軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

司教ルーガル

ふっと周囲が明るくなり、視界が広がった。

その場所は広く、奥に大きな裂け目があった。

裂け目の前にテトがいるのを見つけて、メルトの髪の毛が逆立った。

「テトっ!」

メルトは怒りの表情を浮かべて、走り出した。その後を冒険者たちが追う。

その時、僕たちの前に半透明の壁が現れ、行く手を完全に塞いだ。

「こんな壁っ!」

メルトは赤い刃の短剣を突き出した。先端が半透明の壁に当たるが、その壁を突き破ることはできなかった。

「無駄だ……」

半透明の壁の奥から、黒いローブを着た司教のルーガルが現れた。その背後からドールズ教の信者たちが百人以上現れる。

ルーガルが口角を吊り上げて、半透明の壁越しにメルトを見つめる。

「私の壁は物理攻撃も魔法攻撃も防ぐ。これがユニークスキル【魔法壁強化】の力だ」

「壁の魔法を強化するスキルか」

「そうだ。だが、その効果は絶大で、高位魔法の攻撃でも防ぐことができる」

ルーガルは冒険者たちを見回す。

「……ふむ。数は四十人程度か。これだけ残っているのはお前の失策ではないのか? テト」

「しょうがないだろ」

テトが不満げに頬を膨らませた。

「予想より早く僕が信者だってバレちゃったんだから」

「それが甘いのだ。せめて、メルトを暗殺するぐらいはやってもらいたかったが」

「そのチャンスがなくてさ。周りに炎龍の団の団員もいたし、なかなか隙を見せてくれないんだよ。さすがSランクってところかな」

テトは肩をすくめる。

「でも、半分以上戦力を減らしたんだから、最低限の仕事はしただろ」

「テトっ!」

ライザが半透明の壁をこぶしで叩いた。

「よくも騙したわねっ!」

「あーっ、ライザか。ごめんごめん」

テトが舌を出した。

「ライザには感謝してるよ。君は正義感があって信用も高かったからね。君のおかげで炎龍の団に近づくことができたよ」

「ぐっ……」

ライザの歯がぎりぎりと音を立てた。

「メルトよ」

ルーガルが壁の前にいたメルトに歩み寄る。

「お前はよくやった。多くのアーマーゴーレムを倒し、私を見つけることができた。だが、結果は変わらない。お前たちは、この洞窟で死ぬのだ」

「ふざけるなっ!」

メルトはダークブルーの目でルーガルをにらみつける。

「魔法の壁はいずれ消える。そうなれば、お前たちを一瞬で殺してやる!」

「それは無理だ。この壁は当分効果が続く」

「それなら、お前たちもこっちを攻撃できないぞ」

「攻撃など、する必要はない」

ルーガルはちらりと後方にある裂け目を見る。

「私たちはあの裂け目から、この洞窟を脱出する。そして、裂け目を爆破して塞げば、お前たちは逃げることはできない」

その時、隣にいたアルミーネが僕の耳に唇を寄せた。

「ヤクモくん。この壁、何とかできるかもしれない」

「消せるってこと?」

僕は小さな声で質問した。

「うん。私が考えたオリジナルの魔法で特別な素材をいくつも使わないといけないけど、一部分だけならなんとかなると思う」

「それでもいいよ。人が一人でも通れるのなら」

「わかった。じゃあ……」

アルミーネは半透明の壁に右手を当てて、呪文を唱える。

ルーガルの笑い声が聞こえてきた。

「ふふふっ。では、これで失礼する。最後にお前たちの悔しがる姿を見ることができて、楽しかったぞ」

その時、ガラスが割れるような音がして、アルミーネの前の半透明の壁がなくなった。

僕はそこから壁の向こうに移動して、意識を集中する。

数千枚の紙が具現化して、信者たちの頭上を集団で飛ぶ鳥のように移動した。紙は重なり合って後方の裂け目を塞ぐ。

信者たちが驚いた顔で紙に塞がれた裂け目を見つめる。

「いいぞ、ヤクモ!」

キナコが半透明の壁が消えた場所を通り抜け、僕に駆け寄った。

「これで信者どもは逃げられない。後は全員倒すだけだ」

「かっ、壁に穴が開いてるぞ!」

信者の声が響き、ルーガルが壁の穴に気づいた。

「そいつらを殺して穴を塞げ!」

数人の信者が呪文を唱え始める。

魔法の壁を補修するつもりか。そうはさせない!

「『風手裏剣』!」

風属性を付与して折った手裏剣が信者たちに刺さる。

「がああっ!」

呪文を唱えていた信者たちが地面に倒れる。

冒険者たちも半透明の壁を抜けて、信者たちに攻撃を仕掛けた。

メルトが一瞬で四人の信者を斬り倒す。

「ここで決着をつけるぞ! 狂信者どもを殲滅しろ!」