軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第244話 リースとのお出掛け

受付嬢さんとギギさんのやりとり後――受付嬢さんは白い灰状態のままふらふらとどこかへ去ってしまった。

ギギさんが心配して後を追いかけようとしたが、傷口にハバネロを塗り込む行為を見過ごすわけにはいかず、彼をやや強引に引き止めた。

そのままオレ達は宿屋へと宿泊。

正直、アルバータで2、3日休み英気を養うつもりだったが、ギギさんに一方的に振られた反動で受付嬢さんが何をしでかすか分からない。

それにこれ以上、受付嬢さんとギギさんを接触させて、彼女が一方的に傷つく姿を見たくない。

なんだかんだ言って、受付嬢さんに色々お世話になったわけだし。

だから、翌日にはさっさと移動を開始すると宣言。

これに対してギギさんが、

「皆、移動で疲れているのだから、この街で休み英気を養うべきではないか?」と言い出した。

誰のせいでこういう決断をしたのか1から説明したかったが、受付嬢さんの名誉のためにもオレは適当な言い訳を並べることにする。

早く港街ハイディングスフェルトに戻らないと、レンタル飛行船の空きがなくなるかもしれないとオレが言うと。

クリスが、すぐにでも奥様に旦那様を引き合わせたいと横から援護してくれた。

クリスには甘いギギさんは、彼女の提案に反論せずすぐに賛成へとまわった。

ある部分は本当にチョロいんだよな、ギギさんは……。

彼以外にはこの決断に、反対の声を上げる者はいなかった。

そして翌日。

アルバータを出たオレ達が次に目指した街は、港街ハイディングスフェルトへ。

一応、出発前にエル先生の双子の妹であるアルさんに挨拶をするために、彼女の勤め先に顔を出した。

しかし支配人曰く、ミーシャの一件で、オレと関わりのある彼女は別の街の支店へと移籍させられたらしい。

ミーシャ殺害犯として疑われているらしいオレと知り合いだと広まったら、誰も怖がってアルさんにお金を落とさなくなるのでは、という事を危惧したとのことだった。

完全に誤解なんだが……移籍した後で言っても仕方ない。

一応、アルさんが移った街の名前を聞いてはおいたが、わざわざ会いに行くつもりはない。

正直に言えばもう二度と会いたくない人だ。アルさんと顔をあわせるたび、オレの中の大切なモノがごりごりと削られていく気がするからだ。

けど、そういう相手に限って、絶対にまたどこかで嫌でも顔をあわせるんだよな……。

変な確信を抱きながら、オレはハンヴィーのハンドルを握り締める。

ちなみに前回は商隊の護衛について移動したため、ハンヴィーが使えず港街ハイディングスフェルトからアルバータまで10日ほどかかってしまったが、今回は数日で辿り着くことができた。

港街ハイディングスフェルトに付くと、ギギさんに言った建前上、レンタル飛行船屋へとすぐに足を運んだ。

しかし、嘘から出た誠ではないが、飛行船が全て出払ってしまっていた。

どんなに急いでも後半月ほどは戻って来ないらしい。

運が悪いとしか言い様がない。

他の港街へ移動して、レンタル飛行船を探すことも考えたが、さすがに移動につぐ移動で疲れた。

とりあえず、ハイディングスフェルトで数日休むことにした。

他街へ行ってレンタル飛行船を借りるかどうかは、休日が終わった後に考えればいい。

こうしてオレ達は久しぶりにダラダラとした時間を得ることができた。

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港街ハイディングスフェルトは魔物大陸の玄関口だけあり、物資や輸出される品物が多数ある。

そのため露店を見て回るだけで1日楽しむこともできた。

元女魔王であり、今は幼女の姿のアスーラがとても珍しがり、そんな露店を見て回っていた。スノーやクリスは彼女の護衛役として念のため付いてもらった。

旦那様、ギギさんは気晴らしと称して街の外へ出て魔物退治をしている。

帰ってくると旦那様は宿の中庭で筋肉トレーニングを始める。

ギギさんも旦那様に付き合いトレーニングしていた。2人とも少しは休めばいいのに……。

オレは元『黒』のノーラ、メイヤを連れて 冒険者斡旋組合(ギルド) への事務処理、念のため飛行船レンタル屋に他の街からここに飛行船を寄こすことはできないか、などの交渉を担当している。

