軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第109話 純潔乙女騎士団本部

昨夜、謎の甲冑に襲撃を受けたせいで結局、街の宿屋には泊まらず飛行船に泊まった。

自分達を襲った甲冑が再び戻ってきて、飛行船を破壊されては堪ったものではないからだ。

お陰で街がすぐ側にあるというのにローテーションで歩哨に立ち、一晩中警戒し続けなければならなかった。

翌朝、陽が昇ると食堂兼リビングに皆が集まり簡単に朝食を摂る。

「それじゃ予定通り、人数を半分にわけて1組は純潔乙女騎士団本部へ、1組は飛行船周辺の警戒を続けるってことで」

オレが朝食を摂りながら話を進める。

「純潔乙女騎士団本部へは僕、リース、シアが。飛行船周辺の警戒はスノー、クリス、メイヤが担当するで問題ないな」

皆がそれぞれ『了解』と声をあげる。

これは昨夜、決めたことの確認でしかない。

副官であるスノーを頭に、クリスとメイヤが下に付く。

一応、タップリ武器は用意してある。

スノーが持つAK47には、開発したばかりの『GB15』の40mmアッドオン・グレネードが装備済みだ。念のためMk19を参考にした 自動擲弾発射器(オートマチック・グレネードランチャー) を取り出し、設置しておく。

相手があの甲冑野郎でも、これなら火力的にも遅れはとらないだろう。

他にも飛行船には沢山の装備が置かれている。

いざというときはメイヤに飛行船を上空へ逃がしてもらえばいい。

問題はオレ達、純潔乙女騎士団本部へ行く組だ。

街中で襲ってくることはないだろうが、もし襲われたら火力に不安が残る。

スノー達側のように飛行船にある大量の火器をあてにする訳にはいかない。

そこでリースに付いてきてもらうことにしたのだ。

彼女の精霊の力――『無限収納』があれば、たとえ飛行船から離れていてもそれ以上の火力を補充することが出来る。

ハイエルフ族的には『無限収納』は外れ能力らしいが、オレ達にとっては便利この上ない。

また察知能力が高いシアに付いて来てもらえれば、甲冑野郎にたとえ街中で襲われても不意打ちを喰らう可能性は限りなく低くなる。

さらにシアにはいざというときすぐ危機に応対出来るよう、ある秘密兵器を手渡している。個人的希望を言えば、早く使用する場面が見てみたいものだ。

その場合、自分達が敵に襲われる訳だが……。

この人材配置はやや警戒し過ぎな気はしなくもないが、問題が起きてからでは遅い。やりすぎな事は無いと思うべきだろう。

「でもリュートくんは最後の歩哨役だったでしょ。眠くない?」

「大丈夫、大丈夫。心配してくれてありがとう。でも、これぐらい全然平気だって。それに今日の予定を全部済ませたら、眠ればいいんだし。シアは平気か?」

「はい、若様。ボクは護衛メイドの立場上、2、3日寝なくても動ける訓練を積んでいますから問題ありません」

昨夜の歩哨は『スノー&メイヤ』『クリス&リース』『オレ&シア』の順番で行った。

夜明け前。

尤も暗くなる時間に、察知能力の高いシアが組み込まれた結果だ。

「それじゃ朝食を済ませたら、各自準備に取り掛かろう。色々大変だとは思うが皆、気を引き締めて頑張ろう」

オレの言葉に皆が声をあげてくれた。

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予定通りオレ、リース、シアは街中の純潔乙女騎士団本部へと向かう。

