軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「どうしてそんなにかっこいいのアイリーン様! 愛する人か世界か、この選択を迫られてるだけでもう萌えるのに、そんな……っさすが私の一番の推し!」

「人が真剣に言ってるのに、そういう言い方やめていただける!?」

「大丈夫、勝たせてあげるから!」

「ああそう、それはありがたいわね!」

ぎゅうぎゅう抱きついてくるリリアの腕を引き剥がしながらやけくそで怒鳴ると、リリアがくすりと笑った。

「ほんとよ? あの女に勝つ方法を、私があなたにあげる」

「は……?」

「リリア! 君は狙われている可能性が高い。わざわざ出ることは」

「もうレスターったら! みんなで協力したら勝てるわ、大丈夫。聞け過去よ、開け未来よ、我は聖と魔のレガリアを継ぐ乙女なりってね!」

レスターが苦々しい顔になる。それとは違う意味でアイリーンも苦々しい。

(ものっすごく白々しい!)

アイリーンの冷たい眼差しにぷっとリリアが頬をふくらませた。

「あー信じてない~! 失礼しちゃう。そりゃ正直、魔王様を失ってうちひしがれるアイリーン様だって見たいわ。あ、だめ、想像しただけで萌える……」

「あなたね……!」

「でもそれ以上にあの女にアイリーン様が負けるのが我慢ならないわ、私」

くるんと綺麗に一回転してアイリーンから離れたリリアが、背中を向ける。

「冗談じゃないわ。たかが予知夢と過去視ができる、初恋をこじらせたババアに私の推しが負けるなんて。ちゃちゃっと女王陛下なんてたおしちゃいましょ」

「……だが、リリア。ハウゼル女王陛下は、君の」

レスターははっと気づいたように口を閉ざしてしまった。アイリーンは目を細める。

「何?」

「いや……」

「あ、言ってなかったかしら? ハウゼル女王陛下って私のお母さんなの!」

さすがに絶句した。と同時に、レスターが負けたときのことを考えた理由を察する。

魔王を廃し、セドリックを皇帝に、リリアを皇后にすれば、植民地のような状態に置かれたとしても、エルメイア皇国が生き残る可能性が高い。リリアを狙っているのはアメリア本人で、ハウゼル女王国ではないことも大きい。

(アメリアにだって政敵はいるはず。そこと連携できれば、確かに……)

そこまで考えて、ふっとなんだか肩が楽になった気がした。

アイリーンはひとりではない。

それならアイリーンは勝つことだけを、クロードのことだけを考えていればいい。

「……レスター。あなたはあなたの思うようにすればいいと、わたくし思うわ」

驚いた顔でレスターがこちらをうかがう。アイリーンは肩をすくめた。

「ただし、あなたの大事なリリア様はわたくしを勝たせるつもりみたい。それだけは忘れずにいるといいわ」

むっとレスターが顔をしかめる。リリアはわかっているのかいないのか、そうよそうよとアイリーンの腕に抱きついた。

「――忠告とご理解、痛み入る。では、あなたは、さっさとアイザック・ロンバールを叩き起こすべきだ。手を読み尽くされるといってね」

「配慮に感謝しよう。また明日、この時間にここで」

ゼームスが話を締めくくった。ふんと鼻で笑ったレスターは、ありがたいことにリリアを引っ張って出て行った。

なんだかどっと疲れたアイリーンの肩に、ゼームスが手を置いた。

「大丈夫か?」

「ええ。でもまだ何もしてないのに疲れたわ……」

「政治的な根回しは私やドートリシュ宰相にまかせておけばいい。レスターという男もああ言っているが、こちらが勝つことを望んでいる。ハウゼル女王国と水面下で交渉しながら、情報を流してくれるだろう」

「そうね。でも、リリア様を信頼しすぎるのは危険だから策には入れてはだめよ。そのうえでどこに何を、誰をあてがうか考えましょう。ただ、あの空に浮いてる宮殿。あれに関しては何ができるのか、情報がなさすぎるのが問題ね……」

まさか空を移動できるだけの建造物ではないだろう。そうであって欲しいが。

「攻撃してこなくても、国に落とされたらたまらない。他にクロード様と女王も相手にしなきゃいけないのに、どう処理すればいいのか……アイザックがいれば、何か考えてくれると思うんだけれど」

「……とりあえず、動ける人間に招集をかけよう」

「そうね、お願い。みんなで考えれば、いい案も浮かぶかもしれないわ」

頷いたゼームスが扉をあけ、出て行く。

それと入れ替わるようにして、魔物だ、という声が会議室の向こうからひびいた。

ここは皇城だ。古城ならまだしも、出てくるなと厳命しておいた魔物がどうしてと慌てて会議室の扉を開き、アイリーンは驚く。

「リュック? クォーツも……あなた達がどうしてここに」

「あ、アイリーン様いた。はい、こっちですよシュガーさん」

「右向ケ右! 前進!」

「きゅいきゅいっ」

シュガーが先導し、リボンがそれに答えて、フェンリルや大モグラたちが二列に並んで、大きな布袋に詰められた何かをえっほえっほとかついで運んでいる。

ぽかんとしていると、布袋からくぐもった声が聞こえた。

「おいコラどこ連れてくんだ、なんで動けねーんだよ何打ったリュック!」

「大丈夫です、意識ははっきりしているでしょう?」

「それのどこが大丈夫なんだよこの変態薬師! っつーかおろせ、どういうつもりだ!」

「……わかっているだろうに、往生際の悪い……」

「ふざけんなクォーツ! お、ろ、せ! こっちは右腕骨折して……っおいゆらすな、飛びはねるな、けが人だぞ!」

「……アイザック」

袋から出た顔に、アイリーンは呆然としたあと、喜色を浮かべて駆けよる。

「アイザック! 目をさましたのね!」