やはり他街でも飛行船は使用されてしまい、当分空きはないと断られてしまった。

そんな風に2日ほどハイディングスフェルトで過ごす。

唯一、リース&シアは外へ出ず2日間宿に篭もっていた。

リースの元気がない。

あまり部屋の外にも出ず、シアが淹れた香茶を手に何か考え込んでいる事が多い。

シアはリースの護衛メイドとして、彼女の側に影のように付き従っていた。

リースが考えていることはなんとかなく分かる。

実姉、ララ・エノール・メメアについてだろう。

ララが『黒』を裏切り、アスーラから魔法核を奪い取った。

恐らくその魔法核で何か大きなことをやるつもりだと、リースでなくても分かる。

実妹である彼女は、そんな姉のことで頭を悩ませているのだろう。

リースの気持ちも分かるが、部屋に閉じ籠もって悶々と考え込むのは体に悪い。彼女の夫として、リースを励ますためにも行動を起こすべきだ。

3日目の朝。

朝食を摂り終えると、旦那様とギギさんは筋肉を震わせるため魔物退治へとでかけてしまう。

スノー、クリス、アスーラは今日、どこへ出かけるかの話し合い。

メイヤは武器のメンテナンス。

ノーラは借りてきた猫のように隅で大人しくしている。

リースはシアが淹れた香茶を前に、ここ2日で見慣れた考え込む姿勢になる。

そんな彼女を外へ誘うため、オレは声をかける。

「リース、ちょっといいか?」

「……なんでしょうか?」

「これからウォッシュトイレの改良に使えそうな物を探しに店を見て回ろうと思うんだけど、折角だから一緒に行かないか?」

この言葉にリース含めて、女性陣から『うわぁ……』という瞳で見詰められる。メイヤだけが羨ましそうにこちらを見ている。

リースを除いたスノー達には、彼女を励ますため今日は外へ連れ出すと事前に断りを入れておいた。

だから、リースが渋らないようにスノー達には背中を押すフォローを頼んでいた。なのにまるで、フォローを入れるどころかリースに同情的な視線を向けている。

なぜだ?

リースはぎこちない笑顔を浮かべながら、返答する。

「お、お誘い頂いてありがとうございます。でも、私には専門的なことは分かりませんが、それでもいいのですか」

「もちろん。第三者の意見が欲しいんだ。だから、難しいことは考えなくても大丈夫。それじゃ準備もあるだろうから、30分後に宿の前で待っているから」

「わ、分かりました。それでは準備しますね」

オレはやや強引に約束を取り付ける。

こうしてオレは無事、リースを外へ連れ出すことに成功した。

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シアの手を借り、約束通り30分で準備を終えたリースが宿の前に姿を現す。

オレは彼女と腕を組み、早速ウォッシュトイレ改良に使えそうな品物がないかリースと一緒に店を回り出した。

「見てくれリース、こっちの海綿。獣人大陸にあるのより硬い。これに柄を付ければ、ウォッシュトイレの便座を洗うのにちょうどいいかもしれない」

一応、新純潔騎士団本部にもスポンジ代わりの海綿があるが、柔らかすぎる。そのためウォッシュトイレ掃除用にはやや物足りなさを感じていた。

もっとガッチリ汚れを落とすため、もう少し硬めのが欲しかったのだ。

まさか一件目の店で、ウォッシュトイレ掃除具に使えそうな品物が見付かるとは幸先がいい!

隣に居るリースを振り返ると、『えっ、なんで。まさか本当にウォッシュトイレ巡りをするなんて……これって私を元気付けるためにわざとやっているのでしょうか?』と困惑した表情をしていた。

なぜだ? こんな素晴らしい物を発見したというのにどうしてもっと喜ばないのだろう?

「……リュートさんは本当にウォッシュトイレがお好きなのですね」

おかしい。

リースに嫌味っぽい台詞を言われたような気がするのだが……いやきっと気のせいだろう。

「ああ、もちろん好きだよ。リースもウォッシュトイレは気に入ってるだろ?」

「えっ、はい、その気に入ってはいますが……」

「そうか! やっぱりリースもウォッシュトイレが大好きか! そう言ってもらえると本当に嬉しいよ! リースありがとう!」

「も、もうリュートさん! そんな大きな声を出さないでください!」

オレの声に他の客が何事かと振り返ってきた。

リースが赤くなり、頬を膨らませる。

大声を出してしまったのは不味かったが、何をそんなに恥ずかしがっているんだ?

