軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

15.王女暗殺の裏側

武力、軍事力の国であるイクターラバ。武術に長け、戦略に富む。軍事技術の突出した国であった。かといって誰かれ構わず戦争をしかけるわけではない。ザハトアール王国の北方、フォルツァ領と同じく、人に対してより魔物に対して行使することの多い軍力ではあった。

そして、魔法よりも武を重んじる国でもあった。

「こたびのヴィクトリア王女との婚約をよく思わない一派もいるのだ。魔法よりも武。武はすべてを解決すると」

みながチラリと私を見る。

何? どうしたの?? ああ、それに対して後からきた私の意見が欲しいのか。

「魔物に対して圧倒的な武力は心強いものですが、魔法も素晴らしいものです。私は魔物討伐中に何度も魔法に助けられております」

ふっ、と漏らすようにデルウィシュ王子が笑う。

「セラフィーナ殿がそれこそうちのチェリクの嫁になって我が国に来てくれれば、あやつら全員を黙らせることができるだろうにな」

嫁!? いったいなんの話だ。

名前の挙がったチェリクを見ると、彼はこちらに向かってウィンクをした。

私が再度口を開こうとすると、片手を上げて止められる。

「セラフィーナ殿には婚約者がおられることはすでに聞いている。国の面倒ごとを抑えられなかった私の戯れ言だと思って聞き流してくれ……結論から言うと、その武力を重んじる一派が、他国のイクターラバとザハトアールの結びつきを阻止しようと動いている一団と手を組んでいる。それが露見した。ヴィクトリア並びに護衛の皆には大変な迷惑をかけた。深くお詫びする」

そうやって頭を下げる姿に、周りの騎士たちは動揺する。

「その上で、やはり私は貴方を諦めたくはないのだ、ヴィクトリア」

真っ直ぐ向ける瞳にはヴィクトリア王女の姿しか映っていない。

対する王女もまた口元をほころばせた。

「わたくしもデルウィシュ様がいいです」

「今回のことで悪事が露見し潰す算段ができる。貴方が国にいらっしゃる頃にはイクターラバも随分と過ごしやすくなっていることでしょう」

二人の間での話は上手くいったようには見えた。

だが、私は始終難しい顔をしていた兄様が何を思っているのか、心配だった。

ヴィクトリア様に対するいたずらは、その後も続いた。

そう、可愛い方のいたずらだ。

可愛いといえども王女を傷付けさせるわけにはいかない。双方に利がないのだ。仕方ないから退けるのだが、やり過ぎないように手加減しなければならないのが面倒だった。

「セラフィーナ、これはもう、自分のための魔道具として開発すればよいのではないかな?」

「耐久面を考えて頑張ってみたつもりなのですけれど……」

「君がそう思い手を加えた痕跡は認めるが……やはり鍛えていないと手の皮膚がはじけ飛んでしまいそうだよ」

「なんと……」

魔法パンチメリケンサックはなかなかに開発が難しいようだ。

「ルーカスにプレゼントしたいと思っていたのですが」

「彼の腕が再起不能になる可能性もあるから、もっと穏便なものをオススメするよ。反対にフォルツア辺境伯にプレゼントするのは問題ないと思うがね」

「お父様、ですか」

「癒やし手をすぐそばに置いて試してみるのもいいんじゃないかな。あくまで、もし反動が強すぎて負傷した場合に即対応できるよう癒やし手を準備しておかねばならないが」

「それでは、今度領地に赴くときに持って行けるようにしようと思います。私と、お父様と、ハドリー兄様と……レナード兄様はどうかしら……?」

「騎士団が大変な事態になりそうだが……そうだね、レナード様に試してもらうのもいいんじゃないかな? 私が許可を出せるのは君を含め四人だけだね」

確かに、もし魔道具に不備があった場合、責任をとらねばならない。家族間なら多少の手加減はしてもらえそうだ。

私が必要な材料を、紙とペンを借りてメモしていると、他の研究室に出入りしている学生が覗き込んできた。

「セラフィーナ様の婚約者様もセラフィーナ様のようにお強いのですか?」

小柄な女性で、茶色の髪と瞳のごくごく一般的な色合いの人だった。胸にはたくさんの紙の束を抱えている。

「ルーカスは、剣術や武術ではわたくしが勝ちますが、魔法を加えた戦闘を得意とする人です。戦況を把握するのが早く、数手先まで状況を読むことが得意で、状況判断に迷いがない背中を預けられる人ですよ」

女子学生は笑う。

「べた褒めですね」

「ルーカスに足りないと思えるところがとくにありませんね。力と力の対決になればわたくしが前面に出ればいいのですから」

「なんだか、すごいですね……」

「そうですか?」

ルーカスは学生の間あれやこれやとセラフィーナの世話を焼いていた。そんなルーカスに、セラフィーナはいつも感謝していたのだ。

だから、今彼の領地で起こっている場所へ駆けつけられないのは、気にしないようにしようと思いながらも、気にせずにはいられなかった。

はやく、今もごたついているヴィクトリア王女の周囲を落ち着けなければ、任務から外れることなどできないのだ。

魔道具に使われていた魔晶石のロットの件もある。

むしろあれが不穏で今ここを離れることなどできないのだ。

「先生、とりあえず試作を一つ作ってみたいのですが」

「そうだね、魔晶石の使用登録を申請しておくよ」

魔晶石を使った魔道具はいちいち申請が必要なのだ。

あのペディムント領で見つかった魔晶石のロットと同じだった。最初から誤魔化しているか、それとも途中で抜かれたか、それによって話がだいぶ変わるのだと兄様が漏らしていた。

魔晶石はどこから来てどこに行くのか。

私は手に持った設計図を眺めながら、その日の午後を過ごしたのだ。