軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第283話 ランス&ララへの対応会議

田中――大国メルティアの次期国王、魔術師Aプラス級ランス・メルティアと、ハイエルフ王国エノール元第一王女、ララ・エノール・メメアが姿を消した後、オレは皆に事情を話すため集まってもらった。

彼らと一緒に来た従者達は念のためシアの護衛メイド部隊によって拘束されている。

話し合いが終わった後、オレが直接出向き伝言を伝える予定だ。

とりあえず PEACEMAKER(ピース・メーカー) のトップメンバーであるスノー、クリス、リース、ココノ、メイヤ、シア。

ミューア、カレン、バーニー、ルナ、ラヤラに集まってもらう。

田中との前世の関係を伏せて、ランス&ララと PEACEMAKER(ピース・メーカー) が敵対することになったのを告げた。

その敵対理由は、彼らがこの世界の数万人の人間を犠牲にしてララを使い手に入れた 魔法核(まほうかく) を、 神核(しんかく) へ昇華するためらしい。

この計画にオレ達、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) が協力するよう求められたため却下。

彼らの計画を知った以上、無視することはできず敵対することになった――と説明した。

一通りの話を聞くと、まず最初に直情型のカレンが激怒し机を拳で叩く。

「なんという馬鹿げた計画だ! それが責任ある大国の次期国王のやることか!」

「……申し訳ありません。そんなおぞましい計画にうちの姉が主犯格として関与して……」

このカレンの激怒に真っ先にリースが本当に申し訳なさそうに謝罪する。

この計画にはランスだけではなく、ハイエルフ王国のエノール、元第一王女であるララも深く関与している。

実妹として、姉の最終目的を聞かされていたたまれなくなったのだろう。

カレンの左右に座る幼なじみ、ミューアとバーニーが両側から彼女を突く。

カレンは冷や汗を掻きしどろもどろで弁明する。

「ち、違うんです、リースさん! カレンは貴女のことを責めているわけではなく……その勢いで言ってしまったというか………」

「でも、実際、カレカレの言う通りだよね。民を守り、国を発展させるべき王族が数万人も犠牲にして意味わかんない神核? ってやつを手に入れようなんて。何を言われてもしかたないよ。ララお姉ちゃんも、何やっているんだか」

一方、ルナは冷めた声音で告げる。

実姉であるララの目的を知って、心から呆れているのだろう。

カレンは小声で『カレカレは止めてくれ……』と呟いていた。

「数万人を犠牲にする儀式もそうだが、ランスの能力も厄介だ」

『転移ですね』

クリスがミニ黒板で文字を書く。

彼女はオレ以外で、その驚異を味わった唯一の人物だ。

「でも転移魔術なら 始原(01) の団長さんも使ってたよね。だけどわたし達はそんな人を倒しているんだから、今回も大丈夫じゃないの?」

スノーの楽観論にミューアが口を挟む。

「確かに PEACEMAKER(ピース・メーカー) は、アルトリウスさんに勝利していますが、元 四志天(ししてん) の1人テン・ロン曰く、彼の転移魔術にはいくつかの制約があるらしいのです。代表的なのは『視認できる距離しか移動できない』ですね。ですが話を聞く限り、ランスにはそういった制約がないようですね」

