軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第164話 白狼族の村へ

「それじゃボクは一度城へと戻るよ。父上はともかく、弟のオールが心配しているだろうしね」

アム・ノルテ・ボーデン・スミスを先遣隊臨時村に連れて来て1日経った朝、彼は金髪を掻き上げダイヤモンドのように歯を光らせながら言った。

朝早いのにもかかわらず、元気な奴だな……。

とりあえずアムは一度、ノルテ・ボーデンにある城へと送り届ける予定だ。

今頃、城では次期領主であるアム誘拐で、右往左往の大騒ぎ中だろう。その混乱を落ち着かせるためにも、さっさと帰さなければならない。

城へ着いたら彼の口から『誘拐』ではなく、『知人から突然招待を受けある場所に宿泊していた』と説明してもらう予定だ。

これで建前上、『誘拐』という犯罪行為ではないことを強調する予定だ。

本人が怪我1つなく、自分の足で帰って来て、『誘拐ではない』と断言するのだ。この一件を白狼族の仕業にするのは難しいだろう。

スミス家側もこれ以上話を大きくしたくはない筈だ。『長子を誘拐されるほど警備が雑』、『危機意識が足りない』と一般市民だけではなく、他貴族からも後ろ指をさされることになる。

上流貴族にとって、面子やプライドが汚されるほど腹が立つことはないからな。

アムはスノーの前まで行くと一礼して、再び歯を輝かせる。

こいつの歯にはLEDでも仕込んでいるのか?

「ミス・スノー、残念なことに一度ボクは城へと戻らなければならない。一時とはいえ離れるのは心苦しいが、君の一族の名誉と尊厳を守るためであれば致し方ない。でも、すぐに『スノーホワイト』の花束を手に、部下達を連れて正式に花嫁として迎えに行くから待っててくれ!」

「?」

スノーは『この人、誰? 何言ってるんだろう?』という表情で小首を傾げている。

アホの子……というより興味がなさ過ぎて覚えていられないのだろう。

魔術師学校時代もこんな風に、学校の男子達や同室で友人のハーフエルフであるアイナを困らせていたのか……。

逃げる相手は追いかけたくなるのが人の性――男子達は、名前や顔を覚えてもらおうと必死にアピールしたんだろうな。でも、覚えてもらえなくてしだいにヒートアップして……。

意図しているわけではないが、こうやって男子生徒達を手玉にとっていたのかもしれない。

一方、アムの幼なじみであるアイスは、2人のやり取りを横目に鋭い視線を飛ばしていた。

その目はまるで『この泥棒猫!』と言いたげな嫉妬心に染まっている。

今にもハンカチを口にくわえて破きそうな嫉妬オーラだ。

「それじゃ行こうか、ミス・アイス。道中の案内頼んだぞ」

「……はい。案内は任せてください」

それでも声をかけてもらえるのは嬉しいのか、少しだけ機嫌が良くなる。

なんというか、健気な娘だな……。

アムは道案内のアイスに加え護衛として白狼族男性2名の計3名を連れて、一度ノルテ・ボーデンへと戻る。

先遣隊臨時村に残されたオレ達はというと……

スノーの父、クーラが音頭を取る。

「必需品の買い出しも終わっているし、自分達は村へ戻るから皆も一緒に来てくれないか? 小さな村でたいした歓迎は出来ないが」

「ありがとうございます、それではお邪魔させていただきますね」

今更断る訳にはいかない。

アムが根回しを終えて、連絡を寄こすまでの間、待機するのが現在のオレ達の役目だからだ。

それにあの白狼族の村だ。

興味があるし、好奇心が刺激される。

ある意味、観光地を見学する時のようなワクワク感を胸に抱いている。

こうしてオレ達は、白狼族が現在暮らしている村へ行くことになった。

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白狼族について、改めておさらいをしよう。

白狼族とは北大陸の雪山に住む少数種族だ。

北大陸奥地には巨人族と呼ばれる歩く石像が群れを成して移動している。白狼族は巨人族の進行ルートを把握して、一緒に移動することで外敵から身を守っている。

ちなみになぜ巨人族が群れをなして決まったコースを歩いているかというと、『北大陸奥地にある封印された魔王を警護しているのではないか?』と言われているらしい。

ここからさらにスノー両親や先遣隊のメンバーから色々話を聞いた。

年中移動して生活しているため定住用の住居を持たない。

その代わり雪や氷でイグルーを作り住居としている。素材はそこらじゅうにあるし、魔術を扱える白狼族が多いため製作はとても楽。

食料は主に狩猟で仕留めた肉類が中心になる。

他には寒くてもなる果実や川で獲れる魚、またキノコ類などだ。

手に入り難い品物は街へ行って仕入れている。

移動して生活しているため外貨は持っていない。そのため狩猟で仕留めた肉類、毛皮、奥地でしか手に入らない薬草類、鉱物、壊れた巨人族の体の一部や北大陸固有の魔物、スノーホワイトなどを街へ持っていき外貨に換金している。

また雪山で狩猟中に遭難した街人などを救助、魔物に襲われていた場合の助太刀、雪山の雪崩(こちらでは雪滑りという)を未然に防いだりして街や人から謝礼金をもらっていた。

その資金で雪山奥地では手に入らない塩や砂糖、香辛料、小麦などの穀物類、嗜好品としての酒、武器、防具、魔術道具などを購入する。

この必要物資の買い付け役をするのが先遣隊だ。

先遣隊のメンバーは村の若者達が中心に構成される。

これには理由があり、若者達による雪山移動の練習も兼ねているからだ。熟練者達が保護者として付いて、雪山移動のノウハウを実地で学ぶらしい。

先遣隊がいた場所から徒歩移動で約3日。

林を抜けると、そこだけがぽっかりと開けていた。

そこは白い村だ。

雪と氷で作られたイグルー。

白い毛皮で作られたモコモコした衣服に袖を通した白狼族の人々。

子供達はソリやショートスキーのような物で小山になった雪の滑り台を滑っていた。

大人の女性達は保存食造り、男性は仕留めてきた獲物の毛皮を剥いでブロックごとに切り分けたりなどの力仕事をしている。

ここが白狼族の村か……。

なんというか、今まで色々な村を見てきたがこれほど幻想的な所は初めてだ。

白狼族の大人達が、オレ達の存在に気付き警戒の色を濃くする。

ソリやスキーで遊んでいた子供達も、固まり年長者の背後に隠れる。

皆を落ち着かせるため、スノーの父クーラが前へ出てオレ達を紹介した。

「安心してくれ、彼らは自分達の娘スノーとその……夫達だ。自分達の敵ではない」

クーラは村でも地位が高いのか、この一言に皆が安堵し弛んだ空気が流れる。

しかし、『娘の夫』部分で言い淀んでいたが……やっぱりオレはあまりスノー両親に歓迎されていないらしい。

警戒心が弛むと、今度は好奇心から注目を集める。

子供から大人までイグルーからも出てきて、好奇心の視線を向けてくる。

特に子供達が、興味深そうに遠目からでも分かるほど瞳をキラキラさせていた。

なにせ他種族と殆ど交流がない一族だ。

好奇心の目を向けられるのは当然だろう。だが、ここまで興味がある視線をむけられると『なにか一発芸でもやった方がいいのだろうか』と心配になる。

とりあえず、オレ達は白狼族の村へ歓迎されながら入ることが出来た。