軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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駆けよったアイリーンに、リュックが微笑む。

「ええそうなんですよアイリーン様。目をさましたんで連れてきました」

「……見てのとおり、元気だ」

「よかった……本当によかったわ」

でも、どうしてこんなことになっているのだろう。

目をさましたとだけ知らせてくれれば、無理に連れてこなくてもこちらから行くのに――と思っている間に、リュックとクォーツがアイザックを袋から出し、会議室の椅子に座らせていた。

「任務完了!」

「きゅっ!」

びっとシュガーが敬礼し、リボンもきりっとした顔をしてから、一列に並ぶ。クォーツが出入り口で花をそれぞれ飾ってやっていた。どうも報酬らしい。

それを見ていたルシェルが感心した声をあげる。

「すごいね、人間が魔物に頼み事をして、聞いてもらえるなんて」

「ああ、すみません、勝手に魔物をお借りして」

「いいよいいよ、嫌がってないなら。クロードだって承知のことなんだろうし――あ、うん、僕にまで花をありがとう?」

「……魔物達を、送ってやって、欲しい……」

「ああ、なるほどね」

クォーツが魔物達を手招きして整列させ、点呼したのを見届けてから、ルシェルはぱちんと指を鳴らした。ふっと魔物達が消える。

「……で、これってなんの騒ぎ?」

「いえね、アイザックさんたら、俺が止めるのに一刻も早くアイリーン様の力になりたいって動こうとするので、しかたなく連れてきたんです」

「リュック、てめぇ」

アイザックを椅子に座らせたリュックが、そのうしろに立って、注射器を取り出し、その針先を光らせてた。

「自白剤です。嘘をつかないなら打ちますよ」

「わけわかんねぇよ、クォーツこいつ止めろ!」

「……お前が悪い」

「なんの話なの?」

眉をひそめたアイリーンに、アイザックは視線をそらし、リュックは笑顔でそれをにらんでいる。

クォーツが嘆息して、アイリーンに向き直った。

「……アイリーン。アイザックは……」

「――魔王様は諦めろ」

クォーツの説明より早く、アイザックが顔をふせたままそう言った。

「数こそ減ったが神剣に聖剣を使えるあの女、何してくるかわからない空中宮殿、しかも魔王様まで敵に回った。いくら魔王パパ様がこっちについたからって、勝てる見込みは薄い。それよりも魔王パパ様をあっちに突き出して、セドリックを皇太子に戻して、リリア・レインワーズをハウゼル女王の娘だと公表して、諸外国を味方につけろ」

「ま、待ってアイザック。あなた何を言って」

「そうしたらアシュメイル王国も表立って介入できる。聖王様に話はつけてある、お前はもう一度後宮に入れ。表向き聖王の監視がついてることにすれば、お前の安全は保障される。聖剣がなけりゃ、お前はただの権力争いに負けた未亡人なんだからな」

「わたくしに逃げろって言うの!? クロード様を諦めて、魔物も見捨てて、ルシェル様を犠牲にして、国のことも何もかも投げ出して、ハウゼル女王国に膝を折れって!?」

「そうだよ!」

アイザックは顔をあげて、アイリーンの目をまっすぐに見返した。

「これがいちばん確実な、犠牲が最小限ですむ方法だ。少なくとも今、それ以外にどんな方法があるんだよ! お前だってわかってるはずだ。どうしても諦めるのが嫌ならやり合うのはそのあと、最低でも魔王様をもとに戻す算段がついてからだ!」

「クロード様は必ず戻るわ、だから」

「根拠はなんだ、この状況で愛の力だのなんだの不確定な要素を俺は認めない!」

「――っもし、クロード様を戻せなかったとしたら、そのときは他でもないわたくしがとどめを刺すわ、それなら」

「そうなったらお前はそのあと魔王様を追って死ぬつもりだろうが!!」

しん、と会議室に静寂が広まった。

いつの間にか戻ってきたゼームスも、一緒にやってきたオーギュストも、固唾をのんでこちらを見ている。

互いに全力疾走したあとのように、肩で息をしながら、アイザックがふと笑う。

「――二回目だ」

「……アイザック?」

「お前にあの男はだめだからやめろって言うのも、それに加担するのも」

それでもとアイザックはまっすぐ、アイリーンから目をそらさない。祈るように、挑むように、言葉を紡ぐ。

「他の誰もお前を止めらんないだろ。だから、俺だけは止める」

「……アイザック」

「それに俺は裏切り者だ。協力なんざあてにするんじゃねーよ」

自嘲して、アイザックはそのまま口を閉ざした。もう、話すことなどないとでもいうように。

リュックがクォーツに目を向け、クォーツがゆるく首を横に振る。出入り口で突っ立ったままゼームスとオーギュストが顔を見合わせる。窓際でウォルトとカイルも、困ったようにアイリーンとアイザックへ視線を行き来させていた。

痛いだけの沈黙が、ただ流れていく――。

「ね、ゼームス。なんかお前、光ってない?」

プリンを食べながらルシェルが気まずい静寂を破った。

一拍遅れて、ゼームスが自分の体をまさぐり、ああとそれを差し出す。

「せ、聖具です。聖王との連絡用に古城にあったものを、今は誰もいないことが多いので、持ち歩いていたのですが……」

「なんか、すっごい薄いけど反応してない、それ?」

「……まさか、バアル様から連絡?」

急いでゼームスが会議室のテーブルの真ん中に小石ほどの大きさのそれを置く。だがそれは淡く光ってはそのまま消え、力のない点滅を繰り返すのみだ。

「聖なる力足りてないんじゃない? 補充しないと」

「わ、わたくしは無理よ? リリア様でもこういうのは……お義父さまは!?」

「んーどうだろ、今は魔力のほうが強いからなあ」

「お、俺、セレナ呼んでくる!」

「それだ!」

ゼームスの肯定を受けて、オーギュストが飛び出していった。