実際、彼はクリスがいる狙撃ポイントにあっさりと転移した。

彼女が居た場所は建物の隅。

カーテンの隙間から銃口をわずかにのぞかせ狙撃体勢を取っていた。

物理的に部屋の内部を見ることは不可能である。

なのに彼はあっさりと彼女が居る部屋に転移。

驚きながらもクリスは咄嗟に銃口を向ける。

だが、彼がSVDに触れると、その笑顔とともに愛銃が姿を消したのだ。

しばしクリスは混乱したらしい。

さらに可能性の一つとして、アルトリウスの転移は距離にも制約があった。しかし、ランスの場合、それすらない可能性がある。

マジでチートキャラクターではないか。

「さらに最悪なのが、ララと手を組んでいることだ……」

もし、マジで距離関係なく転移できるとしたら、ララの『予知夢者』『千里眼』と合わさったらとんでもなく極悪になる。

『予知夢者』で、奇襲を見透かされ、『千里眼』で詳細を把握。

後は好きな時間、タイミングで魔術師として限りなく高位に属するランスが転移して襲撃することができる。

襲撃後はいつでも楽々自身の部屋に一瞬で戻ることが可能だ。

つまり 8.8cm対空砲(8.8 Flak) や航空機による 燃料気化爆弾(FAEB) 投下などがほぼ使えないということである。

他国の協力を求めても無駄だろう。

下手に周辺国が攻め込もうとしたら、ランスがその国へ転移し王族や上層部を皆殺し――なんてことをするかもしれない。

無駄に犠牲が増えるだけだ

前世、地球の衛星で敵陣地を発見、行動を監視、隙をついてステルス機で強襲、爆撃――それ以上の理不尽攻撃だ。

チートキャラクター×2を敵に回すとどれだけ厄介か、現在進行形で体験中である。

「あ、あの、の、もももしかして、地下牢から、フヒ、アルトリウスさんが消えたのも、その、ら、ラ、ランスさんのせいなんでしょうか?」

ほぼ間違いないだろうな。

話は続く。

「とりあえず、まずこちらのするべきことは戦力の強化だ。ランス達が儀式を始める前に、魔術師S級のタイガに協力を求めるつもりだ。彼女の『 10秒間の封印(テンカウント・シール) 』はかなり有効だからな」

シアがリースのあいたカップに新しい香茶をそそぐ。

彼女は礼を告げた後、オレに質問をぶつけてきた。

「タイガさんの他にも、魔術師S級の方に協力を求めることはできないのでしょうか? スノーさんの師匠さんなど」

「内容が内容だからお願いすれば協力してくれると思うけど、まずどこに居るか分からないから接触のしようがないんだよね」

「竜人種族の『 龍老師(ロン・ラオシー) 』は、魔術師S級ですが他の魔術師とは大きく違い戦力にはなりませんわ」

「メイヤは『 龍老師(ロン・ラオシー) 』のことを知っているのか?」

「はい、たいした内容ではありませんが。『 龍老師(ロン・ラオシー) 』はドラゴン研究に情熱を燃やす少々変わった魔術師でした。ドラゴン研究に熱を入れすぎて、最終的に彼自身がドラゴンになってしまったのですわ。ドラゴン関係の知識を仕入れるのならベストな相手ですが、戦力になるかというと……」

メイヤが言いよどむ。

正直、大型であれ中型であれ、チートキャラ相手に今更ドラゴンが仲間になってもたいした戦力にならないな。

ドラゴン知識も今回は必要にならないだろうし。

「それと最後の一人、魔人種族、『腐敗ノ王』は絶対に手を貸さない」

カレンが断言すると、他幼なじみであるクリス、ミューア、バーニーが頷く。

「『腐敗ノ王』は絶対に魔神大陸から出ないし、力を借りに行って逆に配下のゾンビにされた奴がいるとかいないとかっていう話もあるぐらいだからな」

『腐敗ノ王』はアンデッド系魔物を自身の部下として使役するらしい。

系統としてはアルトリウスのような魔術師が近いが、大きく違う点は、生物ならたとえドラゴンでも触れただけでアンデッド系魔物にして自分の部下にしてしまうとか。

あくまで噂らしいが――ランスと戦う前にそんな相手とコンタクトを取って敵対したら目も当てられない。

「それじゃ協力を求めるのはタイガとスノーの師匠に絞ろう。下手に声をかけて敵対関係になんてなりたくないからな。タイガはエル先生達のところにまだ居るか確認して、いなかったらどこへ行ったのか情報を集めよう。スノーの師匠に関しては、とりあえず後回しだな」

