軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第202話 エルルマ街への帰還

一ヶ月の手伝いを終え、ココノがエルルマ街へ戻る当日。

ココリ街を3台の馬車が出発した。

1台は水、食料、武器&弾薬、寝具、他荷物用。

1台はクリス部隊専用。

1台はオレ、クリス、メイヤ、ココノが乗っている。

余裕を持って3台調達した。

リースが居れば物資の運搬など面倒がないのだが。

改めて、彼女の力の凄さを実感する。

今回、参加するクリスの部隊は5人。

10人参加させると新・純潔乙女騎士団本部が手薄になるため、選抜した。

またその選抜には、獣人種族タカ族、ラヤラ・ラライラも入っている。

ラヤラもココノとは仲が良い。

今回の旅が、彼女の悩みを聞き出す切っ掛けになればいいのだが……。

「しかし上手いもんだな、馬車の操作。僕も色々旅をしたから、操作にはそれなりに自信があったんだけど」

「ありがとうございます。小さい頃からよく父や母に乗り方を教わったので、体が自然と操り方を覚えてしまっているんですよ」

御者台にはココノが座り、角馬に馬車を引かせていた。

最初、オレが座る予定だったが、ココノが『是非、やらせて欲しい』と志願してきたのだ。

彼女は昔、天神教に入教する前まで、親子で大陸中を旅していた。そのため馬車操作はお手のものなのだろう。

初めて接する角馬達もまるで長年のパートナーのように、ココノの手足のように動いていた。

オレは御者台の後ろから、彼女と会話を交わす。

「何かコツとかあるの?」

「コツですか……そうですね。難しいことはありませんよ。角馬達の気持ちになって動かしてあげればいいんです。そうすれば彼らも素直に答えてくれますよ」

優しげな瞳をして角馬の方を見るココノ。

「角馬達の気持ちになって、か。……ココノらしい答えだなぁ」

オレは後ろからココノを眺め、微笑みながら返事をした。

こうして三台の馬車がエルルマ街を目指した。

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ココノを連れたオレ達がエルルマ街へ到着したのは日が暮れてからだった。

そのため天神教支部へは向かわず、宿で一泊してからということになった。

馬車を預け、久しぶりに屋根のある部屋で眠る。

ココノは1人部屋。

オレ達は2人ずつに別れて宿に泊まる。

メイヤがオレと同じ部屋で寝たそうに見詰めてきたが……最終的に彼女はラヤラと同室になる。

メイヤと二人っきりで部屋で寝たら、何をされるかちょっと分からない。

身の危険の感じ方が男女逆だが気にしないでおこう。

オレは妻であるクリスと二人っきりで部屋に泊まる。

食事を取り終え、料金を払ってお湯を入れてもらいタオルを濡らす。埃と汗、汚れをおとしさっぱりしてから、着替えてベッドに潜り込んだ。

メイヤ達の部屋は二人部屋ということでもちろんベッドが二つある。

しかし、この部屋は他と違ってキングサイズのベッドが一つしかない。

クリスとは夫婦のため、まったく問題なく二人一緒にベッドで眠る。

彼女はまるで子猫が親猫に甘えるようにオレの腕にスルリと潜り込んでくる。

オレの腕に頭を乗せ、幸せそうに微笑を浮かべている。

いつもはスノーやリースと一緒に四人で寝ている。しかし、今夜はクリス一人。独占できるのが嬉しいのだろう。

「しかし、結局、この旅の道中でココノの悩みを聞き出すことができなかったな」

「残念、です」

クリスはオレと二人っきりのためか、ミニ黒板を使わず声を出す。

旅の途中、ココノと仲の良いクリスやラヤラがいくら話題を振っても、悩みや困っていることなどないの一点張りだった。

もしかしたら本当に無いのかもと疑ったが……

「ココノちゃ、ん、様子、変だっ、た」

「だよな。1ヶ月の短い付き合いだけど、あからさまに態度がおかしいよな」

よく溜息をつくし、笑う回数や食べる量もいつも以上に少なくなっていた。

何か問題を抱えているのは確かだ。

「私、じゃ、力になれ、ないのかな……」

「たとえ友達同士でも言えないことってあると思うぞ。だから、あんまり気にするな」

落ち込むクリスの頭を撫で、気持ちを落ち着かせる。

彼女は額をぐりぐりと押し付けてくる。

「もしココノがオレ達に助けを求めてきたら、その時は迷わず助ければいいさ。友達として、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) の理念に従ってさ」

コクリ、と彼女はオレの言葉に頷く。

まだ時間は早いが旅の疲れが出る。

気付けばオレ達は互いに抱き合い、眠りに落ちていた。

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わたし、ココノはガンスミス様達と一緒に朝食を済ませた後、エルルマ街の天神教支部へと1人向かうため宿を出た。

