軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第165話 白狼族村滞在1日目

ある1つの問題以外を残して、白狼族の村へスムーズに入ることが出来た。

白狼族の総人数は約300人。

彼らは他種族と滅多に交流がない一族だ。

スノーの父クーラの紹介の後、老若男女問わず興味深そうに寄って、声をかけてくる。

気付けば皆、言い寄られる年代・性別にばらつきが生じる。

たとえば――

シアは奥様方に交じって、いつのまにか保存食作りを手伝っていた。

さらにその保存食(今回は干し肉を作っている)を使用した他大陸の料理を教えている。

「――というようにそのまま食べたり、お湯で戻して野菜と一緒に煮込むだけではなく幅広く応用することが出来るのです」

「干し肉にそんな料理方法があるなんて知らなかったわ」

「やっぱり他の大陸から来た人は色々知っているのね。他にも料理のやり方があるなら教えてもらってもいいかしら?」

「はい、もちろんです」

シアは他の料理方法の伝授を始める。

メイヤは老人達に捕まり、故障した魔術道具の修理を担当していた。

「この火の魔石を使ったコンロが上手く動かなくての。魔力は十分に充填しているのじゃが」

「失礼しますね。ふむふむ、どうやら接触にガタがきているようですわね。これならすぐに直せますわ」

言葉通りメイヤは、魔術道具専用工具でものの数分で修理を終える。

彼女の周りを囲んでいる老人達から歓声があがった。

「まさかこんなすぐに直してしまうとは……お嬢さんは大したもんじゃな」

「ええ、まぁ元! 天才ですから。これぐらいなら眠っていても出来ますわ。しかし、わたくしの天才的才能などリュート様のご威光の前では消えた蝋燭と同じ物ですわ!」

「ほう、リュート様というのはそんな素晴らしい才能をお持ちなのか?」

「そうなんですの!」

そしてメイヤは、なぜか老人達に対してオレのプッシュを喜々として始める。

彼女はいったい何がしたいんだ……。

そして、リースはオレに許可を求め、『無限収納』にストックしていたオヤツ用のお菓子を子供達に配っていた。

「何、これ!? しょっぱくてパリパリする!?」

「美味しい! お姉ちゃん、これなんていうお菓子なの?」

「これはね、『ポテトチップス』っていうお菓子ですよ」

リースが白狼族の子供達に与えるお菓子として選んだのは、豆芋の薄切りを油で揚げ塩を振った『ポテトチップス』だ。

最初は甘いお菓子のプリンかで迷っていたが、甘いお菓子はジャムや保存食等で食べ飽きているだろう。大陸内地に居る白狼族にとって塩は貴重品。だから、塩を使ったお菓子を選択したらしい。

子供達は小さな尻尾をぶんぶんと振って、パリパリと初めての食感を美味しそうに楽しんでいた。その姿はとても可愛らしい。

「わたしのとっちゃだめぇ~」

「ちがうよ! 最初にとったぼくのだよ!」

「こら、喧嘩しちゃ駄目よ。それに仲良く、みんなで食べた方が美味しいでしょ?」

リースが男の子に言い聞かせる。

彼は両手に持っていたチップスの片方を女の子へと分け与えた。

リースは笑顔で男の子の頭を撫でる。

「おねえちゃん、おかしくれてありがとう!」

「ねぇ、あっちで一緒にあそぼう! ぼくのソリにのせてあげるから!」

「うん、いいよ、ソリの遊び方教えてね」

リースは獣耳幼児達に囲まれ、遊びへと誘われる。

彼女の手を引く5、6才の男の子の視線がやや怪しいが……。

(言っておくが、リースも彼女の大きな胸もオレのもんだからな! 手を出したら容赦せんぞ、小僧!)

と、オーラを放っていたせいか、オレの周りに子供達が集まることはなかった。

ちょっと大人げなかったか?

一方、スノーはというと……

「クーラさんとアリルさんの娘がこれほど美しく、可愛らしいなんて……」

「しかし、すでに人種族の彼と結婚しているらしいぞ」

「人種族の小僧なんかに、あれほどの逸材を奪われるなんて……ッ」

スノーの周りに集まった男性陣は、嫉妬の目でオレを睨んでくる。

はっはっはっは! 羨ましかろう! 彼女のような可愛らしい嫁が居て!

