ見つけ出すまでに相当な時間がかかるな」

「ですね。やはり直接動き探し出す方がよろしいかと思いますわ」

「分かった。それじゃ犯人は犯行現場に現れる――じゃないけど、とりあえずスノーが師匠と出会った場所に行ってみよう。何か手がかりがあるかもしれない」

「それは確かにありかもですね」

ミューアは感心したように胸の前で『パン』と手を叩く。

「また本部を留守にして悪いが、後のことは頼む。もし問題や動きがあったらラヤラを使って知らせてくれ。すぐに戻るから」

「了解しました。では、そのように手配しますね」

彼女は笑顔を浮かべると、各部署の調整のためすぐさま部屋を出る。

なんだかいつの間にか、ミューアがオレの秘書のような役割をするようになったな……。

しかしスノーが師匠と出会った場所といえば必然、彼女が通っていた魔術師学校側になる。

今更ながら、スノーの通っていた魔術師学校をオレは一度も見ていない。

彼女が過ごした学校がどんなところか興味はあった。

しかし仕事が忙しかったり、事件が起きたりと慌ただしいせいもあり実際に行くことはなかった。

今回だって、スノーの師匠捜しなど用事がなければ、正直足を踏み入れようとは思わなかっただろう。

「いや、確か師匠捜しの他にも用事があったような……」

オレは顎に手を当てて考え込む。

卒業証書はスノーの友人であるエルフ族のハーフ、アイナが好意で届けてくれたんだ。その席で他にも何か言われたような――

「……………………あっ、スノーの学生時代の荷物、取りに行くの忘れてた」

どうやら師匠捜しの他にも、学校に行く用事ができたらしい。

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PEACEMAKER(ピース・メーカー) 内部の調整を終えて、オレ達は再び飛行船に乗り旅立った。

向かう場所は、妖人大陸北部にあるスノーの母校である魔術学校の側にある都市ザーゴベルだ。

その都市でスノーは師匠である『氷結の魔女』に見初められ弟子入りしたらしい。

都市ザーゴベルの飛行船専門の倉庫を借りて、ノアを停める。

普通の飛行船に比べてノアは主翼があり幅が広いため、約2隻分使用することになる。

そのため費用も2倍支払わなければならなかった。

こればっかりは仕方ない。

オレ、スノー、リースは魔術師学校へ行き荷物を回収。

クリス、ココノ、メイヤ、シアが宿屋の確保にと分かれた。

リースは『無限収納』でスノーの荷物を収納してもらうために来てもらう。

シアは最初、リースの護衛メイドとしてこちら側の参加を希望した。しかし、クリス達だけでは警戒という意味でやや心配があったため、クリス側に入ってもらった。

ちなみにメイヤは珍しく、『オレの側に居たい!』と騒がずクリス側に入る。

どうやら魔術師学校にトラウマがあるようだ。

まぁトラウマというよりは黒歴史に近いんだろうが。

都市ザーゴベルから、魔術師学校まで定期的に馬車が行き来している。

それも魔術学校の生徒や親達、他関係者が往復するため学校側がもうけた交通手段である。

一般人も運賃さえ払えば乗ることができる。

その馬車で1時間ほどかかる。

もちろん時間があれば観光がてら徒歩で移動してもかまわないのだが、今回は急いでいるので馬車を使う。

実際魔術師学校へ向かうのか他の場所へ行くのか分からないが、徒歩で移動する人も多い。

そして約1時間後、スノーの母校である魔術師学校が見えてくる。

「おぉ、なんだか凄いな」

「ですね、北大陸の城壁も凄かったですが、こちらもまた立派ですね」

オレとリースは観光客よろしく馬車から降りると、魔術師学校の城壁を見上げて感想を告げた。

魔術師学校は見るからに頑丈な城壁によって囲われていた。

スノーの話では城壁は二重になっているらしい。

その二重の城壁の内側に校舎や学生寮が建てられている。

これほど立派な城壁を魔術師学校に建てるのには理由がある。

もちろん外敵を阻む意味もあるが、主に内部からの魔術を防ぐ意味合いが大きい。

そのため広い平野に作られ、周辺に民家や他建物を造るのは法律で禁止されているとか。

いつまでも見ていないで守衛所に向かい許可を取りに行く。

スノーが卒業生で、守衛も顔を覚えていたためスムーズに入出許可をもらうことができた。

その際、なぜか守衛がオレの顔を見て『あれが……』と呟き仲間内にこそこそ話し始めた。

「?」

悪意的なものは感じない。

むしろ好奇心的な視線だった。

まるでようやく見たかったパンダを見た動物園客のような態度である。

流石にリースも気がついたらしく、話しかけてくる。

「なんでしょうか、あれは?」

「なんだろう。オレ何かしたか?」

「どうしたの二人とも、早く行こう」

スノーに促され、一つ目の城壁をくぐる。

さらに進んで二つ目もくぐった。

その際、やはり『あれが……』という視線と会話を耳にする。

しばらく進むと校舎が見えてきた。

頑丈そうな石造りで、校舎というより城塞といった趣がある。

オレ達は校舎へ入り、まず一階の職員室へと向かう。

この時間はまだ生徒達が授業中らしく人気がない。

学舎独特の静けさと緊張感が漂っている。

「失礼します」

スノーは廊下にオレとリースを残して、職員室へと入る。

荷物を取りに来たことを告げ、倉庫の場所を聞くためだ。

その間、リースと小声でたわいない話をする。

普通に声を出して話さないのは学校の静けさに引きずられたからだ。

10分もかからず、スノーは一人の男性を連れて職員室から出てきた。

「どうも遠いところからわざわざお越し頂きありがとうとございます。私はここで魔術道具授業を担当してます。人種族のカルアと申します」

「初めまして、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) 代表、人種族、リュート・ガンスミスです」

