軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第155話 巨人族との遭遇

北大陸最大都市ノルテ・ボーデンの陸地側には二重の巨大城壁がそびえ建つ。

この城壁は北大陸に生息する魔物・巨人族の侵攻を防ぐためのものだ。そのため一般的な城壁より厚く頑丈で、監視の兵も多数常駐している。

そのためどうやって越えるか心配していたが……地下道が城壁外まで延びていたため、あっさりと気付かれず都市の外へと出ることが出来た。

ノルテの中で買った必要物資もこうして外へと運び出すらしい。その際は、先遣隊の男達数人がかりで外へと運び出しソリへと載せ運ぶとのことだった。

外へ出ると、すでに朝日が昇り、森の木々や地面に積もった雪をキラキラと輝かせていた。

オレ達は休憩も取らず、森の中をそのまま歩き続ける。

先遣隊がベースにしている場所へと向かっていた。

歩きながら、オレとスノー以外の自己紹介を済ませる。

クリスとリースも自分の妻だと紹介した時アイスは、

『……そう』と表情を変えず呟いた。あまり興味がないらしい。

「アイスは地下道の全部を把握していたりするのか?」

「まさか。私達が知っているのは極一部だけよ」

さすがに彼女達白狼族も、増築を繰り返したあの地下道全ては把握していないらしい。

「リュートくん、見て見て。こんな寒いのに綺麗なお花が咲いてるよ」

「おぉ、本当だ」

スノーが見付けた花は積もった雪を掻き分け、綺麗に咲き誇っていた。

見た目は前世、地球の百合に似ている。

しかしさすが異世界、まさか雪が降るほど寒い時期に咲く花が存在しているなんて。どういう理由なのかは、さすがに植物学者ではないから分からないが。

「『スノー・ホワイト』ね。北大陸にしか咲かない珍しい花よ」

「スノー・ホワイト? わたしと同じ名前だ!」

スノーは嬉しそうに微笑む。

アイスはさらに解説をした。

「私達、白狼族でも滅多に見付けられない花で、『手にした者に幸運を与える』とも言われているわ。折角だから摘んで行ったら?」

「う~ん、でも今は移動中で忙しいし……それにわたしと同じ名前のお花を摘むのはちょっと抵抗あるからいいよ」

「そう、なら行きましょ」

アイスも無理に『スノー・ホワイト』を摘ませるようなことはなく、クールに返事をして再び歩き出す。

雑談をしつつ約1時間ほど歩くと、森林を抜ける。

森林を抜け、平原奥に先遣隊ベースがあるらしい。

「止まって! 伏せて!」

森林と平原の境界に差し掛かると同時に、アイスが鋭い声で指示を飛ばす。

オレ達は反射的にその場へ伏せた。

暫くしてオレでも異変に気付く。

『ズゥン……ズゥン……ズゥン……』という音。次第に感じる地震のような揺れ。

視線の先、雪原を踏み固めるように巨人族の群れが姿を現した。

「あれが巨人族……」

オレは1人呟く。

冒険者レベルⅤになる条件は、『ドラゴン×1、巨人族×1などを退治する』だ。

つまり巨人族は、 冒険者斡旋組合(ギルド) にドラゴンと同等の戦力と評価されているということだ。

そんな巨人族が目の前を群れで移動する。

巨人族と言うが、一目で通常の生物では無いと分かる。

材質は石。繋ぎ目はなく、一つの石から削りだした彫刻のようだった。

正に石像――ゴーレムだ。

数は100体以上。

大きさは約15m前後――これが巨人族の大きさではなく、10mや30mの群れだったりマチマチらしい。

今回の群れは、頭一つ二つ程高低差がある程度だ。

形だけではなく、外見もさまざまでゴツゴツした全身甲冑を装備した者、のっぺりとした顔で手足がひょろりと伸びただけの者、妙に太い体躯の者など様々なタイプが居る。

身体を構成する材質以外の特徴をあげるとしたら、全員手に同素材の長槍を手にしていることだ。

巨人族の群れは雪原を軍隊の行進のように列を形成し、乱れず歩き続けている。

それはある種、幻想的な光景だった。

「ちょっかいを出したら群れで襲ってくるから変な気を起こさないでね。巨人族に気付かれても襲ってくるけど」

アイスが念のため釘を刺してくる。

あれにちょっかい出す勇気はないな……。

たとえパンツァーファウストや対戦車地雷で数体吹き飛ばせても、現状では全部を倒しきるのは不可能だ。

そして破壊しきれなかった巨人族達に巨大な無数の槍を投げられる。大規模な質量攻撃。考えただけで震え上がってしまう。

絶対に手を出さないようにしよう。

オレ達は気付かれないように隠れ続け、巨人族が通り過ぎ姿が見えなくなるまで待つ。

「……もう大丈夫、立ち上がっても平気よ。しばらくこの辺に巨人族は来ないから、安心して移動しましょう」

「巨人族の歩くルートを全部把握してるのか?」

「そう。白狼族の生活圏内だけだけど」

アイスは頷き、先頭を歩き出す。

「一応、白狼族以外の人達もある程度経験則として、巨人族が通る道や時間を把握しているらしいわ。私達には到底及ばないけど」

アイスは自慢げな声音で言う。

ふと、思い出したように話題を切り替えた。

「あと昔、北大陸出身の魔術師が巨人族をコントロールする研究をしていたらしいわよ」

「あっ、わたし、それ知ってる。魔術師学校の図書館で読んだことある。あのね、昔々――」とスノーが語り出す。

1人の魔術師が巨人族をコントロールする研究を始めた。

しかし研究の結果出来た魔術はただ単に巨人族を集めるだけの失敗作だった。結局、研究者の魔術師は、自身が作り出した失敗作の魔術で集まった巨人族に踏み殺されてしまった。

それを見ていた魔術師の知り合い達は、この魔術を禁忌として封印した――という話らしい。

読んだ書籍も絵本、童話に近い物だった。

その本は『自身の力を越えたモノを扱うとすると身を滅ぼす』という教訓を伝えるための物語だと著者は本の終わりに書き込んでいた。

北大陸では割と有名な話らしい。その話が他大陸では絵本や童話という形で書物になったようだ。

雪原を歩いて約30分。

白いドームがちらほらと見え始める。

オレはあの白いドームに見覚えがあった。

(そうだ! あれはイグルーか)

イグルーとは、イヌイットの住居として前世、地球で有名だった。

雪のブロックを切り出し、ドーム状に組み立てた建物だ。

オレ達が近づくと、見張り番をしていたらしき数人の男性が姿を現す。

アイスが手を振り、警戒心を解かせた。

さらに近づくと相手の姿形が見えてくる。

男性も銀髪に獣耳だった。

「ちょっとここで待ってて」

アイスがオレ達を足止めして、1人で男達の元へと向かう。

彼女達は会話を交わした後、オレ達を手招きして呼ぶ。

念のためオレとスノーが先頭に立ち、彼女達の元へ向かう。これなら同族を大切にする白狼族が突然、襲ってくることもないだろう。

オレの心配をよそにアイスと見張り番の男達が出迎えてくれる。

彼女が微かな笑みを作り、

「ようこそ、白狼族先遣隊の臨時村へ。歓迎するわ」と、改めて告げた。