軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第130話 リュートvsルッカ

ココリ街街道外れ。

その平原でオレとルッカが銃と剣を交えていた。

『死ねぇぇぇ! 害虫!』

ルッカが大剣を振るう。

剣術に自信があるだけあって、その剣筋はとてつもなく鋭い。

オレは身体強化術の補助を受けつつ、回避に専念。過去の執事時代、もしギギさんの訓練を受けていなければ瞬く間に切り捨てられていただろう。

オレは回避しながら、AK47の 引鉄(トリガー) を絞る。

7.62mm×ロシアンショートで銀色の甲冑を身に纏うルッカを倒せるとは思っていない。あくまでこれは牽制だ。

隙を付いて『AK』シリーズに無改造で装着出来る『GB15』の40mmアッドオン・グレネード弾を撃ち出す。

『ッゥ!』

ルッカも紅甲冑が会合を襲った時、その威力を眼にしている。

そのため警戒し、命中はしていない。

リースが側に居ないため、40mm弾にも限りがある。

シアが敵勢力の詳細を告げた時、メイヤ&シアと純潔乙女騎士団団員組には対戦車地雷で倒しきれなかった銀色甲冑の始末を。

スノー、クリス、リースには紅甲冑の生け捕りを頼んだ。

担当を決めていくと、自然にオレが単独でルッカと戦うことになってしまった。

最初はスノーにサポートについてもらおうかとも考えたが……あのドジっ娘リースが、逃走するであろう紅甲冑の後を追い、クリスのサポートを単独で行うのは無理だと悟る。

だが、組織のトップ同士、最後の決着を付けるのも悪くない。

星明かりの下、半円を描きながら銀色甲冑へ向けて銃弾をばらまく。

ルッカも風の魔石が込められた大剣を振るい、風刃を生み出し大地ごと切り裂こうとする。

『貴様達さえ来なければ私の計画は成功していたというのに!』

「自分を慕う団員達を皆殺しにして大成功!? 頭おかしいんじゃないのか!」

『純潔乙女騎士団の栄光を! 誇を取り戻すための必要な犠牲だ! 本当に純潔乙女騎士団を想う団員なら喜んでその身を捧げるはずだ!』

「アホか! どんな物にも寿命はある! それが組織でも例外じゃない! 純潔乙女騎士団はもうその役割を、寿命を終えようとしているんだよ!」

『黙れ、クソ虫が! 純潔乙女騎士団が寿命!? 違う! 純潔乙女騎士団は永遠に輝き続ける! いや、輝き皆の希望にならなければならないのだ!』

「このクソ狂人が!」

オレ達は動き、発砲、風刃を飛ばし、回避し合いながら言葉を弾丸より速く交わす。

隙を突いては40mm弾を放つが、掠りはするが直撃までは行かない。

オレ自身、風刃も、剣筋を何度目か分からないほど回避した。

互いに決め手に欠ける。

逆に言えば何か切っ掛けさえあれば、一気に流れを引き寄せ勝利を得られる状況だ。

その切っ掛けが何かといえば、1つしかない。

――最後の40mm弾を使い切る。

運良く衝撃でルッカの 面頬兜(フルフェイス) を衝撃で吹き飛ばすことに成功するが、彼女がそのことに怯まず突撃して来る。逆にオレが面食らいAK47を発砲するが、 引鉄(トリガー) を強く引きすぎて ガク引き(ジャーキング) してしまう。

凡ミスだ!

「……ッ!」

お陰で弾丸はあっさりかわされる。

AK47は弾切れ!

それを好機と敏感に悟り、ルッカは大剣を振るう。

「こなクソ!」

オレは咄嗟にAK47本体を彼女へ向け全力で投げる。

自ら武器を投げる行為に、さすがのルッカも面くらい、反射的に大剣でAK47を弾いてしまう。

その隙にオレは腰に下げているサイドアーム、『S&W M10』リボルバーを抜き放つが――同時にルッカの大剣が切り上がりオレの首筋で止まる。

オレの銃口は彼女の額へ。

ルッカの大剣はオレの首筋へ。

まるでメキシカン・スタンドオフ――西部劇のガンマン同士が、銃口を向け互いの命を握り合う状況へと陥ってしまう。

完全な手詰まり状態だ。

「「……………」」

どれぐらい睨み合っていただろう。

先にオレが口を切った。

「1つ提案があるんだが……どうせなら貴女が言っていたように正々堂々、決闘で決着を付けないか?」

先程、対戦車地雷で甲冑軍団を纏めて吹き飛ばした。

その後、ルッカが激昂し『卑劣な魔術道具を使うなんて! 貴様には正々堂々戦う気概はないのか!? 組織の代表者なら、正面から決闘などで勝負を挑めぇッ!』と叫んでいた。

