軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ヤクモとライザとテト

「愚者どもめっ!」

ルーガルが叫んだ。

「数はこちらが多い。全員殺して、ドールズ様にお前たちの命を捧げてやろう」

信者たちが黒い短剣で冒険者たちに襲い掛かった。

剣と剣がぶつかり合う音と怒声が聞こえてくる。

視線を動かすと、ライザがテトと戦っていた。

「テトっ! あなただけは私が殺す!」

ライザが短剣を突き出すが、テトは笑いながらその攻撃を避ける。

「Dランクの君には無理だと思うよ」

「あんたはFランクの魔道師でしょ!」

ライザは蹴りを放った。テトはヒジで蹴りを受ける。

「残念だけど、それは違うんだ」

「違うって何よ!」

「僕の実力はBランク以上の魔法戦士ってことだよ」

テトは目を細めて、左手を前に出す。尖った氷柱が具現化した。

「くっ……」

ライザは上半身をそらして、氷柱の攻撃を避けた。

「甘いよ!」

バランスを崩したライザに向かってテトが駆け寄り、短剣を突き出す。ライザの肩に刃が刺さり、服が赤く染まった。

後ずさりするライザを見て、テトは笑った。

「本当は君を殺したくないんだけど、仕方ないね。じゃあ……」

僕はライザの前に立って、魔喰いの短剣をテトに向ける。

「ヤクモか……」

テトは軽く腰を落として短剣の刃を僕に向ける。

「君にはやられたよ。まさか、わざわざリッケルの死体を調べに行くなんてね」

「僕の能力なら、穴に下りることは簡単だから」

「そうだったね。君の能力は何度か見せてもらったよ」

テトはじっと僕を見つめる。

「君は強いね。とてもEランクとは思えない」

「それなら、降伏してもらえないかな」

「ふふっ。それはないよ。君が強いといっても、僕よりは弱いから」

テトは笑みの形をした唇を舐める。

「君のユニークスキルは珍しくて、相手の意表をつくことができる。それに武器も一級品だ。初見で戦う相手なら、倒しやすいだろうね。でも、僕は君の戦い方を知っている」

「戦うしかないんだね」

「うん。君たちを全滅させておかないと、僕が賞金首になっちゃうからね」

「……残念だよ」

僕はテトと視線を合わせる。

「じゃあ、十秒で終わらせてあげるよ」

そう言うと、テトは短剣を左右に振った。

それが合図だったのか、信者が左方向から僕に襲い掛かった。

「『魔防壁強度五』!」

白い紙の壁が信者の前に出現する。

「その技は知ってるよっ!」

テトが口元にナイフを寄せて僕に突っ込んでくる。

口元を隠した? 呪文を詠唱してるな。

僕の頭上に尖った氷柱が五本出現し、それが落ちてくる。僕が右にかわすと、その動きを予測していたかのように、テトが短剣を突き出した。

僕は魔喰いの短剣でその攻撃を受け止める。

同時にテトが左手を僕の顔に向ける。

一瞬で空気が冷え、目の前に尖った氷柱が出現した。

僕は首を右に動かして、氷柱の攻撃を避ける。

「ははっ、すごいね。でもっ!」

テトは唇を動かしながら、連続で短剣を突いた。僕は右に回り込んで、魔喰いの短剣を斜め下から振り上げる。その軌道を予測してテトが上半身をそらした。

同時に僕は魔喰いの短剣に魔力を注ぎ込む。青白い刃の先端がぐにゃりと曲がり、長く伸びる。

テトの肩に尖った刃が突き刺さった。

「ぐっ……く……」

テトは顔を歪めて僕の足元に左手を向ける。地面が一気に冷えた。

氷の魔法で足を凍らせるつもりか。

僕は紙の足場を具現化して、その足場に飛び乗った。

テトは舌打ちして僕から距離を取る。

「予想以上に強いね」

「Aランクの格闘家に鍛えてもらってるから」

僕はテトの顔の前に数十枚の紙を具現化した。テトはその紙を短剣で切り裂く。その時には僕は左に移動していた。

この位置は理想的だ。

数百枚の紙を具現化して、テトの周囲に配置する。

「無駄だってわからないかな」

テトは目の前の紙を短剣で斬った。

テトの視線が僕と重なる。

やっぱり、テトは強い。どんな状況でも素早く視界を確保して、僕の動きを確認している。

だけど……。

僕はテトに突っ込み、直前で左にジャンプした。

「甘いよ!」

テトが僕の着地する位置を予測して動いた。

その瞬間――。

僕は魔式を脳内でイメージする。

具現化する位置を正確に魔式に追加して……。

一瞬、斜め前に砂粒のような小さな光が見えた。その光は目印だ。光の周囲に限界まで薄くした透明な紙が具現化している。

僕は靴底と同じ形に切り抜かれた透明の紙を踏み、刃が伸びた短剣を振り下ろした。

宙で止まったような僕の動きにテトの反応が遅れた。刃の先端がテトの肩に刺さる。

「くっ……」

テトは素早く下がって、呪文を唱える。

その時、宙に浮かんだ紙を払いのけて、ライザがテトに突っ込む。短剣の刃がテトの背中に刺さった。

「がああっ……ぐっ!」

テトは体を捻りながら、左手をライザに向ける。

魔法は使わせないっ!

僕は魔喰いの短剣に魔力を注ぎ込む。二メートル以上伸びた刃がテトの左手首を斬った。

同時にライザがテトの胸元に短剣を突き刺す。

「あ……」

テトの両目が大きく開き、両膝が折れた。

「そ……そんな……僕が死ぬ……なんて、ありえな……」

テトの体が倒れ、半開きの口から呼吸音が消えた。

「テト……どうして……」

ライザの声が微かに震えた。

「ライザっ! まだ、信者はたくさんいるよ!」

僕はライザの肩を叩く。

「今は考える時じゃないから」

「あ、うん。わかった」

ライザの表情が引き締まる。

僕たちは近くで冒険者と戦っていた信者たちに攻撃を仕掛けた。