軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第110話 状況説明

「失礼します。ガルマ顧問、お客様をお連れしました」

建物内部に入り、女性は迷わず階段を上がり一室の扉をノックする。

扉を開けると、奥の机で半年以上前、妖人大陸のアルジオ領ホードにある孤児院で顔を合わせたガルマがペンを走らせていた。

オレ達を確認すると、破顔して歓迎する。

「おぉ! リュート殿! こんなに早く来てくれるとは思わなかったぞ! いや、良く来てくれた!」

「別にエル先生に男を紹介する敵のために早く来た訳じゃない。エル先生の友人を見捨てて、彼女が悲しんだら嫌だから来ただけだ(お久しぶりです。仲間の1人が個人で飛行船を所有しているので、思いの外早く来られたんですよ)」

……やばい、つい、本音と建て前が逆になってしまった。

案内した女性も、顧問であるガルマも、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。

妻であるリースが、溜息と共に注意した。

「もうリュートさんは、本当にエル先生さんのことになると、メイヤさんみたいに見境がなくなるんですから」

いやいや! メイヤより見境無くなるはありえないだろ!?

……無いよな?

「すみません、リュートさんは本当にエル先生さんのことになると抑えが利かなくて」

「い、いえいえ、気にしないで下さい。それだけ彼女が尊敬されているということですから」

「本当にすみません」

リースが申し訳なさそうに謝罪を口にする。

その隙間を縫うように案内した女性が、

「それではアタシは訓練に戻ります。ラヤラ副団長だけでは心配なので。後のことはガルマ顧問にお任せします。失礼します」

言いたいことだけ告げると、さっさと部屋を出て行く。

歓迎されていないのが眼に見えるようだ。

今度はガルマが謝罪する。

「すみません。あれが純潔乙女騎士団の現騎士団長、獣人種族、イタチ族のルッカです。魔術師殺しの件で治安が悪化している以外にも色々ありまして。その辺も含めてお話しますから、そちらにお座りになってください」

ソファーに座ると、ガルマは部屋の奥へ行き冷たいお茶を取り出し戻ってくる。

「ボクがやります」

「ああ、すまない」

メイド服姿のシアがお盆を受け取る。

ガルマも逆らわず、シアに預けた。

彼女は完璧な動作でオレ達の前にお茶を置き終えると、再び背後に立つ。

ガルマが渋そうに、

「まずどこから話したものか……」

腕を組み考え込む。

自身の中で話を纏めると滔々と切り出す。

「リュート殿達と会った後このココリ街に戻ってくると、すでに『魔術師殺し事件』が起きている最中だったんです」

『魔術師殺し事件』――事件が発覚したのは、冒険者の1人が運良く生き残ったからだ。

彼曰く、深夜遅くまで魔術師の友人と2人で飲んでいた。

その帰宅途中、道の真ん中を塞ぐように全身甲冑が立っているのに気付く。

甲冑を着ているとは思えない身軽さで、甲冑野郎は男達を襲った。

酔っぱらっていても男達は腕に覚えのある冒険者達。

しかし甲冑野郎は強く、魔術師を殺害してしまう。

残った男も殺されそうになったが、偶然見回りの兵士が通りかかった。騒ぎを嫌ったのか、甲冑野郎は魔術師の死体だけを持ち去り、羽が生えているような身軽さで屋根の上へ。そして、屋根伝いに姿を消してしまったらしい。

以後、話が広まった。

それから数ヶ月、純潔乙女騎士団の面々では姿形、影すら捕まえられない。

その間にも被害者は増えているらしい。

らしい――というのも、今現在もどれだけの人数が犠牲になっているのか、特定すら出来ていないのだ。

そのためココリ街の住民達は純潔乙女騎士団に不信感を募らせている。

彼女達に街の治安を任せてもいいのだろうか?

その隙を突くように2つの 軍団(レギオン) が居着いてしまった。

彼ら・彼女らは、今回の『魔術師殺し事件』を自分達の手で解決することでココリ街の治安維持権を純潔乙女騎士団から奪おうとしているのだ。

軍団(レギオン) に街の治安維持を委託するのはよくある話だ。

治安維持を任せる代わりに、税金が 軍団(レギオン) に支払われる。そのため 軍団(レギオン) にとってはわざわざクエストをこなさなくても定期的に資金が入ってくる美味しい仕事なのだ。

本来であれば純潔乙女騎士団が面子のためにも、単独で解決しなくてはならない。しかし魔術師を狙い殺す『魔術師殺し』が相手では分が悪い。

そのためガルマは、リュート達『 PEACEMAKER(ピース・メーカー) 』に助力を求めたのだ。

だが、顧問であるガルマの対応に関して、純潔乙女騎士団の団長であるルッカは激しく反発している。

彼女は純潔乙女騎士団の団員達に命を助けられ、憧れから入団した後も努力を続け、現在団長まで上り詰めた人物。

魔術師としての才能は無いが、剣の腕を買われて団長になっている。

そのため純潔乙女騎士団に固執し、崇拝しているため他者の助力や後釜を狙っている2つの 軍団(レギオン) を激しく嫌っているのだ。

(だから、オレ達が立場を明かしたら、あそこまで態度が悪くなったのか……)

オレの考えを読んだのか、ガルマが申し訳なさそうに項垂れる。

「本当にすまない。あの子が失礼な態度を取ってしまって。後で儂からきつく叱っておくので」

「いえ、気にしないで下さい」

オレは一応、建前上の台詞を口にする。

「でも、『魔術師殺し』の甲冑野郎か……。なら、やっぱりあれがそうなのか」

「というと?」

オレの言葉にガルマが反応する。

そこでオレはかいつまんで昨夜、全身を甲冑で覆った人物に襲われたことを話した。その際、隣に座る妻――リースが撃退したことも。

「甲冑の特徴もあっているし、まさに探している甲冑野郎に間違いないですね。まさかこのような見目麗しい少女が撃退するなんて」

なんだ、このおっさん。

今度はうちの嫁、ロリ巨乳のリースに手を出そうっていうのか?

やるよ? やっちゃうよ? 自動擲弾発射器(オートマチック・グレネードランチャー) で40mm弾×300発ぐらいぶち込んじゃうよ?

「若様、落ち着いてください」

「いやだな、マジ落ち着いてるって、ほんとほんと。大丈夫だから」

「だったら、腰に下げているリボルバーに腕を伸ばさないでください」

シアは無理矢理オレからリボルバーを取り上げ、押さえつけてくる。

横暴だ! ただちょっと、リボルバーのメンテナンスを急にしたくなっただけなのに!

その際、暴発した弾丸が正面に座るガルマに当たっても事故だよね!

ガルマは苦笑いしながら、オレから距離を取る。

「と、兎に角、今後の純潔乙女騎士団との連携やリュート殿達の住まい、行動指針などを大雑把に決めましょう。細かくは後で詰めればいい。まずは行動あるのみですからな」

「ですね。それではよろしくお願いします」

ガルマとリースは互いに頷きあい、オレを無視して『魔術師殺し事件』について互いの 軍団(レギオン) の大雑把な摺り合わせを話し合う。

オレはその話し合いが終わるまでシアに拘束され続けた。