軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第127話 対戦車地雷

話は少し前に遡る――

純潔乙女騎士団本部。

オレ達に与えられている部屋の一室に皆が集まっていた。

そんな彼女達にオレが告げる。

「……だから、そんな素早くて硬い甲冑野郎を仕留めるための兵器を開発しようと思うんだ」

「それで一体どんな兵器を新しく開発するつもりですか!」

「甲冑野郎を仕留めるため新しく開発する兵器は――『対戦車地雷』だ」

『対戦車地雷』なんて、異世界の住人である彼女達が知るはずもなく、名前を挙げても嫁達が反応に困っていた。

もっとも早く食いついたのは、もちろんメイヤだ。

「リュート様、その『対戦車地雷』とは一体どんな武器なんですか!?」

「そうだな……僕の知っている中で最も質の悪い兵器の1つかな」

まず地雷とは一体どういう物なのか?

『箱や筒、円盤形の容器に炸薬を詰め込んだ定位置兵器で踏んだり、近づいたりすると爆発し目標物に破壊、損傷させる』――簡単に説明すると以上になる。

有名な映画にも登場したが、市街戦で地面に穴を掘り爆薬を入れて、石等を載せて敵が来たらさせる――という物だ。

だが、ここでいう地雷――『人や車、戦車などが通る道などに埋めて、相手が踏んだら爆発する』というのを作り出したのはノーベル賞創設のアルフレッド・ノーベルの父親だと言われている。

さらに19世紀前半にノーベル賞創設のアルフレッド・ノーベルの父親、イマヌエル・ノーベルが、機雷と地雷を改良しロシアに売り込んだらしい。

そして地雷は第一次世界大戦の新兵器――戦車の登場で急速に進化する。

対戦車用に対戦車砲や地雷が開発されたのだ。

さらに軍用車両の破壊以外に、人を殺さず傷つけるための対人地雷と呼ばれる地雷も開発される。

対人地雷は敵兵を殺すための物ではない。

敵兵を負傷させることで、その移送、治療に手間を掛けさせ敵国に大きな負担をさせて圧迫するための兵器だ。

あまりに非人道的な兵器だったため、前世の地球では1997年12月――対人地雷全面禁止条例が調印された(発効は1999年3月)。

日本を含め156ヶ国が批准(2011年時)。

しかし主な生産国であるアメリカ、ロシア、中国は加盟していない。

そして今でも前世の地球では、この『狂気の卵』達の被害にあう人々が絶えないのだ。

――話を戻す。

今回、オレが制作しようと思っている対戦車地雷はドイツ軍が開発した――『T.Mi.35』だ。

『T.Mi』とはT―Mine:『Tellermine(テラーミーネ=皿形地雷)』の略だ。

つまり『T.Mi.35』は35式皿形地雷となる。

『T.Mi.35』のスペックは以下の通りだ。

直径:31.5cm

高さ:8.8cm

重量:8.7kg

爆薬:TNT5kg

圧力感度:80~180kg

最初の対戦車地雷『T.Mi.29』からより実用的に改良されたのが、『T.Mi.35』だ。

圧力信管も『T.Mi.29』は3つだったが、『T.Mi.35』では1つになっている。

側面と底面にある排除防止用信管ソケットはそのまま残してある。この2つの信管ソケットが便利であり、敵側からしたら厄介な仕掛けとなるからだ。

アメリカ軍が第二次世界大戦中に作成した対ドイツ兵器の冊子には、2つの信管ソケットについて注意書きのイラストが載った程だ。

つまり上面にある信管を外しても、側面と底面にまだ排除防止用信管があるから気を付けろ、ということだ。

オレはメイヤ達に聞かせられない部分を省き、対戦車地雷について説明を終える。

一通りの話を聞いて、スノーが柳眉を顰める。

「……なんだか嫌な兵器だね。こんなのを本当にリュートくんは作るつもり?」

「嫌な兵器という意味については、僕もそう思うよ。けど、使い方によってはとても有効な兵器になるんだ」

それでも嫌そうな表情を崩さなかったスノーに、リースがフォローを入れる。

「確かに私も気分がよくない兵器ですが、結局は使う側の問題だと思いますよ。包丁だって美味しい料理を作ることもできれば、人を殺める武器にもなりますから」

「……そうだね。使う側の問題だよね。リュートくんなら使い方を間違えたりしないよね」

『私達のお兄ちゃんですから』

クリスがさらに同意の声をミニ黒板に書く。

そこまで信頼されるとなんだかムズ痒くなるな。

メイヤが挙手する。

「リュート様、ご質問、宜しいでしょうか?」

「どうした、メイヤ」

「対戦車地雷がどういう物か分かりましたが、今回の相手にはやや適していないように感じるのですが……」

メイヤの言わんとすることがすぐに分かった。

地雷とは銃器のように自ら攻めるものではない、防御兵器。

相手が来るだろう、進むだろうという進路に埋めておく代物だ。

だが、そんな彼女の心配をオレは一蹴する。

「大丈夫、ちゃんとその辺も考えてある。そのために信管ソケットがメイン以外に2つある『T.Mi.35』を選んだんだから」

「そうですか! さすがリュート様! わたくしのようなただの天才が考える杞憂は全て把握済みなのですね。さすが大天才リュート様ですわ!」

相変わらず、彼女の台詞はいちいち大げさだ。しかもさりげに自分のことを『ただの天才』って言っているし……。

オレはシアが淹れてくれた 香茶(かおりちゃ) で喉を潤す。

「それじゃ僕達は 冒険者斡旋組合(ギルド) に昨日の説明へ行くから、メイヤは飛行船工房で『対戦車地雷』開発準備に取り掛かっておいてくれ」

メイヤの返事を聞くと、オレはスノー達を引きつれ 冒険者斡旋組合(ギルド) へと向かうため部屋を出た。

そして、時間は魔動甲冑が花火のように吹き飛んだ現在へと戻ってくる。

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甲冑を着込んでいるため顔を判別することが出来ないが、絶叫する声音と台詞から相手がルッカだと簡単に推測できた。