「妻のリース・ガンスミスと申します」

オレとリースは、カルアと名乗る男性に正式な挨拶をする。

彼は線の細い、頭皮が薄くなりかけている神経質そうな男だった。

「どうもご丁寧にありがとうございます。それでは早速、倉庫に案内させて頂きますね。こちらへ」

カルアに促され、廊下を歩き出す。

どうやらスノーの荷物がある倉庫は校舎内にあるらしい。

カルアは歩きながら、興味深そうにオレのことを見てくる。

……悪いが、自分にそっちの趣味はない。

居心地が悪く思わず尋ねてしまう。

「あの、なにか自分の顔についているでしょうか……」

「い、いえすみません。まさか『魔石姫』と呼ばれるドラグーン様の師であるガンスミス卿にこうして会える日が来るとは思っておらず、少々興味がわいてしまって……」

「メイヤが弟子だとご存じなんですか?」

「もちろんです。先程もお伝えしたとおり、私はここで魔術道具について教えています。なのでドラグーン様の情報はある程度耳に入ってくるんですよ」

そういえばメイヤは『魔石姫』と呼ばれる天才魔術道具開発者だったっけ。

普段の言動のせいですっかり忘れていた。

またカルアは過去一度、メイヤと会ったことがあると嬉しそうに口にする。

さらに彼の口から重要な情報が流れ出てきた。

「それにあのスノーくんが自慢していた『リュートくん』様をこうして見られるなんて。後で他教員に自慢できますよ」

「え? スノーが自慢? それって……」

「ご存じありませんか? 彼女は在学中――『リュートくんより格好いい人はいない』『リュートくんの匂いは最高、一嗅ぎしただけで天国が見える』『リュートくん以上の男性なんて存在しない』などなどスノーくんが常に言っていたので。特に彼女は男子生徒の人気が高く、言い寄られるたびに先程のようなことを言って断っていましたね」

オレはカルアの話を聞いて頭を抱えてしまう。

つまり、あれだ。

守衛の人達もスノーが無駄に持ち上げていたオレが訪ねてきたから、好奇心を抑えきれず見てきたわけだったのか……ッ。

もう顔から火がでそうなほど恥ずかしい!

「スノー、頼むから変な持ち上げ方をしないでくれ……」

「?」

スノーはオレの言葉の意味が分からず、首を捻る。

彼女は本気でオレが『世界中で誰よりも格好いい男性』だと思っているらしい。

「あのなスノー、オレが世界一格好いいなんてないんだよ。頼むから変な持ち上げ方をしないでくれ。恥ずかしいから」

「いえ、スノーさんの仰るとおりです、リュートさんは誰よりも格好いいです! だから自信を持ってください」

スノーに意図を伝えていると、今度はリースが声をあげて断言する。

まさかここにももう一人、オレが『世界で一番格好いい』と思っている人物がいるとは……ッ。

気持ちは嬉しいのだが、恥ずかしさが先に立つ。

そんなオレ達をカルアがにこにこと微笑ましそうに眺めていた。

「ガンスミス卿は奥様方に愛されてうらやましいですね」

「すみません、騒がしくして……」

オレは謝罪しつつ、スノーの私物を保管している倉庫へと向かった。

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スノーの私物をリースの『無限収納』でしまった帰り道。

再び馬車に揺られて今度は都市ザーゴベルを目指す。

「はぁー酷い目にあった。もう二度とオレは魔術師学校に行かないぞ。側にだって近寄るものか」

「そんな恥ずかしがることないのに。リュートくんが世界一格好良くて、いい匂いがするのは本当なんだから」

「そうですよ。スノーさんの仰る通りです!」

「……君達、身内びいきって言葉を知っているか?」

馬車は御者以外、客は自分達しかいないが、幌もないただの荷台にベンチを左右に並べただけの簡素な作りのため、声が簡単に外へと漏れてしまう。

そろそろ都市ザーゴベルが見えてくる。

出入り口や周辺には都市を出て他街や村、魔術師学校へ行く人達は存在する。

だからあまり大きな声で『世界一格好いい』を主張しないで欲しい。

通りすがりの人達に聞かれたら恥ずかしいからだ。

心配していると、正面から旅マントを頭から被った二人組が徒歩で歩いてくる。

オレは二人の耳に入らないうちにスノー&リースを黙らせるため動いた。

「とにかくあんまりそういうことは言わないでくれ、恥ずかしいから」

二人は不満そうだが、渋々納得してくれた。

とりあえずこれで一安心だろう。

「――ッ!?」

二人に釘を刺せたことで安堵し、なんとなく先程の二人組に視線を向けた。

そして気がついてしまう。

二人組の一人の首筋から喉にかけて彫られた入れ墨に。

(首筋から喉にかけて掘られた入れ墨……まさか本物か? こんなところで出会うなんて!?)

『黒』にスカウトされ下部組織のトップを任されていた人物。

人種族、男性、名前はレグロッタリエ。

オレ達の前から姿をくらませた人物が、そこに存在していた。