軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第126話 出撃

純潔乙女騎士団の団員達は交替で食事を作り、摂る。

今晩の夕食も、彼女達の手作りだ。

いつものと違うのは、普段より食事内容が豪華な事と酒精が付いている点だ。

また今回の夕食には PEACEMAKER(ピース・メーカー) メンバーも招かれ、参加している。

団長であるルッカが、テーブルの前に立ち、咳払いをしてから注目を集める。

「前回の人質立て籠もり事件解決、ご苦労様。運悪く、私は本部を離れることが出来なかったが、皆が一丸となって事件を解決してくれて誇りに思っている。また事件解決感謝のしるしとして住人達から多数の食材が送られてきた。今日の夕食にはその食材が使われている。皆、心して食すように。それから――」

ルッカはテーブルからワインボトルを1本手に取る。

「テーブルにある酒精は今回の事件を解決した皆への慰労として、私が私財で買った物だ。私が注いで回るから有り難く飲むように」

普段のルッカとは印象が違う陽気な声。

団員達は微かな笑いを含ませ、返答する。

そして食事が始まる。

宣言通り、ルッカはすぐには食べ始めず団員達のテーブルをぬって木のコップに酒精を注いで回る。

団員達と一言、二言、言葉を交わしつつ、笑顔で――

しかし機嫌な良さそうな表情とは裏腹に、彼女は腑では黒い憎悪の炎を燃やしていた。

(こいつも殺す。こいつも殺す。こいつも殺す。こいつも殺す。こいつも殺す――)

団員達に酒精を注ぎつつ、しっかりと眼を見つめて胸中で唱え続ける。

ルッカが買った酒精はただの酒精ではない。

過去、リュートが冒険者駆け出し時代、偽冒険者に飲まされたのと同じ睡眠薬が入っている。

即効性ではなく、遅効性であるという違いはあるが。

彼女は皆を眠らせた後、皆殺しにするつもりなのだ。

夕食に招待したリュート達にも酒精を振る舞う。

「今回はご助力ありがとうございました。お陰で人質は全員無事に助け出し、犯人も捕らえることが出来ました」

「いえいえ、自分達だけではここまで結果を出すことはできませんでしたよ。純潔乙女騎士団の団員さん達が居てくれたからこその結果です」

リュートは酒精を注がれながら、謙遜の台詞を告げる。

彼は注がれた酒精を、まったく疑う素振りを見せず美味そうに飲み干す。

その様子を前にして、ルッカは可笑しくて笑い出しそうになるのを必死に堪えるほどだった。

ルッカは笑い出すのを誤魔化すため、話題を変える。

「ところであのメイド服の黒エルフさんが居ないようですが……」

「シアですか? すみません。本当は彼女も出席する予定だったのですが、ちょっと仕事を頼んでいまして。終わり次第、食事を摂らせます。もちろん、団長さんから頂いた酒精も飲ませますよ」

「そう、ですか。まだ酒精は沢山あるので、遠慮無く飲ませてあげてください」

ルッカはリュート達へ酒精を注ぎ終えると、席を後にする。

(あの黒エルフメイドが酒精を飲む所を確認出来なかったのは残念だが……後から飲ませると言っているのだから問題無いだろう)

あまり念を押して、怪しまれるのも困る。

(しかしこれで見張り以外は全員眠りこける)

純潔乙女騎士団の団員は全盛期と比べて少ないが、それでも30人以上は居る。

全員を騒がれず殺すのはなかなか難しいが、眠っているならその問題も簡単にクリアされる。

(こいつらは純潔乙女騎士団を汚した。その罪は重い……ッ! 死を持って償うがいい!)

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夕食後――作戦の計画通り、リュート達や団員に睡眠薬入りの酒精を飲ませた後、代々の純潔乙女騎士団の団長にしか知らされない秘密基地的洞窟にルッカは足を運ぶ。