『どうして貴様達がここに居る!? 睡眠薬を混ぜた酒精を確かに飲んだはずだろ!?』

「……あれは貴女が買った睡眠薬入りの酒精ではない。うちのシアが酒精を振る舞う前に通常の物とすり替えておいたんだ」

シアが名前を挙げられ、得意気に一礼する。

『!? どうして私が睡眠薬入りの酒精を振る舞うことを知っていたんだ!』

「きっかけは初日、僕とリース、シアの3人で初めて純潔乙女騎士団本部を訪ねた時です。その時、団長さんはなぜか初対面の僕達に『冒険者の方ですか? なら 冒険者斡旋組合(ギルド) は北口ではなく反対側の南口にありますよ?』って言ったじゃないですか。覚えていますか?」

『いや、だが、それの何が問題だ?』

「どこの世界にメイド服を着た使用人を連れた如何にもお嬢様なエルフと、15、6歳の人種族が一緒に本部を訪ねて来て『冒険者』だと勘違いする人間がいるんですか? 僕達の素性を知らなければ、道に迷った旅行者と思うのが普通じゃないですか」

『ッ!?』

団長ならオレ達の素性を知っていても可笑しくない。だったら、『冒険者ですか?』なんて聞かずにすぐ顧問室へと案内しただろう。

「そして決定的だったのは、あの紅甲冑に襲われた夜、皆が『甲冑野郎』と言っているのに、団長さんだけが『彼女』と言ってましたよね? だから、僕は団長さんが街を騒がせている『魔術師殺し』と通じていると思い、シアに調査させたんです。そしたら森の奥にある洞窟で『魔術師殺し』の主犯である少女と密会しているじゃないですか。だから、その後は他、団員も団長さんや主犯と通じあっていないかシアに調査させたんです。結果は団長さん以外はシロでしたが」

その後はひたすらシアに団長の動向を監視してもらった。

そして睡眠薬入りの酒精を準備したため、隙を突いて通常の物と入れ替える。

こんな強硬手段をとったのだ、総戦力で攻め込んでくると踏んで予想される通り道に制作したばかりの『対戦車地雷』を設置させてもらった。

この時、役に立ったのが信管ソケットだ。

側面に付いている信管ソケットに魔術液体金属で作った細く長い接続コードを差し込み隠れている森の茂みまで伸ばす。

後は甲冑軍団を地雷原に誘い込んだら、コードに微弱な魔力を2度流し、『対戦車地雷』を起爆させた。

1度で起爆しないようにしたのは誤作動を防ぐためだ。

この使い方は地雷というより、フガス地雷やクレイモアに近いかもしれない。

だがお陰で数百は居た甲冑軍団は、激減している。

それも当然だ。

パンツァーファウスト60型のTNT3kgに対して、対戦車地雷の炸薬量はTNT5kgもある。

そんな対戦車地雷を通り道にかなりの量を埋めまくった。

むしろまだ残っている方が不思議なぐらいだ。

一通りオレの話を聞いたルッカが激昂する。

『ふ、巫山戯るな! 卑怯だぞ! そんな卑劣な魔術道具を使うなんて! 貴様には正々堂々戦う気概はないのか!? 組織の代表者なら、正面から決闘などで勝負を挑めぇッ!』

「正々堂々? 決闘? どの口が言うんですか。僕達を睡眠薬入りの酒精で眠らせて襲うつもりだったくせに」

『くっ……』

指摘され、ぐうの音も出ず黙り込む。

さらにオレの後ろに控える純潔乙女騎士団団員達の視線が彼女の全身に突き刺さる。

皆を代表して、ラヤラ副団長が疑問を口にした。

「だ、団長……どうして、ウチ達を殺そうとしたんですか? あ、貴女は厳しい人でしたが、誰よりも騎士団を愛する人だったはずじゃないですか」

面頬兜(フルフェイス) 越しに聞こえるほど、盛大な歯ぎしりをする。

『お、オマエ達は純潔乙女騎士団の団員として相応しくない! だから皆殺しにして新たな純潔乙女騎士団を作ろうとして何が悪い! 私は間違ってなどいない!』

「だ、団長……」

ラヤラの口から裏切られた悲しみの声音が漏れる。

そんな慕う相手達に、ルッカは狂気的な声をあげながら背中に背負っていた大剣を抜き放つ!

彼女は本気だ。たとえ1人になってもオレ達を皆殺しにするつもりらしい。

団長の裏切りに意気消沈している団員達。

ただそのままで居たら、本当に斬り殺されてお終いだ。

オレは彼女達に指示を飛ばす。

「事前に伝えていた通り戦闘行為に突入した場合は、プランΣを発動! 全員、指示通りに動け!」

少女達は指示を飛ばされると、悲しみに顔を曇らせながらも事前に言い渡した通り動き出す。騎士団という組織に在籍しているからこそ、感情より体が反応するらしい。

この辺は軍隊に似ているな。

こうしてルッカ団長と純潔乙女騎士団団員& PEACEMAKER(ピース・メーカー) との戦闘が開始する。