次にミューアへ向き直り指示を出す。

「ミューアは少々危険だと思うが、ランス達の情報を集めてくれ。奴らは今、メルティアに居ると思うから。そしてランスに他の能力がないか、どうやって儀式をおこなうのか、できれば儀式をする正確な日時も分かるとありがたい。後、怪しい動きがあったらすぐに知らせてくれ。最悪の場合、戦力が整っていなくても犠牲者を出す前に、彼らを止めるために動かないといけないからな」

「了解しました。すぐに情報集めと警戒網の構築に取り掛からせていただきますね」

「ああ、頼む」

オレはカレン、バーニー、ルナ、ラヤラへと視線を向ける。

「オレ、スノー、クリス、リース、ココノ、メイヤ、シアは飛行船ノアで孤児院へと向かう。もしそこにタイガがいなければ、情報を集めて彼女の後を追うつもりだ。その期間、本部のことは任せた。問題が起きた場合は、前回のようにラヤラに手紙等を持たせてこちらによこしてくれ」

この言葉にカレン達は素直に同意してくれた。

改めて皆の顔を見回す。

「今回は数万人の命がかかっている。しかも戦闘員でもなく覚悟をしているわけでもない、関係ない一般人の命が奪われるかもしれない。そんな非人道的行為は絶対に止めるべきだ。そして現状、止められるのはオレ達―― PEACEMAKER(ピース・メーカー) しかいない。だから、なんとしてもランス達を止めよう。今回はいつも以上に苦しい戦いになると思うが、どうかみんな力を貸してくれ」

皆、覚悟を決めた返事をする。

席を立つと皆、自身のやるべきことをするため動き出す。

オレもタイガを探しに妖人大陸にある孤児院へ向かう準備をしなければならない。

お陰で事件解決まで、メイヤへ贈る腕輪作業は延期にするしかない。

流石に数万人の犠牲者が出るかもしれない事件を前に、腕輪製作をしているわけにはいかないだろう。

メイヤに申し訳なく、部屋を出て行く彼女に視線を向けた。

動き出した皆の中で、彼女が一番気合いが入っている。

ぶつぶつと呟きを漏らしながら、今にも涙を流さんばかりに怒り心頭だった。

「折角、もう少しでリュート様とラブラブチュッチュッできるそうなるほどいい雰囲気になっていたのにランスだかクラウスだが知りませんがわたくしとリュート様の幸せ結婚計画を邪魔するなんて絶対に許されませんわこの落とし前は奴の人生末期まで取り立てやりますわうふふふふふふふふ運命で結びあっているリュート様とわたくしの神聖不可侵絶対聖域である結婚を邪魔した報いを頭から爪先徹頭徹尾唯我独尊骨の髄まで味わわせてやりますわうふふふふふ……」

さらにメイヤはぶつぶつと目を血走らせ呟きながら、部屋を出て行く。

まるで某受付嬢さんが垂れ流す黒いオーラが、メイヤからも漏れ出し始めているかのようだった。

……オレは彼女に結婚腕輪を贈っても本当にいいのだろうか?

そんなメイヤの姿を見て、思わずそんな考えがこみあがってくる。

受付嬢さんといえば、確かオレ達が妖人大陸を出発したのと入れ違いに辿り着いたはずだ。

つまり、すでにエル先生&ギギさんが営む孤児院へと到着しているはずだ。

2人が新婚夫婦らしく仲睦まじくしている姿を目撃して、彼女はどんな行動をおこしたのだろうか?

まさかとは思うが、逆上して2人を襲ったりはしないよな?

受付嬢さんはあれでちゃんと一般常識は持っているはずだし……。

それにエル先生とギギさんの側には魔術師S級、 獣王武神(じゅうおうぶしん) 、タイガ・フウーが居る。

何があっても彼女が2人を守ってくれるはずだ!

……たぶん。

オレは一抹の不安を抱えながら、とにかく急いでエル先生&ギギさんが営む孤児院へと急いだ。