そこにはすでにノーラが、暖炉の前の子猫のようにソファーでだらだらしていた。

「おっそーい、待っているのが退屈過ぎて寝ちゃう所だったよ」

「……すまない、人目を気にして角馬を使わなかったせいで遅れた」

「にゃははは、冗談だよ。もうルッカは真面目だね~」

ノーラはからい口調でソファーから立ち上がる。

「準備は終わっているのか?」

「もちろん、ノーラちゃんに手抜かりはないよ。来て」

ノーラが先頭で洞窟奥へと進む。

角を曲がると広い空間に出る。

そこには銀色の甲冑軍団が整然と整列していた。

「全部で何体居るんだ?」

「300体だよ。本部にお願いして無理を聞いてもらったんだぁ」

「彼らはもう動かせるのか?」

「もちろんだよ。天才 魔物調教師(モンスター・テーマー) のノーラにかかれば、これぐらいの数ぐらい余裕だよ」

銀色の甲冑内に疑似筋肉としてスライムが入れられている。調教し終えているため、簡単な指示ならばすぐに行動させることが出来る。

今回の筋書きはこうだ――ココリ街に蔓延っていた『魔術師殺し』が前回の発砲事件の報復のため仲間を連れて、純潔乙女騎士団本部を襲撃。

団員達を皆殺しにしてしまう。

団長であるルッカは、魔動甲冑を強奪。

1人で獅子奮迅の働きをして、甲冑共を撃破する。

そして……実は『魔術師殺し』実行犯を囲い裏から手を回していた影の首謀者であるガルマ顧問、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) メンバーの首も激闘のすえルッカが切り落とす。

こうしてルッカの手により『魔術師殺し事件』は解決し、再びココリ街に平和が訪れる――という寸法だ。

「素晴らしい……ッ」

広間に並ぶ魔動甲冑の手には大剣、戦斧、槍、メイス、大楯など多種多様な武器が握られている。銀色の甲冑は丁寧に磨かれ、鏡として使えるほどだ。

ルッカの眼には整然と並ぶ魔動甲冑達は、まるで神話から抜け出してきた正義の騎士団のように映る。今から彼らの指揮を自分が執ると思うだけで、心が震え上がった。

「ねぇ、ルッカ団長。折角だから景気付けに、彼らに激を飛ばしたら」

「そうだな。新しい純潔乙女騎士団の始まりなのだからな」

ルッカは甲冑達の前に出て、背筋を伸ばし、後ろで手を組む。

「我々は今夜、純潔乙女騎士団本部を襲撃する! そして、純潔乙女騎士団の栄光、誇り、規律を汚す害虫共を清浄なる刃によって断ち切る! これは――」

ルッカは額から玉のような汗を浮かべるほどの熱意で、目の前の甲冑軍団へ声を張り上げ続ける。

そんな彼女をノーラは薄笑いを浮かべて見守っていた。

誰も入ってない、空っぽな甲冑達へ檄を飛ばすルッカをだ。

彼女の熱弁は、深夜遅くまで続いた。

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ルッカの熱弁が終わる頃、夜も更け、襲撃をするには良い時間帯となる。

彼女は準備されていた、ルッカ専用の銀色甲冑を着込む。

他の甲冑軍団と違う点は、赤いマントを羽織っている点だ。

ノーラは前回同様、紅の甲冑『 緋(ロッソ・スカルラット) 』をまとっていた。

『よし! それでは純潔乙女騎士団本部へ向けて前進!』

ルッカは純潔乙女騎士団本部を目指し、銀色甲冑軍団の前を歩く。

人目を忍ぶため、馬車を使わず徒歩でココリ街を目指す。

城壁を乗り越え、街に侵入。

ルッカの手引きで、純潔乙女騎士団本部へと入り薬入り酒精で眠りこけている PEACEMAKER(ピース・メーカー) や団員達を始末する予定だ。

ガチャガチャと――ルッカ、ノーラは魔動甲冑、300体を連れてココリ街へと向かう。

星明かりしかない道を、銀色の甲冑軍団が列を乱さず行進する。それはまるでお伽噺に出てくるような一幕だった。

しかし――物語というものには、絶対に終わりという物がある。

突然の爆音。

銀色の甲冑軍団が天高く飛び散る!

『――!?』

2人の少女の怒声、悲鳴、感情爆発の声、それら一切を掻き消す音。

土煙がゆっくりと晴れる。

その先に居る人物にルッカが声を震わせる。

『どうして……どうして貴様がここにいる! リュート!?』

「僕だけじゃないよ」

彼の後ろ、森の茂みから少女達が姿を現す。

星空の下、 PEACEMAKER(ピース・メーカー) 、純潔乙女騎士団の団員達――役者達が揃う。