「も、もうリュートさん。他のお店に行きますよ!」

「ちょ、ちょっと待ってくれ! この海綿だけ買わせてくれ! ウォッシュトイレ掃除道具の試作品を作りたいから」

恥ずかしそうな赤い顔で無理矢理店外へ出ようとするリースを押しとどめながら、なんとか海綿を購入する。

こんな風にオレとリースは他の店々を見て回り、時には品物を買ったりした。

店を見て回るのが楽しくて、昼を過ぎてしまう。

買い物疲れと空腹を癒すため、オレとリースは手頃な食堂へと入る。

昼食の時間を過ぎたせいか、ホールに座る客の姿は少ない。お陰でゆっくりと休憩と食事ができるというものだ。

ウェイトレスに注文を終えると、リースがお礼を言ってきた。

「今日はありがとうございました。気を遣ってくださって」

「……気付いてたのか?」

彼女はオレの反応が面白かったのか、口元に手を当てくすくすと笑う。

「当たり前じゃないですか。2人で出かけると声をかけられたのに、スノーさん達が自分もと名乗りでない時点で分かりますよ」

確かに根回しをしなかったら、スノー達も一緒に行くと言い出していただろう。

リースは突然、遠い目をして、

「ですが、まさか本当にウォッシュトイレ関係の買い物をするとは想像できませんでしたが……」

「最初からするって話をしていたと思ったんだけど……」

「それは言葉の綾でもう少しこう……いえ、なんでもありません。兎に角、気を遣って頂いてありがとうございます。……嬉しかったですよ」

リースは柔らかな微笑みを浮かべる。

オレは彼女の再度の礼に微苦笑を浮かべる。

「何言ってるんだよ。気を遣うも何も、オレ達は夫婦だろ? 嫁が悩んでいるなら、気分転換やその手助けをするのは夫として当然じゃない」

「リュートさん……」

リースはオレの言葉に熱い視線で見詰め返してくる。

このいい雰囲気を利用して、話を切り出す。

「だから、何か問題や悩みがあるなら相談にのるぞ。もしそれが解決し辛いなら、話をするだけでも気持ち的には楽になると思うけど」

「……そうですね。リュートさんにはお話を……いえ、ぜひ相談させてください」

リースはまっすぐ決意を固めた強い瞳で、オレを改めて見つめ直す。

そして彼女はあの元女魔王の洞窟でララ――リースの実姉との戦いを詳細に説明してくれる。

ビーンバッグ弾――非致死性装弾がまったくララに効かなかったことや、銃器が無い状態の姉と自分の実力差について。

彼女は淡々とオレに聞かせた。

「――つまり、銃器の力がなく姉と対峙した場合、私は手も足も出せず敗北します。10回やって10回ともです。ですが、現在の非致死性装弾では、姉を無力化するのは難しいのです」

「だから、もっと強力な武器をオレに作って欲しい、と?」

確かに現在、ココリ街、新純潔騎士団本部にある兵器開発専門研究でリース向きのに手をつけている。恐らく今でもオレとメイヤを除く、唯一の研究員であるルナが研究&製造をおこなっているだろう。

オレの言葉に、彼女はゆっくりと首を縦に振る。

「私は国を出る際に、お父様に『絶対に、五体満足で父様の前に姉様を連れて参ります』と約束しました。だから私は決めたんです。絶対に姉妹で殺し合いはしないと。だから、リュートさんにはララ姉様も倒せる非致死性兵器を開発して欲しいのです」

リースは自分の決意した道を歩む覚悟を瞳に抱き、夫であるオレに頼む。

愛する妻が決めた道だ。

もちろん、夫であるオレは最大限サポートする!

「了解。それならいくつか案があるから任せてくれ!」

「ありがとうございます! リュートさん!」

そして、丁度話の区切りにウェイトレスが食事を運んでくる。

海が近いため海鮮メインの料理が並ぶ。

魚まるごと1匹焼いた塩焼き。

貝の蒸し焼き。

小さなカニやエビ、魚のぶつ切りが入った赤いスープ。

おおぶりのパンがふたつ。

サラダ。

飲み物は果実水で、デザートまである。

適当に頼んだが、2人ではちょっと多すぎる量だ。

リースと互いに顔をあわせて微苦笑してしまう。

「とりあえず食べようか」

「そうですね」

そしてオレ達は、好きに手を伸ばす。

先程のリースの要望に叶いそうな非致死性兵器の話や、他たわいない話をしながら、オレ達は楽しく食事を摂った。

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以下、番外編。携帯ウォッシュトイレ(暫定完成版仕様)を使用した時の反応。

アスーラの場合。

使用中――『ぐっはぁ! んんんぅ! 温かいのが無理矢理、妾のお尻の中に入って――ぁっ! そんな奥まで! 駄目なのじゃぁ!』

使用後――『温水でお尻を洗い、温風で乾かし、便座まで温め、音を鳴らし音を消し、さらに携帯までさせるとは……なんと魔王的発想・機能力なのじゃ!』

ギギさんの場合。

使用中――『ぬぅッ!? ぐうぅうぅ……ッ!』

使用後――『……確かに新しいトイレだと思うが、俺は今までので十分だ』

旦那様の場合――体が大きすぎて携帯ウォッシュトイレ(暫定完成版仕様)の室内にまず入れず反応を確認することができなかった。