オレはその嫉妬の視線に怯えるどころか優越感に浸る。

「もうアムくん! わたしはもうリュートくんと結婚している人妻なんだから、変なちょっかいかけないでよね!」

「いや、俺はアムじゃないですよ?」

スノーが甘い声で言い寄っていた白狼族男性に威嚇音を飛ばす。

スノーはどうやら彼をあの上流貴族のアムと間違えたようだ。

本当にオレ以外の男性に興味が無いらしい。今更アムの名前を出すなんて、反応が遅すぎるだろ……。

スノーは魔術師としてだけではなく、全般的に優秀な人材なのだが、色々アホの娘なんだよな……。

オレが頭を抱えていると、白狼族男性陣が声をかけてくる。

「君がスノーさんの夫なのかい?」

「はい、人種族、リュート・ガンスミスと申します」

にこやかに挨拶をして互いに自己紹介を交わす。

彼ら曰く、これから自分達は近場へ狩りに出るとのことだ。

よかったら、これからオレも一緒に狩りに出ないかと誘われた。

なんで、部外者であるオレを狩りに誘ったのか疑問を抱いたが、続く言葉で納得する。

なんでも白狼族では狩猟が上手い男性ほど、村人から尊敬の念を抱かれ、異性にもてるらしい。

白狼族男性達が、笑顔で教えてくれた。

オレより獲物を狩ることで、スノーより自分達の方が彼女に相応しいと言いたいのだ。

随分、遠回しな当てこすりだ。

本来なら、この周囲を知り尽くしている地の利がある白狼族男性達が有利だろうが――

(笑止! 圧倒的笑止!)

オレには前世の知識を用いて作り出した銃器がある。

いくら彼らがこの周囲の地理を知り尽くし、魔術を使用出来るとしても遠距離から致死の攻撃をしかけられる銃器の敵ではない。

しかもこの辺の獲物は銃器の威力、性能、脅威を知らない。故に武器と認識せず油断する筈。むしろ、現状はオレに有利だ!

オレは内心で邪悪な笑みを浮かべながら、下手に出る。

「一緒に狩りですか? 面白そうですね。でも、僕みたいな素人が混ざってもいいのかな。皆さんの足を引っ張りそうだし」

「お気になさらず、何があってもこちらで随時フォローしますから、難しく考えないでください。それにお聞きしたところによるとガンスミス卿は、 軍団(レギオン) の代表者だとか。むしろ、そんな強者の邪魔をこちらがしてしまうかもしれませんが、お許しください」

「はっはっはっ、そんなことありませんよ。それに 軍団(レギオン) を立ち上げられたのも優秀な妻達が居てくれたお陰です。僕1人ではどうすることも出来ませんでしたよ」

オレはスノー達が妻であることを強調する。

これに対して白狼族男性陣は笑みを浮かべるが、額には青筋をうっすらと浮かべている。

オレ達の和やかな笑い声が村に響く。

『リュートくんが、楽しそうでよかった』とスノーは的外れなことを呟いている。彼女には、笑い声と同時に繰り広げられている水面下の戦いが分からないらしい。

オレは笑顔を浮かべたまま切り出す。

「それじゃお言葉に甘えて狩りの見学をさせてもらいますね」

「ええ、ガンスミス卿に参加して頂けるなんて、今日は白狼族にとって記念すべき日になりますね」

「記念日なんて大げさな。それと『卿』などつけず、僕のことは名前で呼んでください。妻の一族とは仲良くしたいですから」

「それでは遠慮無く、リュート殿」

オレ達はどちらからともなく手を差し出し、握手を交わす。

互いに表向きは友好的な態度を取りながら、交わした手のひらに力を込め合う。笑顔の下で男の面子、意地、プライドをかけた熱い炎が燃えている。

そう! 男と男の勝負はすでに始まっているのだ!

こうしてオレは白狼族男性達の狩りに参加することになった。

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数時間後――狩りを終えて、オレ達は村へと再び戻ってくる。

勝負の結果は……オレと白狼族男性陣は両方とも敗北した。

今回の勝者はクリスだ。

オレ達の狩りにクリスはM700Pを持って参加。

彼女は寒さ&狩猟対策として、頭を含めた全身をすっぽりと隠す白いポンチョに袖を通した。

もちろんM700Pには白い布を巻き偽装済みだ。

そんな彼女は驚異的な視力・天才的射撃術・スナイパーライフルの遠距離攻撃力により、誰より早く獲物を発見し、一発で仕留める。

今回参加したベテラン白狼族男性すら、顎が外れるほど驚く狩猟能力。

しかも、彼らをもっとも驚かせたのは北大陸にしかいない固有鳥類『ケワタダガモ』を仕留めたからだ。

このケワタダガモは、カモと名前が付いているが大きさはダチョウほどある。茶色い羽、鋭い嘴。警戒心が強く、約500メートル以内に潜む自身へ敵意を向ける相手を判別するらしい。

しかもひどく獰猛で、敵を発見したら、その巨体からは信じられないスピードと鋭い嘴で襲いかかってくる。

だが、肉は柔らかく腰が抜けるほど美味く、内蔵も食べられる。羽は装飾品として、骨は武器や防具に使用されるほど頑丈だ。そのためケワタダガモは信じられないほどの高値で取引される。