地図は竜人大陸を出発する前に、 冒険者斡旋組合(ギルド) から渡されているため、迷わず本部を目指すことが出来た。

ココリ街は中心分に大きく1本、十字を描くように1本大通りが交差している。

上から見ると『十』を描いている。

これは港街から送られてきた物品を各街々に送るため、輸送しやすく区切られているらしい。

今日も大通りを馬車が行き交っている。

オレ達はその間を抜け純潔乙女騎士団本部を目指す。

オレは足を止め思わず背後を振り返った。

「もしリースさん」

「なんでしょうか、リュートさん」

彼女は不思議そうに小首を傾げる。

リースの胸元にはペンダントが輝いていた。

このペンダントにより瞳の色を変えている。

お陰で彼女はぱっと見は、エルフ族にしか見えない。

ハイエルフ族は全種族中もっとも長寿。

また夫婦愛を司る種族として、自国周辺が観光スポットになるほど大人気な種族だ。

最も崇拝しているのは人種族だが、念のためハイエルフ族だとバレて騒ぎにならないよう偽装していた。

そんな彼女はなぜかずっとオレの背後を歩いているのだ。

メイド服姿のシアは革製の旅行鞄を持ち、さらにリースの後ろを影のように歩いているためオレ達は列車のように縦に伸びていた。

だからオレは、思わず振り返って丁寧語でリースに尋ねてしまう。

「……どうしてリースさんは、横に並ばずに3歩後ろを歩いているのですか?」

「妻は夫の3歩後ろを歩くものではないのですか?」

彼女はさも当然と言いたげに頭上に『?』を浮かべる。

さすが元ハイエルフ王国、エノールの第2王女、リース・エノール・メメア。考えが古すぎる。

「でも、竜人大陸の 冒険者斡旋組合(ギルド) を出た時は、オレの腕を掴んでいたじゃないか? どうして今更」

「あの時は受付の女性が怖すぎて……」

「あー、あの人か」

どうやらあの受付嬢が怖くて、 冒険者斡旋組合(ギルド) 帰りは腕を掴んでいたらしい。確かにそれ以外は、常に後ろに居た気がする。

オレとしたことが、もっと早く気付いて察していれば……。

後悔しても始まらない。

オレは改めて嫁に手を差し出す。

「そんな後ろを歩く必要はないよ。一緒に並んで歩こうぜ」

「でも、それが妻の嗜みだと母から教わったのですが、間違っていたのですか?」

「間違いじゃないよ。ある場所ではそれが正解だったんだろうな。それに……単純に僕がリースと一緒に手を繋いで歩きたいんだ。駄目かな?」

「い、いえ、駄目じゃないです」

リースはストレートな言い方に照れたのか、耳たぶまで赤くしてこくりと頷く。

彼女は差し出したオレの左手を嬉しそうに握り締める。

紅葉のように小さな彼女の手のひらは柔らかく、ほっそりとしている。リースの真っ赤になった顔の熱が移ったのか、オレの頬まで熱くなる。

「ふふふっ、こうやって手を繋いで街を歩くのもいいですね」

「このクエストが終わったら、手を繋いで街とか見て回ろうな」

「はい、楽しみにしてます」

彼女は幸せそうにはにかむ。

その姿が堪らなく愛しいし、可愛らしかった。

オレ達のやりとりはどこからどう見ても、新婚ラブラブ夫婦のやりとりだろう。

今更ながら、オレは照れ臭くなる。

「若様、お嬢様、そちらは真っ直ぐではなく左折です」

オレとリースは微笑み合いながら歩いていたため、曲がるべき角を通り過ぎてしまう。背後に控えているメイド姿のシアが、冷静にツッコミを入れてきた。

もし彼女が居なければ、オレ達は当分、純潔乙女騎士団本部には辿り着けなかっただろう。

本部には昼前に辿り着くことが出来た。

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純潔乙女騎士団本部は街の北側奥、街を囲む壁近くに建てられていた。

東、西口は物資の通り道のため人が多い。

北、南口に商業区や住宅街が密集している。

その中でも北の外れは人気が無いのか人通りが極端に少ない。

お陰で本部を囲うように壁が建てられている。

これほどの広さなら訓練スペースも十分取れるだろうな、と予想した。

門は開いていたため、勝手に中へ入る。

その様子を通りすがりの住人に見られたが注意はされなかった。

竜人大陸の 冒険者斡旋組合(ギルド) で聞いた通り、純潔乙女騎士団本部は民衆の声をいつでも聞き入れるため、門を開いているという話は本当のようだ。

また道の案内や迷子、落とし物を預けたり、と前世の地球で言うところの『交番』としての役割もあるらしい。

門を潜れば右手に石造りの建物。

左手にグラウンドらしきスペースが広がっている。

まるで前世の日本にある小学校か中学校のような雰囲気だ。

「そこ! 手の振りが遅れているぞ! 周りに合わせて剣を振れ!」

「はい!」

「素振りを後100回追加する! 気合いを入れて取り掛かれ!」

『はい!』

1人の教官らしい女性の指示に、少女達20人ほどが刃を潰した剣で素振りを開始する。

教官らしい女性の背丈は高く、髪をショートカットに切っているため凛々しい顔立ちをさらに引き立てていた。耳は丸い獣耳、薄い胸、代わりに手足は細く長い。

『1、2、3――』と掛け声に合わせて、少女達が一糸乱れぬ動きで剣を振るう姿は見応えがある。

そんな女性がオレ達に気付くと、少女達に向けていた鋭い視線が嘘みたいに、友好的な微笑みを浮かべ話しかけてきた。

「冒険者の方ですか? なら 冒険者斡旋組合(ギルド) は北口ではなく反対側の南口にありますよ?」

(あれ?)

オレは違和感を覚えながらも、営業スマイルで返答する。

「いえ、僕達は純潔乙女騎士団特別顧問・ガルマさんの依頼で駆けつけた 軍団(レギオン) 、『 PEACEMAKER(ピース・メーカー) 』です。顧問のガルマさんはいらっしゃいますか?」

「――そう、貴方達が」

正体を明かすと一転、女性は露骨に冷たい視線を向けてくる。

その理由が分からず固まっていると、オレ達に背を向け、

「貴女達は素振りを続けなさい。回数が終わったら解散!」

さらに書類束を手に奥の渡り廊下を歩いていた少女へ向けて指示を飛ばす。

「ラヤラ副団長! あたしが居ない間の監督をお願いします!」

「は、はいぃ!」

鷹のような質感の羽を生やした少女は、背筋を『ピン!』と伸ばすと大声をあげる。

女性はその反応に頷き、オレ達を振り返る。

「付いてこい。顧問がお待ちだ」

それだけ言うと彼女は不機嫌そうに先導する。

オレとリースは顔を見合わせるも行かない訳にもいかず、黙って後に続いた。