軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

Aランク

「んっ? ヤクモじゃないか」

魔法の鎧と盾を装備した大柄の男がヤクモを指さした。

「アドルさん」

僕は男の名を口にする。

アドルは聖剣の団の団員でBランクの冒険者だ。隣にいる二人は……Cランクのウーゴとラモンだな。で、その後ろにいるのは……誰だろう? 知らない顔だ。

その男は二十代半ばぐらいの見た目で、頭部に狼の耳を生やしていた。髪の毛は赤く、牙のような八重歯がある。服はダークブルーでベルトには銀色のプレートがはめ込まれていた。

銀色のプレートってことはAランクだな。もしかして、この人が僕の代わりに入団したガルディか?

ガルディは前にいたアドルの肩を叩いた。

「お前の知り合いか?」

「ヤクモは俺たちの団にいた新人ですよ。キルサスさんに追放されちまったけど」

「……あーっ、こいつが紙使いのヤクモか」

ガルディの視線が僕に向いた。

「今回の仕事にパーティーも参加してるとは聞いてたが、まさか、雑魚スキルしか持ってない役立たずがいるパーティーとはな。冒険者ギルドも何を考えているんだか」

その言葉を聞いて、胸の奥に針が刺さったような痛みを感じた。

「まあいい。お前たちは、このへんで弱いモンスターでも倒してろ。調査団の救出は俺たちがやってやる」

「それは楽でいいが……」

僕の隣にいたキナコが口を開いた。

「見る目がないお前たちだけでは無理だろう」

「あぁ? 弱い猫人族のくせに舐めた口を……んっ?」

ガルディは鋭い視線をキナコに向ける。

「お前……魔族殺しのキナコか?」

「俺を知ってるようだな」

「……ああ。お前は最強の猫人族と言われてるからな」

ガルディはアドルを押しのけて前に出た。

「で、見る目がないって、どういう意味だ?」

「お前たちはヤクモを役立たずと思って追放した団だからな。大金貨を海に投げ捨てるような奴らだ」

「何を言ってる?」

ガルディは赤い眉を眉間に寄せる。

「追放された新人は紙を具現化できる能力しかない役立たずだったと聞いてるぞ」

「あ、ああ」

アドルがうなずいた。

「ヤクモは攻撃魔法も防御魔法も使えないし、白兵戦が得意なわけでもない。それに戦闘スキルも持ってないしな。だから、キルサスさんが追放したんだ。一番使えない新人ってことで」

「何だ。やっぱり役立たずじゃねぇか」

ガルディは片方の唇の端を吊り上げた。

「使えない新人をパーティーに入れたお前こそ、目が節穴だぞ」

「ヤクモくんをパーティーに入れたのは私だよ」

アルミーネが言った。

「ちょうどよかった。あなたたちが聖剣の団なら、リーダーに伝えてもらいたいことがあるの」

「ん? 何だ?」

「ヤクモくんを追放してくれて、ありがとうって。おかげで、私のパーティーは強い仲間を手に入れることができたよ」

「……ほーっ、お前がリーダーなのか」

ガルディは値踏みするような目でアルミーネを見つめる。

「Cランクの冒険者のようだな」

「うん。それと錬金術師の上級の資格も持ってるよ」

「なるほど……な。だから、わかってないのか」

「わかってない?」

「ああ。お前は相手の実力を測る力がない。だから、ヤクモを使える冒険者だと勘違いしたんだ」

ガルディはちらりと僕を見る。

「ユニークスキルを持ってる奴は誰でも強いと思ったんだろうが、使えない能力じゃ、意味がないんだよ」

「ふーん。あなたはヤクモくんの能力を見たことがないみたいだけど、使えないって決めつけるんだ?」

「紙を出すだけの能力なんて見る必要などないからな」

「……そっか。あなたはAランクみたいだけど、団やパーティーのリーダーには向いてなさそうだね」

アルミーネの言葉にガルディの頭部の耳がぴくりと動く。

「お前、Cランクのくせに俺にケンカを売ってるのか?」

「思ったことを言っただけだよ」

アルミーネはガルディの鋭い視線を平然と受け止める。

「相手の実力を測る力がないのは、あなただと思うよ」

「……」

ガルディが無言になり、その場が静まり返った。