軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

14.通り抜ける防御壁の仕組み

兄様はもちろんすぐに尋問をということで捕らえた者たちを王宮へ移送した。尋問も得意だから、そう時間は掛からずに事態を把握することもできるだろう。

そんな中、私は学園の教師たちに囲まれてウィンドディヴィジョンを展開しているところだった。

「魔法は、発動場所への魔力移動、その先への魔法陣の認識、発動の宣言という三段階を経て現れるものだ。座学の授業でこの魔法陣を教える。簡単なものは簡単な魔法にしかならない。たくさんの複雑なシンボルを描ききる魔法陣は強いものとなるだろう。……そして、セラフィーナ、君の覚えているウィンドディヴィジョンと、我々の知るウィンドディヴィジョンの魔法陣に違いはなかった」

板に何度も同じ魔法陣を書かされた。

先生方がそれを寸分違わぬものと判断した。

「貴方は何かがおかしいわっ!! あんなにも魔法は自分に合わないと言い張ってらっしゃったでしょう!? それが、突然魔法をまた学びたいと言いだし、次々と常識外れの魔法を使う……何が、何が起こっているの!?」

フラーマ先生がヒステリックに叫ぶ。周囲の教師陣がまあまあと彼女をなだめる。そんな反応を引き起こしてしまった私が思うのも失礼かもしれないが、フラーマ先生の反応はごもっともなのだ。

何せ私はフラーマ先生が知るセラフィーナではないのだから。

それにしても、常識外れとは……。

「まあ、自分の魔力に防がれるはずはない。そう思ったのはわかった。とても斬新で面白い発想だ。だが――ウィンドディヴィジョン」

ウェント先生が自分の周りに綺麗なウィンドディヴィジョンの板を出現させた。そして手を伸ばす。

指先は、ウィンドディヴィジョンによって進むことを妨げられた。

「普通はこうなのだよ、セラフィーナ」

「普通……一般的にはということですよね」

他の風魔法の教師でない先生たちもそれぞれ目の前にウィンドディヴィジョンを出現させ、同じように妨げられている。

得意属性があるというだけで、かなり初歩的で便利な魔法なので誰もが扱えた。

「魔法陣に違いがないということは、それ以外に違いがあるということですよね。発動の呪文も同じ……魔力だっていたって普通だと思うのですけれど」

「……そうなのだ」

「あなた! 我々の目の前で描いている魔法陣と、認識している魔法陣が違うのではなくて!?」

フラーマ先生の言葉に、教師陣に動揺が走る。

「それは、私が先生方に嘘をついている、と? その上で新しい魔法陣を開発したと?」

そうだと答えようとしたフラーマ先生は、途中で口をゆがめた。そう、気付いたのだ。私がそこまで複雑な魔法陣を描けるほど学んでいないことに。

「セラフィーナはなあ……」

「セラフィーナの学力では……」

「セラフィーナがまさか新しい魔法陣とは……」

皆がみな、セラフィーナには無理だと言う。正直ここまで満場一致なことにはむっとしてしまう。

「魔法発動の三要素のうちの二つは否定され、一つ目の魔力が普通と違うということになれば……普通? 普通と違う魔力ってなんですか?」

ウェント先生に問いかけるが、彼は肩をすくめたのみだった。

「ここ最近のセラフィーナ嬢の魔法行使法を耳にするに、かなり突飛なものが多かったと……」

そう言ったのは三年生の光魔法の教師だった。かなり高齢の重鎮だ。

セラフィーナにはまったく縁もゆかりもない御仁だった。

「突飛、ですか?」

ただ普通にやっていただけだが、かなり威力が強くなったのは私のおかげだろうとは思っている。

セラフィーナの魔法に、私の魔法に対する興味関心が拍車を掛け、頑張ったらできるを体現したのだ。

「突飛……ウィンドディヴィジョン」

同じように防御壁を目の前に出す。板のような扉のようなそれだ。

「こう……この防御壁は、人や物や魔法から身を守るためにありますよね。そして、それは魔力で作られている。……人や物や魔法を防ぐというのは通さないと言うことだと思います。魔力を、通さない。異質な魔力を通さないから、私の作った防御壁は、私を、通す」

そう言って腕を貫通させる。

先ほどから何度も見せている風景だ。

そしてそれに教師陣全員がうなり声を上げるのだ。

「それぞれの防御壁には形があって、私には私の形がある。同じ形だから通るけど、他の人の形は通さないということではないのですか?」

「それなら私の防御壁は私を通す、だろう?」

「先生は先生の形を把握していないとか?」

「ならば君は自分の形を把握しているのか?」

そう重鎮おじいちゃん先生に問われた。

「たぶん?」

きっと?

「なら、その形を変えることはできるかな?」

形を変える?

「私の形を?」

「いや、防御壁の形を、だ」

私じゃない形の防御壁。

「ウィンドディヴィジョン」

今までと違う形と思ったら星形の防御壁が現れた。違う。そうじゃない。

だが、真っ直ぐ突き出した拳は、跳ね返される。

「いたああああ」

教師陣が息をのむ。

「これはこれで困ります、ね?」

周囲を見渡すと、皆がみな、深い思考の海に沈み込み、難しい顔をしたまま宙を、己の出した防御壁を見つめたまま動かなくなっていた。

そこへちょうど騎士が呼びに来たので、彫像と化した教師たちに挨拶をして退出する。

「お兄様がいらっしゃったということは、わかったということでしょうか?」

「……お部屋にてお待ちです」

兄様の団員が、厳しい顔のままそう答えた。

ここで話すことではないと言うことか。

連れて行かれたのは談話室だった。中には兄様はもちろん、ヴィクトリア王女とその側近たち、そして、デルウィシュ王子たちもいた。

「お待たせ致しました」

壁際にずらりと並んだ騎士たち。

そして厳しい顔の王子と、まったく無表情の王女。

なんだかとても悪い予感がした。

「セラフィーナはこちらへ」

兄様が私を呼び、ヴィクトリア王女が座っているソファの後ろへと誘導した。案内してくれた騎士はすでに壁際に立っている。

「すでに軽く説明が終わったところだ。結論、あの者たちはイクターラバの差し金だということが露見した」

私は兄からデルウィシュ王子へと視線を移す。

「……大変遺憾ではあるが、ザハトアール王国の取り調べを疑うことはない。そう出たのならそうなのだろう……そして、心当たりはある」

ふうとデルウィシュ王子は息を吐いた。