軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第125話 立て籠もり②

オレは、計画を再度脳内で確認する。

まず、メイヤ、シアが犯人が立て籠もっている右側、1階窓から 特殊音響閃光弾(スタングレネード) を投げ入れる。

犯人が怯んだ隙にオレとスノーが急襲。

犯人を制圧し、人質を助ける算段だ。

無線機などあれば、容易に意思疎通が出来、タイミングを合わせることができるのだが……さすがそんな物は持っていない。

今後のことも考えて、遠距離の相手への意思疎通方法を考えておくべきだろうな。

今回の突入タイミングは、メイヤ&シアに合わせるつもりだ。

オレ達はそれぞれの位置へと付く。

オレとスノーは建物左右の影に隠れ、いつでも窓へと突入する体勢を取る。

手の中にあるMP5SDを握り直す。

安全装置はすでに解除してある。

後は合図を待つばかり……。

「……ッ!」

――ガラスの破砕音!

続いて破裂音が続く。

オレとスノーは、まるで同時に蹴り飛ばされたように地面を駆け出していた。

肉体強化術で身体を補助!

1秒もかからず窓を乗り越え室内へと突入する。

オレが最初に、次にスノーが。

『×』を描くように突入する『X字型突入法』と呼ばれる方法だ。

「あぁぁぁああぁッ!!!」

立て籠もり犯であるヨルムは、 特殊音響閃光弾(スタングレネード) に眼と耳をやられて混乱していた。

瞬間的に175デシベルの大音量と240万カンデラの閃光を浴びたら、どんな人物でも耐えられないだろう。

オレは素早く、手に握っている剣を狙いMP5SDを発砲。

プスッ――という、減音された発砲音が響く。

続けて、彼の足を撃ち抜く。

「ぎゃぁぁああぁッ!」

手と足を撃ち抜かれ、ヨルムは床へと倒れる。

彼の顎を蹴り抜き、意識を刈り取った。

すぐさま、紐でヨルムを縛り動けなくする。

「スノー! そっちは!?」

「大丈夫、人質は皆無事だよ」

振り返ると、スノーが人質の女性達の様子を窺っていた。

犯人であるヨルムと一緒に 特殊音響閃光弾(スタングレネード) の衝撃を受け、気絶している。

特殊音響閃光弾(スタングレネード) の衝撃波は強く、窓ガラスを吹き飛ばし、時計やテレビ、家電などの精密機器を壊すほどだ。

前世の地球、特殊部隊員が犯人の立て籠もっている建物内に 特殊音響閃光弾(スタングレネード) を投入し、バリケードに当たって跳ね返ってしまった。結果、足下で 特殊音響閃光弾(スタングレネード) が爆発し、足を骨折させる事件が起きたほどだ。

