軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

危機

数分後、互角だった戦いが変化した。

倍近くいた信者の数が減り、戦っている冒険者の数を下回った。

「ルーガルだ! ルーガルを倒せ!」

メルトの言葉に冒険者たちがルーガルに突っ込んでいく。

その時、ルーガルの周囲に半球形の魔法の壁が出現した。

冒険者たちの剣がその壁に弾かれ、甲高い音を出す。

「どうやら、ここまでのようだ」

ルーガルがメルトに視線を向ける。

「メルトよ。今回は負けを認めてやろう」

「今回は、だと?」

メルトが眉を吊り上げて、ルーガルに近づく。

「お前に次はない。ここで死ぬんだからな」

「それはどうかな」

ルーガルは胸元から黒い円柱を取り出し、ボタンを押した。

大きな爆発音がして、僕が紙で塞いでいた裂け目が崩れ落ちた。その部分から大量の水が流れ出し、地面を濡らす。

「これでお前たちは脱出することはできない」

「何をやっているっ?」

メルトが驚いた声を出した。

「これでは、お前たちも逃げられないではないか」

「たしかに、私以外の者は死ぬだろうな」

そう言って、ルーガルは小ビンを取り出し、それを足元に叩きつけた。中に入っていた黄緑色の粉が魔法陣を描く。

「これはゼルディア様からいただいた転移の魔法陣を描く粉だ。これがあれば、私一人なら外に出ることができる」

「ルーガル様っ!」

周囲にいた信者たちが球形の壁に駆け寄った。

「私たちはどうなるのですか?」

「安心しろ。ドールズ様が復活すれば、お前たちは生き返ることができる。安心して、最後まで戦うのだ」

ルーガルは視線をメルトに戻す。

「こちらも多くの信者を失ったが、炎龍の団のリーダーと主力を潰せるのなら、悪くはない結果とも言えるな」

「ルーガルっ!」

メルトはオレンジ色のしっぽを逆立てて、短剣で魔法の壁を叩く。赤い刃が半透明の壁に傷をつける。

「ふふふっ。百回ほど叩けば、この魔法壁も壊されるかもしれんな」

「全員でこの壁を壊すぞ!」

「もう遅い!」

ルーガルが転移の魔法陣を起動する言葉を口にした。

一瞬でルーガルの姿が消え、半球型の魔法の壁も消えた。

「くそっ!」

メルトが歯をぎりぎりと鳴らした。

「メルト様、水が溜まってきています」

グレッグがメルトに駆け寄った。

「既に後方の通路が水に浸かっていて、脱出する場所がありません」

「……とにかく、信者を倒すぞ! 脱出方法はその後に考える」

そう言って、メルトは近くにいた信者に攻撃を仕掛けた。

数分後、僕たちはほとんどの信者を倒した。

しかし、水はどんどん溜まっていて、冒険者たちのヒザが濡れている。

まずいな。さっきの爆発で壁にひびが入って、いろんな場所から水が漏れている。これじゃあ、粘着性のある紙で塞いでも別の場所から漏れ出すだろう。

メルトたちは裂け目を塞いでいる岩を壊そうとした。団員たちが斧や剣で岩を叩く。

「これでは間に合わんな」

キナコがぼそりとつぶやいた。

「水が溜まる時間のほうが早い。このままでは全員水死するぞ」

「うわああっ!」

突然、ダズルが悲鳴をあげた。

「死にたくない。死にたくないよ。ううっ」

「くそっ、炎龍の団の巻き添えで死ぬのかよ」

アルベルが岩を壊しているメルトをにらみつける。

「こんな依頼、受けなきゃよかった」

その隣にいるカミラは蒼白の顔で歯をカチカチと鳴らしていた。

僕は周囲を見回す。

どこか、他に逃げる道はないのか?

視線を上げると、数十メートル上の壁の一部が崩れていて、穴が開いていた。

あの穴……奥が見えない。もしかしたら、あそこから逃げ出せるかもしれない。

僕は岩を壊しているメルトに駆け寄った。

「メルトさん。上に穴があります」

「穴だと?」

メルトは僕が指さした穴に視線を向ける。

「……たしかにあるが、あそこまで、どうやって移動する? ロープを使うにしても時間がない。無理だ」

「それは僕がなんとかします!」

僕は自分の位置と穴の位置を確認する。

具現化時間が長くて、ある程度強度がある紙を使って……。

数千枚の紙が具現化し、白い螺旋階段を作った。

「あ……」

メルトが大きく口を開けて、僕が螺旋階段を見上げる。

周囲にいた冒険者たちも呆然とした顔で螺旋階段を見つめている。

「みんな、階段を上って!」

僕の声を聞いて、メルトが我に返った。

「よ、よし! みんな、階段を上がれ!」

冒険者たちが慌てて螺旋階段を上がり始める。

先頭にいたグレッグが穴に入った。

数十秒後、穴からグレッグの声が聞こえた。

「狭いですが、先に進めそうです」

その言葉に冒険者たちの表情が明るくなった。

「よし! 一人ずつ穴の中に入れ!」

メルトがそう言うと、冒険者たちが次々と穴の中に入っていく。

僕は階段の上部から下を見た。

水深は上がっていて、螺旋階段の半分以上が水に浸かっている。その水の中に多くの冒険者と信者の死体が沈んでいた。

ぎりぎりだったか。

僕は額に浮かんだ汗をぬぐって、息を吐き出す。

「ヤクモくん」

アルミーネが穴の中から手を差し出した。

「早く行こう。ここまで水がきちゃうかもしれないし」

「わかった」

僕はアルミーネの手を握った。