折角だから、その願いを叶えてやろうというのだ。

「…………」

彼女は反応を示さない。

オレは勝手に話を進める。

「決闘の方法は簡単だ。互いに背を向け合い3歩進む。そして、3歩目に振り返って互いを攻撃する」

ハリウッド映画でやった決闘シーンだ。

昔、観たので映画のタイトルや詳しい内容は覚えていないが、その決闘シーンだけは強烈に目に焼きついている。

説明を一通り終えると、彼女がノってくる。

「いいだろう。貴様の提案にノってやろう。純潔乙女騎士団団長として、悪しき不義に鉄槌を下してくれる……ッ」

「上等。 PEACEMAKER(ピース・メーカー) 代表者として、正面から叩きつぶしてやるよ」

互いにゆっくりと背中を向け合う。

タイミングを決めていた訳ではないが、合図の声は自然と重なり合った。

『1』

『2――』

「馬鹿が! 死ね、愚か者!」

「だと思ったよ! クソ団長!」

最初にルッカが、2歩目を踏みしめた時点で決闘を裏切り、大剣を寝かせ振り抜く。裏切るだろうと考えてはいたが本当にやるとはな!

予想していたお陰で、咄嗟にしゃがみ大剣を回避。髪の先端が斬られる程度で済む。オレはリボルバーを発砲するが、ルッカは片腕で顔を覆い隠す。 38スペシャル(9mm) 程度では、貫通する訳もなく虚しく弾き飛ばされてしまう。