「スノー、人質と犯人は他の奴らに任せて各部屋を見て回るぞ!」

「了解!」

監視している限りでは、ヨルム1人の犯行だった。

しかし他の部屋に仲間が隠れている可能性があるため、オレとスノーが各部屋を見て回る。

もちろんMP5SDを手にしながらだ。

一通りチェックを終えたが、他に犯人らしき人物はいなかった。

突入した部屋に戻ると、純潔乙女騎士団の団員達が窓から気絶している人質を運び出している。

手と足から血を流しているヨルムは、縛られたままシアの魔術で治療を受けていた。

負傷者1 名(ヨルム) 、人質に死者無し。

「……ふぅ。何とかなったな」

「おつかれさま、リュートくん!」

スノーが抱きついてくる。ついでに匂いを嗅いでくるが、まあそれくらいはいいだろう。

無事、初の PEACEMAKER(ピース・メーカー) と純潔乙女騎士団の共同作戦は成功裏に終わった。

立て籠もり犯、ヨルムの扱いや人質となった女性達については、全て純潔乙女騎士団にお任せした。

ここで PEACEMAKER(ピース・メーカー) が、我が物顔で仕切るのは、彼女達の面子的に不味いからだ。

お陰でココリ街の住人的には、純潔乙女騎士団が PEACEMAKER(ピース・メーカー) を従え事件を解決したと認識したらしい。

事件後、被害者宅や周辺の片付けを純潔乙女騎士団団員達が、率先して行ったりしたのも住人達に好印象を与えたのだろう。

他にもプラス面は――役割を与えられ、事件解決に動いた団員達の士気が上がったことだ。

以下、そんな団員達の声を一部上げよう。

「ずっと訓練ばかりで実感が持てなかったけど、今回の事件で初めて住人の皆さんの役に立てた、守れたという気持ちが強くなりました」

「普段は喧嘩の仲裁や道案内、迷子の捜索など……それはそれで重要なことなのですが、今回のような大きな事件を解決出来て、純潔乙女騎士団の一員として誇りに思います」

「私は事件当時、通路を塞ぐ担当に付いていました。その時、住人の方々から不安の声が上がりました。事件解決の一報が伝わった際、その住人の方々から直接『ありがとう』や『ご苦労様』という言葉が聞けて、自分自身なぜか泣きそうになりました」

一番、今回の事件に役だって喜んでいたのは純潔乙女騎士団、副団長であるラヤラ・ラライラだろう。

彼女の当時担当は、クリスと一緒にその視力を生かして遠距離から監視と射撃補助だ。

「ふ、フヒ……ウチみたいな落ちこぼれが役に立てて、ふ、ふひ……本当に嬉しいです」

彼女は涙を流し、喜んでいた。

彼女自身、常日頃、自分が皆の足を引っ張っている、お飾りの副官という意識が強かったせいだろう。そんな自分が少しでも役に立てたことが本当に嬉しいのだ。

なぜオレがそんな彼女達の反応に詳しいかというと――あの事件の後、純潔乙女騎士団の団員達が誰に命令された訳でもなく、自分の意思でオレ達に報告&お礼を言いに来たのだ。

お陰で最初は団員達とは距離感があったが、今では気軽に挨拶を交わし、時間が合えば食事を一緒に摂るまで仲良くなった。

瓢箪から駒――ではないが、こうして仲良くなれて本当によかった。

しかし……そんな彼女達の喜びを前に、吐き気を催すほど怒りを覚えている人物が居た。

純潔乙女騎士団、団長ルッカだ。

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ルッカは純潔乙女騎士団、団長にしか知らされない秘密基地的な場所へと赴く。

そこにはココリ街を騒がす、『魔術師殺し』主犯であるノーラが居る。

洞窟奥で作業をしていたノーラが、振り返り挨拶を口にする。

「いらっしゃ――って、どうしたのそんな怖い顔して?」

「……駄目だ。奴らはもう駄目だ」

「どうしたの急に?」

ルッカは街で起きた事件の概要をノーラに話し聞かせる。

「誇り高き純潔乙女騎士団が、出来たばかりの赤ん坊のような 軍団(レギオン) の下に付き喜んでいる! 団員達(あいつら) に誇りはないのか!?」

洞窟の壁に全力で拳を叩き付ける。

ルッカは光が一切無い黒い瞳で断言した。

「あいつらはもう駄目だ。純潔乙女騎士団の団員として相応しくない――皆殺しにして新たな、そう私の手で伝統と誇り、威厳にあふれた純潔乙女騎士団を再興しなければ! それがきっと私の使命なんだ……!」

そんなルッカに、ノーラは『アハ!』と嬉しそうな笑みを浮かべる。

「そう、きっとそうだよ。ノーラが大親友のルッカのために、その夢を実現する手伝いをしてあげるよ。ノーラ達の手で大切な純潔乙女騎士団を汚す人達を皆殺しにしよう」

「ああ、殺そう。皆、殺そう。奴らの魂で穢れを浄化するんだ!」

洞窟の奥。

魔術光で出来た2人の少女の影が、喜々として部下やリュート達の殺害計画を練り上げていた。