ガンスミス様やクリス様、ラヤラ様が同行を買って出てくださいましたが、わたしは断ってしまいました。

「突然、訪ねてしまってもガンスミス様達を手厚く迎える準備が出来ませんから、まずわたしが戻ったことを報告して参ります」

本当は――トパース司祭様とガンスミス様が会うと、再びわたしをガンスミス様の元へ嫁がせる話が再燃しかねないため、二人を会わせないようにしたのだ。

もしあの手紙に書かれていることが真実なら、ガンスミス様達にご迷惑をおかけするわけにはいかない。

兎に角、まずトパース司祭様に送られてきた手紙と本を見せ、相談するのが先だ。

わたしが天神教支部へ戻ると、すぐにトパース司祭様が駆けつけてくださる。

「おかえり、ココノ。ガンスミス卿のお姿が見えないが、まさか街まで1人で帰ってきたのかい?」

「いえ、お約束の通りに、ガンスミス様に街まで送って頂きました。皆様は今、宿におられます。突然ではガンスミス様達をお迎えする準備が整わないと思いましたので、まずわたしが戻ってきたことをお知らせに来ました」

「そうか、そうか。良い判断です。では、早速、ガンスミス様をお迎えする準備をしなければいけませんね」

トパース司祭様は近くにいた方に声をかけ、指示を出します。

「ココノは戻ってきたばかりで疲れたでしょう。準備が整うまで自室で休むといい」

「お心遣いありがとうとざいます。ですが、その前にトパース司祭様にご相談がありまして……」

「相談ですかな?」

「はい、できれば今すぐに。お時間をいただけないでしょうか?」

「……どうやら何か問題が起きたようですね。いいでしょう、こちらへ」

「ありがとうございます!」

トパース司祭様はわたしの雰囲気から察して、すぐさま個室へと案内してくださいました。

わたしはその背中に頼もしさを感じて、足取り軽く後に続きました。

個室で二人っきりになると、手荷物から手紙と本を差し出し渡します。

そして、届けられた経緯、内容を簡単ながらトパース司祭様へとお伝えしました。

「ま、まさか天神教でこんなことがおこなわれているなんて……」

トパース司祭様は話を聞き終え、手紙と本にも目を通します。

一通り確認すると青い顔で五芒星を切り、手を組み祈った。

「いえ、そのまだ決まった訳では……」

「た、確かにそうですね。私としたことがつい動揺してしまって……」

トパース司祭様は吹き出た汗をハンカチで拭う。

「この件を私以外に相談しましたか?」

「いえ、ガンスミス様に何度もご相談しようとしましたが……仮にこの手紙に書かれていることが真実なら、天神教の問題に巻き込むわけにはいかないと思い、話すことができませんでした。それに――」

わたしは堪えていた涙が頬を流れるのを感じる。

「わたしのような者に優しくしてくださった皆様が、手紙の内容を知ったら態度を変えてしまうかもしれないと思ったら、怖くて言い出せませんでした……」

結局、口では『ガンスミス様達を巻き込みたくない』と綺麗事を並べていたが、本当はただ怖かっただけなのだ。

なんと利己的で、浅ましい理由なのだろう。

でも、本当に怖かった。

優しかったガンスミス様達から、侮蔑、嫌悪、憤怒の視線を向けられると、想像しただけで心臓が止まりそうになる。

だから、どうしてもガンスミス様達に相談することが出来なかったのだ。

「そうか……随分辛い思いをしていたのだね」

涙を流すわたしに、トパース司祭様が優しく声をかけてくれる。

「大丈夫、安心しなさい。この問題は私が調べ、対処しよう。だからココノはもう何も心配しなくてもいいのです」

「ありがとうございます、トパース司祭様」

わたしはトパース司祭様の力強いお言葉に再び涙を流す。

「とりあえず、確認しますが――私以外に、このことを話した人は本当にいないのですね?」

「はい、トパース司祭様が初めてです」

「では、手紙と書物の内容が真実かどうか独自に調べさせてもらいますが、その間、ココノは身の安全を考えて誰にも会わないほうがよろしいでしょう。ガンスミス卿には私から今回の婚姻について縁がなかったとお断りしておきますね」

「……はい、よろしくお願いします」

本音を言えば、天神様のお告げなど関係なく、ガンスミス様達の家族の輪に入りたかった。……しかし、今更望んでも仕方がない。

トパース司祭様の言葉通り、縁がなかったのだ。

諦めるしかないのだ……。

「では、わたしは自室で待機しております」

「……いえ、身の安全を考えるなら 天神教支部(ここ) に居るのは危険でしょう。安全を考え身を隠した方がいい。住む場所や必要な物資は私が手配しましょう」

「トパース司祭様、なにからなにまでありがとうございます」

「いいえ、何よりココノの安全が第一ですから。とりあえず、隠れ家の準備が整うまでは自室で待機していてください」

「分かりました」

わたしはトパース司祭様の優しさに胸を詰まらせる。

話し合いも終わり、手紙と書物を残し私は一礼してから個室を出る。

その足で真っ直ぐ自室へと向かった。

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ココノを見送ったトパースは、手紙と書物を手に部屋を出る。

自身の側近の部下を途中で捕まえ、私室へと篭もった。

彼はココノ前では絶対に見せない冷たい表情で部下に指示を出す。

「 静音暗殺(サイレント・ワーカー) 殿に連絡を、標的が判明したと」

トパースの瞳が冷酷に光る。

「標的は天神教巫女見習いの人種族、ココノだとお伝えしろ」

部下は短く返事をすると、急ぎ部屋を出た。