だが、それでいい。

オレ自身、リボルバーで決着が付くとは思っていない。

必要なことは彼女の注意を完全にオレへ向けることだ。

「死ね! 虫けら!」

ルッカが勝利を確信し、大剣を両手で握り振り上げる。

しかし、その剣が振り抜かれることはなかった。

「ぐっはぁ!?」

ルッカの背後から身長ほどある氷の塊が高速でぶつかり吹き飛ばす。

彼女は地面を2、3度転がり、大剣も明後日方角へと吹き飛んでしまう。

「リュートくん、無事!? 怪我はない!」

「ありがとう、スノー。大丈夫、怪我はないよ。それにナイスタイミングだ」

紅甲冑確保に向かっていたスノー、クリス、リース達が心配そうな表情で駆け寄ってくる。

オレは無事だと伝えるため片腕をあげ答えた。

彼女達は安堵し、スノー&クリスはそのままオレを通り過ぎ倒れて動かないルッカへと警戒しながら近づいて行く。

彼女達の周囲に紅甲冑の姿がない。

新たな武器を取り出し渡してくるリースに尋ねる。

「リース達が追っていた紅甲冑はどうしたんだ? 逃げられたのか?」

「それが追い詰めたのはいいんですが……」

「リュートくん! ちょっと来て!」

リースが言い淀んでいると、スノーからやや強張った声で名前を呼ばれる。

オレは新たに渡されたAK47を手に、リースと一緒に駆け寄る。

「リュートくん、この人……」

「まさかさっきの一撃で死……ッ?」

スノーが首を振る。確かに生きているとすぐに分かった。なぜなら彼女は誇らしげに笑い、ぶつぶつと小声で話し続けているからだ。

「……ハッハッハッみたか我が剣の露と消えろあくとうめ。純潔乙女騎士団は永遠に輝く――」

どうやらスノーの一撃で敗北を悟ったのか、意識だけがあちらの世界へと飛び立ってしまったらしい。

結局、最後に勝負を決めたのは彼女が切り捨てた『仲間』という存在だった。

望んでやった訳ではないが、皮肉が効きすぎている。

スノーが尋ねてくる。

「……どうする、リュートくん?」

「とりあえずこれ以上暴れられないように、甲冑を脱がして拘束しよう。スノーとリースはそっちの作業を頼む。オレとクリスが周辺を警戒する」

「わかったよぉ」

「お任せください、リュートさん」

スノー、リースの返事を聞き、警戒を続けているクリスの隣へと並ぶ。

「来てくれてありがとう、助かったよ」

『お兄ちゃんが無事でよかったです』

クリスはニッコリと笑い、ミニ黒板を掲げる。

「それでクリス達、担当の紅甲冑は結局どうなったんだ? 見あたらないけど、シア達に引き渡したのか?」

あの夜目が利くクリスのスナイパーライフルから、紅甲冑が無事逃げ出したというなら、悔しがるより称賛を送るだろう。

PEACEMAKER(ピース・メーカー) きっての『ヴァンパイア』から、逃げ切ったのだから。

しかしどうもそういう訳でもないらしい。

クリスは未だに状況を理解していない曖昧な表情で、ミニ黒板を掲げる。

『私達は予定通り、紅甲冑さんを追い詰め、上手く気絶させました……けど、確保しようとしたら突然、消えちゃったんです』

「消えた?」

クリスは柳眉を下げ、繰り返す。

「消え……ちゃいま、した」

どうやら比喩やたとえではなく、突然目の前から消えたらしい。

その後、周囲を探して見たが結局発見することはできなかったようだ。

オレは肩を落とすクリスの頭を撫でる。

「そっか、ならしかたないさ」

手のひら全体に彼女の柔らかな髪の感触や体温が広がる。クリスも気持ちよさそうに瞳を閉じた。

目を閉じると長い睫毛が強調されるな。

しかし、ルッカはあちらの世界へ。

紅甲冑は結果として取り逃がしてしまった。

どうやら今回の『魔術師殺し事件』の全容解明は難しそうだ。

▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

暗い森の奥深く。

突然、紅甲冑は姿を現し、丁寧に俯せに横たえられる。

紅甲冑を横たえたのは、前髪で顔を隠す女性だ。

女性だと分かったのは、ふくよかな胸や柔らかなそうな肢体が覗いているからだ。

彼女は背中の緊急排出用スイッチを押す。

紅甲冑の背中がばっくりと開き、粘度の高いスライムから作り出した液体が流れ出る。

彼女は濡れるのも気にせず、意識を失っているノーラを引っ張り出し自身の太股を枕に寝かせる。

ハンカチを水筒で濡らし、顔に浮かんでいた汗などを拭う。

「うぅ……」

その刺激にノーラは目を覚ました。

少しの間だ定まっていない視線がふらふらと周囲を見回す。

次第に自身の置かれている状況を理解し、体を起こした。

「エレナお姉ちゃん!? どうしてここに! ……ッゥ」

「無理、駄目」

エレナと呼ばれた女性は、フルフルと首を横に振る。

「そうだ。ノーラは PEACEMAKER(ピース・メーカー) の奴らに追われて……エレナお姉ちゃんが助けてくれたの?」

「そう」

彼女は短く答える。

エレナの能力を知るノーラは、だとするとここは追っ手が来ない安全圏だと理解した。同時に震え上がる。

自身の失敗を思い出したからだ。

「ごめんなさい! 作戦を失敗して、ごめんなさい! ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……ッ」

「大丈夫」

エレナは壊れたオルゴールのように『ごめんなさい』を繰り返すノーラの頭を優しく撫でる。

「お姉様、怒ってない」

「本当?」

コクリ、とエレナが頷くとノーラは心の底から安堵の溜息を漏らす。

そして改めて PEACEMAKER(ピース・メーカー) や純潔乙女騎士団、ルッカへの怒り、憎悪が蘇る。

「あいつら、絶対に殺すッ。体勢を立て直して襲撃してやる。300体で足りないなら、今度は1000体は用意してやるッ」

「駄目」

ノーラの地獄の釜のような怒りを、エレナが止める。

「お姉様、戻って来い、新しい仕事」

「でも!」

「お姉様、命令、絶対」

それが決め手となり、ノーラは悔しげに黙り込む。

エレナは聞き分けのない子供をあやすように、頭を優しく何度も撫でる。

「何時か、やらせてくれる。今、耐える」

「ごめんなさい、エレナお姉ちゃん。我が儘を言って」

「大丈夫」

言葉短く、姉は答える。

そして、2人は互いに目と声を合わせて呪文のように言葉を唱えた。

「「たとえ空が堕ちて潰されようとも破れない不滅の契り。死が我らを分かつまで、我ら黒星と共に」」

2人の声は、誰も居ない森林の中に響き闇へと溶けて消えた。