実際、金額に目が眩んでケワタダガモを狙った狩人が、上半身が消失した死体で発見されることが多々あるらしい。

白狼族の狩猟自慢の狩人達も決して手を出さない獲物だ。

そんなケワタダガモをクリスは、約600メートルから1発で頭部を吹き飛ばし仕留める。

さらに運悪く飛行中のケワタダガモに発見され、襲いかかられた。

ケワタダガモは狭い木々をまったく意に返さず、その巨体からは信じられない飛行軌道で迫ってきたが――クリスは1発で頭部を吹き飛ばす。

ソリに2体のケワタダガモが横たわる。

これだけで一財産になるらしい。

2匹目のケワタダガモを仕留めたクリスに、白狼族男性が狼狽えながら問い詰めた。

彼は村一番の弓の名手だ。

「ど、どうしたら貴女のような技術を身に付けることが出来るのですか!?」

「練習、あるの、みです」

クリスは微笑み、男性に告げる。

いや、いくら練習してもクリスレベルは到達出来ないだろ……。

アドバイスを受けた男性も愛想笑いを浮かべるしかなかった。

村に帰り、獲物を女性陣に任せる。

獲物の処理を任せる代わりに、全て白狼族に譲り渡す。

白狼族では狩猟が上手い男性ほど、村人から尊敬の念を抱かれ、異性にもてるらしい……今日のMVPであるクリスは女子供、老人達からちやほやされまくっていた。

焚き火を囲うクリスの周りを皆が囲む。

「こんな可愛い子がケワタダガモを2匹もしとめるなんて、凄いわ」

「お姉ちゃん、お姉ちゃん! どうやってケワタダガモを倒したの!?」

「お姉ちゃん、ボクをお姉ちゃんの弟子にしてよ!」

人見知りのクリスだったが、スノーの一族とは仲良くしたいらしく一生懸命応じていた。

さらに狩りに参加した男性陣はというと――

「クリスさん、お茶をお持ちしました」

「クリスさん、寒くありませんか? もっと焚き火の側に」

「クリスさん、もうすぐ食事が出来るのでお腹がお空いていたらこちらをお食べください!」

皆、年下で見た目が愛らしいクリスに、まるで歴戦の戦士を前にしたような態度と敬語で世話をする。

本当に男のプライドとはなんなんだろうか……。

1人の奥さんらしき人物が声をかける。

「クリスちゃんはもう結婚しているのよね。もししてなかったら、家の息子の嫁に欲しいわ」

「そうね。嫁がなくてもいいから、ずっとうちの村に居て欲しいわ」

「それ、は出来ま、せん。私には大好きなお兄ちゃんが、いますから。離れる、なんて出来ません」

「もう熱いわね。クリスちゃんにこれほど想われてるなんて、旦那さんは幸せものね」

「ごちそうさま、クリスちゃん」

クリスは奥様方にからかわれながらも、照れ照れと頬を両手で挟み自分で『むにむに』する。オレの視線に気付くと幸せそうに左腕を持ち上げ、腕輪に手を這わせる。

そして幸せそうに、はにかんだ。

可愛い。マジ可愛いわ、うちの嫁!

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クリスが狩った獲物の処理が終わると、白狼族がオレ達を歓迎する宴を開いてくれた。

こちらからもリースの『無限収納』から酒精を取り出し、提供する。

クリスが狩ったケワタダガモの串焼きは、文字通り腰が抜けそうなほど美味かった。

広場にはいくつもの焚き火がたかれ、嫁達も思い思いの場所で食事や酒精、会話を楽しんでいた。

オレも一緒に狩りに出た男性陣と交流する。

スノーに色目を使っていた奴等だったが話せばいい奴等だった。

現状の不満、トルオへの怒り、アムの協力を取り付けたことで見えた希望、1体だけ迷い込んだ巨人族と戦った時の話、昔ホワイトドラゴンに襲われ生き延びた経緯など色々な話を交わす。

こうして、白狼族の村へ到着した1日目は楽しく過ぎた――という訳にはいかなかった。

「リュート殿、ちょっといいかな?」

「あっ、クーラさん! もちろんです、どうかしましたか?」

「ちょっと話があるんだが、付いてきてくれるか」

有無を言わさない圧力。

オレは黙って頷き、彼の後に1人で付いていった。

クーラに連れて来られた場所は、村からやや離れた林の中。

遠くにぼんやりと焚き火の光が揺れている。

移動した場所にはスノーの母であるアリルまでいた。

その雰囲気は歓迎ムードとはほど遠かった……。